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色の勉強

デジタル・カラーの基礎

2012.03.28. 掲載
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目次
はじめに
1.色を決めるもの
2.色の性質
3.色の表示
4.色の合成
まとめ


はじめに

色の勉強をしようと思うきっかけになったのは、孫の写真の顔の色を美しく残したいという思いからであった。ハイビジョン動画とかPC上の静止画では、かなり良い線を行っているのだが、プリンターで印刷してみると、実際よりも肌の色が悪い。

静止画は原則としてファイルで保存し、PCや液晶TVのモニターで見ることにしているのだが、写真の必要な場合もあり、この機会に色について、基礎的なことを勉強しておくことにした。

振り返ってみれば、私は大学に入ったころに「色」について関心を持ったことがあり、学生時代に影響を受けた書物40冊ばかりの中に「色」に関するものが2冊ある。今、それを手にしてみると、色彩心理とか配色、デザインなどが中心に書かれている。その頃は、好きな色、好きな色の組み合わせなどに関心があった記憶がある。


図1.色彩論 稲村耕雄著 岩波新書 1955年 100円


  図2.小辞典色いろは 稲村耕雄著 光文社カッパ・ブックス 1957年 180円


医師になってからは、色を分類に使うことが多くなり、人工心肺の配管、薬の分類に活用してきた。

PCを使い始めて間もなく、画像を医療の説明に使うことに取り組み、民生用イメージスキャナー第一号のGT3000で8色カラーから始め、16色、256色、フルカラーと時代の進むのに伴走した。

デジタル・カメラとデジタル・ビデオカメラが登場し、そのめざましい高性能化に対して、それをどのように使いこなすかということが、現在の問題である。これを「私の静止画処理法」と「私の動画処理法」としてまとめておきたく思っている。



1.色を決めるもの

色は、1)光と、2)光によって照らされた物体と、3)それを見る人間の視覚と物体の3者があって成立する。これを視覚現象の3要素という。このうちの1つが欠けても現実には色は存在しない。

1.光

1) 光は電磁波(electromagnetic wave)の一部

電磁波は波長(wave length)によって様々な分類がされており、波長の短い方からガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、レーダー、電波などと呼ばれる。人間の目に見える範囲の電磁波を可視光線と呼ぶ。可視光線の波長は380nm〜780nmで、電磁波全体のごく一部に過ぎない。

音波(sonic wave) は波動であるが電磁波ではない。電磁波と違って、伝える物質がないところでは音は伝わらない。音波の波長は1cm 〜 20m 程度で、可視光線の波長よりも桁違いに大きい。


図3.電磁波の波長。通常「光」というのは可視光線(visible light)を指す


2) 光の種類

光は、電磁波の一部で、人間の目に見える波長のものを可視光線という。その波長の下は、およそ360〜400nm、上はおおよそ760〜830nmである。それより下に赤外線、それより上に紫外線がある。

  波長(nm) 色相
  380〜430 青紫
  430〜460 青
  460〜500 青緑
  500〜570 緑
  570〜590 黄
  590〜610 橙
  610〜780 赤

3) スペクトル

光は、一般には異なる波長の集合体であり、スペクトル(spectrum)とは、光をプリズムなどの分光器を通すことにより得られる、波長ごとの単色光が連続した列を指す。例えば、虹の7色として知られる赤橙黄緑青藍菫がスペクトルである。ただし、色は現実には7色だけでなく連続的な移り変わりで、無限にある。文化によって分類の仕方は異なる。この波長ごとに色が順に移り変わること、あるいはその色の並ぶ様をスペクトルと呼ぶ(図3)。

4) 光の分類

視覚現象の3要素を基準にすると、光は直接光と間接光に分けられ、間接光はさらに反射光と透過光に分けられる。

1.直接光(光源色)
 自ら光を発しているものの色
 太陽、炎、花火、電灯、蛍光灯、LED、TV、PCのモニター、蛍など
 色温度(color temperature)とは光源の光の色を表わす時に用いる温度。単位はK(ケルビン)

2.間接光(物体色)
 光源に照らされて初めて見える色、通常ほとんどの色
 a.反射光(表面色)
  物体からの反射による光が目に入り、色として見える
  ほとんどの色はこの表面色である。
 b.透過光(透過色)
  物体を透過した光が目に入り、色として見える
  ステンドグラス、ワインなど

2.物体

物体色は光源と物体の相互作用であり、光源だけ、物体だけでは色は成立しない。物質を構成する元素には、スペクトルの特定範囲の光を選択的に吸収したり、反射・透過させる性質があり、その反射・透過した特定の波長域に対して、人間の目と脳が特定の色として認識する。

1) 光の反射

 1.全反射
  物体の表面で直ちに全部反射される状態。白色光は白色光として反射される。鏡など。
 2.選択反射(物体表面色)
  物体に当たった光は物体の性質により、一部の光を吸収し、残りの光を反射する。
  その反射光を人間の目はその物体の表面色と見る。ほとんどの物体の色がこれである。

2) 光の吸収

 1.全面吸収
  白色が全波長にわたり全面吸収された場合、人間の目は黒として見える。
 2.選択吸収
  白色のうち、例えば青の波長を選択的に吸収し、残りの赤と緑を反射すると、人間の目には黄として
  見える。

3) 光の透過

 1.全面透過(正透過)
  白色が全波長にわたり全面透過した場合、人間の目は白として見える。透明ガラスなど
 2.選択透過
  白色の緑と青の波長を吸収し、残りの赤の波長のみを透過すると、人間の目は赤として見る。
  色ガラスなど


3.人間の視覚

色は光を受けた網膜・脳が処理して認識する。

網膜には、錐体細胞 (cone cell)と桿体細胞(rod scell)という2種の視細胞がある。


図4.錐体細胞の構造[ Wikipedia Cone cell ]より


錐体細胞は、ある特定の周波数の光を頂点として、左右に裾が広がる形に、各錐体細胞の感受する光の範囲が決まっている。これには、長波長に反応する赤錐体、中波長に反応する緑錐体、短波長に反応する青錐体の3種類がある。3種類の錐体細胞で見える範囲が重なっているので、可視光線のすべての光の色が見える。赤や緑や青の錐体細胞は、それぞれの色の光で、もっとも感度が高い。(図6.視細胞感度曲線)

これら3種の錐体細胞が可視光線を受け、信号が視神経を経由して大脳の視覚連合野に入り、ここで3種の錐体からの情報の相対比や位置を分析して色を知覚する。人間が感じる光は3種類のみであるため、人間にとっての光の3原色も、同じように赤、緑、青となる。

人間の視覚が色を認識する際には、3つの錐体が受ける刺激の比率によって、様々な「色」を合成して感じるが、その刺激は錐体の感度ピークに一致している必要は無く、特にどの波長の光でなければならないと言うこともない。

例えば、黄の波長の光は、赤の波長の光と緑の波長の光の組み合わせによって、ほぼ同じ刺激を与えることが可能であり、黄は赤と緑の組み合わせの光として表現できる。黄の単色光(monochromatic radiation)だけが眼球に入っている場合と、赤の単色光と緑の単色光が組み合わされて眼球に入っている場合を人間は区別できない。

このように、人間の目には、全く異なった波長であっても、その組み合わせで別の波長色と同じに見えるケースがあり、これが混色であり、合成色である。

音は音波波動であるが、電磁波ではなく、ドの音(C)とミの音(E)の2つの音を同時に聞いても、人間の耳は2つの音として聞き分ける。



図5.桿体細胞の構造 [ Wikipedia Rod cell ]より


網膜にあるもう一つの視細胞、桿体細胞は、色覚には関与しないが、感度が高い。暗所では錐体細胞はほとんど働かず、桿体細胞が働く。このため暗所では物の形は判っても、色ははっきりとは判らない。桿体細胞に含まれる光受容色素ロドプシンはビタミンAによって構成されている。(図6.視細胞感度曲線)

暗順応(dark adaptation)
視覚系が暗い場所(0.03cd/u以下)に順応している状態を指す。桿体細胞だけが働いているため、明暗の判別はできるが、色の判別ができない。眼は暗さになれると弱い光でも見えてくるが、明るい所から暗い部屋に入った場合、暗順応するまでに30分以上かかる。

色の濃さについては、桿体細胞が見分けるので、錐体細胞で見ると、あまり変わりない、例えば、同じ青と薄い青の模様は、桿体細胞で見ているので、模様がはっきり分かる。


図6.視細胞感度曲線 L:L錐体、M:M錐体、S:S錐体、R:桿体(R) [ Wikipedia Rod cell ]より


色の恒常性
人間の視覚には慣れや知識などによる補正があり、多少の光源の色度の違いは補正される。ただし、この補正にも限度があり、極端に偏った波長分布では補正しきれない。

色順応(chromatic adaptation
明順応状態で視覚系が視野に入る色に順応する過程や順応した状態を指す。例えば昼光色蛍光灯照明から 白熱電球照明に切り変えた場合、一瞬、黄色っぽく感じるが、数分後には白熱光に順応して黄色っぽさを意 識しなくなる。目の方が照明光に慣れて自動的に視覚系内で補正作用が起る。



2.色の性質

1.無彩色と有彩色

色には無彩色(achromatic color)と有彩色(chromatic color)がある。無彩色は、白、灰、黒の様に色み(色あい)を持たない色で、色の3属性では明度の要素だけを持つ。有彩色は、色あい(色み)を持つ全ての色で、色の3属性である色相、明度、彩度の全要素を持つ。

2.色の3属性

白、黒、灰色以外の色は、どのような色も、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Brightness)の3つの要素を含んでいる。これを色の3属性(three attributes of color)という。

色相は、赤や青といった色あいのこと(赤み、黄み、緑み、青み、紫み)。無彩色には存在しない。

彩度は、色の鮮やかさで、彩度の高い赤は鮮やかで、彩度の低い赤はくすんだ赤でグレーに近くなる。純色成分の含まれる度合いとも言える。彩度を上げていけば鮮やかな色になり、最高は純色になる。彩度を下げていけば鈍い色になり、最低は灰色ががった黒になる。彩度は、表色系により、Saturation のほか、Chroma とも書かれる。

明度は、光の明るさのことで、明度を上げると白っぽくなり、明度を落とせば暗くなる。明度が同じ色は、白黒の写真で撮ると同じ明るさのグレーになる。明度は、表色系により、Brightness のほか、Value、lightness とも書かれる。

明度を上げ、彩度を下げると、パステルカラーになり、明度を下げ、彩度を上げるとどぎつい色になる。

3.色立体

色立体(color solid )とは、色相、明度、彩度ごとに色を分類して立体的に示したもの、あらゆる色が色立体のどこかに位置する。代表的なのはマンセル方式で、色相(Hue)はH、彩度(Chroma)はC、明度(Value)はVで表わす。


図7.マンセルの色立体 [ Wikipedia Munsell color system ]より


4.色相環

色相環(color circle)とは、色相の総体を順序立てて円環にして並べたもの。理論的には、境目がなく連続的なものであるが、一般的には20等分や40等分で表現される。色相を角度で示すものもあり、マンセル表色系などのように、赤から始まるものが多い。


図8.マンセルの色相環 [ Wikipedia Munsell color system ]より


5.補色

補色(complementary colors)とは、色相環(color circle) の反対側に位置する色の組み合わせで、補色同士の色の組み合わせは、互いの色を引き立て合う相乗効果がある。


図9.R(赤)G(緑)B(青)と補色関係にあるC(シアン)M(マゼンタ)Y(黄)
R(赤)←→C(シアン)  G(緑)←→M(マゼンタ)  B(青)←→Y(黄)



3.色の表示

1.色名で表示

1) 基本色名

 [有彩色]赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、の10種
 [無彩色]白、灰色、黒、の3種

2) 固有色名

 [有彩色]PINK、RED、ORANGE、BROWN、YELLOW、OLIVE、YELLOW GREEN、
  GREEN、BLUE GREEN、BLUE、VIOLET、PURPLE、RED PURPLE
 [無彩色]WHITE、GRAY(GREY)、BLACK

3) JIS慣用色名

  日本工業規格では、現在269種の慣用色名が登録されている。

4) 系統色名

  基本色名に、暗い、明るいなどの修飾語を付けて色を表したもの。
  例:鈍い青
    日本工業規格(JIS)では  くすんだ青
    日本色彩研究所のPCCSでは ダルブルー
    日本流行色協会のJBCCでは モデレート・ブルー

2.表色系で表示

色を数量的に表わすシステムを表色系(color system)という。表色系は、顕色系(color appearance system)と混色系(color mixing system)がある。顕色系は色の性質を使うもので、マンセル表色系やPCCS表色系、HSVやHSLもこちらに属する。混色系は色の混合を使うもので、の代表としてCIE表色系 がある。

CIEというのは国際照明委員会(Commission Internationale d'Eclairage)の略で、国際的な規格づくりのために、いくつかの表色系を提案しており、RGB表色系、XYZ表色系、UVW表色系、LAB表色系がある。RGB表色系以外はいずれも日本工業規格(JIS)にとりいれられている。

1) マンセル表色系

色相、明度は0〜10の11段階、彩度は明度に左右されるが、最高0〜14の15段階まで区別する。
明度0と10では彩度は0になる。人間の視覚(目測)による半定量である。


図10.マンセル表色系 [ Wikipedia 彩度 ]より


2) PCCS表色系

1964年に日本色彩研究所が発表した、色相とトーンの2次元で色を表示する色彩体系
同じ色相でも  明・暗  強・弱  濃・淡  浅・深  の調子の違いがある。
この色の調子の違いをトーンといい、明度と彩度の組み合わせで12種のトーンを作った。
これも人間の視覚(目測)による半定量である。


図10.PCCS表色系 [ 日本色研 PCCS ]より

この12種のトーンを、純色:1  明清色調:3  中間色調:5  暗清色調:3  の4種類に分けた。
純色:一番彩度の高い色。鮮やかで冴えた感じがする。白、灰色、黒の無彩色が混ざっていない [ v ]

明清色調:色に透明感があり、明るく澄んだ感じがする。純色+白を混ぜた色調 [ b ][ lt ][ p ]
中間色調:色に不透明感や濁り感がある。純色+灰色を混ぜた色調 [ s ][ sf ][ d ][ ltg ][ g ]
暗清色調:色に透明感があり、暗く澄んだ感じがする。純色+黒を混ぜた色調 [ dp ][ dk ][ dkg ]


3) CIE RGB表色系

原色をR(赤、700nm)、G(緑、546.1nm)、B(青、435.8nm)とする表色系を、CIEのRGB表色系という。現在のパソコンにおいては最も多く用いられる。

4) CIE XYZ表色系

RGB表色系は知覚できる色を完全に合成できるわけではない。そこで、RGBでなく、実在しない原色(虚色)XYZを作った。Xは赤を中心に青も含み、Yは明るさと緑を代表し、Zは青を代表する色刺激である。この3原刺激を加法混合して作ったのがXYZ表色系である。RGBとXYZは以下の換算式の関係にある。

X=2.7689R+1.7517G+1.1302B  Y=R+4.5907G+0.0601B  Z=0.0565G+5.5943B

5) CIE xyY表色系

3刺激値は虚色の混色量なので、XYZの値を見ても、すぐにそれがどのような色であるのかを判断できない。そこで、以下の数式による比率を求め、小文字の x y z で表示する xyY表色系 が考案された。

x=X/(X+Y+Z)   y=Y/(X+Y+Z)    z=Z/(X+Y+Z)

このうち x y が決まれば、上記の数式から z 値は決まる。その上で、 Y が決まれば、X Z も決まる。 この x と y を色度座標と呼び、すべての色は x と y による2次元平面、および明度を示す Y で表現できる。当然ながら、xyY から XYZ に変換することもできる。


4.色度図で表示

色を表すためには、一般に3つの数値が必要だが、明るさの情報を犠牲にして2つの数値で色を表し、2次元の図に表現したものを色度図(Color Diagram)という。

3刺激値 XYZ にもとづく表色系による xy色度図 は CIE色度図 とも呼ばれる。xy で色相・彩度の情報、Y が明度情報に対応している。

色度図ではすべての色が表現される。ほぼ中央の点が白色(無彩色)に対応し、周辺に行くほど鮮やかさが増して、色度図周囲の境界で単色光(純色)になる。釣鐘状に湾曲している部分は「スペクトル軌跡」と呼び、「赤・橙・黄・緑・青・藍・青紫」といった色相の違いを表している。また、底辺の直線部分は、スペクトルには存在しない色で「純紫軌跡」という。


図11.CIExy色度図 [ Wikipedia 色空間 ]より


5.色空間で表示

色空間(Color Space)とは、決められた表色系の上で、どのくらい広い範囲を扱うことができるかを表す。一般的には、sRGBやAdobe RGBなどだが、プリンターやスキャナーのデバイス固有で色を扱える範囲も色空間と呼ぶ。色空間が表現できる色の範囲を色域(gamut)という。

1) RGB空間

RGBは一般に、加法混色を表現するのに使われる。RGBは、それぞれ赤 (red) 緑 (green) 青 (blue) の頭文字である。光の3原色であり、数値を増すごとに白に近づく。反対に、数値を減らすごとに黒くなる。コンピュータのモニタで用いられるのも、このRGBである。

コンピュータで同時に表示可能な色数は、RGB各8ビット、計24ビットを割り振る事で、1677万7216色の表示を可能にしている。これは、ほとんどの人間の目で識別可能な限界とされ、フルカラーやトゥルーカラーなどと呼ばれる。

2) sRGB空間

sRGB(Standard RGB)は国際電気標準会議 (IEC) が定めた国際標準規格であり、一般的なモニタ、プリンタ、デジタルカメラなどではこの規格に準拠しており、互いの機器をsRGBに則った色調整を行なう事で、入力時と出力時の色の差異を少なくする事が可能になる。

3) Adobe RGB空間

Adobe Systemsによって提唱された色空間の定義で、sRGBよりも遥かに広い(特に緑が広い)RGB色再現領域を持ち、印刷や色校正などでの適合性が高く、DTPなどの分野では標準的に使用されている。


図12.CIExy色度図におけるsRGB空間とAdobe RGB空間の色域


4) CMY空間

CMYは印刷の過程で利用する減法混色の表現法である。絵具の3原色。基本色は白で、それに色の度合いを加えて、黒色にしていく。すなわち、始めは白いキャンバスから始め、インクを加えて暗くしていく(反射光を減らす、すなわち減法)ということである。CMYには、シアン(cyan)、マゼンタ (magenta)、イエロー (yellow) インクの数値が含まれている。


図13.CIExy色度図におけるsRGB空間とCMY空間(白線)の色域 [ Wikipedia 色空間 ]より


5) CMYK空間

理論上、CMYをすべて均等に混ぜると黒色になるが、インクや紙の特性上、CMYのインクを混ぜて綺麗な黒色を作るのは技術的に困難であり、通常はすべてを混ぜても濁った茶色にしかならない。そこで、黒(Key plate)の発色をよくするために別途黒インクを用いるようになったのがCMYKである。キー・プレート (key plate) とは画像の輪郭など細部を示すために用いられた印刷板のことであり、通常黒インクのみが用いられた。印刷物では、黒は文字などで多用されるため、インクの節約にもなるので、現在ではもっとも使われている。

6) HSV空間

コンピュータで絵を書く場合や、色見本として使われる。これは、色を色相(色み)と彩度という観点から考える場合、加法混色や減法混色よりも自然だからである。HSVには色相 (Hue)、彩度 (Saturation)、明度 (Value) が含まれている。HSB色空間 (Hue, Saturation, Brightness) とも呼ばれる。Adobe Photoshopなどで使われている。

環状のHSV色空間
色相:0〜360°の範囲
彩度:0〜100%の範囲
明度:0〜100%の範囲、明度100%を純色とし、そこからどれだけ明るさが失われるかを示す。


図14.HSV色空間 [ Wikipedia HSV色空間 ]より


7) HSL空間

色相 (Hue)、彩度 (Saturation)、明度 (Lightness) よりなる、HSVに近いが、HSV では純色と白が同じ明度で表されるのに対し、HLS では純色の明度を 50%で表す。Microsoft Windows、CSS3、Paint Shop Pro などで使われている。

色相:0〜360°
彩度:HSVとは違い、純色から彩度が落ちると灰色になっていくと考える。
明度:HSVとは違い、明度0%を黒、100%を白とし、その中間(50%)を純色とする。


図15.HSLとHLV色空間 [ Wikipedia HSL and HSV ]より

表1.HSLとHSVの彩度の比較
明度 彩度(HSL) 彩度(HSV)
100
0
100
75
33
100
50
100
100
25
33
100
0
0
100



4.色の合成

1.原色

原色(primary color)とは、混合することであらゆる種類の色を生み出せる、互いに独立した色の組み合わせのこと。互いに独立な色とは、たとえば原色が3つの場合、2つを混ぜても残る3つ目の色を作ることができないという意味である。人間の目においては、原色は3つの色の組み合わせであることが多い。原色とする色の選択は基本的には自由である。

1) 光の3原色

連続的に変化するスペクトルの、それぞれ1/3ずつの領域をまとめると、波長の長い順から、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)が得られる。これを光の3原色(additive primaries)という。それぞれのイニシャルを取って、一般的にはRGBカラー、またはRGBと呼ぶ。


図16.光の3原色


2) 色料の3原色

シアン(C)とマゼンタ(M)とイエロー(Y)のCMY を色料の3原色(subtractive primaries)という。


図17.色料の3原色


2.光線による合成

1) 加法混色

光の3原色RGBを、適切な割合で再混合することによって、スペクトルに含まれるあらゆる色光を再現することができる。これを加法混色(additive mixture)という。

色光の混色により得られる光の明度は、混色する各色の光エネルギーの和となるため、元の光より明るくなる。RGBを全て混合すると、太陽光線と同じく白色光になる。舞台照明やカラーTV、コンピュータのモニタ画面表示等に使われる。

種類
1.同時的加法混色
加法混色の基本的な方式。舞台照明、カクテル光線など。
CG等、コンピュータのカラーシステムでは、R・G・B それぞれを256階調に分けることで、その組み合わせとして256の3乗、つまり16,777,216万色を表現できるようになっている。

2.併置的加法混色
非常に近い位置で隣り合っているカラーを見た場合、それらが一緒になって一つのカラーに見える。 例えば、点描絵画、色の違う縦糸と横糸で折られた布の色、カラーTV・モニタ等など。 カラーモニタは、RGB3色にそれぞれ感応する蛍光体が並んでおり、そこに電子銃からのビームを走査させて発光させる。


図18.LCDテレビ、LCDモニターのピクセル配置



図19.CRTテレビ、CRTモニターのピクセル配置



図20.単板式カラーカメラのピクセル配置


3.継時的加法混色
違うカラーを連続的に見た時、交じり合って一つのカラーに見える。 回転面に別々なカラーを配したコマを廻した時、カラーが交じり合って中間のカラーが出現する。

3.色料による合成

1) 減法混色
色料の3原色CMYを混ぜて行う混色を減法混色(subtractive mixture)という。色料の混色により得られる色の明度は、混色すると入射光から特定の波長部分が差し引かれる為、元の色より暗くなる。

理論上は、全部まぜると黒になるはずだが、実際は暗い灰色になって、真っ黒にはならない。 そこで、もうひとつ黒の絵の具を加える。この4色をCMYKという。インクジェットプリンタで使われる。

2) 染料
化学染料がない時代には、染料(dye)は植物の根や花から作った。
水や油に溶ける。
繊維を染めた場合、繊維の内部までしみ込んで色が付く。
インクジェットプリンタの場合、発色がよいが、滲みやすい。

3) 顔料
化学顔料がない時代には、顔料(pigments)は岩や土を微細に砕いて作った。
水や油に溶けない微細粉末。
溶けてるようにみえても、実は混ざってる。
繊維を染めた場合、繊維の表面に付着して色が付いている。
インクジェットプリンタの場合、耐水・耐光性に優れていて、滲みにくい。

4.カラーマッチング

色光の3原色によるモニター画像(RGB)と色料の3原色(CMY)によるプリンター印刷の間では、両者の色を一致させるために、カラーマッチング(color matching )を行う必要性がある。WindowsにはICM(Image Color Management)というカラーマッチングのための機能が標準で組み込まれている。



まとめ

1.市販されている色に関する書籍は、ほとんどが配色か色彩心理に関するもので、求めるデジタルカラーに関するものは見当たらなかった。そこで、Wikipedia を中心として Web で色の勉強をした。

2.この勉強によって、光、物体、人間の視覚のメカニズムが理解できた。直接光、反射光、透過光として目に入った光によって、赤、緑、青3種類の錐体細胞が刺激を受ける量の割合が色を決めるという巧妙なメカニズムに驚いた。

そのメカニズムにより、「黄」単色光を受けた視細胞が見る「黄」と、「赤」と「緑」の光を同時に受けた視細胞が見る「黄」の区別がつかないとか、太陽光には存在しない「赤紫」という光を人間は見るという話しは実体と人間の認識の関係を象徴すると思った。

3.波長の違う2つの色光を、目は混合して別の色として認識するのに対して、同じ波動でありながら、波長の違う2つの音(音波)は、それぞれを2つとして聴き分けるというのも、感覚器が異なると認識のパターンが異なる例として興味深かった。

4.色の3属性は理解できるが、これを単純に3次元の立方体で表示すると分かり難くなってしまう。マンセル表色系は明度を中心軸とする球体で、中心軸に直角の半径で彩度を表し、その半径で作られる円周を色相としていて理解しやすい(図10)。しかし、実際は、マンセル色立体に見られるように、彩度は色相と明度によってその半径が異なるため、球形でなく、凹凸のある立体になっている(図7)。

デジタル・カラーでは、HSV色空間とHSL色空間がよく使われる。私はHSL色空間の方が、マンセル表色系に近くて理解しやすい。

5.デジタル・カラーで基礎知識となっている、CIExy色度図、RGB空間、sRGB空間、Adobe RGB空間、CMY空間、CMYK空間、カラーマッチング(ICM)などが系統だってかなり理解できた。


<2012.3.28.>

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