専用スライドガラスを使用した簡易免疫染色法

            広島大学医学部附属病院病理部 小川勝成
[はじめに]

 免疫組織化学的染色は1970年後半より病理検査に導入され始め、最近では新しい高感度な染色キット、新しい抗体や染色試薬が次々に各メーカーから販売されている。しかし、これらの免疫組織化学に用いる試薬、抗体等は高価である反面、免疫組織化学染色における染色操作は単純であるが、用手法では実施する技師や施設によって染色性にばらつきが見られるのが現状と思われる。以前、我々はFisher社のMicro Probe Staining Station(以下とMicro Probeと略す)とDAKO社自動免疫染色装置 ダコ テックメイト Horizon(以下 Horizonと略す)を検討する機会があった。両機種においては共通の専用スライドガラスを使用する事が大きな特徴であり、前者は半自動化、後者は自動化であり安定した染色結果が得られた。原理は使用する専用スライド2枚のスライド間にできた160μの毛細間隙に試薬を浸透させるキャピラリー方式である。その詳細についてはパンフレット等を参考にされたい。

今回、我々はこれらの専用スライドと Horizonの専用トレイを用いて染色する簡易免疫染色法(用手法)を考案したので報告する。

[使用器具と方法]

・Horizon専用スライドあるいは、Micro Probeのプローブオンスライド
・Horizon専用スライドトレイ(10分割)
 緩衝液用、一次抗体用、Envision Polymer試薬用
 各1個が必要 最低3個は必要である         

・0.2%TritonX-100加リン酸緩衝液 約20cc
(以下緩衝液と略す)
・キムタオル

 脱パラフィン操作後、組織の張り付いている面を向かい合わせにして張り合わせる。この時に重要な事は、2枚のスライドガラスで一種類の抗体を染色するので、同一抗体で染色するものを2枚で対にするか、あるいは一枚は陽性対照としてセットして対になるようにする。最初に、試薬や抗体の吸い上げを容易にするために、組織に界面活性剤を添加した緩衝液をなじませる。スライドホルダーに500μlの緩衝液を入れ、そこに張り合わせたスライドガラスを立てかけると毛細管現象で吸い上げられる。数秒後、2枚程度重ねたキムタオルにガラスを垂直に立てることにより緩衝液はキムタオルに吸収される。抗体、緩衝液の吸い上げ、吐き出しはこの操作が基本である。本法では洗浄操作が短時間で簡単にでき、且つバックグラウンドが非常にきれいである。
 一度の免疫染色については2枚につき抗血清は100〜200μl緩衝液は3ccあれば十分である。もし抗体や緩衝液が不足の場合はスライドをトレーに立てかけた状態で、トレーに追加してやれば、直ちに吸い上げられる。MW処理等においても抗体をスライド間に吸い上げ、トレーに立てかけた状態で、実施できるので乾燥の心配はなく安心である。

ENVISION法での染色手順)

1.0.3%H2O2 30min

2.蒸留水で洗浄2回

3.必要な場合、電子レンジで賦活処理 3min x 2 (or protenase K 処理 3分、洗浄)

4.緩衝液が室温に下がるまで放置

5.Primary Antibody 10min x2 (MW処理) 

**(or 室温30分〜1時間)

6.洗浄3回

7.Envision Polymer 10minx2 (MW処理)
**(or 室温30分) 

8.洗浄3回

9.DAB-H2O2 5min

*洗浄は緩衝液の吸い上げ・吐き出しが3回
**
マイクロウエーブ迅速処理装置(MI-77型)

[まとめ]

 本法を用いることにより抗体や緩衝液などの試薬が少なくてすみ、また使用する器具が少なく省スペースで安定した操作で免疫組織化学染色が可能である。

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