イベール 「ディベルティスマン」
Jacques Ibert(1890-1962) "Divertissement"
ジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール(Jacques François Antoine Ibert,1890年8月15日 - 1962年2月5日)は、パリ生まれのフランスの作曲家。しばしば彼の作風は、軽妙、洒脱、新鮮、洗練などと言った言葉で評される。
PLAY <序曲>
PLAY <行列>
PLAY <夜想曲>
PLAY <ワルツ>
PLAY <パレード>
PLAY <フィナーレ>
結婚式を前にした若者が、式の当日に麦わら帽子を取り戻そうとして思いもよらぬ事件と騒動に巻き込まれる—こんな展開の読めない「イタリアの麦藁帽子」(Un chapeau de paille d'Italie)と題されたヴォードヴィル(滑稽な題材に音楽をつけた喜劇)を書いたのは、ウジェーヌ・ラビッシュEug_ne Labiche (1815-88)というフランスの劇作家である。19世紀後半に活躍し、コメディ・フランセーズなどで1000回以上の公演があったという。「ペリション氏の旅行記」(Le Voyage de M.Perrichon:邦訳あり)などの代表作のほか170本を超える劇作品があり、現在でも上演されている。なお1927年には、この「イタリアの麦藁帽子」をもとにした無声映画が、古典フランス映画のビッグ5の1人であるルネ・クレール監督により制作されている。
本日演奏する《室内管弦楽のためのディべルティスマン》は、ジャック・イベール(1890-1962)がこのドタバタ喜劇のために作曲した劇音楽の中から6曲を選び、室内オーケストラ用の〈ディべルティスマン〉としてまとめたものである。初演は1930年11月30日、ウラディミール・ゴルシュマン指揮パリ交響楽団。
イベールは、パリに生まれパリで没した生粋のパリジャンである。父親は趣味でヴァイオリンを弾き、母親は優れたピアノの腕前を持つという恵まれた家庭環境で育った。21歳のときにパリ音楽院作曲科に進み、ここで「フランスの6人組」といわれるミヨーやオネゲルと出会ったという。
本作品はイベールが39歳(1929年)のとき、アムステルダムを旅行中に書かれた。この2年前に本格的な舞台音楽である《アンジェリック》で成功し、彼のフランス作曲家としての地位は確固たるものになっていた。そんな好調ぶりを反映してか、いたるところにパロディーを散りばめた、とにかく愉快で楽しい作品である。どんちゃん騒ぎの中核は、パーカッションとピアノ。曲を聴き、パーカッション奏者に名乗りを上げた弦楽器奏者は数知れず……。また、吹奏楽経験者なら一度は耳にしたことがあろう「寄港地」など、管楽器の曲を多く作曲しているイベールだけに、管楽器それぞれの魅力を十二分に引き出している。
1.序曲
きびきびしたリズムを持つ2/4拍子のアレグロ・ヴィーヴォ。遊園地のアトラクションような、華やかな始まりである。
2.行列
おどけたモデラート・モルト、3/4拍子の行進曲。メンデルスゾーンの《結婚行進曲》がパロディー化されている。
3.夜想曲
レント、4/4拍子の短い間奏曲。シェーンベルクを思わせるフレーズ。お祭り騒ぎのような曲にはさまれた箸休めのような曲。
4.ワルツ
アニマート・アッサイ、3/8拍子のウィンナ・ワルツがフランス風に洒落た感じで奏される。最後は軍楽隊のパロディーで閉じられる。
5.パレード
サーカスや、見世物小屋の客寄せのショウの雰囲気がよく出ている。行進曲のテンポで、ショウの行列が近づいてきて、また遠ざかっていく。
6.フィナーレ
パリのサーカスを思わせる、世俗的で陽気なムードにあふれている。曲中に登場するホイッスルは、劇に登場する警察官を表わしている。
周到に用意された笑いの種を育て上げ、実らすのは案外難しい。ついついわざとらしくなったり、楽譜に書いてあることを忠実に表現しようとして、まるで棒読みになってしまったり。自分はユーモアを解さない人間なのではないか……と悩んだりするなかで、狂言や落語、漫才など、人を笑わすことを生業としている方々への尊敬の念が深まる今日この頃である。
以前「話の前置きに『この間、面白いことがあってね…』と言ってから話し始める人がいるけれど、それは自分自身で笑いのハードルを上げているわけで、そんな前置きの後に話される内容は思ったよりも面白くない」という話を聞き、妙に納得したことがある。できればこんな解説はさておいて、曲そのものをそれぞれの解釈で楽しんでいただけたら、と思う。
(Vn. cape)
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