指揮者のいない室内オーケストラの演奏会レポート

東京アカデミーオーケストラ

第35回定期演奏会レポート

the 35th regular concert report

依田奈津子

「バッハの遺伝子」

当時「過去の人」として忘れられていたバッハの「マタイ受難曲」がメンデルスゾーンによって復活上演されたのは1829 年のこと。その3 年後に「フィンガルの洞窟」の初演され、併せて演奏会用序曲『夏の夜の夢』も上演されました。バッハが後世の作曲家に大きな影響を与え得たのはメンデルスゾーンの功績だといってよく、その遺伝子はメンデルスゾーンの周辺に濃く受け継がれ、シューマンからブラームスへと続くドイツ・ロマン派の通奏低音になりました。それは次のような事実からもうかがい知ることができます。
ピアノの練習のし過ぎで右手を傷めたクララ・シューマンの元に、ある日ブラームスから一冊の楽譜が届いた。左手だけで弾くように編曲したバッハの「シャコンヌ」である。ブラームスはバッハのカンタータ「主よ、われ汝を仰ぎ望む」のシャコンヌ楽章を第4 交響曲の終曲に用いたほどバッハに傾倒していた。原曲は厳密にはパッサカリア形式なのだが、ブラームス本人はシャコンヌと呼ぶのを好んだらしい。そのクララの夫、ロベルト・シューマンもまたバッハを徹底的に研究し、シャコンヌにピアノ伴奏をつけた。バッハの作ったヴァイオリンパートには手をつけずピアノ伴奏を追加したのだが、そもそもこのシャコンヌを編曲しようという試みは、メンデルスゾーンがピアノ伴奏をつけたことに端を発するのである。メンデルスゾーンとシューマンは盟友といってよい仲であり、本日演奏する交響曲第2 番はメンデルスゾーンの指揮により、バッハが活躍したライプツィヒで初演されている。なおシューマンによるシャコンヌの編曲はその6 年後であった。
シャコンヌを巡りバッハの遺伝子がどう受け継がれたかロマン派音楽の謎をひもとく鍵の一つが今日のプログラムから聞こえるような演奏ができれば幸いでです。




ロビーコンサート

Franz Josef Haydn "Divertimento In b Flat Major, Hob 2:24" etc.

メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」

Mendelssohn Overture "The Fingal's Cave(Die Hebriden)"

バッハ「シャコンヌ」

J.S.Bach Chaconne for String (from Partita In D, BWV 1004)

シューマン「交響曲第2番」

Robert A.Schumann Symphony No.2 C-major Op.61


2009 5/24(日) 14:45開場 15:30開演
Philia hall(フィリアホール)

林昌英

住吉こずえ