「空率」

 ラケットを買いに行った。「空率」とは関係がないが、きっかけがそれだったの
でそこから書くことにする。
 テニスラケットを買いに御茶ノ水まで行った。ラケットがどこに売っているかさ
え見当がつかないくらい縁遠いスポーツをするために、なんでもありそうな御茶ノ
水までラケットを買いに行った。ラケットを買うとガットも買わないといけない。
ガット張りに時間がかかることは予想していたため時間つぶし用に本を2冊持って
行った。よく分からないまま面の広い標準的なラケットを購入した。ガット完了ま
で1:45かかるというのには少々驚いた。しかし、本も読み進められると思い、
テニスラケットを購入した満足感と共にマクドナルドへと直行した。

1:45なのでダブルチーズバーガーバリューセットLLを頼んだ。普段はMMで
もちょっとポテトが多い気がしているがなにせ1:45だから。外が見える窓際の
席に落ち着き本を、読みはじめ、Lポテトを食べた。

「空率って言うの。空がたくさん見れるところに住みたいと思わない。」

本の世界に入り込んでいるはずなのに、そんな言葉だけが頭に飛び込んできた。
日ごろから私も空については考えることがあった。現在住んでいるところは駅前で、
視界に入るものと言えば住宅や商店ばかりだ。勤務先ではビルばかり。
日常ほとんど空を見ることがない。そんな生活が続いていると、ふとした時に空の
青さに驚くことがある。実家に帰って2階の部屋でくつろいでいると窓一面が青空
だということに驚いた。青空に驚いたというより、青空を「いいもんだなぁ」と認
識した自分に驚いた。常識的に「自然っていいもんだなぁ」という概念は既成概念
となっているのだが、改めて「青空っていいもんだなぁ」なんて気持ちになるとは
思ってもみなかった。それ以来、空が見える風景が今まで以上に好きになった。

都会でも場所によっては空を見ることはできる。真上を向けば少なからず空を見る
ことができる。しかし環境によってはかなり故意にそうしなければ空をみる機会が
少ない現実もある。きっと「青空っていいもんだなぁ」って気付いていない人もい
るはずである。既成概念としてのよさではなく、実際の体験としての感覚を味わっ
ていない人もいるはずである。

「空率」という言葉を発した女子高生は、きっと、そんな空の青さをスバラシイと
実際に思ったに違いない。


<ほんだとおるお勧め空鑑賞>
空をスバラシイと思ったのには2段階あった。ひとつ目は先に書いた実家の部屋か
らみた空。その空のイメージを更にアップさせたのが出張先のことだった。特別な
出張先ではない。以下の要素を備えた場所から改めて空を意識すれば空のイメージ
は更にアップされるはずである。
 ・空率が大きいこと
  遠くに地平線が見えるような場所がよい
 ・なにも音がないところ
  車の通りなどがなく、自発的に何かをしなければ何も聞こえるものがないよう
  なところ
 ・季節は春か秋かな
  そこにいて心地よい気温が望ましい
2番目がポイントである。
音が聞こえないとなんだか時間の流れがゆっくりになった気分になる。実際に試し
てみると実感するはずである。そんな時間の流れがゆっくりな中でみる空がまた格別
によかったりする。電車の窓からみえる空もいいものだ。もちろん通勤電車ではだめだ。

季節が秋だからだろうか、青空が一段とスバラシイ。
この文章を目にとめた方、あなたの空率はどれくらいでしょうか。
空率を意識したとたんに青空をスバラシイなんて再認識するかもしれません。

2001.10.27:ほんだ とおる

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