茶の湯には「池田炭」


 炭の切り口が菊の花の形をしていることから「菊炭」ともよばれているこの炭は、 火つきが良く火もちも良く灰は白く、はねることなく立ち消えしにくい極上の切り炭として、 古くから茶席などで用いるために現在の大阪府池田市から各地へ出荷されていました。

生産地よりも集散地名が通称になった炭で「茶窓簡話」(1803年)には 「池田炭といえども池田にて焼くにあらず、摂津多田荘一庫(ひとくら) という所にて焼き諸方へ送る(略)一庫炭なり」と 記されているそうです。

生産地は現在の川西市一庫を中心に猪名川町から大阪府能勢町にかけての山間部で、クヌギの木をここの炭焼きがまで焼き 街道を通って当時の北摂の商業の中心として栄えていた「池田」へ運ばれていました。

このあたりは炭の原木となるクヌギの林や炭焼きがまを作るための良質の粘土に恵まれ、 また冬の厳しい寒さも炭焼きに適していたものと思われます。

炭焼きは、まずクヌギの木を炭焼きがまに入れ約50時間かけて木を焼き煙が紫色に変わると、 かま口の穴を閉じてその後4昼夜蒸し焼きにするそうです。

昭和の初期、年間生産量1900トンといわれていたそうですが、時代が流れ今では炭を焼く煙を見ることも殆ど出来なくなりました。

冬の日「日本一の里山」がキーワードになっている「一庫ダム」から「能勢町」のあたりをドライブしていると、運が良ければ炭焼きがまから立ち昇る煙に出会えるかもしれません。

   池田から炭くれし春のさむさかな
                  蕪村