現=現代文学的先鋭性または高度の文学性 物=物語としての面白さ 生=風俗・歴史・生活を知る 時=話題性・時代的意義・映画化の有無等 F=女性登場人物の強さ・個性 (おまけ) (総合ランクは「現」の比重を大きめに考えて(そしてもちろんいささか強引に)並べたものです) 中国現代文学 現 物 生 時 F 原著/訳出年 1.「神樹」 ◎ ◎ ◎ 鄭義 朝日新聞社 96/99 世紀の傑作。「同時代ゲーム」×「失われた足跡」×「10月1日では遅すぎる」×「世界終末戦争」×「吉里吉里人」×「もののけ姫」×「百年の孤独」×・・ 身も蓋もない物語の連続に激烈なクライマックス、涙と癒しの結末。凄いよ。 2.「豊乳肥臀」 ◎ ◎ ◎ ◎ 莫言 平凡社 95/99 「百年の孤独」「真夜中の子供たち」「精霊たちの家」…等々と続くマジック大年代記文学の紅楼夢民族版にして20世紀世界文学とどめの一発。今世紀文学への橋渡し。 3.「酒国」 ◎ ◎ 莫言 岩波書店 92/96 マジック・メタ・パロ・グロ・ギャグ。現代文学技法の大酒宴。 4.「突囲表演」 ◎ ○ 残雪 文藝春秋 88/97 爆笑の最前衛文学。世界注目の先鋭女流作家による現代中華版「ピンチランナー調書」。 5.「赤い高梁」 ◎ ◎ ○ ◎ ○ 莫言 徳間書店 88/90 史上最強のマジカル色覚描写&錯時化センス。施耐庵のストーリーテリングとフロベールの描写力を武器にして魔術的リアリズムで描き切る日中戦争の「キャッチ=22」。 6.「纏足」 ○ ◎ ○ ◎ 馮驥才 小学館文庫 86/88 絶品のユーモア文学。文化とは何ぞや。中国の井上ひさし。訳文も◎。 7.「北京無頼」 ○ ○ ○ ○ 王朔 学研 -89/95 当世北京風俗事情&辛口パンク・メタフィクション。 8.「古井戸」 ○ ○ ○ ○ ○ 鄭義 JICC出版局 85/90 モダンチャイニーズ・マジックリアリズムのはしり。 9.「廃都」 ○ ○ ○ ◎ ◎ 賈平凹 中央公論社 93/96 現代中国版デカダン−のほほん紅楼夢。 10.「ワイルド・スワン」 ◎ ◎ ◎ ◎ 張戎 講談社文庫 91/93 言わずもがなの名ノンフィク。 11.「白鹿原」 ○ ○ ○ ○ 陳忠実 中央公論社 93/96 マジック含みの年代記大作の一つ。莫言等に比べるとややプレーンな趣。 12.「貴門胤裔」 ○ ○ ○ ○ ○ 葉広今 中央公論社 99/02 清朝貴族の末裔の大家族の14人兄弟姉妹の20世紀を末妹の目を通して描く全9章の“家族の肖像”系自伝的オムニバス長編。各編とも比較的高水準。 13.「猫の事」 ◎ ○ ○ ○ 曽明了 おうふう /96 女性作家によるマジック・象徴主義系中編集。残雪よりはわかりやすい。^^;長編があれば訳出に期待。 14.「風馬の耀き」 ◎ ◎ ○ 扎西達娃 JICC出版局 -88/91 本場チベット・リーインカーネーション・マジック。 15.「小説大上海」 ○ ○ ◎ ○ 兪天白 日本経済新聞社 88/95 現代上海・路地裏風俗。ユリシーズ調めぞん一刻。タイトルから受ける印象より全然文学的かつ面白い。続きも訳すべし。 16.「芙蓉鎮」 ○ ◎ ○ ○ 古華 徳間書店 81/87 文革を描いた名画の原作。「豚になっても生き抜け」。しかしどこかのほほんともしているところがかえって救いになっている名作。 17.「ある男の聖書」 ◎ ◎ ○ 高行健 集英社 99/01 18.「シュウシュウの季節」 ○ ○ ○ 嚴歌苓 角川文庫 /99 新進女性作家の短編集。ややシビア系。少女的なものと母性的なものの錯綜した共存性。 19.「時間を渡る鳥たち」 ◎ 格非 新潮社 -92/97 象徴主義系前衛寓話中編集。村上春樹の実験的なものをより抽象化した感じ。 20.「傾城の恋」 ○ ○ ○ 張愛玲 平凡社 -45/95 戦中戦後に活躍の超著名女流作家の中編3作。最初の「金鎖記」は確かに名作。 21.「山の郵便配達」 ○ ◎ ◎ 彭見明 集英社 -97/01 農村描画ものを中心とした短編6編。表題作はほのぼの系正当派リアリズムの鏡。他も良作。 22.「上海ビート」 ○ ○ ○ 韓寒 サンマーク出版 00/02 17歳の青年作家による長編学園コメディ。上海の中学&高校生活をやや辛辣に描いて十分に読ませる。同世代の中高生が読んでみる現代中国ものなどとしては少なくとも最適。 23.「サンサン」 ○ ○ ○ 曹文軒 てらいんく 98/02 文革前の農村を舞台にした悪タレ少年大活躍系の児童文学。各々がほぼ独立した9編のオムニバス。叙情・ペーソス系の話も多く、全体に良質で、ジュブナイルとしては大作だが読む価値は十分。 24.「待ち暮らし」 ○ ○ ○ ○ ○ 金哈 早川書房 99/00 在米作家による文革期以降を舞台とした不倫騒動記。英語で書かれ、米で多大な評価。真面目なリアリズムに奇矯に混入するギャグの感覚は特筆的。コミカル・リアリズム。 25.「砕けた瓦」 ○ ○ ○ ○ 趙本夫 勉誠出版 -94?/02 農村を舞台にした80年代のユーモア系3編と90年代のシリアス系3編。全作が水準以上の良作。表題作は「赤い高梁」調とさえいえる広義マジック系の強烈作。 26.「上海の風」 ○ ◎ ○ ○ 葉[女亭]行共同通信社 97/00 カナダに亡命した女性による文革とその前後を描いたノンフィクション。救いのない状況の描写の迫真性では同系統のもので一番かも知れない。 27.「活きる」 ○ ○ ○ 余華 角川書店 93/02 革命から現在までを生き抜いた一農民の昔語り。講談調でさえあり、すらすらと面白く読め、味もいい。中国近代史物・文革傷痕物の最も平易な入門編としても良。 28.「上海ベイビー」 ○ ○ ○ ○ 衛慧 文春文庫 99/01 メタフィク含みのパンク小説。心境描写等の一貫性がやや低めで、最終的なメタフィク処理が決まればそれでもよかったと思えるが… 29.「チャンピオン」 ○ ○ 阿城 徳間書店 -85/89 将棋・樵・教師、市井の各名人の物語を下放体験に交えて描いた中編3作。 30.「車椅子の上の夢」 ○ ○ ○ 張海迪 新潮社 91/95 身障者の女性の自伝的小説。内省的な少女文学に文革傷痕文学の混じった前半と、「二十四の瞳」調の女先生化してノリノリになる後半。 31.「秋の葬送」 ○ ○ ○ 梁暁声 新潮社 -90/97 文芸系中国映画の良質な脚本風。笑いあり。 32.「大草原に還る日」 ○ ○ ○ ◎ 王興東他 NHK出版 92?/92 ほぼ同時期に、女性を主人公として当地側から描かれた中国版「大地の子」。こちらもなかなかの盛り上がり。 33.「棺を蓋いて」 ○ ◎ ○ 陳建功 早大出版部 -81/93 短編4。寧瀛映画調?北京純情ユーモア物語集。 34.「北方の河」 ○ ○ ○ 張承志 星雲社 84/97 北の五大河への思いを背景に、回族の作家によって北京を舞台に描かれた青春小説。 35.「砂漠の物語」 ○ ◎ 郭雪波 福音館書店 -96?/01 36.「陰陽八卦」 ○ ○ ○ 馮驥才 亜紀書房 88/92 相変わらず冴えるギャグ。ラブレー調の事物や語彙の執拗な列挙も良。 37.「土門」 ○ 賈平凹 中央公論社 96/97 38.「風呂」 ○ ○ ○ 楊絳 みすず書房 88/92 建国初期の知識階級層の生活と意見。端正なリアリズム。最終章、三反の糾弾運動で右往左往する登場人物連の描写が冴える。 39.「君には他の選択はない」 ○ ○ ○ 劉策拉 新潮社 -86/97 中国初の?学園ラブコメ。 40.「バルザックと 小さな中国のお針子」 ○ ○ ○ 戴思杰 早川書房 00/02 フランス在住の作家による文革期の下放青年たちを主人公とした物語。悪くはないものの、話の流れ的にも文体的にも、最近の中国文学全体はもちろん、文革傷痕物としてもやや小品という感じ。 41.「もうひとりの孫悟空」 ○ 李馮 中央公論社 -97/01 孫悟空や武松が出てきて自身の行動を逡巡したりぼやいたり、強度のパスティーシュ系メタフィク短編集。話の展開等が全体にややプレーンだが、手法的には中国若手版の清水義範という感じで買い。 42.「消えた万元戸」 ○ ○ 陸文夫 めこん -83/92 軽いユーモア入りのリアリズム4短編。文革期の無頼漢を描いた「下放農村版の水滸伝」みたいな作が面白い。 ---------短編ベスト3-------------- 「五人の少女と一本の縄」 ○ ◎ ○ ○ 葉蔚林 河出文庫/中国怪談集 「女郎遊び」 ○ ○ 莫言 岩波書店/世界文学のフロンティア4 「秋の水」 ◎ ○ ○ 莫言 白水社Uブックス/中国幻想小説傑作集 台湾現代文学 現 物 生 時 F 1.「さよなら・再見」 ○ ○ ◎ ○ 黄春明 めこん -73/79 中編3編。表題作は古典。 2.「古都」 ◎ ◎ ○ ○ 朱天心 国書刊行会 -96/00 中短5編。語りの時空間と古典の引用が錯綜する表題作は傑作、広義メタフィクションの最終作なども秀作。 3.「宋王之印」 ○ ◎ ○ ○ 国江春菁 慶友社 /02 老台湾人作家が過去に日本語で書いた15短編。ほぼ全てが秀作といえる特筆的・傑出的作品集。笑い入りの作も多。骨董の真贋を巡る表題作のオチなど、ほとんど90年代のポストモダン文学のセンス。 4.「迷いの園」 ◎ ○ ○ ○ 李昂 国書刊行会 91/99 現代台湾版・大観園の没落。絶品の景観描写。 5.「台北ストーリー」 ○ ○ ○ 白先勇他 国書刊行会 -90/99 7作家による秀作短編集。SF調の3編(叙情もの・「族長の秋」風・ギャグもの)が秀逸。パンク味の作品多く、台湾−中華文化のポストモダンセンスがよくわかる。 6.「安安の夏休み」 ○ ○ ○ ○ ○ 朱天文 筑摩書房 -90/92 侯孝賢映画の女性脚本家。ほのぼの児童文学から台北パンクまで。 7.「夫殺し」 ○ ○ ○ ○ ○ 李昂 宝島社 82/93 8.「城南旧時」 ○ ○ ○ 林海音 新潮社 60/97 北京で過ごした少女期の思い出。 9.「寒玉楼」 ◎ ○ ○ 瓊瑤 文藝春秋 90/93 清末・母ものハーレクインロマンス。橋田壽賀子+氷室冴子? (確かに)わかっちゃいるけどやめられなくなる(ノリのよさ)。。 10.「非情の山地」 ◎ ○ 呉錦発他 田畑書店 /92 台湾少数民族に関する小説選。漢民族系作家によって外部的に書かれたものが多だが、少数民族文化の(音楽のみならぬ)豊かさを知るには良。 11.「カバランの少年」 ○ ○ 李潼 てらいんく 92/98 少数民族の血をひく現代の少年が二百年前にタイムスリップし、その先祖にあたる少年少女と交流する。巫女のおばさんたちによって穏やかに仕切られる南国の生活風景は、いわゆる「オバァ」な池上永一ワールドにも近接的。 12.「客家の女たち」 ○ ○ 李喬他 国書刊行会 -97/02 台湾内の客家系の作家による作品のうち女性が中心的に描かれている作品9編。家事労働のサヴァン症候群?みたいな女性が巻き起こす騒動を描いた女性作家による作が小気味良い。 13.「鹿港からきた男」 ◎ ○ 黄春明他 国書刊行会 -87/01 70年代前後の郷土文学の中短編6。阿Qをちょっと匂わせる?黄春明の巻頭の作、「東京物語」的展開になるのかな、などと一瞬思わせる王択の作など。 14.「猟女犯」 ◎ ○ 陳千武 洛西書院 -84/00 大戦中の東ティモールとインドネシアで台湾志願兵が見たものは。台湾版「人間の條件」…というにはシンプル版だが、特異な立場から描いた戦史という点では貴重。 15.「我的故事」 ○ ○ ○ ○ 瓊瑤 文藝春秋 89/93 大流行恋愛小説作家その激動人生の自伝。 16.「恋恋神話」 ○ 瓊瑤 早稲田出版 80/96 台北版赤いシリーズ。 韓国現代文学 現 物 生 時 F 1.「皇帝のために」 ○ ○ ◎ 李文烈 講談社 82/99 セルバンテス&近代韓国史&中朝文化史。思想・権力・制度とは何か。韓国の「吉里吉里人」ないし「マシアス・ギリの失脚」。名作。 2.「太白山脈」 ○ ○ ◎ ◎ ○ 趙廷來 集英社 89/00 南のパルチザンを主軸に描く朝鮮戦争前&全史。膨大な数の人物と挿話の細分的・散逸系的語りの構造はしかし「水滸伝」「三国志」的ともいえ、その点もひとつアジア的にして現代文学的といえるかも。 3.「ひとの子」 ◎ ○ ○ 李文烈 集英社 79/96 殺された神学生が書き残した、イエスの論争者となるユダヤ青年の古代宗教総覧的な彷徨記小説を読んでいく刑事。秀作メタ(フィク)・ミステリー。韓国版「カラマーゾフの兄弟」「薔薇の名前」「百億の昼と千億の夜」。作中の議論は宗教直結というより政治思想問題に置換すると読み解きやすい感も。 4.「LIES/嘘」 ○ ○ ○ 蒋正一 講談社 96/01 スラップスティックな諧謔満載の超高度パロディ小説。繰り出されるギャグのセンスは一級で、信頼できない語り手、広義メタフィクション、テクストの浮遊化技法も効いている第一水準の現代文学。 5.「金色の鯉の夢」 ◎ ○ ○ 呉貞姫 段々社 -94/97 オモニ型サンボリズム。前衛奥様小説。 6.「コリアン・サラリーマン の秘密の生活」 ◎ ○ ○ ○ 蒋正一 講談社 94/02 リフレイン&ミニマル化された「信頼できない語り手」手法。アーバン−ギャルド・サラリーマン小説。 7.「シックス・ストーリーズ」○ ○ ○ ○ ○ 短編集 集英社 /02 中堅・若手女性作家の短編6。売れっ子のヨガ教師兼画家と初老の元政治犯の来し方を対比させた孔枝泳の「人間に対する礼儀」は傑作。他もほぼ全作が水準以上の良作。 8.「モンシル姉さん」 ◎ ○ ○ ◎ 権正生 てらいんく 84/00 幼い妹を連れ戦乱の韓半島を生き抜く少女。今を生きる浪速節。韓国版おしん。ウルウルものであります。 9.「ホワイト・バッジ」 ○ ○ ◎ ○ 安正孝 光文社 89/93 韓国軍派遣兵が見たベトナム地獄絵図。文体的質感も良。 10.「われらの歪んだ英雄」 ○ ◎ ○ 李文烈 情報センター出版局 -87/92 オール芥川賞レベルの3中編。 11.「サイの角のように ひとりで行け」 ○ ○ ○ ○ ○ 孔枝泳 新幹社 93/98 思想性(この場合はフェミニズム)の強い小説としては最大限に多面的な視点で書かれ、物語の運びなども上質。 12.「黄昏の家」 ○ ○ ○ ○ 尹興吉 東京新聞 -79/80 5短編。少年の目を通して見た朝鮮戦争とその後の韓国社会。戦乱によって錯乱した女とその養子となった孤児を描く「虹はいつ掛かるか」は傑作。最後の自伝も良。 13.「君に僕を送る」 ○ ○ 蒋正一 東京図書出版会 92?/01 14.「掟」 ○ ○ ○ 朴範信 角川書店 89/89 長老支配の続く因業な村の改革を行う宣教師の真の意図。権力の内在的意味の洞察と寓話化のセンスにかけては世界一の韓国文学のこれまた面目躍如の一作。 15.「鎌」 ○ ○ ○ 尹興吉 角川書店 89/89 ちょっと横溝正史風のおどろなサスペンスで読ませる、「太白山脈」後日談とも言える分断文学にして恨文学の佳作。 16.「JSA」 ○ ○ ◎ 朴商延 文春文庫 97/01 クライマックス部分、(小説なので当然ながら)映画よりも多重に意味づけがなされ、説得力が高まっている。プロットや文章に幾分の晦渋さはあるが総体的には良作。 17.「韓国の現代文学5」 ○ ○ ○ 短編集 柏書房 /94 22作品。戦後世代の李仁星・崔仁碩・高元政・趙星基・金采原らの実験小説(前2作は笑い入り)が秀逸。鄭然喜女史のギャグ小説も冴え渡る。 18.「アダムが目覚めるとき」 ○ ○ 蒋正一 新潮社 90/92 90年代韓国版「限りなく透明に近いノルウェイのクリスタル…」 若書き的な触感もあるが、現代文化論のからめ方など必ずしも悪くない。 19.「或る失踪」 ○ ○ 申京淑 紀伊国屋書店 85?-/97 中短編2作。(より静謐で内省的な)韓国の吉本ばなな。秀作長編などがあるようなので訳出に期待。 20.「ソウル・スケッチブック」 ◎ ○ ○ 梁貴子 木犀社 93/97 エッセイ風ショートショート集。韓国のさくらももこ。しかしてそこはコリアン小姐、ギャクより人情話のウェイトやや高し。 21.「風の丘を越えて」 ○ ○ ○ ○ 李清俊 ハヤカワ文庫 /94 映画がまた世界的傑作。 22.「あの夏の鳳仙花」 ◎ ◎ ◎ 崔淑烈 めるくまーる 91/95 幼い弟を連れ戦乱の38度線を越境する少女。秀作。 23.「カシコギ」 ○ ◎ 趙昌仁 サンマーク出版 00/02 いわゆる「難病もの」ではあるものの、さすがに話題作ということであり、少なくとも当たり前過ぎると思える展開にはならない。韓国物オハコの深情ノリ等も多々感じられ、読む価値は有。 24.「順伊おばさん」 ◎ ◎ 玄基榮 新幹社 -84/01 済州島事件とその生存者の以後の心境等をシンクロさせて描いた中短4編。記録文学としての価値は非常に強。 25.「イロボリン・ノー」 ○ ○ ○ ○ 金潤姫 乃木坂出版 86/95 大貞女大献身型超純愛ノンフィクション。元々の深情な国民性に作者の気質、一人称性の強い語りが相まって、韓国物とはいえやや濃すぎ(客体性が薄口)の感もあるが、情感の極度の象徴化として読むならこれもまたいいかも。 26.「現代韓国短編選」 ○ ○ 短編集 岩波書店 -99/02 80年代6作品に90年代7作品。申京淑の広義メタフィク、孔善玉のドタバタ、梁貴子の代表作の一部など。 27.「南のひと北のひと」 ◎ 李浩哲 新潮社 96/00 朝鮮戦争の最中に北の学徒兵が出合った様々な人物像。 28.「アボジ」 ○ ○ キム・ジョンヒョン 双葉社 96/98 29.「塔」 ○ 韓勝源 角川書店 89/89 朝鮮戦争期の左右対立を主因として複雑にもつれた一族の愛憎。筆致・展開は比較的地味。 30.「韓国の現代文学4」 ○ 中編集 柏書房 /92 中編10編。極めてオーソドックスな作がほとんどだが、尹興吉のコメディと金香淑の作はさすがになかなか。 中華武侠小説 1.「笑傲江湖」 金庸 徳間書店 67/98 圧倒的なノリのよさ。今どきのエンターテインメントの展開の妙味や道具立てのセンスを30年前の香港で楽々と。全7巻があっという間。 2.「神雕剣侠」 金庸 徳間書店 59/00 老頑童のキャラが至純、もとえ、ロミオ&ジュリエット調、賈宝玉&林黛玉調、ルパン&クラリス調、・・・山ほど混じって怒濤のごとく突き進む、大傑作武侠ロマン(ス)。細部の道具立ても含め、映像化したとき最も映えそうな一編。 3.「多情剣客無情剣」 古龍 角川書店 70/02 4.「書剣恩仇録」 金庸 徳間書店 55/97 2巻の月夜の湖畔での闘いの描写と来た日にはもうほとんど漢詩の世界。 5.「射雕英雄伝」 金庸 徳間書店 58/99 6.「辺城浪子」 古龍 小学館文庫 76/99 7.「連城訣」 金庸 徳間書店 63/00 絶望と再生のストレート・ストーリー。主人公があくまで受け身なのがかえってよく、それがこれまでで最もスマートなラストシーンに効いている。 8.「倚天屠龍記」 金庸 徳間書店 57/01 9.「雪山飛狐」 金庸 徳間書店 57/99 特異的な終わり方がかえって気に入り順位が低くない・・というわけでもないのですが。^^; 10.「越女剣」 金庸 徳間書店 -61/01 中短3編。どれも悪くないが、特に真ん中の傑作ドタバタ武侠コメディが◎。 11.「侠客行」 金庸 徳間書店 65/97 12.「碧血剣」 金庸 徳間書店 56/97 13.「陸小鳳伝奇」 古龍 小学館文庫 76/99 14.「飛狐外伝」 金庸 徳間書店 60/01 15.「楚留香・蝙蝠伝奇」 古龍 小学館文庫 71/99 (アジア系欧米人作家) 1.「リス 長編おとぎ話」 アナトーリイ・キム 群像社 84/00 2.「ジョイ・ラック・クラブ」 エィミ・タン 角川文庫 89/90 3.「私は生まれる見知らぬ大地で」 エィミ・タン 角川書店 95/97 4.「最後の場所で」 チャンネ・リー 新潮社 99/02 5.「キッチン・ゴッズ・ワイフ」 エィミ・タン 角川文庫 91/92 6.「ドナルド・ダックの夢」 フランク・チン 早川書房 91/94 7.「チャイナタウンの女」 デニス・チョン 文春文庫 94/98 8.「骨」 フェイ・ミエン・イン 文藝春秋 93/97 9.「紅の華網」 リサ・シー 角川文庫 97/98 中国・台湾・韓国の現代文学
東アジアの現代文学
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