Rosalind Pollack Petchesky を読む

2005年8月16日

 昨年1月、ムンバイで開かれた世界社会フォーラムに参加した稲場さんが、Rosalind Petcheskyのスピーチを聴いて感動していました。

 彼が何人かの人に問い合わせたところ、女性と健康ネットワークの兵藤さんが" Negotiating Reproductive Rights" reprint 2001(first 1998)という仕事を教えてくれた、という話を聞いて、この本と" Global Prescriptions "2003、"ABORTION AND WOMAN'S CHOICE -The State, Sexuality, & Reproductive Freedom "1990の3点を入手して読み始めました。

 " Negotiating Reproductive Rights"は、ブラジル・エジプト・メキシコ・マレーシア・ナイジェリア・フィリピンそして米国のさまざまな社会団体に属する貧困層女性への聞き取りをもとにまとめられたレポートです。ブラジル、メキシコそして米国において卵管結紮(けつさつ)という不妊手術や、ホルモン剤の埋め込みといった避妊法が多用されている状況の報告は衝撃的でした。この不妊・避妊手術の横行は、ブラジル東北部の貧困層女性たちの中での平均出産数が6を超える、中には16人の子どもを産んだ人と語っている人もいるという状況への「回答」だったのです。ところが、不妊・避妊手術ではHIV感染が防げない、という中で、ブラジルの都市部の貧困層女性たちの中で、娘たちに向かって性を語る、HIV感染と望まない妊娠を防ぐ避妊を教える、という取り組みが広がっている、というのが、1990年代半ばの変革の現れだったというのです。現在のブラジルのエイズ政策の成功を語る際には、当然にもこのレポートの中で明らかにされた取り組みの広がりをも視野に入れていく必要があります。

 " Global Prescriptions"は、1990年代の国連・国際機関の政策模索と女性運動の関係を実証的に紹介し、成果と課題をコンパクトに解説したこの本には、現在のHIV/AIDSをめぐる動きの中でゲイ・リベレーション運動の切り開いてきた地平と併せて踏まえておくべき女性運動の到達点が鮮明に記されています。
第3章は、HIV/AIDSがなぜ女性の問題となってきたのか、ますますなっていくのか、について論じており、グローバル・エイズ問題に関心ある人がちにとっては見逃すことのできない指摘をいくつもしています。
また、第4章では、世界銀行の模索(昨年、世銀は障害者インターナショナルの元代表を顧問として迎えている)を他の国際金融機関(IMFほか)を比較しながら解説しています。

 "ABORTION AND WOMAN'S CHOICE -The State, Sexuality, & Reproductive Freedom"(Northeastern University Press)は、現在、国際協力、グローバル・エイズ問題への対応の領域で、改めて大きな課題となっているリプロダクティブ・ライツについて理解を深め、具体的に考えていく上で、何度も読み返していく必要がある本の一つなのだと思います。
現代アメリカ社会の思想の根底にある「自律した個人」=カント的思考・論理をどう乗り越えていくのかという考察を読みながら、「私的所有論」で立岩さんが論じていたことを思い浮かべました。


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アマゾンのアソシエイツになりました。
昨年、亡くなったスティーブン・J・グールドの本を買ってもらいたいと思っています。
紹介文をボチボチ書いていくつもりです。まずは机の側にころがっていた「THE MISMEASURE of MAN」のことを書きます。



by 斉藤龍一郎

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