記憶に残る本

2005年6月28日作成
10月23日
2006年11月19日
2008年11月25日
2010年12月11日
2015年6月16日更新

昨夜、中沢新一著『僕の叔父さん 網野善彦』(集英社新書)を読んでいて、いろんな本が頭をよぎりました。思い出の本を紹介します。

蒙古襲来 転換する社会
網野善彦著 小学館文庫  ¥1,050 (税込)

小学館版『日本の歴史』の一冊です。僕が大学に入った年(1974年)に出版されていますが、読んだのはずいぶん後になってからです。

この著者の本で最初に読んだのは、岩波新書の「日本中世の民衆像」でした。綾瀬駅構内で開かれていた古本市で買った覚えがあります。視覚的に印象に残っているのは、朝日新聞社の週刊百科「日本の歴史」に載った租庸調の内容一覧図です。瀬戸内海の島々で、米○○石が実際には塩で納入されているという話は、そのころ知っていたような気がします。それでも、美濃の主要な租税は絹糸・絹織物であったというのは、目から鱗の口です。

能登半島の時国家調査を基にした、無石百姓が、実は大商人という話にも、記録に残された表現や数字を読む際に気をつけなくてはならないのだ、と感じたことを覚えています。


織田・豊臣政権
藤木久志著 小学館

『蒙古襲来』と同じ小学館版『日本の歴史』シリーズの一冊です。織田信長と一向一揆を対比させた展開がすごく印象に残っています。少し筆が走りすぎたのということでしょうか、文庫化されていないので、古本を入手するしかありません。

文庫化されました!
2005年10月10日付けで、講談社学術文庫から「天下統一と朝鮮侵略 − 織田・豊臣政権の実像」(467p、1350円)とタイトルを変えて出版されました。「学術文庫版のまえがき」にある北島万次著『豊臣政権の朝鮮侵略』(吉川弘文館、アマゾンでは品切れ)、神田千里著『信長と石山合戦 中世の信仰と一揆』(吉川弘文館)も面白そうです。

藤木さんの最新作「刀狩り 武器を封印した民衆」については、読書ノートに書きました。

高校3年生の秋ぐらいから親戚の家の本棚に並んでいた中央公論社の「日本の歴史」(たしか全26巻)を読み始め、大学に入ってから、友人から借りて読み終えた記憶があります。最後の巻の著者が蝋山政道だったと思うのですが、記憶が不確かです。中公文庫にもなっており、佐藤進一著「南北朝の動乱』などは、名著として有名です。


期待と回想 上巻下巻
鶴見俊輔著 晶文社 各 ¥2,415 (税込)

友達の家からの帰り道、駅前の本屋で手に取ってしまったら止まらなくなって、上下を買って帰りました。

14歳で相手して世話してくれる女性をあてがわれて、なおかつ米国に追いやられたという体験を読みながら、友達が英国で1年余り暮らした際に出くわしたパブリック・スクールに日本から追いやられた少年たちの話を思い出してしまいました。


東南アジアを知る −私の方法−
鶴見良行著 岩波新書 819円(税込み)

友達の本棚で見かけて、一気読みしました。2度か3度、読んだ覚えがありますが、改めてなるほどと思いながら読みました。
友達が、上智大学の鶴見さんのゼミに参加した時、鶴見さんは缶ビールを4缶持って現れたそうです。『ナマコの眼』も印象に残っています。


青年の環
野間宏著

僕が持っているのは、大学2年の時に買った河出書房版の軽装版です。最後に落丁のあった第2巻の交換本が待ち遠しかったことを覚えています。岩波文庫版も古本しかないでしょうね。


現代の古典解析
森毅著 日本評論社

線形代数は指定された教科書があったので、それ以外の本をほとんど見ていません。解析は、参考書と授業の進め方が余りに違うので、生協や図書館でいろんな教科書を見比べてしまいました。で、米国の教科書の翻訳本と例題解説が充実した演習書を買った覚えがあります。その後、森毅の本をいろいろと読むようになって、『現代の古典解析』も買いました。2度、3度と眺めたので、手元にある本はかなり痛んでいます。


THE DISPOSSESSED
Ursula Le Guin

大学3年生の頃、今はなき銀座のイエナで買ったペーパーバックを、4年ぐらい後に読み、すごくびっくりしたことを覚えています。この文体で英文が書けるようになりたいと、書き出しから10p位を書き写したりもしました。
同じ著者の「ゲド戦記」は有名ですが、読んだような読んでいないような、記憶にありません。


男ふたり暮らし―ぼくのゲイ・プライド宣言
伊藤悟著 太郎次郎社

むかしむかし、一緒に自治会選挙やって以来の仲の友人(といっても、大学を出てからはずいぶん長いこと会わなかった)の名前と本のタイトルを、近くの本屋で見つけた時はびっくりした。で買って読んで、手紙を書いた。その後、別の本の出版記念パーティーで20年ぶりくらいに顔を合わせた。

【2006年11月19日追記】先々週、何年かぶりに伊藤さんと電話で話し、パートナーの簗瀬君に仕事をお願いすることになった。で、mixiに「転機」という短文を書いたら、伊藤さんのことを直接知っている友人が二人いることがわかった。


被差別部落の青春
角岡 伸彦著 講談社文庫 ¥600 (税込)

「週刊金曜日」に書評を書いたことがあります。「食肉産業は、これから伸びる」とベンチャー企業を興した人を紹介しているところが印象に残っています。


第四間氷期
安部公房著 新潮文庫 540円(税込)

高校2年の終わりだったか、3年になったばかりの頃だったかに読みました。僕の行った高校は、高3になる時に文系・理系を選択する仕組みで、僕は法学部志望の文系選択をしたのですが、この小説を読んで、人間を人間と証だてるのは何なのか確信を持ちたいとの思いが強くなり、大学では物理か化学を専攻しようと考えるようになりました。で、模試は理系のクラスで受けて、大学も理系を受験。ラッキーなことに現役合格したら、この小説を読んだ頃の切迫感はなくなっていました。


ファシズムと文学 ヒトラーを支えた作家たち
池田浩士著 インパクト出版会

大学5年目の秋、誰が呼んだのか忘れてしまいましたが、文学部祭で著者による講演会に参加したことがあります。当時、一部では話題になっていたこの本の著者ということで、池田さんを招いたのだと思います。

僕自身は、この本を読んで、最後に紹介されているハンス・ファラダの作品を読みたいと思いました。で、本郷三丁目の交差点近くにあったドイツ語図書の専門店で「Kleiner Mann, Was nun?」を注文し、船便で届くのを待った覚えがあります。30pくらい読んだまま、まだ部屋の中で眠っているはずです。後に、ウィーンへ行った時に、亡くなったアルウィン君にお願いして、ハンス・ファラダの他の作品も買い集めてもらいました。

池田さんが、昨年3月に人文書院から出した「虚構のナチズム」もすごく面白い本です。


チャリップ=自立
高野雅夫著 10,000円 B5判 1000ページくらい

大学で5年目の冬、キャンパス内で暮らしていた頃、出入りしていた部屋に置いてあったこの本を読みました。

荒川九中第二部(夜間中学)を出た著者が、夜間中学の存続を訴えるためにドキュメンタリーフィルム上映運動を行い、大阪では半年以上をかけて、夜間中学新設に結びつく取り組みを行ったことから始まる、1960年代末から1970年代半ばまでの夜間中学をめぐる運動の記録です。

先月末、都立中高一貫校による扶桑社歴史教科書の採択阻止を目指す集会の会場で、久しぶりに会った著者にお願いして送ってもらいました。

僕は、たまたま進学した教育学部教育行政学科の持田栄一さんに借りた本で、夜間中学のことを知りました。一度だけ、一緒に自治会選挙をやったことがきっかけで仲良くしていた伊藤悟君が中心のサークル・KYKの仲間たちと一緒に荒川九中の夜間中学部を訪ねたことがあります(この夜間中学部を舞台に映画「学校」が作られ上映されたのも、ずいぶん前のことになってしまいました)。

持田さんには、内申書裁判の記録も借りました。で、裁判の傍聴に行き、同じ年齢の保坂展人君がその頃、同世代の仲間と出発させたばかりの青生舍にしばらく出入りしていました。

保坂君のお父さんは、自分も難聴気味だったこともあって、難聴者である僕に気を使ってくれました。大学4年の秋から冬にかけて熊本の親の家にいた僕のところに、自著のエッセイ集を送ってくれたことを覚えています。

保坂君のブログによると、お父さんは何年か前に亡くなって、お墓は仙台にあるとのこと。こころから冥福を祈ります。


Pedagogy of the Oppressed
Paulo Freire

ブラジルの識字教育者、パウロ・フレイレが、軍事政権に追われて亡命中のメキシコで執筆した識字教育の理論書。僕は、大学の授業で知った当時、生協に並んでいた英訳本を読みました。

学ぶ人は何を学びたいと願っているのか、にどう迫っていくのかを、フレイレは問いかける。


Simians, Cyborgs and Women
Donna J. Haraway

僕の机の上にあるRoutledge版は絶版で、現在、入手できるのはFree Assn Books; Reprint版です。高橋さきのさんによる翻訳「猿と女とサイボーグ」も古本でないと手に入りません(2008年、再版されました)。この本で、Harawayのおもしろさを知り、「Modest-Witness, Second-Millennium: Femaleman Meets Oncomouse : Feminism and Technoscience」「Primate Visions: Gender, Race and Nature in the World of Modern Science」も読みました(「Donna Harawayを読む」もご覧ください)。

この本の翻訳作業に取り組んでいたさきのさんから「Buchi Emechetaという作家のことを知らない?」と聞かれたのがきっかけで、彼女の本も読みました。「In the Ditch」「Destination for Biafra」、「Head Above Water」など何点か手元にあります。

Emechetaの作品を知るきっかけになったという意味だけでも、「印象に残る本」です。


お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門
若桑みどり

最近、去年亡くなった若桑みどりさんの著書が並んでいるのを見て、「戦争とジェンダー―戦争を起こす男性同盟と平和を創るジェンダー理論」「皇后の肖像」を読みました。

たどってみれば、「お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」を読んで、若桑さんの名前を憶えたのでした。


Development as Freedom
Amartya Sen

3人称代名詞が、全て女性形(she, her, hers)だったのが印象的です。

振り返ってみると、アマルティア・センの著作、部屋に何点か転がっているけれど、実際に読んだのはこの本と「Poverty and Famines」「不平等の再検討」の3点だけです。インドの歴史や、インドにおけるエイズについて彼が書いたものも読んでみようと思っています。


戦時下抵抗の研究 1・2
同志社大学人文科学研究所編 みすず書房

富坂セミナーハウスの書棚で、30数年ぶりに現物を見た。

和田洋一(名前、ずっと思い出せずにいた。今、確認できて、胸のつかえが少しとれた)さんの悲鳴のような「はじめに」を読んで、図書館の本を借り出して読んだことは覚えている。徴兵拒否を貫いて弾圧を受けた灯台社・明石順三(今、名前の方を確認した)を知ったのは、この本でだった。


小繋事件−−三代にわたる入会権紛争−−
戒能通孝著 岩波新書

「戒能通孝 入会」で検索をかけたら出てきた。
40年ほど前に読んだような気がする。
先日、『イングランド社会史』を読み、また、授業で知的財産権とパブリックドメインというテーマを扱っていて、改めて「囲い込み(エンクロージャー)」と共有地、公共の土地といったことを考えている。
吉田昌夫さんがアフリカの土地問題研究に関して報告するのを聞いて改めて思い出した。共同体の土地の問題を考える際に、参照できるのではないか、と吉田さんも語っていた。


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読書ノート です。


アマゾンのアソシエイツになりました。
昨年、亡くなったスティーブン・J・グールドの本を買ってもらいたいと思っています。
紹介文をボチボチ書いていくつもりです。まずは机の側にころがっていた「THE MISMEASURE of MAN」のことを書きます。



by 斉藤龍一郎

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