TAQ'S WRITINGS


 


 

 

 虹は、ノアの洪水の後、神があらゆる生き物に対して二度と地を滅ぼす洪水を起こさないと契約したしるしだと聖書は説いている。虹は和解のシンボルなのだ。

 レインボウ・フラッグはゲイやレズビアンだけではなく、バイセクシュアルやトランスジェンダー、トランスセクシュアルなども含めた性的マイノリティ全体の連帯のシンボルとして世界的に知られるようになってきた。サンフランシスコやニューヨークのお土産に、レインボウ・カラーのペンダントや小旗を貰った経験がある人もいるだろう。実際、アメリカやヨーロッパでは、レインボウ・グッズは十分ビジネスとして成り立っているほど、多くの人に受け入れられている。

 レズビアン&ゲイ・パレードなどでは必ず登場しているので、日本でもゲイやレズビアンの間では認知度が高くなってきているようだ。

 今や、ICFM(国際的な旗製造者の団体)にも正式に認定されているレインボウ・フラッグの特徴は6色で構成されていることだ。日本では虹と言えば7色と相場が決まっているから、6色であるかどうかを見れば、いわゆるレインボウ・フラッグなのか、単なる虹をデザインしたものなのかがすぐ分かるようになっている。ちなみに機体に大きな虹をまとって飛んでいるJASのボーイング777は7色なので、あの会社が性的マイノリティに対して特別リベラルな意識を持っているわけではないのも、すぐ分かるという寸法だ。

 マッキントッシュでお馴染みのアップル社のリンゴも6色の虹色に染められているが、よく見ると色の順番が違うので、これもレインボウ・フラッグとは違う。 確かにアップル社は、社員に対して同性間にもドメスティック・パートナーを認めているほどゲイフレンドリーな会社として有名だから、レインボウ・カラーだと勘違いされても怒ったりしないだろうが…。

 虹は光のスペクトルだから何色で表現しても足りないと言えば足りないのだが、なぜレインボウ・フラッグは6色なのだろうか? これに関しては、面白いエピソードがあるので紹介しよう。

 オリジナルのレインボウ・フラッグを作ったのはギルバート・ベイカーというサンフランシスコに住むアーティストだと言われている。

 1978年、ベイカーは地元の活動家からゲイ・コミュニティのシンボルとなる旗をデザインして欲しいと頼まれた。そこで彼は多様性を表現しようと、あらゆる色が含まれている虹をモチーフにし、自分で布を染め、初めてのレインボウ・フラッグを作った。その時、彼が選んだ色は、ピンク、赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫の8色で、それぞれの色には、「セクシュアリティ、命、癒し、太陽、自然、芸術、調和、精神」の意味あいも込めた。

 彼はすぐに旗のメーカーに自作の旗を持ち込み、大量生産の可能性を計った。しかし、残念ながら、彼が染めたピンクは非常に鮮やかなピンクで、旗の材料では出せない色だということが分かった。そこで製品化された初代のレインボウ・フラッグは7色になってしまった。

 翌1979年、サンフランシスコのプライド・パレード実行委員会は、ベイカーのデザインした旗をパレードで採用することを決定した。前年の11月にゲイの評議委員であったハーベイ・ミルクが暗殺され、今回のパレードではゲイ・コミュニティの力と結束をはっきりと示さなければならなかったのだが、実行委員会はベーカーの考えた虹色のコンセプトが効果的だと判断したのだ。

 その際、道の両側を3色ずつの色を進ませるというパレードの演出上の理由から、実行委員会は旗の色から藍色を抜いてしまった。
 そして、この色数でレインボウ・フラッグも調整され、結局、この時の旗がスタンダードとなり、今に至ったというわけだ。元々は8色だった旗は、こんな経緯で6色となった。

 人間のありようは多様で、それぞれの幸せの形もそれぞれ違う。誰でも自分なりの幸せを追求しながら、その生き方にプライドを持つべきだ。このメッセージがレインボウ・フラッグには込められている。 7色でなく6色で表現された虹を見たら、そのことをぜひ思い出して欲しい。



「バディ」1997年3月号掲載


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