『ラジオデイズ』の撮影風景を1985年11月5日から86年5月9日まで一日ずつ克明に記録したメイキングもの。ウディの映画の撮影現場を知る上で貴重な資料である。ただ著者は文字通り「記録」に徹していて余計な感情や感傷を交えていないため、報告書みたいな感じになってしまっている。また人物を本名ではなく、映画の中の名前で記述していて(例えばミア・ファローはサリー、ダイアン・ウィーストはビーといった具合である。ウディはウディとしている)これはこれで面白い試みとは思うけれど、撮影を離れたところにまでこれをやっているのでちょっとやりすぎという気がする。(ダイアン・ウィーストの父親が撮影中に亡くなって悲しみにくれる彼女を「ビーは悲しみに沈んでいた」とやるのは、ある意味で礼を失するとさえ思う。)ウディの撮影現場の様子について知りたいという人にはうってつけである。おしむらくは取材対象が『ラジオデイズ』でなくアカデミー賞をとった『ハンナとその姉妹』やウディがもっとも自分の考えた通りにできたと自賛する『カイロの紫のバラ』であればもっとよかったのだが、こればかりは撮影前からその作品がどうなるかなんてわからないから仕様があるまい。
巻末でもとのシナリオと完成した映画との比較をシーンごとに行っており、映画の冒頭の泥棒がラジオ放送の電話に出て賞品をもらうエピソードはもともとは冒頭のシーンとして書かれたものではなかったとか、書かれたが撮影されなかったシーンがたくさんあるなどの発見も多い。
464ページ。
<入手先>
93年12月、カナダ・オタワの古本屋で7カナダドルで購入。
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