撮影されたがカットされた挿話

『SEXのすべて』失われたエピソード3

「人はなぜホモセクシャルになるのか?」



1.はじめ画面には糸がよりあわさったようなものが見える。
 が、やがてそれが大きなクモの巣であることがわかる。

 カメラが巣の中央に動くと、そこには大きな黒後家蜘蛛の
 メスがいる。八本の脚と、腹に砂時計の模様のついたクモの

 コスチュームを着けた魅力的な女性である。
 コスチュームは彼女の手と足をそれぞれ4つの脚にしている。
 
 彼女はとてもセクシーで、長い黒髪(又は金髪)を
 くしでとかしている。

 カメラは巣の下へ向けられる。(巣のセットは、上や横から
 撮影した時に、人物が宙に浮いて見えるようになっている。)

 巣の下の地面に、私(訳注:ウディ)が演じる小さなオスの
 クモがやってくる。
 黒い身体に八本の脚、眼鏡をかけている。

2.オスグモ、巣の中央のセクシーで大きなメスに気づく。
ウディ「おい、彼女を見ろよ・・・ダイナマイトだ・・・
 あんなすごい女は見たことないよ。・・・ちくしょう、
 なんて美人なんだ・・・ああ、彼女をモノにしたいなぁ。
 もう一回通りかかってみよう・・・こっちに気づくかも
 ・・・平静を装わなきゃ・・・」
ウディ、平静を装いつつ、クモ歩きで彼女の近くを通り過ぎる。

3.メス
  めかしこみ、髪をとかす姿は誘惑的である。
ウディ「彼女はクールだな・・・求愛の踊りをやってみよう
 ・・・モノにできるかもしれない・・・ボクの求愛の踊りは
 なかなかセクシーなんだ。えへん!こんにちは」
メス「こんにちは」
ウデイ「いい天気だね?」
メス「そうね」
ウディ「いいぞ、彼女はこっちを見てる。さあ、求愛の踊りで
 彼女の心に火をつけるぞ・・・」

4.ウディ、求愛の踊りをする。
  それは、何度もまわるばかりの馬鹿げた踊りで、他のクモに
  セクシーに見せようとしているが、どう見てもあほくさい。
  ウディ、踊りをやめる。
ウディ「こいつは馬鹿げている・・・これじゃ、どうにもならない
 ・・・彼女に話しかけてみよう・・・さあ、いけ・・・
 恥ずかしがるな・・・こんにちは」
メス「こんにちは」
ウディ「いい天気だね?」
メス「ええ」
ウディ「きみの名前は何ていうの?」
メス「リサよ。あなたは?」
ウディ「シェルドン・ウェクセラー」
メス「何をしてるの?」
ウディ「ボクはクモなんだ。(自分に向かって)しまった、
 何てつまらないことを言ったんだ」
メス「クモってことはわかってるわ。あなたはその・・・
 道に迷ったみたいね」
ウディ「いや、そんなことはない。ボク・・・ええっと・・・
 きみは黒後家蜘蛛だね?」
メス「ええ。ちょっと休んでいく?でも忙しそうね」
ウディ「忙しい?ボクが?いや、家には8時半までに
 帰ればいいんだ。ママが夕食に砂糖のかけらをくれるんだ」
メス「そう、じゃあ、お入りになって」
ウディ「喜んで。(自分に向かって)さて、がっついて台無しに
 しないようにしなきゃ、彼女はまだねんねなんだし」

5.ウディ、慎重に巣の糸をよじのぼる。
  このシーンは普通のスラプスティックとして撮影するが、
  無重力状態に見えるようなアングルにカメラをおく。
ウディ「申し訳ないね、求愛の踊りの疲れが少し
 残ってるんだ」
メス「さっきのがそうだったの?ひきつけをおこしてるのかと
 思ったわ」
ウディ「(無理に笑う)は、は・・・そうだね・・・」

6.ウディ、なんとか巣に入る。二人、並んで座る。
ウディ「なかなかいい巣だね。一人で住んでるの?」
メス「ええ」
ウディ「チンチンチン・・・得点、得点・・・」
メス「あなたの巣はどこなの?」
ウディ「138丁目通りとレノックス通りの近くさ」
メス「こんな遠くで何をしてるの?」
ウディ「散歩してたら、間違えてタクシーに乗っちゃったんだ」
メス「まあ・・・虫ってつらいわね。いつも道に迷ってばかり」
ウディ「レオ・ブレーバーマンというノミの友達がいた。
 多分、君も知ってる男だと思う。去年の冬、彼はコリー犬に
 住んでいた。いい動物だよ。ある時、コリーはスパニエルの
 横でえさを食べていた。レオは、スパニエルの背中で日光浴を
 しているとても可愛いノミを見つけた。彼女は大きな犬の
 上から見られているとも気づかず、伸びをしてたんだ。
 まあ早い話が、レオは彼女に恋をして、彼女のところに
 出かけていった。けれど二人はうまくいかなかった。
 性格の違いだよ。レオはノミにしては気性の激しい方だった
 からね。それでレオは自分のコリーに戻ろうとしたところ、
 犬の飼い主はヨーロッパへ引っ越した後だった。
 ・・・この後の細かいことは省くとして、ついにレオは
 メキシカン・ヘアレスに住みついたが、ある暑い8月に
 日焼けのし過ぎで死んでしまった」
メス「悲しい話ね」
ウディ「つまり、いかにボクたち虫は、いつも住みなれた
 家から追い立てられてるかってことさ。運命はとても残酷だ」
メス「そうね」
ウディ「君、結婚してるの?」
メス「結婚してたわ。でも夫は死んだの」
ウディ「それはお気の毒に」
メス「平気よ。もう慣れたわ」
ウディ「たいていのことは慣れるもんだ。クリーブランドから
 来たハーヴェイ・エーデルマンという毛虫がいたが・・・
 彼は厚手のウールしか食べなかった。それが肺を悪くして
 アリゾナへ行ったんだ。そこで彼は薄手の毛織物とか、
 皮製品も食べられるということを知ったそうだ。つまり
 言いたかったのは・・・」
メス「時には私も寂しくなるわ」
ウディ「わかるよ。君みたいにきれいで若いクモならね」
メス「私のこと、きれいだと思う?」
ウディ「もちろん」
メス「ありがとう」
ウディ「君の脚って、可愛いね」
メス「でも5本の脚はいいんだけど、残りの3本は太り気味なの」
ウディ「君は素朴で健康だよ。・・・そこがとてもセクシーなんだ」
メス「ああ・・・」
ウディ「どうかした?」
メス「身体が固くなっちゃって。肩の方とか。近頃とても緊張するの」
ウディ「大丈夫?背中をさすってあげようか?」
メス「背中をさする?迷惑じゃないかしら?」
ウディ「とんでもない」

7.彼女に近づき、背中をさするウディ。
メス「ああ、気持ちがいいわ。力が強いのね」
ウディ「まあね・・・」
メス「あなたって、奔放な人みたい。・・・そうでしょ?」
ウディ「(彼女が心を開き、自信をつける)まあ、そこそこだね」
メス「あなたって、女の扱いがうまいのね」
ウディ「まあその・・・それなりの報酬はいただくけどね」
メス「これまでに黒後家蜘蛛とは?」
ウディ「いや・・・庭にいるような普通のクモとばかりさ」
 一回、蜂とやろうとしたこともあったけど・・・若い頃の話さ
メス「(熱く息をつく)もうずいぶん長い間一人で寝てるの」
ウディ「可哀相に」
メス「私のこと、恐い?」
ウディ「(タフを装い)冗談だろ?・・・(彼女にキスし、
 愛撫し始める)」
メス「ああ、抱いて、私を抱いて・・・ああ、シェルダン・・・」

8.音楽が高まり、カメラが静かに動く中で、2匹のクモが
 不器用に愛しあおうとするのが見える。彼らが愛し合うのに
 伴い、カメラが近づいて、次のシーンにオーバーラップする。
 2人とも見詰め合いながらそこに横たわっている。
 彼女はタバコを吸っている。2人がクモだということを
 除けば、よくある愛の行為の後の風景である。
ウディ「よかったよ。疲れたけど、よかった」
メス「そう」
ウディ「君は素晴らしい」
メス「あなたもね」
ウディ「本当だよ。とにかくすごかった。・・・さてと、
 もう行かなくちゃ。・・・また来るよ。今度は2人で出歩いたり
 しよう。・・・じゃあね」
メス「(やさしく)あなたはもう、どこにも行かないのよ」
ウディ「え?」
メス「私がこれからあなたを食べてしまうんですもの」
ウディ「何だって?」
メス「あなたはこの巣から出られないで、私の夕食の
 ごちそうになるの」
ウディ「面白い冗談だ。じゃ、これで」
メス「シェルダン、これは冗談じゃないわ。私はあなたを食べて
 しまうのよ」
ウディ「いい加減にしろよ。本当にそろそろ、ボクは巣に
 帰らなきゃ。おおっと」

9.ウディ、動こうとするが、糸で縛られて動けない。
  不器用にあちらこちらへともがく。
ウディ「おい、これは何だい?」
メス「もう逃げられないわ、シェルダン。この巣は、入るのは
 たやすいけど、出て行くのは別よ」
ウディ「これは何かの冗談なんだろう」
メス「あなたは食べられてしまうのよ、シェルダン」
ウディ「どうして?ボク、そんなに下手だった?」
メス「あなたは素晴らしかったわ」
ウディ「じゃ、なぜこんなひどいことするのさ?」
メス「ひどいことじゃないわ。自然の掟なの」
ウディ「(後ろを向いて)歪んだ自然だ。やれやれ、
 なんて女と関りあいになってしまったんだ!」

10.ウディ、逃げようとするが、ますます落ちていく。
メス「もう逃げられないわよ、シェルダン。オスは決して
 逃げられないの」
ウディ「近くに来るな。初対面の相手になんていう仕打ちだ」

11.彼女、ウディを追いかける。2匹は巣の中を走り回る。
ウディ「もし君がそんなやつだと分かっていれば、君にボクの
 身体をあげたりはしなかったのに」
  彼女、近づいてくる。ウディ、ますます糸が絡む。
ウディ「リサ、君は重度の性交後憂鬱症にかかっているだけなんだ」
 そういう例を知ってる!リサ・・・

12.彼女はウディの身体に糸をまきつけて、繭のように
  グルグル巻にする。
メス「黒後家蜘蛛って、そういうものなのよ。オスとセックスすると
 今度はそのオスがメニューに載るってわけ」
ウディ「こんなことが知れたら、デートの相手を見つけるにも
 苦労するようになるぞ!リサ!リサ!リサ!」

13.ウディが完全に彼女の手に落ちてしまうと、カメラが
  ズームバックしてシーンが小さくなる。そして昆虫学者の
  ウディが顕微鏡を覗いているのが見える。今までの出来事を
  全て彼は研究室で見ていたのだ。

14.彼の秘書が入ってくる。黒後家蜘蛛と同じ女性が演じている。
秘書「ホール博士、タイプは全部終わりました。夫が迎えに
 来るので、帰っていいですか?2人で劇を見に行くんです」
ウディ「(ホモのようなしゃべり方で)ええ、いいわよ、ハニー。
 行ってらっしゃい。楽しんできてね。また明日会いましょ。
 おやすみ」
				−終わり−


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99年4月1日作成

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