『SEXのすべて』失われたエピソード4

「なぜオルガズムを感じにくい女性がいるのか?」



1.教会の中(昼間)
  小さな教会の中で宗教セレモニーが行われている。
  人々は二列縦隊で教会から出てくる。
  オルガン奏者がヴィクターとグニーラの方へ来て、
  3人で教会の外の階段を降りる。
  オルガン奏者、スウェーデン語で話す。
「(字幕)あななたち2人は本当に信心深いね。一度も
 集まりを休んだことがない」
  ヴィクターとグニーラ、顔を見つめあう。
オルガン奏者(スウェーデン語で続ける)「(字幕)聖職者
 よりも信心深いと言えるだろう」
ヴィクター(スウェーデン語)「(字幕。以下、人物はすべて
 スウェーデン語で話し、字幕が出る)ええ、そうかも
 しれません」
オルガン奏者「なぜそれほどまでに強い信仰をお持ちなのかね?」
ヴィクター「いろいろありましてね」
オルガン奏者「それを是非知りたい。私の信仰は薄れている。
 私は神とは何か、なぜどこにも姿を現さないのか知りたいのだ」
  ヴィクターとグニーラ、お互いを見る。ヴィクター、訳を
  話す決意をし、オルガン奏者の肩に手をかけ、一緒に歩く。
ヴィクター「グニーラと私が結婚した時のことを覚えているだろう。
 まだそんなに昔のことではないが」
オルガン奏者「ええ」
ヴィクター「素晴らしい結婚式だった・・・」
				(OL)

2.教会の外(昼間)
  幸せで家庭的な結婚式。ヴィクターと花嫁のグニーラ。
  家族の祝福を受け、2人は教会を後にする。

3.車内でくつろぐ2人

4.家に入る2人

5.寝室の2人
  やさしくキスしあう。
ヴィクター「この時をずっと待ち続けていたよ」
グニーラ「ねえ、ヴィクター。あまり期待しすぎないで。
 私、まだよくわからないの」
ヴィクター「グニーラ、僕にとって、君の身体は大聖堂だよ。
 さあ、下着を脱いで」
  2人はキスして、情熱的にベッドに倒れ込む。
				(OL)

6.同じ場所 −しばらく後−
  何かがおかしい。どうもうまくいかない。
ヴィクター「よくなかった?」
グニーラ「よかったわ」
ヴィクター「僕には君がよかったようには見えなかったけど」
グニーラ「そんなことないわ」
ヴィクター「でも君はただ横になって、塩漬のサーモンみたいに
 受け身だったよ」
グニーラ「私、初めてだったの。あなたはよかった?」
ヴィクター「僕?そりゃ、よかったさ。笑うよりはよかったよ」
グニーラ「多分この次にはもっとリラックスできるわ」

7.ベッドで寝ているヴィクター
ヴィクター(声)「眠りながら、私はこんな夢を見た」

8.ヴィクターの夢
  ヴィクターの声が描写するものが画面に映し出される。
  モダンなオフィスにある会議室。
ヴィクター(声)「私はある重要な会議に出ていた。
 出席者はみな頭にチーズサンドウィッチをのせていたが、
 誰もそれに気づかないようだった。突然ドアが開いて
 2台のコントラバスが入ってきた。(コントラバスは
 内部が空洞になっていて人間が入っており、2本の足だけが
 突き出している。)そして彼らは私を逮捕した」
  2台のコントラバスはヴィクターを捕まえ、連れていく。
  他の出席者たちはポケットから小さい金槌を出して、
  互いの頭を叩き合う。

9.寝返りをうつヴィクター

10.翌日、友人のグンナーに相談するヴィクター
  2人は人影のない海岸にいる。背後には断崖が切り立っている。
  ドラマを盛り上げる美しい映像。
ヴィクター「冷感症について何か知ってるかい?」
グンナー「前戯がすべてだよ。女性はセックスの前には前戯が
 必要なんだ」
ヴィクター「どれくらいだい?」
グンナー「15分か30分か・・・女性によって差がある。
 幼稚園の授業で習っただろう?」
ヴィクター「奥さんとはどうだい?」
グンナー「30秒もあれば、クリスマスツリーのキャンドルの
 ように燃え上がるよ」
ヴィクター「運がいいな」
グンナー「まさかグニーラとうまくいってないのか?」
ヴィクター「あ、いや、そうじゃない」
グンナー「挿入する前にちゃんと愛撫してやってるか?」
ヴィクター「何を挿入するって?・・・ああ・・・グニーラを
 売春婦みたいに言うのはやめてくれ」
グンナー「結婚してどれくらいになる?」
ヴィクター「6週間だ」
グンナー「彼女といろいろやってみろ。愛撫してやれ。
 問題はいつも男の方にある。どんな女性でもエクスタシーを
 感じられるようになる」
ヴィクター「グンナー、先週のことだが、あれの最中に・・・
 その・・・彼女はテレビを見てたんだ」
グンナー「どこか間違ってるはずだ。中には時間のかかる
 女性もいる。彼女の性感帯を探すんだ」
ヴィクター「彼女の父親が僕にその地図をくれたよ。
 でも、だめだった」

11.寝室
  ヴィクター、グニーラをベッドに寝かせる。
  外は暗い。ヴィクター、彼女のすね、足首、ひざにキスし、
  愛撫する。ヴィクター、ロマンチックに話しかけ、
  グニーラ、ため息をつく。
ヴィクター「そうか、君は肩にキスされるのが好きなんだね」
グニーラ「そこは大丈夫よ」
  ヴィクター、彼女の指やひざを愛撫する。
ヴィクター「よし、うつぶせになって」
グニーラ「え?」
ヴィクター「うつぶせに。まだ調べてないところをさっと
 チェックしたい」
  ヴィクター、彼女の背中やももにキスして、胸を愛撫する。
  外がだんだん明るくなってくる。
  カメラがヴィクターにパンすると、彼はまだ愛撫を続けている。
  疲れきっているヴィクター。グニーラは眠っている。
  ヴィクター、もはや起きていられず、つぶやきながら倒れ込む。
ヴィクター「前戯・・・前・・・戯・・・グー・・・
 悪い夢はうごめんだ・・・」

12.道路(昼間)
  また別の夢。
  ヴィクターのナレーション通りの光景がリアリズムで
  画面に現れる。
  車を運転するヴィクター。
ヴィクター(声)「私は追いかけてくるペンギンから逃げようと
 急いでいた」
  車に乗る6羽のペンギン。うち1羽が運転している。
ヴィクター(声)「しかし我々は渋滞に巻き込まれてしまった」
  ヴィクターの車、動けなくなる。クラクションを鳴らした後、
  車から出て渋滞の原因を確かめようとする。彼は車の列の
  前の方へと行き、ついに十字路でベートーベンの交響曲を
  演奏するオーケストラを見つける。
  オーケストラは正装しており、指揮者が真剣に指揮をしている。
  と突然、演奏家が立上ってヴィクターを追いかけはじめる。
  演奏家達がヴィクターを殴ろうと楽器を振り回して地平線に
  一列に並ぶ光景は、さながらベルイマン映画のワンシーンの
  ようである。

13.ヴィクター、寝返りをうち、がばっとベッドから起きる。
  そして首を振る。

14.教会に入るヴィクター
  懺悔をするため、懺悔室に入る。
牧師「ヴィクター、教会は君を助けることはできないよ。
 もしできることがあれば喜んで君の奥さんをここに来させるのだが、
 それは不可能だ。少なくとも君は奥さんからは歓びを得ることが
 できている。おそらくいつかは、奥さんも君から歓びを得る
 ようになれるだろう」

15.寝室
  ヴィクター、グニーラにオルガズムを感じさせるための
  道具を使うことにする。
  彼女にキスし、愛撫し、ワインを注いで彼女に渡し、
  ロマンチックなムードの中、モーターボートみたいな
  音の出る男根型の電動バイブレーターを取り出す。
  それはスイッチを入れるとそこいら中を飛び回り、
  彼女は悲鳴を上げる。
  バイブがショートして、ベッドに火がつく。

16.レストラン(昼間)
  ヴィクターと友人のスヴェン。
ヴィクター「君の奥さんはどうだい?」
スヴェン「うめいたり、叫んだり、僕の背中を引っ掻いたり
 するよ。僕の6〜7倍の声を出すね。まるで熱にうなされた
 狼みたいさ」
ヴィクター「うちのはただ寝て、天井を見ているだけだ。
 まるで死人だよ」
スヴェン「君は・・・短小かい?」
ヴィクター「短小?フランスパン並みだぞ。短小だなんて・・・」
スヴェン「わかったよ、わかったよ・・・いったい何が原因
 なんだろうな」」
ヴィクター「昨日の夜、こんな夢を見たよ」

17.ホテル(夜)
  ヴィクターのナレーション通りの夢。
ヴィクター(声)「僕は友人達とホテルで食事をしていた」
  ヴィクターの向かいの席には、3つの大きな時計が座っている。
ヴィクター(声)「ふと窓の外を見ると、信じられないような
 ものが見えた」  
  ヴィクターが窓の外を見ると、巨大な平和鳥が皿の水を
  つついている。ブロードウェイの小物屋で売っているタイプ。
ヴィクター(声)「やがて馬車が来て止まった」
  昔風の馬車が止まり、中から12人の道化が出てきて、
  バンジョーを弾きながら「スワニー」を歌う。

18.夢について詳しく説明するヴィクターを見つめるスヴェン

19.ヴィクターとグニーラ
  家で食事をしている。緊張感が漂っている。
グニーラ「どうかしたの?」
ヴィクター「別に」
グニーラ「忘れましょうよ。何をしても無駄よ。もう全部
 試してみたんだから」
ヴィクター「グニーラ、愛してる。君にも僕と一緒に情熱の
 高まりを経験して欲しいんだ。うめいたり、僕の背中を
 引っ掻いたり、エクスタシーで叫んでほしいんだ」
グニーラ「チキンをとってちょうだい」

20.散歩するヴィクター。空を見上げる。
ヴィクター(声)「どうすればいいのですか?
 答えてください。どうして答えてくれないのですか?
 なぜいつも沈黙しているのですか?私はセックスの悩みを
 抱えているのです。・・・お答えはないのですか・・・
 さて・・・デザートでも食べに行くとしよう」
  空、答えはない。

21.教会の中のヴィクターとグニーラ
  牧師が説教をしている。2人は長椅子の間で膝まづいている。
  牧師、2人の顔、壁にかかった十字架。
  グニーラとヴィクター。グニーラ、何かを感じる。
  突然、彼女はヴィクターの足に手を置く。
ヴィクター「グニーラ、何をするんだ?」
グニーラ「お願い。さあ。早く。私、感じてきちゃった」
ヴィクター「こんなところで感じてきたって?」
グニーラ「そうよ。早く。これが終わらないうちに。
 私を愛して。情熱が内側からこみあげてくるの」
ヴィクター「でも、まわりに人が・・・」
グニーラ「(ヴィクターを長椅子の間に引き降ろして)
 見えやしないわ」
ヴィクター「ああ・・・でも・・・これは罪だ・・・教会で
 セックスだって?・・・天罰で角がはえる」
  2人の姿は長椅子にはさまれ、やせた参列者たちの
  かげにいるため、他の人々からは見えない。
グニーラ「早く・・・早く・・・」
  ヴィクター、彼女にキスする。

22.説教を続ける牧師と聴衆の顔

23.長椅子
  突然、グニーラのブラが長椅子の背もたれに放り投げられる。
  画面に見えるのはそれだけである。

24.讃美歌を歌う人々

25.退席する人々
  ヴィクターとグニーラもネクタイや服装を直しながら出て行く。
  捕まらずにすんだ。

26.ヴィクターの家(昼間)
  家にいる2人。芸術的な画面。
  2人の顔が半分づつ見える。(訳注:「愛と死」のラストの
  ダイアン・キートンとジェシカ・ハーパーの顔が半分づつ
  重なるシーンのイメージ)
ヴィクター「でも、どうして教会で?」
グニーラ「そこは私がオルガズムを感じられる唯一の場所なの。
 ・・・なぜなら、神は愛なり、だからよ」

27.教会(昼間)
  教会へ行く2人。

28.モンタージュ
  牧師、合唱隊、長椅子に引っかかるブラのモンタージュ。
ヴィクター(声)「それから私たちはあらゆる機会を捉えて
 教会に行くようになった。・・・早朝のミサ・・・夕刻のミサ
 ・・・中国の新年をも祝ったりした」

29.ヴィクターとグニーラ、そして話を聞いていたオルガン奏者
オルガン奏者「なるほど・・・オルガズムは人間にとって
 最も深い宗教的体験というわけですな」
  歩き去っていく3人。
				(FO)

				−終わり−


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99年4月1日作成

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