海外図書紹介『ウディ・アレンとの会話』

書籍名:Conversations with Woody Allen
編者名:Eric Lax
出版社:Alfred A. Knopf

ISBN:978-0-375-41533-3
価格:30ドル
出版年:2007年


 アレンの長年の良き理解者で『評伝ウディ・アレン』などの著者エリック・ラックスが、72年から06年までの三十数年間にわたって行ったアレンへのインタビューを、「アイデア」「執筆」「配役・俳優・演技」「撮影・セット・ロケ」「監督」「編集」「音楽」「キャリア」の8つの章に分けて再構成したアレン・インタビューの決定版。

 監督第一作の『泥棒野郎』から07年の『カッサンドラの夢(原題)』までの作品の舞台裏やアレンの考えなどが詳細に語られており、幻の企画や本書でしか知られない新事実も多数語られるなど、アレンのインタビュー本としては最新かつ最良のものといっていい。何と言っても、同一のインタビュアーによる三十数年にわたるインタビューという点が傑出しており、インタビューの視点が統一され、製作の舞台裏やアレンの考え方が詳細に語られている。また単なるインタビューにとどまらず、撮影や編集の現場を訪問した編者による舞台裏のメイキング・ルポルタージュも多く、現場のアレンの言動を詳細に知ることができる。

作品エピソード
「マンハッタン」の冒頭の音楽としてアレンが初めに考えていたのは実はバニー・ベリガンの「アイ・キャント・ゲット・スターテッド」だった。当時アレンのお気に入りのレストランのエレインズで毎晩かかっていた曲で、オープニングが終わった後、その曲をバックに最初のエレインズのシーンにフェードインする予定だった。しかし冒頭のフィルムを見た編集のスーザン・モースの意見でガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」に変えられ、そして映画の他の曲もすべてガーシュインで統一されることになった。

幻の企画
 ボブ・ホープの大ファンとして知られるアレンは、ボブ・ホープとビング・クロスビーが共演した珍道中シリーズのようなロード・ムービーをやりたいと考えている。そして共演相手の候補としてダイアン・キートンの名前をあげている。
 またアレンは、シドニー・ベシェとルイ・アームストロングの二人をモデルにした映画を作りたいと考えている。二人ともアレンの敬愛するジャズ演奏家だが、一般にルイ・アームストロングの方が名前が知られ、ベシェは無名に近い。アレン自身はベシェの方がすぐれていると考えており、二人の人生を対比して描いたら面白い映画ができるだろうとしている。

アレン語録
「僕はハリウッドに批判的な映画作家として知られている。でも僕が映画で描くニューヨークは、子供の頃にハリウッド映画で見聞きしたニューヨーク以外の何者でもないということを誰も理解していないね。つまり、ペントハウス、白い電話機、美しい街、水辺、馬車で乗るセントラルパークといったものだよ。地元の人間はこう言ってる。『こんなニューヨークがどこにあるんだい?』てね。・・・(36年の映画「踊るアメリカ艦隊」で)ジェームズ・スチュアートがコール・ポーターの『イージー・トゥ・ラブ』をセントラル・パークで歌う場所は、まさに『マンハッタン』の僕とマリエル・ヘミングウェイの馬車の場面を撮影したところだ。あれはあの映画からのいただきだったからね。その意味で、僕の映画は現実には基づいていないんだ。」

アレンのお気に入りの米国映画15(順不同)
「黄金」「深夜の告白」「シェーン」「突撃」「ゴッドファーザーPART2」「グッドフェローズ」「市民ケーン」「白熱」「男の敵」「丘」「第三の男」「汚名」「疑惑の影」「欲望という名の電車」「マルタの鷹」

こぼれ話
 アレンがダイアン・キートンと交際していたのは有名だが、実際に二人がつきあっていたのは二人が「ボギー、俺も男だ」の舞台で共演していた頃で、「スリーパー」や「アニーホール」などの映画で共演した時には二人はすでに別れていた。アレンも「二人がつきあっていた頃には一緒に映画を作ったことはなかった。一緒に映画を作った時には彼女は別の人間と暮らしていた」としている。

 全366ページ。


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2008年1月10日改訂