【米国時代のフリッツ・ラング】

『地獄への逆襲』
RETURN OF FRANK JAMES


フリッツ・ラング初の西部劇。

西部を荒らしまわった強盗のジェシー・ジェームズは、ボブ・フォード(ジョン・キャラダイン)とその弟チャーリーによって殺される。民衆に人気のあったジェシーを背後から撃ったとして、兄弟は一般の人から嫌われ、町を出る。一方、ジェシーの兄で、かつて行動を共にしていたフランク・ジェームズ(ヘンリー・フォンダ)は、今では名前を変えて、友人クレム(ジャッキー・クーパー)と黒人ピンキーと一緒に農民として暮らしていた。ジェシーの死を知っても動こうとしなかったフランクだったが、殺人罪で有罪になったフォード兄弟が恩赦で保釈されたと知り、復讐を誓う。フランクとクレムは資金を得るためにミズーリで鉄道駅を襲うが、警察の流れ弾が当たって鉄道の係員が死ぬ。デンバーに逃げた二人は、婦人新聞記者エレノア・ストーン(ジーン・ティアニー)にフランク・ジェームズはメキシコで死んだと嘘の記事を書かせる。フランクの死が広く伝えられるが、記事を信じない鉄道警察はエレノアの身辺を見張り、訪ねてきたフランクをホテルの部屋で待ち伏せる。が、逆にしばられて恥をかかされる。フランクは、フォード兄弟が街の見世物小屋でジェシー殺害のてん末を自ら演じていると知り、劇を見に行く。だが、それは事実をねじ曲げたもので、ジェシーを悪漢として描き、フォード兄弟を正々堂々戦った正義の味方として歪曲していた。怒ったフランクと、彼に気付いたフォード兄弟との間で撃ち合いが始まり、フォード兄弟は馬で町の外へ逃げる。フランクとクレムも馬でフォード兄弟を追う。途中でチャーリーは谷底の川に転落して死ぬが、ボブは逃げおおせる。街に戻ったフランクは、ミズーリでの鉄道員殺し容疑でピンキーが絞首刑にされようとしていると知り、冤罪をはらすべく馬を乗り継ぎ、列車を乗っ取ってミズーリへ行く。知合いの記者と会っているところをフランクは逮捕されてしまうが、クレムは逃げる。フランクの裁判が始まるが、ボブもその様子を見に来る。裁判で検察側はフランクの有罪を主張するが、検察を北部の手先と見て反感を持った陪審員は、フランクに無罪を言い渡す。無罪の宣告にボブは慌てて逃げる。裁判所の外で銃声が響き、ボブを追うフランクが外に出ると、クレムが倒れている。ボブを止めようとして撃たれたのだ。クレムはフランクの見守る中、息を引き取る。一方、ボブも撃たれて傷ついており、納屋に立てこもる。フランクとボブの間で激しい銃撃が繰り広げられるが、やがて力尽きたボブも死ぬ。弟や友人の敵をうったフランクに、ようやく安らぎが訪れるのだった。

ラング初の本格的テクニカラー作品で、ロケ撮影による雄大な風景が見事。またヘンリー・フォンダが馬で荒野を全力疾走する場面があり、スター自らが演じるアクションシーンは迫力万点。

西部の列車強盗ジェシー・ジェームズの半生を描いたヘンリー・キング監督の『地獄への道』の続編的作品として製作され、前作同様ダリル・F・ザナックが製作指揮に当たった。ザナック自身は「厳密な意味での続編ではない」としたが、前作同様にヘンリー・フォンダがフランク・ジェームズを、ジョン・キャラダインが敵役ボブ・フォードを演じている。(ちなみに前作の主人公ジェシー・ジェームズは、タイロン・パワーが演じた。)『荒野の決闘』の脚色をしたサム・ヘルマンがオリジナル・シナリオを執筆し、ラングも20世紀フォックスでの初仕事ということで、大きな変更は加えられなかった。

フォード兄弟がジェシー殺しを自らに都合のいいように劇に脚色して上演したり、マスメディアである新聞が伝えたことが事実として伝わり、現実と違うことが現実として許容されるなど、西部劇をモチーフに虚構と現実のテーマを深く掘り下げた『許されざる者』を思わせる部分が多い。

40米/監督フリッツ・ラング/脚本サム・ヘルマン/音楽デイヴィッド・バトルフ/撮影ジョージ・バーンズ、ウィリアム・V・スカル/出演ヘンリー・フォンダ、ジーン・ティアニー、ジャッキー・クーパー、ヘンリー・ハル、ジョン・キャラダイン/92分/カラー


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2002年8月6日作成