キューブリック・未製作作品


1999年3月に亡くなるまで、キューブリックはいくつかの企画を進行させていた。途中で断念したものもあるが、中には遺作『アイズ・ワイド・シャット』と平行して製作が進んでいたものもあった。キューブリックが死んだ今、それらが彼の手で完成することはないが、残された手掛かりからその内容を探ってみたい。
 
AI
 『AI』とはArtificial Intelligence(人口知能)のこと。温室効果によって北極の氷が溶けてニューヨークなどの世界の主要都市が水没してしまった未来を舞台に、様々な分野で使われるようになった知的ロボットが『2001年』のHALのように自我を持つという話らしい。脚本は完成したもののキューブリックは、映画の中で必要とされる特殊効果が当時の技術レベルでは表現できないとして、91年頃にこのプロジェクトを延期した。
 しかしキューブリックは『ジュラシックパーク』をみて、技術の進歩が必要なレベルに達したと考えて93年に製作を再開。セットデザインと特殊効果の開発を続けており、『AI』は『アイズ・ワイド・シャット』の次の作品と期待されていた。
 『AI』には『ジュラシックパーク』のジョセフ・マッツェロ少年が出演しており、キューブリックはこの少年の成長に合わせて5年ごとに2ヶ月ずつしか撮影をしていない(少年はキューブリックの仕事についていることでスピルバーグの目にとまった)ためにこんなに時間がかかっているのだという噂も流れていた。
 
Aryan Papers
 もう1つの『Aryan Papers』はLouis Begleyの小説『Wartime Lies』が原作で第2次世界大戦時のナチス占領下のポーランドで生き延びようとするユダヤ人少年とその叔母の物語。
 93年春のバラエティ誌の記事では94年のクリスマス公開に向けて94年夏に撮影が開始される予定であったとのこと。キューブリックはポーランド、ハンガリー、スロヴァキアにロケハン隊を送り、撮影はスロヴァキアのブラティスラヴァで行われる予定になっていた。主役の少年をジョセフ・マッツェロ(先の『AI』と噂が錯綜している。どちらが本当かはよくわからない)が演じる予定で、叔母役にはジュリア・ロバーツ、エマ・サーマン、ジョディ・フォスター等の名があがっていた。しかし93年秋のLAタイムズによるとキューブリックは中断していた『AI』を再開することにし、『Aryan Papers』は延期されたとのこと。一説によるとスピルバーグの『シンドラーのリスト』と類似していたため、やめたという説もある。
 
出典
Kubrick's next film.
Kubrick Rumor Mill

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96年2月1日作成