映画音楽 『真夜中に星々と君と』


映画:「シャイニング」
"The Shining"
曲名:Midnight with the Stars and You

<解説>
 ホラー映画『シャイニング』のおどろおどろしい音楽の中で、唯一ほっと息をつける曲。(ほかはバルトークやペンデレッキ、リゲティといった代表的な現代音楽作家の曲が使われている。村上春樹が「現代音楽はどれも恐怖映画のサントラにしか聞こえない」というのも分かる気がする。)「真夜中に星々と君と」は20年代にヒットしたダンス音楽で、映画に使われたのも当時のレイ・ノーブル楽団の演奏でアル・ボーリーの歌っているバージョン。冬のあいだ雪に閉ざされるコロラド山中のホテルの管理人を務める一家が、ホテルの亡霊に襲われる物語。ジャック・ニコルソン演じる父親ジャックは、亡霊にそそのかされて息子と妻を斧で殺そうとする。ジャックは危険を察知して単身でホテルへ戻った黒人コック(スキャットマン・クロザースが演じた。ニコルソンとクロザースはこの前に『カッコーの巣の上で』でもわずかに共演しており、ここでもクロザースはニコルソン演じる男のためにひどい目にあう)を殺害するが、妻と息子はかろうじてホテルを脱出し、ジャックの手から逃れる。映画の中でこの音楽が流れる場面は2つ。亡霊のとりことなってホテルをさ迷うジャックが、誰もいないはずのパーティールームで盛大なパーティーが行われているのに出くわすシーン。そしてラスト、息子と妻を取り逃がしたジャックが雪の迷路の中でさ迷って凍死した後、誰もいなくなったホテルの壁の記念写真の中に彼の姿がみえるシーンである。写真は1920年代にホテルで行われた盛大なパーティーのもの。妻と息子に拒絶され受け入れられなかったジャックは、ホテルの亡霊たちの20年代の世界に転生し、自らの安住の場所を見つけた、と解釈することもできる。ラストに流れるこの曲のやさしさに、『シャイニング』はホラー映画には珍しいハッピーエンドだと感じることができる。

Midnight with the stars and you
Midnight at a rendezvous
Your arms held a message tender
Saying I surrender all my love to you

Midnight brought us sweet romance
I know, for my whole life through
I'll be remembering you
Whatever else I do
Midnight with the stars and you

 

真夜中に星々と君と
真夜中に待ち合わせ場所で
君は手にやさしいメッセージを携える
すべての愛を私にささげると

真夜中は甘いロマンスのひとときと
生まれてからずっと知っていた
いつまでも君のことを忘れない
ぼくに何があろうとも
真夜中に星々と君と


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98年9月15日作成