LA検視局のギフトショップ

はじめちゃんのLA日記


よく映画や推理小説などで、検視官というのが登場する。彼らの仕事は、死体を手掛かりにして死因や死亡時刻、死体の身元などを調べることだ。カリフォルニア州法では、死亡時の状況が次のどれかに当てはまる場合、医師は検視官への連絡が義務付けられている。すなわち、医師の付き添いがなかった場合、付き添った医師が死亡原因を特定出来なかった場合、死亡の原因が事故である場合、犯罪が絡んでいる場合、である。

ロサンゼルスの場合、郡(カウンティ)の検視局(Department of Coroner)が、検視を行っている。この局では年間に6,500件もの検視を行い、その内2,400件は犯罪絡みだそうである。ロスの検視局といえば、古くはマリリン・モンローやナタリー・ウッドの事件、最近ではO・J・シンプソンの事件などで世間に知られている。特にモンローとウッドの事件を担当した日系検視官のトーマス・ノグチ氏の名前は世間に知られている。ナタリー・ウッドが変死した際に、彼は上層部から「記者会見を行ってはならない」と厳命されていながら、「自分は人々に仕える身であり、人々には知る権利がある」として記者会見を行い、上層部ともんちゃくを引き起こした。今日では情報公開は当たり前だが、保守的だった当時としては進んだ考え方の持ち主だとして今でも評価する声は多い。

何となく近寄りがたい感じの検視局だが、そこは何でもジョークのネタにして楽しんでしまうアメリカ人のこと、何とLAの検視局ではギフトショップを運営している。商品は、Tシャツや帽子、タオルなど普通のギフトショップと変わらないが、目玉はそれらに描かれたマーク。死体の輪郭を床の上にチョークで描いた模様なのだ。どことなく佐々木マキによる村上春樹の単行本の表紙イラストみたいな感じで、思わず笑ってしまうけど、よく考えるとちょっと恐い。こういうバスタオルが床に敷かれていたら、あまりその上は歩きたくないですよね。玄関マットもあるけど、そんなのが玄関に置いてある家の前はちょっと通りたくない気がする。

このほか、同マーク入りのサンバイザーやコーヒーカップ、"ボディバッグ(死体袋)"と書かれたスーツ入れとか(実際には検視局では、死体を入れるのにボディ・バッグは使わず、プラスティックのケースを使うんだそうです)、「LA検視局にはハート(ハートマーク)があります」のロゴ入りエプロンなんてのも売ってる。

ちょっと日本では考えられないユーモアのセンスだけど、局の人たちは大まじめである。商品カタログを作ったり(日本語など数ヶ国語の版があるそうだ)、郵便による注文にも応じており、なかなか営業熱心である。けっこう馬鹿にならない売上があがっているのだそうだ。ちなみに収益は、酔っ払い運転を起こした若年運転者の更正プログラムに使用されているとのこと。ギフトはホームページでも販売しており、URLは、http://www.lacoroner.com/corninfo.html。なおホームページでは、検視局に送られた死体の受取方法など、FAQを載せている。ホームページでは死体の写真などはもちろん載せてはいないので、念のため。直接の問合せは、電話(323)343−0760、Los Angeles County Department of Coroner, 1104 North Mission Road, Los Angeles, CA 90033まで。

 


バスタオル


玄関マット


エプロン


旅行用スーツ入れ

もう一つ紹介しよう。LA検視局に30年勤めてきたスコット・キャリアーさんは、死体の身元を記入して足に結びつける「Toe−Tag」を、プレゼント用に販売している。これは元々LA市警などで、退職する人間へのユーモラスなプレゼントとして使用されていたものだが、本物そっくりのTagが木製の台座に貼り付けてある。Tagにはサンプル写真のように、相手の名前と就業期間を入れることができる。価格は、米国内なら送料と手数料込みで27ドル。
ネット販売もしており、 URLはhttp://www.toe-tags.com/。ただし、洒落としてはかなりきついから、贈る相手は慎重に選びたいところだ。スコットさんの連絡先は、電話(562)420−3537、FAX(562)425−8615。ちなみに彼の名刺もTag型である。

(2000年11月8日)


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2000年11月9日改訂