ミニエッセイ

 [震災と復興]

Written by 中原 憬
 


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震災と復興に関するとりとめのない日々の短い雑感です。

2011.08.11 更新


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合唱「あすという日が」を聴きながらどうぞ



No.14 日本の底力

アメリカのある世論調査機関が東日本大震災に関して、日本国内の
日本人に対して実施した世論調査の結果があります。

震災を経て日本は「強くなる」と考えている人が58%、
「弱くなる」と考えている人32%。

多くの人が、日本の底力を信じています。



No.13 福島第一原発の地下の汚染水

いま、福島第一原発の原子炉を冷却するために膨大な量の
水が注がれ続けている。そして、メルトダウンした穴から
漏れ出した汚染水は大量に建屋内に貯留している。

ところで、福島第一原発の建屋の中には、人が出入りする以上、
手を洗うところもあるだろうし、トイレもあるだろう。

下水管のない建物はないだろう。

排水口が水没しているところにあれば、大量の汚染水が
敷地の外にだだ漏れなのではないかと心配。

敷地内の下水ろ過槽経由で、海や地下に流れ出ているかも知れない。

「原発で事故は起こらない」という考え方では、原発の下水管にまで、
バルブを取り付けているとも思えないし、ましてや、放射線を含んだ
大量の汚染水が建屋内に溜まるなんていう事態は、想定外だろうし。

それに、建屋が巨大地震にあった上に、津波が直撃しているのだから、
建物の地下にヒビの一つや二つ入っていても何の不思議もない。

計算上、行方がわからない汚染水は膨大にありますよね。

※     ※    ※

私が小学生の頃、先生の机の上の鉢植えに水をあげたことがあったのだけど、
あれ、水をかけてもかけても、いくらでも吸収してしまう。不思議だな〜
水はどこに?と思いつつ、結構な量の水を鉢の上から注ぎ込んだ。

当然の結果として、その水はしばらくして鉢の下に敷いた皿から溢れ出し、
先生の机の上をびしょびしょにしてしまった。ずいぶん怒られたっけ。



No.12 下水汚泥の放射性物質

いま、全国の下水処理施設から下水汚泥の放射線汚染が報告されている。

福島県はもとより、茨城県、神奈川県、東京都、長野県など、
各地で放射性セシウムが検出されている。

これは、広範囲に地面に降った放射性物質が雨で地表から流されて、
下水管を通って、下水処理施設に集中するからだ。

今後、各地の下水処理施設での放射線対策が重要な問題になっていくと思う。

でも、逆に考えれば、飛散した放射性物質が特定の場所に集まってきて
いるのだから、願ってもないことだろう。この下水汚泥さえきちんと
処理する体制を整えれば、降り注いだ汚染物質の拡散を防ぐことができる。

下水処理の監督官庁は、国土交通省らしい。
こちらのページに「下水処理副次産物」について報道発表がある。

「福島県内の下水処理副次産物の当面の取扱いに関する考え方について」

ぜひ、しっかりとした対策を考えてほしい。



No.11 東京電力から原子力損害の補償を受ける方法

東京電力のサイトに、原子力損害の「被害概況申出書」という
補償金を請求するための帳票が置いてあります。
帳票の記入見本もあります。

ここです。<原子力損害の補償全般に関するご相談の専用窓口について>

※     ※    ※

原発事故のせいで、故郷や自宅から退避しなくてはいけなくなった人達にとって、
いくらお金をもらっても取り戻せないものもあるでしょうが、
とりあえずは補償金をもとに新しい生活を築き上げていきましょう。



No.10 瓦礫から生まれた有名観光スポット

横浜市民の間でもそれほど知られていないことなのですが、
横浜の顔として有名な山下公園は、関東大震災の瓦礫を
海に埋め立てることで作られたものです。

関東大震災の震源地は神奈川県相模湾沖80km地点であり、地震の
直接の被害は、東京府よりも神奈川県の方により大きいものでした。
全潰の住宅棟数は、神奈川県 63577棟、東京府 24469棟
(Wikipedia 「関東大震災」より)となっています。

横浜市は、街が一面の瓦礫となりました。
東京府に比べ、火災被害が少ない分、瓦礫も多かったはずです。

重機もない当時、この膨大な瓦礫の処分方法として選ばれたのが、
海に新しい埋立地を作ることだったのです。

こうして1930年に日本初の臨海公園「山下公園」が誕生したのです。
当時の山下公園は、震災復興のシンボルだったのでしょう。
1935年に復興記念横浜大博覧会が開催されています。

現在の山下公園は港横浜を象徴する一大観光スポットです。
多くの市民や観光客が、この場所を愛し、憩いを得ています。

瓦礫の有効活用として、これほど成功した例もないでしょう。

※     ※    ※

東日本大震災の津波で、一面の瓦礫となってしまった地区には、
日本中、いや世界中の人々の関心が寄せられています。
防災や復興のシンボルとなる観光資源を作れば、復興を願う
世界中の人々が支援を兼ねて訪れるようになるのではないでしょうか。



No.9 津波に対する構造物 その1

津波を正面から受け止める構造物には限界があると思う。
その破壊力はあまりに凄まじい。

大規模なペディストリアンデッキを構築するのはどうだろう。
高さ10メートル程の所に人工的な土地を造りだし、そこに街を構築する。

柱で支える高架構造とすることで、津波との接点を最小限のものとする。
デッキ上の土地は格子状とし、地面の日照を確保するとともに、
津波時の浮力の発生を避ける。

10メートル超の津波であっても、上層部は浸水時間を少なくすることができる。
格子状の穴の周りにある転落防止の柵が流出防止にもなる。

全体を緩やかに連結させることで、耐震性を持たせ、かつ、
全体のマスの重さで津波に耐える構造とする。

さらに、格子状に空いた空間の下の地面に、柱を守るとともに、波を上向きに
打ちあがるようにする消波コンクリートの構造体を多数設置する。

構造的には、地下街や高層ビルを作るより簡単だと思う。

日本のペデストリアンデッキ一覧(Wikipedia)

同じ街に、同じ広さの安全な区画を提供できれば、住民も不満はないと思う。
瓦礫を完全に片付けなくても、元の住居の近くに住み続ける場所が生まれる。

ゼネコンに本領を発揮してもらう場を作れば、地域の安定した労働需要も
生まれる。地元の国会議員のやり慣れていることであるだろうから、
国に予算を出してもらうよう動いてもらい、国家予算を投入してもらう。

日本の防災に対する技術力を世界各国に誇示できる防災都市を築き上げ、
その街の名が、復興と回復のシンボルとなる日をめざす。

※     ※    ※

ところで、中国の四川地震の震源地に近い北川チャン族自治県は、
街の瓦礫がそのまま「地震教育基地」として永久保存され観光地化されている。
住民は新しい街に移住し、一面の廃墟は、多くの遺体とともにそこにある。

ちょっと考えるとなんて乱暴なやり方だろうと思う。
でも、もし私が、遺体の見つからない遺族だったらどうだろう。

休日の度に遺体を探していれば、いつの日か、それが遺骨となっていても
我が家族と再会できるかもしれない、と思わないだろうか。

突然この世から消え去った街の痕跡残しておきたいと思わないだろうか。
一つでも多くの遺品やアルバムを見つけたいと思わないだろうか。

※     ※    ※

ペディストリアンデッキで、街を震災前と震災後の層に分けるのも一案だと思う。
期限を切って、1層目の瓦礫はそのままとする。
許可を得た地元の人しか入れないようにする。

2層目に防災メモリアルパークを作り、観光客にはそこから1層目を眺めてもらう。
ただし、例えば5年後を目標に、1層目の瓦礫はきれいに片づけ、模型と置き換える。

それまでに復興を遂げる。



No.8 津波に対する構造物 その2

津波を正面から受け止める構造物には限界があると思う。
その破壊力はあまりに凄まじい。

海岸線沿いに深い濠(ほり)を掘るのはどうだろう。
深さ50メートル程、幅30メートル程、長さ数キロメートルの巨大な溝。
表面は、金網状のもので一面を覆う。

第一波の津波は、いったんこの濠に落ちるため、威力を削がれる。

この濠に海水が流入して浸水すると、濠の中に格納されている
防波壁がフロートにより浮力を与えられ、自動的にせり上がる。
せり上がった防波壁は、第二波以降を阻止する。

防波壁は、数十メートルの深さでもって、地盤と一体化させた構造体の溝に
はめられて支えられているため、防波壁自体が薄いものであっても、
津波によって容易に破壊されることがない。
ある程度せり上がると複数の防波壁が折れ曲がり、
相互にロックされる構造にして強度を確保するのもよい。

この「フロート式防波壁格納型 防波濠」(←名前を付けてみました)は、
平時は防波壁が、濠の中に収納されているので景観や通行を損ねることがない。

雨などが流入してくるので、常にポンプで排水をしなければいけないのがデメリット。
あと、河川が流入している場所では、工事が難しいですね。

(特許取ろうと思ったら、すでに類似案件がありますね。残念)



No.7 奥尻島 青苗地区の復興方法

1993年7月12日、北海道の離島、奥尻島はマグニチュード7.8の
北海道南西沖地震に襲われ、地震発生から
5分と経たないうちに大津波が押し寄せた。

三方を海に囲まれた青苗地区は、高さ6.7mの津波によって
事実上壊滅状態になった。

その後の、青苗地区の復興方法が文藝春秋1998年10月号に
載っていたので、それを引用する。

  330戸が全壊した青苗地区では1坪2万3000円で住民に
  土地を売ってもらいました。その上で造成し改めて
  同じ値段で1軒あたり70坪づつ買ってもらった。

           〜奥尻島 町役場 災害復興対策課 菊地洋栄 主幹 談

津波で壊滅状態になった地区の復興方法の参考になると思う。



No.6 脱原発のために企業ができること

信用金庫2位の城南信用金庫(東京都品川区)は、
「脱原発」へ向けた預金や融資を始めると発表した。

太陽光発電のためのソーラーパネル、自家用発電機、蓄電池、
LED照明のいずれかを10万円以上買って領収書を出せば、
利息を大幅に引き上げた定期預金を利用できるという。

また、ソーラーパネルを導入するためのローン
金利を通常より低く設定した。

社会の将来を高い位置から見据え、地域社会に
貢献する素晴らしい施策だと思う。
このような企業の活動が広がればと思う。



No.5 牛乳の放射能汚染が意味するもの

原発の爆発直後に、牛乳から放射線が検出されたという報道があった。

牛乳の組成は血液と非常に似ている。牛の体内で血液をろ過するような形で
作られているものといってもよいのだという。
一時的にせよ、牛の血液が汚染されていたということだろう。

牛の血液が汚染されていたということは、
一時的にせよ、牧草が汚染されていたということだろう。

牧草が汚染されていたということは、
一時的にせよ、地表に葉を出している植物がすべて汚染されていたということだろう。

たまたま、牛が地表に広がっていた植物を多く体内に摂り入れたため、
たまたま、牛乳に現れたに過ぎない。

また、逆方向の流れとして、牛の血液が汚染されていたということは、
牛の体も汚染されていたことになる。

国内生産の牛肉の約1/4は、搾乳された後の乳廃用牛だそうだ。
何頭かの個体は、すでにハンバーグや餃子の具になっているかも知れない。

なにか一つのものだけが汚染されるということはありえない。
汚染が広がっていく時間差があるだけだ。

よほどうまく封じ込めていかない限り
人間も例外ではない。

なにしろ、食物連鎖の頂点にいるのはニンゲンだから。



No.4 ほうれん草の放射能汚染が意味するもの

原発の爆発直後に、ほうれん草から放射線が検出されたという報道があった。

たまたま、ほうれん草が葉を広げる食用の植物であり、
たまたま、この時期に露地栽培で葉を大きく広げていたから。

ほうれん草の葉に降らなかった分は、大地に降ったということだろう。

もちろん、ほうれん草だけに降った訳ではない。



No.3 コウナゴの放射能汚染が意味するもの

魚類に対する放射能汚染の検査で、とりわけコウナゴと
いう小魚の放射能の濃度が高いと報道されている。

なぜ、コウナゴの濃度が高くなるかというと、魚肉部分を
分離するのが難しく、表面や胃腔内の海水を合わせて
分析していることが理由のひとつという。

コウナゴの汚染は、遡っていけば、餌である動物プランクトンの汚染、
その餌である植物プランクトンの汚染、そして、海水の汚染に行き着く。

そもそも大前提の海水が汚染され続けているので、今後、より
大型の魚に汚染が拡大していくことは止めようがない。

あくまでも、このレベルまで浸透したという話でしかない。
コウナゴだけが汚染されている訳ではない。



No.2 東京電力のCM

東京電力のマスコットキャラクター、でんこちゃんは、
関東地方の人にはおなじみである。

夕方のニュースの時間になると、でんこちゃんのCMが入り、
上手な電気の使い方や節電の方法を説明してくれる。

さて、そもそも、東京電力は競合企業がいないのに、
CMを打つ必要はあるのだろうか?

なぜ、ニュース番組のスポンサーになっているのだろうか?

たとえば、飲料メーカーがスポンサーになっている番組では
競合他社の飲料がフレーム内にあると、ボカシが入れられ、画面には映らない。

なにやら、ニュース番組でもボカシの入った情報を提供
されているのではないか、という気がしないでもない。



No.1 日本に適した発電方法

地質学者の人がある原発を評して「豆腐の上の原発」と
表現したことがあるという。

もともと地震列島である日本に、原子力発電が適さないことは、
自明の理である。しかも、海岸沿いに原発を造っているので、
福島第一原発の例のように、津波に襲われるリスクも高い。

日本は、地震大国、すなわち火山大国なのだから、
地熱発電が最も理に適っていると思う。

また、国土の急峻さから、水力発電も適している。
特に、夜間電力でダムの水を引き上げる揚水発電を
活用すれば、夏場の電力ピーク時に最も効果的に
対応できるのではないだろうか。





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