TVの国からこんにちは(宝島連載コラム)の一部

【前口上】
 ヘアヌード雑誌になる前の雑誌〈宝島〉で、3年か4年、「TVの国からこんにちは」っていうTVコラム(最初は違うタイトルだった気がする)をやってたことがあって、昔の原稿をひっぱりだしてみると、これがけっこうおかしい。なにしろなんにも覚えてない番組が半分以上だもんなあ。
 時期的には会社辞める前後だから、1989年ぐらいから93年のはじめぐらいまで。掲載誌を掘り出せばいつの原稿かもわかるだろうけど、めんどくさいので順番もテキトーで再録する。これでぜんぶってわけじゃないし、一部TVブロスの連載原稿が混入している疑いもあるけど、害はないからだいじょうぶさ。
 ちなみに宝島の最初の担当編集者は柳下毅一郎。彼が会社を辞めたあと、担当は4人か5人変わった気がするが、もうよく覚えてない。
 ちなみにこのTVコラム終了後は、「ニュースなキーワード」っていう時事ネタコラム(見開き連載)を2年ぐらいやってました(93年3月〜95年1月)。すげえ昔のような気がするけど、最後のネタは阪神大震災だったのか。

 しかし「TVの国から」見てると、この頃がいちばんくだらない原稿書いてた気がするね。リクエストがあればブロスの連載とかもhtml化します。「衛星電波新聞」とか。あ、ビデオコレクションとかもっとバカなネタやってたんだよな。



●綺麗になりたい

 ド〜はド〜ラマのド、レ〜は連続のレ〜ってことで(渋公のユニコーンを見てきたばかりで脳ミソが破壊されている)、秋の連続ドラマである。
 宝島の原稿のためと称し、10月は連ドラ新番9本を毎回カウチに正座して視聴する馬鈴薯OL化していた大森だが、ゲームといっしょで連ドラにも麻薬的な習慣性があるらしく、9時になるといつのまにかテレビの前に吸い寄せられてしまう自分がこわい。つい見ちゃうんだよなあ。そいでもって知り合いの不良主婦と、
「やっぱりさあ、『いとこ同志』の高嶋弟ってやめてほしいよな」
「あいつ、『Jr.愛の関係』からすっかりおかしくなったんじゃないの」
 うんぬんと長電話してるんだから、頭はほとんど昼下がりの給湯室状態。
 そんなわたしが自信をもって一押しするのは、意表をついて日テレ「綺麗になりたい」。ついつい無意識に、すむすむすむすすむーすすむす、すむすすぐすむよゆーのすむすと鼻唄を唄って道行く通行人をふりかえらせてしまうほどの中江有里フリークとしては(ちなみに、スムスの新バージョンCFはいまいちだと思う)、中江のためだけに存在するようなこの番組を推さずにいられようか、いやいられない。
 話題のエステをとりあげる企画の安易さ、設定の荒唐無稽さ(なにせ中江は、エステ・チェーン経営者と、その不倶戴天の敵である女流エッセイストのあいだの隠し子なんだぜ)は、まるで8時台ドラマのノリ。いかにもテレビくさいつくりなんだけど、遊びまくったカット割りとカメラ、意図的に芝居を過剰にした演出でクサさの排除に成功。ほとんど綱渡り的なこの芸はおみごと。1回めじゃスムスCFを引用してみせるワザまでくり出してくれて、全国823万の中江フリークは感涙にむせんでることでありましょう。
 さて、今回の新番じゃ、関西系ライターの雄・西岡琢也の脚本作品が2本。CXの「ウーマンドリーム」がなにかと注目されているようですが、ホームコメディに新境地を開拓したTBS「木曜日の食卓」も悪くない。結婚前の長女・夏川結衣の部屋から妊娠検査薬が見つかって大騒動の最中に、長男・西嶋秀俊がよそさまの結婚式場から新婦の富田靖子をかっさらってきてしまう(考えてみりゃこれもCFネタだな)オープニングは大爆笑。展開の読めないローラーコーター・ホームドラマとして高く評価したい。



●カルトQ

 わっはっは、「カルトQ」の予選に行ってきたぞ。この秋からプライムタイムに進出、〈宝島〉でインタビューしたうじきつよしが司会をつとめる、あの「カルトQ」である。テーマはSF映画=BほんとはSF≠フ募集にハガキ出してたんだけどね、まあ活字のSFじゃ絵にならんから、映画に流れるのもいたしかたあるまい。
 しかし、テーマがSF映画じゃねえ、10年前ならいざしらず、記憶力の減退は著しく新作もろくにフォローしてない現状では、とても本選に勝ち抜くどこじゃない。それならってんで、まわりのSFおたくに電話をかけまくり出場希望者をリクルート(応募者が少なかったのか、このときは、知り合いを何人連れてってもOKだった)、終わったあとボウリング&カラオケにくりだす手筈をととのえて、気分はすっかり物見遊山。
 秘密兵器としてスカウトした元スターログ編集部のおたくライター渡辺麻紀が、突如出題者にまわってしまうアクシデントはあったものの、とある土曜の午後3時前、都営新宿線曙橋から、フジテレビ通りをてくてく歩いていたと思いねえ。と、向こうから、
「あらあ、大森さんっ!」の声。
 これはこれは、アスキー映画宣伝部のM嬢じゃありませんか。
「えーっ、大森さんもカルトQ? あたし全然だめだったの。ねえねえ、問題教えてあげよっか。最初はねえ、『映画「2001年宇宙の旅」でディスカバリー号は木星をめざしたが、小説版での目的地はどこか?』」
 それを聞いてわたしはひとこと。
「あ、知ってる、その問題」
 なんと、前日のぞいたパソコンネット、NIFTY-ServeのSFフォーラムにアップされていた、前の週の予選問題とまったくおんなじだったんですねえ。しかし、当然新しい問題が出ると信じて、まったく答えを調べてなかったお粗末。いくら問題がわかってても答えがわからないんじゃしょうがない。「エイリアン」に出てくるアンドロイド、アッシュの形式番号は? なんて知るかつうの。はては原作のSF作家名のミドルネームまちがえて、採点にきていた知り合い(元宝島編集部。この欄の初代担当者だったりする)にはさんざんバカにされるし、ああ情けない。結果はご想像のとおり、100点満点で33点の惨状。一応、補欠ですの連絡が来たけど、結局あえなく落選。ちくしょう、いまに見てろよ。



●参院選報道特番

 昨日は――ってのは7月26日のことだけど、ほんとに大変だった。前日からのJSB「ツイン・ピークス」最後の再放送28時間連続上映をずーっと録画してる合間に、午前3時からのバルセロナ開会式を見ながら徹夜で仕事、ふらつく頭で参院選の投票に行って、帰ってきたらNHK衛星で鈴鹿の8耐、そのあと地上波に切り替えて全米女子オープンをのぞき、また衛星にもどして水泳女子の予選。千葉すずちゃんの体調を確認して、いよいよ夕方からは地上波選挙報道合戦ウォッチングに突入(テレビ東京系をのぞく)。
 とはいえ日本×アメリカのバレーを見逃すわけは当然いかず、メインのモニターはBSにつなぎっぱなし(勝ったはずの試合を審判ミスで落とし、怒り狂った愛国者の大森ですが、翌日の裁定で逆転勝利。ざまあみやがれ、サミュエルソンのハゲめ!)サブの14インチだけじゃまにあわず、書斎用の液晶テレビはもちろん、セガ・ゲームギアにまでチューナーパックを装填、合計4台で体制を整える。
 さて、問題の全5局が参加「参院選報道番組祭り」、一番に抜け出したのは、日テレ「選挙ジャンクション」。なにしろ投票締切の6時より早くはじまったんだから、よそは相手にならない。「15万人出口調査による結果予測」で、開票開始前に各党別当選者数を出してしまう大胆さもマル。ジャイアンツ戦中継をパスできない弱点を逆手にとったこのゲリラ戦術は称賛に値する。またこの予測が、追加公認をのぞくと、自社の当選者数はヒトケタ台までピタリ的中。これなら開票速報はいらないって話もあるが、選挙&ナイター♀驩謔ヘとりあえず大成功。
 7時からは他の4局もいっせいに選挙スペシャル。大橋巨泉を総合司会に起用、筑紫哲也をサブにまわしたTBSには、いきなり海部俊樹と土井たか子が登場。いささか出しゃばりすぎのキライはあるものの巨泉が意外にソツなくまとめ、ゲストの派手さで健闘。 横綱相撲を見せたのがテレ朝の「選挙ステーション」。個人的に福岡政之びいきなのを割り引いても、「ニュースステーション」を持っている強みで、サラリーマンが安心して見られるつくり。一方、国会議員とタレントの人数ばっかりそろて、なにをやりたいのはよくわからなかったのがフジの「スーパータイム選挙スペシャル」。早坂茂三の超イヤミな発言が異彩を放っていた程度で、上岡龍太郎、大竹まことも実力を出せず。F1ドイツGPとツールドフランスの決勝まで重なり、同情の余地もあるんんだが、そうこうするうちに水泳の決勝、アメリカチームの出るバスケの予選がはじまり、テレ朝は朝ナマ選挙版に突入、参院選の夜は更けていくのであった。(テレビの数が足りなくて、NHKはパスね)



●高校野球

 いやあ、明徳もやってくれるよな、今大会唯一の大物、星稜の松井を5打席連続敬遠! 甲子園は「帰れ」コールの嵐が吹き荒れ、勝った明徳の校歌も聞こえない騒ぎ。九回表2アウト三塁での敬遠には、スタンドから投げ込まれるメガホンで試合中断。高校野球じゃたぶん前代未聞の椿事で、思わずベンチに吉田監督の姿をさがしたのはわたしだけじゃないと思う。高校野球の虚飾をみごとに暴くこの快挙!
 そうだよな、カネもらって技術見せてるプロじゃないんだから、勝つためにはなにしようが文句いわれる筋合いはない。NHKのアナウンサーまで星稜びいきの実況しやがって、ざまあみろだ、へへん。高野連もあわてて記者会見するくらいなら、「走者なしの状態での敬遠は禁止」とか、高校野球専用ルールつくりゃいいんじゃないの。そうなりゃ当然、スクイズや盗塁のセコいプレイも禁止だね。変化球も根性が曲がってるから禁止。肘に負担がかかるし、高校生なら直球で勝負だ。
 だいたい、明治の昔の野球害毒論を持ち出すまでもなく、高校野球なんて教育にいいわけないじゃん。血と汗と涙の甲子園だなんだの、美談好きの日本人がよってたかってつくりあげた壮大なフィクションが、5打席連続敬遠の前にもろくも崩れ去ってゆくこの快感。明徳ってのは他県から選手ひっぱってきて強くなった高校で、高知県内じゃいまいち人気がないんだが、今日からはわたしが味方だ。
 ――と、アマチュア精神にうしろ足で砂をかけた明徳の話をマクラに、それとおなじことをオリンピック舞台にやってのけたサマランチの話からバルセロナにつなぐつもりたのに、今回から行数が三割減で、もうスペースがない。アルベールビルにつづいて、NHK衛星じゃ目加田頼子アナのご尊顔を毎日見られてしあわせな大森でしたが、ペロタはもっと見たかったな。



●逃亡者

 D・ジャンセン主演のABCの名作「逃亡者」が姿を変え、日本のお茶の間に復活! といえば当然、いま話題沸騰の「逃げなきゃキンブル」。つのだひろをキンブル役にすえる大胆なキャスティング、近未来の管理社会という先鋭的な設定、しかもその実態はただのビデオ紹介番組という意外性。「ビデオの王様」「ビデオの女王様T・U」とつづいてきた大人気の長寿シリーズを切り、排水の陣ではじめた「逃げなきゃキンブル」、さすがCXの一押しだけあって力がはいっている。
 ――ってのは真っ赤なウソで、といってもほんとにウソなんじゃなくて、ドラマ仕立てビデオ紹介番組の極北、「逃げなきゃキンブル」は毎週水曜26時からCXでちゃんと放送されてるけど、しかし、「ねえねえ、フジの逃亡者見てる?」「うん見てるよ、つのだひろの深夜番組でしょ」というやつは日本に13人くらいしかいないと思う。「逃亡者」といえば、田原俊彦主演の連続ドラマ、というのが1992年夏のこの国の常識なのである。なんせ、8月頭放送分では、岡林信康がゲスト出演でペンションの主人を演じたりするそうだから、もうたいへん。とくに第一回の、タイトルバックにがんがんシーンをつなぐ時系列をバラしたカットバックなんか、ほとんど日本の連ドラの掟破りって感じで、あまりの気合いに思わず正座。朝日のラテ欄なんか、「物語は田原俊彦がコンビニでパンを万引きする場面からはじまる。えーっ、トシちゃんにそんなひどい役やらせるなんて、という女性ファンの悲鳴が聞こえてきそうだがうんぬんかんぬん」(引用不正確)と、時代錯誤ぶりを露呈してまで絶賛してたくらいで、、とにかく話題作なわけだ。
 しかし、「宝島」読者で、オリジナルをちゃんと見てた人は、公称45万部(『92年版雑誌新聞総かたろぐ』より)のたぶん3%くらいだろうから、残る97%のために、米国ABC放送制作「逃亡者」の概略を説明する。
 話はかんたん。女房殺しの汚名を着せられた小児科医リチャード・キンブルが、警察に追われつつも、真犯人らしき片腕の男≠探す。これがなんと、足かけ4年、120回も放送され、外国ドラマ視聴率のトップに君臨しつづけたんだから昔のことはよくわからない。最終回の真相は番組を盛り上げるためひた隠しにされ、ABCから来たマスターテープは金庫に保管、TBS関係者は都内某所のホテルに缶詰めで翻訳作業を行い、アフレコは放送の前日という体制で情報管制をしいたとか。その結果、67年9月の最終回視聴率は31・8パーセントを記録。
 2回目以降、設定の無理がたたって急速に失速しつつあるかに見える田原版「逃亡者」、はたしてオリジナルの人気を抜けるか。刮目して待て。



●ブラストマン

 ゲーセンの「ストUダッシュ」で日夜見知らぬ相手とのストリート・ファイトを繰り広げてると、やっぱ時代は肉体やね、てな感慨が胸に去来する今日この頃。電子メディア全盛時代に生身のカラダはもう古い――てのは素人考えで、「スーパーマリオ・カート」でピーチ姫とデッドヒートすりゃカートに乗りたくなるし、「スーパーダンクショット」で3ポイント・シュート決めりゃバスケットがやりたくなる。世の中うまくバランスがとれてるわけですが、しかし「ストU」を遊んだ勢いで、歌舞伎町の台湾ヤクザにケンカを売るのはリスクがやや大きすぎる。 そこで(うそ)、機を見るに敏なフジテレビが「ストリートファイト」を隠しコンセプトにスタートさせたのが、東京ローカル月曜深夜の肉体激突番組「ブラストマン」。ゲーセンおたくなら、3発殴って地球を救うタイトーの「ソニックブラストマン」のテレビ版かと早合点しそうだが、さすがにそこまで単純ではない。メガロポリス東京の某所地下に夜な夜な集まる腕自慢たちが、肉体と肉体をぶつけあって、真の強者を決める――というわけで、下敷きは「バトルランナー」。局サイドでリングや舞台装置を用意し、新ルールの肉体競技で格闘させる趣向。話だけ聞いて、アチラのおばけ番組「アメリカン・グラディエーター」のパクリかと思ってたら、サイバーな美術と仕込みの出場者のおかげで、意外とオリジナルな仕上がり。
 バトルは全部で三種類。逆向きに動くコンベアに乗り、巨大な棒で殴りあう「ラニング・マン」(「バトル・ランナー」の原題ですね)。摺り鉢の底をコートにした変形バスケット「ボール・ボウル」。そして、軸で固定されたバーを押し合い、相手をリングから落とせば勝ちという超シンプルな力くらべ「ヘラクレス」(どうでもいいけどこのタイトルロゴ、欧文のスペルがまちがっているのが情けない。uが一個足りないよん)。
 チームは男2女1の3人一組。天龍門下WARの若手プロレスラー・チームが、アメフト社会人のリクルート・シーガルズ3人組に惨敗したり、出場者の顔ぶれはきわめて豪華。競技の単純さにもかかわらず思わず手に汗握ってしまうのは演出の勝利か。
 十月からは本家「アメリカン・グラディエーター」の放映がテレビ東京で始まるみたいだし、肉体激突番組の日米決戦の帰趨やいかに。刮目して待て。



●ザ・ゲーム・シティ

 バイト代注ぎ込んだ「X」が2日で終わって茫然としている諸君も多いと思う。じっさい、28時間はあんまりだよな。ま、クリアしたソフトを発売翌々日にソフマップへ持ってって八千円で売り飛ばした商売人もいるようだけど、「キラーパンサーが倒せないの」とかドラクエ命の電話をかけてくるやつがあとをたたないから、手放すわけにもいかない。もっとも最近のドラクエは、よーいドンではじめて一番でクリア、「えーっ、一週間もやっててまだ終わんない? ゲームに向いてないんじゃないの?」と罵倒して友達なくすくらいしか存在価値のないゲームだから(誇大表現)それでもいいんだが、あいた時間を埋めるべく、アスミックの人からサンプルをもらった11月発売のスーファミRPG「レナス」をぼちぼちプレイするあいかわらずのゲーム三昧。世の中にはどうもこういう人間が多いらしいと気づいたのか、テレビ界もこの10月の改編では、ゲーム情報番組が続々スタート。
 ゲームはテレビの商売ガタキ、敵に塩を送れるかってんで、これまでTVゲーム関係っていうと、なりふりかまわぬテレビ東京が流す夕方の子ども向け情報番組があるだけだった。ところが、バブル崩壊でスポンサーが減ったあおりか、この秋からは、テレ朝、TBS、WOWWOWの三波が参入。個人的には、高橋幸宏・生稲晃子コンビが司会するWOWWOW「アトムの気持ち」(日曜夕方ノンスクランブル)に期待大だけど、これは10月2週からで締切に間に合わず。今回は、ラッキィ池田・松居直美のテレ朝新番「ザ・ゲーム・シティ」をチェックする。
 日曜深夜の時間帯からして、ディープなゲームフリーク向けかと思ったら、ディープ度ではテレビ東京の小学生番組にも遠く及ばない。一般参加者5人集めて「ストUダッシュ」対決はいいけど、各自コンピュータ相手の制限時間内ハイスコア競争って、おまえそりゃないだろ。せっかくゲーセンおたく専門誌『ゲーメスト』の人間呼んできて、最近の業務用シューティングじゃピカいちの「マクロス」やらせてんのに、最初のボスキャラも見せないんだもん。おめえら、ゲームをなめとんな。先行番組テキトーにぱくってあとは芸人出しときゃいいだろ的姿勢はアマい! ま、カプコン、コナミ、タイトー、アイレム、バンプレストの五社提供ってことで、CFは楽しめますが、番組関係者には猛省を促したい。



●スーパーマリオ・クラブ/そのまんま東のバーチャル情報局

 最近、テレビ東京の元気がいい。日経資本のせいか、ゲリラ戦術が得意の割にエッチ系しゃ弱かったんだけど、お上品な深夜枠に開き直って殴り込んだ「ギルガメッシュないと」が大当たり。細川ふみえや飯島愛がすっかり全国区タレントになったと思ったら、この秋からは全国ネットに昇格。にもかかわらずまったく平常心(?)を忘れてないところが美しい。
 うちの近所(西葛西)じゃ、この夏フランス料理屋とタイ料理屋が同時につぶれてどっちも焼肉屋に変身したんだが、バブル後に残るのはやっぱり食い気と色気。この不況を乗り切るのは、金をかけずに胃袋と下半身を満足させてくれる焼肉&エッチ系テレビやね。ってことで、「ギルガメ」には「独占!おとなの時間」アゲインを期待したいが、深夜のもう一方の看板、「浅草橋ヤング洋品店」はなんと日曜のゴールデンタイムに進出。逆境を逆手にとった攻めの姿勢に拍手を送りたい。
 ゲームの話になるとつい理性を失って、前回はテレ朝の「ゲームシティ」を罵倒した大森ですが、ゲーム番組でも老舗・テレ東のがんばりは立派。渡辺徹司会の「スーパーマリオ・クラブ」は一時間の改編スペシャルで、日米ファミコン名人対決を実況。結果は全米22万人の戦いを勝ち抜いたジェフ・ハンセンくんの圧勝だったけど、やっぱ見せ方の年季がちがうもん。
 そのテレ東の新番「そのまんま東のバーチャル情報局」は、ゲーム・オリエンテッドな子供向け情報番組なんだが、こいつもおもしろいぞ。花島ポワトリン@D子のアシスタントぶりが絶妙で、「バーチャルっていうのは、とにかくハマっちゃう、のめりこんじゃうもののことなんですね」の解説には感動。NEC/ハドソンのPCエンジン陣営が提供してるため、ロムロム中心になっちゃうとこが弱点だが、つくりは堅実でスタッフもノリノリな感じ。「ゲームシティ」もこれを見習ってほしいですね。
 だが、こうしたテレ東ゲーム番組路線とはまったく無関係にスタートしたのが、高橋幸宏司会のWOWOW「アトムの気持ち」。スポンサーなしの極限的低予算番組だけに、ユキヒロのキャラクターだけで30分もたせる画期的ポリシー。Mac使ったアニメコンテストなんか、賞金5000円だもんなあ。しかも品質は「スーマリペイント」以下。このチープさかげんが衛星放送で楽しめる、いい時代になりました。



●バナナチップス・ラブ

 十月といえば、いよいよ番組改編のシーズン――と、柄にもなく月並みの極致的フレーズで書き出してしまった以上、月並みな新番組を持ってきたら世間様に顔向けできないんだが、天網恢恢疎にして洩らさず(=大森の原稿は一見ザルだが意外と抜かりはないんだぞ、の意)、今回紹介するCXの「バナナチップス・ラブ」は、そんじょそこらの番組とはわけがちがう。
 そのユニークさは、いま手元にある番宣資料を見るだけでも一目瞭然。なにしろ、10月17日から12月26日まで、毎週木曜放映の全12回(ちなみにこの間には、ふつうの人が数えると木曜日は11日しかない)、しかも、午前0時40分から1時10分までの一時間枠ときたもんだ(ちなみにこの間には、ふつうの人が数えると時間は30分しかない)。さすがにフジテレビ、やることがいちいちふつうじゃない。
 これだけの情報だと、ひょっとして番宣資料をつくった人がふつうじゃないだけなんじゃないの、という疑惑を持つ読者がいるかもしれないが、中身のほうだって半端じゃないぞ。全編ニューヨーク・ロケ敢行、日本人若手俳優のほか、あのサンキ・リーをメインにキャスティング。それ以外に毎回、デイヴィッド・バーン、ローリイ・アンダーソン、デボラ・ハリー・ティモシー・リアリーetc.の豪華ゲストが出演予定。しかも予算は60万ドルぽっきりというんだから話がでかい。なんと「ターミネーター2」の百六十七分の一という驚異的なバジェットだ。
 監督は、「えび天」の人気者、高城剛。KYON2やゴーバンズ、フェアチャイルドなんかのビデオクリップで宝島読者にはおなじみだし、「マックスヘッドルーム」ノリのJSBの情報番組「WOO」なんかも手がけてるけど、ドラマのメガホンをとるのはこれが初めてという大ベテラン。プロデューサーの中村直也は、CX深夜のノンフィックスの「電脳都市・香港」だとか、「ハイパーメディア・チャンネル」だとか、おたっきーノリの名番組を送り出した人で、やっぱりドラマは初挑戦。音楽監督の藤原浩は、本誌でもおなじみのDJだから、当然、ドラマに音入れたことなんかないと思う。メンズノンノのガールフレンド・グランプリで89年にデビュー、NHKやTBSのドラマに出演歴を持つ主役の女の子、松本泰子ちゃんが百戦錬磨の大女優に見えてしまうという、まったく超強力なスタッフ陣なのである。
 昨日(9月1日)の「えび天」にはまだ高城剛が出てたから、きっとこれからニューヨーク行ってロケするんだろうなあ。ほんとにできるのかなあ。お金足りるかなあ。ゲストの人、出てくれるかなあ。と、これだけ先の読めない新番組も珍しい。刮目して待て。



●ミステリー・サイエンス・シアター3000

  いきなり生意気をいうようだが、アメリカ帰りなのである。しかも今回は、謎のカナダ人と結婚してサンフランスコに住んでる妻の妹2号のもとへ、妻と妻の母と妻の妹1号を引率してゆく謎の家族旅行だったから、お仕事関係は一切抜き。人も羨む優雅なバカンス――なのだが、太平洋横断一家団欒ツアーの最中も、宝島のことを忘れられる大森ではない。古着屋まわりも我慢して、おアメリカのテレビを泣きながら見倒してきたから安心しろ。
 さて、数ある米国産バカ番組の中でも、この私が立ち直れない衝撃を受けた番組はただひとつ。ケーブルテレビのコメディ専門チャンネル、〈コメディ・セントラル〉の「ミステリー・サイエンス・シアター」である。
 これって早い話、サイテーSF映画番組なんだけど、設定が大バカ。時は西暦3000年、人間の船長とロボットのクルー二体を乗せた宇宙船が航行不能状態に。ヒマつぶしといえば映画しかないが、機械の故障で、かかる映画は何百回となく見ている超くだらないSF映画ばかり。今日も今日とて三人は映画室に赴き、いい加減見飽きたバカ映画を観賞しはじめる……。
 で、この私の滞米中に上映されてたのが、聞いて驚け「ガメラ対ギロン」。なにが悲しゅうてアメリカまで行ってガメラを見にゃならんのや。本欄担当編集者が結婚パーティでガメラのぬいぐるみを着たタタリに違いない。しかも、相手がギロンだもんなあ。
 当然、クルーの凸凹トリオは、画面を見ながら勝手なことをいいまくる。「おーおー、水中シーンじゃん。雰囲気で出てるねえ」「うーん、ベリー・ウェット」。「おおっと、このシーンはグーニーズのパクリかあ!」「ねえねえあの円盤のデザイン、五七年型のダッジに似てない?」
 ガメラやギロンにセリフはつけるわ、自分のシルエットで影絵はやるわのやりたい放題。SFおたくの深夜ビデオ観賞会風景そのまんま。ラストはテーマ曲にあわせて歌まで歌ってくれる。最初のうちこそハナモゲラ語で「ホニャララガメラ」とかテキトーに歌ってんだけど、最後はとうとう、「ヒロヒトガメラ、ヒロヒトガメラ、ヒロヒトガーメーラー」の大合唱。おまえらなあ、日本語だったらなにくっつけてもいいと思ってんのか、こら。
 タキシードのピアニストがご丁寧に「ガメラ」のテーマをリプレイしてくれるおまけコーナーまでついてて、
「うーん、この出だし、ロジャーズ&ハートだねえ」「こっからのサビ、ほら、ガーシュインっぽいでしょ」とかさんざんオモチャにしてくれる。ようっし、もうこうなったら復讐するしかない。JSBで「カブキマン」流すときは覚えてろよ。



●二都物語

 ファンタに東京国際にサンダンスと、東京の街は映画祭一色だし、家に帰れば、アメリカで買ってきたゲームボーイ版スクラブルとジェネシス(メガドラ)版ブロックアウトにハマりきって、もはやコントローラーを握るサル状態。しかし、そんな事情にもおかまいなく、空からの電波は我が家のアンテナにも降りそそぎ、10月ともなれば新番組がはじまってしまうのだから、まったく人生は厳しい。
 しかし、留守録セットのヒマもなく、鉄砲玉ぴゅんで渋谷にとびだしていくいまのわたしにとって、視聴可能な新番組は深夜枠に限られるのである。というわけで、泣く泣くセレクターをビデオ入力のメガドラからヴィデオのモニターに切り替えてみると、あらなつかしや、そこにいるのは、もしや赤星昇一郎さまでは? あの「うそっぷランド」から幾星霜、ツルツルだった頭もすっかりフサフサになり、子泣きジジイの看板を金丸信に譲り渡して気分一新、NTVの新番組「流行神様」にご登場。2091年の未来から、過去の流行をふりかえり、そのルーツを探る――てなありがちな趣向の、最近ありがちなマーケティングお笑い番組ではありますが、郷田ほづみ、平光啄也も顔をそろえ、構成は下等ひろき。「うそっぷランド」時代、消灯時間午後十時の小学生だった読者諸君も、これからは大手を振って毎週怪物ランド番組が見られるわけだ。まったく、長生きはするものであることよ。
 一方、これの真裏に日テレがぶつけてきたのが、古館一郎プレゼンツの「どうにも語たく族」。いかにも日テレらしいネーミングがほほえましい、言葉こだわりギャグ番組。帰ってきた怪物ランドVS言語破壊官・古館一郎、深夜のお笑い激突デスマッチの結果はいかに……みたいな興味もないではないけれど、むしろわたしが仰天したのはこの「語たく族」につづいてはじまる「二都物語」。
 ニューヨークと東京の若手映像作家が撮った短篇を抱き合わせで流す三十分番組なんだけど、初回のニューヨーク編は、ノースーパー吹き替えなしのモノクロ映画で、主役は地下鉄に乗り損ねた金持ちのおばはん。途中でチャンネル替えたもんだから、いったいなにが起きてるんだろうかと一瞬茫然。こんなもん、いきなり夜中の日本テレビで流れてるとはだれも思いませんがな。しかも、ビデオで最初から見なおしたら、じつによくできてるじゃありませんか。それより一歩遅れをとるとはいえ、日本編のほうの出来も上々。あいだにはさまる長野智子と喜多島舞のトークが、映画とまったくなんの関係もないってのもおしゃれ。「えび天」亡きあとは「二都物語」ってことで。



●パッショネイト・ナイト

 映画祭ラッシュがやっと終わったと思ったら今度は台風ラッシュ。人様が遊んでるとき働いてる自営業者としては、週末雨ばっかでざまあみろ、てなもんだけど、それにしてもファンタのクロージング「ロケッティア」は盛り上がったなあ。だから倫子ちゃんは、はやくロケッティア・グッズ代金を支払うように(それと、池上遼一のマンガは「舞子」じゃなくて「舞」、英題Mai the Psichic Girlだかんね)。
 まあその、サンフランシスコくんだりまで行っといて、チャイナタウンで香港映画ばっか見ていたわたしもバカですが、ボカしなしの香港ポルノはいいぞお。東京国際映画祭の「美しき諍い女」なんか問題外。一条さゆりのヘアのどアップだ、まいったか!
 しかし、ヘアが映らないわが国テレビ界のお色気台風といえば、WOWWOWにトドメを刺す。本誌前号の深夜TV探偵団座談会でも一身に期待を集めていたシリーズ企画、日曜夜のパッショネイト・ナイト。これですよ。イタリアのソフトポルノを毎週流して、謹厳実直なおじいさまたちから抗議電話の嵐が寄せられたというヒット企画。今回はラウラ・アントネッリの「毛皮のヴィーナス」とパオラ・シナトアの「聖女のもだえ」が登場だ。NHKには逆立ちしても真似できまい。もはやJSBは洋物ポルノ最後の砦、この調子でがんがんやってほしい。そういや、いま思いついたけど、過去の名作AVを放映する「19××」なんて企画はいかがでしょう? ほら、夜中に急に竹下ゆかりの「わたしを女優にしてください」が見たくなったのにダビングしたテープが見つからない、なんてこと、よくあるじゃん。レンタル・ビデオ屋じゃ最近世代交代がはやいし、視聴率いいと思うけどなあ。
 それにしても、パッショネイト・ナイトの直前の時間帯って、CINE VOYAGEってスカしたタイトルで、単館ロードショウ物の名作流してるんだよね。「毛皮のヴィーナス」の前がクレール・ドニの「ショコラ」でしょ。「聖女のもだえ」の前なんか、聞いて驚け「ドゥ・ザ・ライト・シング」だ。つづけて見てると思わずいけない行為に走りそう――なんてお下劣な想像をしてしまうわけですが、あれってやっぱりライト・シング≠セよね、右手使うもん。というような放送コードぎりぎりの地点で日夜過激に戦いつづけるWOWOWに、心から拍手を送りたい。ああ、日曜日が待ち遠しい!



●OH! myコンブ

 天高く馬肥ゆる秋ってことで、今回は料理番組に挑戦する。つっても普通の料理じゃ芸がない。男子たるもの、独創的でオリジナルな料理に挑戦すべし。そこで登場するのが、秋元康原案のコミックボンボン連載マンガをアニメ化した「OH! myコンブ」。
 主人公なべやきコンブは11歳の天才料理人――といえば、一見「ミスター味っ子」的スポ根アニメを想像しがちだけど(主役の声優がおなじだったりする)、この番組は、料理すべてにジャンクフードを使用しているのが最大のウリ。コンビニおたく、ジャンクフード狂いの妻を持つ大森にはぴったりだ。しかもその料理≠チてのが半端じゃない。シェフ・ハッカイも脱帽のこの超アナーキーぶりを見よ。
 熱あつごはんにタラコをのせてマヨネーズを絞り、森永おっとっとをパラパラ散らしていただく「おっとっとごはん」。梅干しのタネを抜いて、かわりにロッテ小梅ちゃんをつめる「すっぱウメウメ」。納豆とゆで小豆をブレンド、冷凍して食べる「なっとうじるこ」なんて、想像しただけで吐き気がする独創性だ。貧乏なお友達には、皮をむいたキュウリを輪切りにしてハチミツをかけるだけでメロン味に変身する「メロキュー」を推薦しよう。
 私もさっそく実物をつくってみた。食パンの両面をオレンジジュースにさっと浸し、明治ラッキースティックを二本はさんで二つ折り、これを冷凍庫に二時間いれて出来上がりの「アイスオレンジパン」。シャリシャリとした食パンの歯応えがたまらない。ただし、厚いと中までジュースが浸透しないので、食パンは八つ切り以上の薄いものがベター。乱暴に扱うとスティックがポキンと折れちゃうから注意しろよ。日清チキンラーメンにバターを塗ってオーブントースターで三分加熱する「ラーメントースト」は、異常な辛さがビールのおつまみに最適だぜ。
 しかし、こんなもんばっか食ってると、あっという間に秋元康体型になるのは自明の理。まあそれで高井麻巳子と結婚できりゃ安いもんだが、世の中そう甘くない。そこで注目の正しい料理ドラマが、辻調理師学校TEC日調監修の「料理少年Kタロー」。
 さねよしいさ子の主題歌をバックにいしかわじゅんキャラが動く異常なOPアニメはともかく、中身はちゃんとした実写ドラマだから、はじめての人でも安心。小学生にだってサバがおろせるんだから、おれにだってやれないわけはないぜ、と視聴者の厨房意欲を刺激する。番組の終わりには辻調の先生がキャベツの正しい千切りを伝授してくれる親切設計がうれしい。
「コンブ」と「Kタロー」で秋の準備は万端だ。さあ、どっからでもかかってきなさい。



●東京ラブストーリー

「男って結局、関口さとみみたいな子が好きなのよね。どうせあたしは赤名リカよ。ああ、しあわせになりたいっ」と社員食堂で叫んだのは、前に勤めてた会社の後輩だけど、おなじ怨嗟の声をあげた女性が、日本全国におそらく873万人はいたはずだ。
 カンチ一筋を貫いて圧倒的存在感で視聴率33・4%の原動力となった鈴木保奈美の一途さにくらべて、江口洋介と織田裕二のあいだでさんざんふらふらぐじぐじやってた有森也美=関口さとみのイメージが落ちるのはまあしょうがない。そのあげく、リカとの待ち合わせ場所へ急ごうとするカンチに玄関先でいきなり抱きついてつなぎ止める――なんていう掟破りな真似をした以上、ここで悪女≠フレッテルを貼られちゃうのも自業自得というもんか。
 でも考えてみると、これが十年前なら、視聴者の大多数はさとみに感情移入して、強引にアタックするリカのほうを罵ったはずで、つまりいまは、男も女も積極的な女を望んでいるわけですね。耐える女≠演じて男の気を引くさとみのメソッドは日本女性の伝統につちかわれたもので、つまりこれは、革新が保守に破れるというドラマ。保守回帰の社会風潮が、ここでもみごとに反映されているわけで、心の底ではみんな悪女になりたがっているんじゃないかしら。



●カルトQ

 さて、ここで問題です。ハマダラカが媒介する病原菌はマラリアですが、コガタアカイエカが媒介する病気はなんでしょう?
 というわけで、担当編集者交替第一回の今回は、毎度おなじみフジテレビの深夜クイズ番組「カルトQ」。
 10月7日放送の「TVブック・メーカー」で、「10月スタートのフジテレビ深夜番組(0時40分〜1時40分)全11番組中、もっとも話題になるのはどれ?」というアンケートを各テレビ雑誌編集部に出し、その一位を予想する、というベティングをやってたんだけど、一番人気の「バナナチップ・ラブ」を圧倒して、期待度NO1の栄冠に輝いたのがこの「カルトQ」。
 コンセプトは、秋深し隣はなにをする人ぞ、の深夜にふさわしい、とことんディープなクイズ番組。おたく参加者を集めて、一般視聴者にはまったく意味不明の問題をびしばし答えさせようという趣向で、司会は子供バンドのうじきつよしが担当、アシスタントに局アナの新人がつく構成。で、栄えある第一回のテーマは、ブラック・ミュージック=B
 元マハラジャのDJ、謎のミュージシャン、グラフィック・デザイナー、現役東大生に家事手伝いと、バラエティ豊かかつ強力な解答者がそろって、素人といえども侮れない布陣。ただし、超ディープな問題を期待していた向きにはやや期待はずれ。「スパイク・リーの新作は?」とか、なんだそりゃ的質問がのっけから出ちゃったもんなあ。けっこうメジャーっぽいラインでまんべんなく出題されてたから、タコツボ的知識より、広く浅くの知識がモノをいう。でも逆にいうと、モータウン創始者の名前からC&Cミュージック・ファクトリーのCが何の略かまで押さえとく必要があって、意外にこのほうがむずかしいかも。ディスコ・ステップの名称をあてさせるとか、「LLクールJが履いていたスニーカーは?」なんて問題、インドアおたく系マニアにはつらいもんなあ。そんなの簡単じゃん、といってるクラブ少女は、サム・クックを知らないだろうし、つまり、ちゃんとブラックミュージックの歴史をフォローした上で、ナイトクラビングにもいそしまねばならない、と、なかなか教育的配慮が行き届いているのである。
 このパターンならありとあらゆるテーマが考えられそうだけど、とりあえず二回目のテーマはコンピュータ・ゲーム。以下、「ポップアート」「ブランド」「渋谷」「ジャパニーズポップス」「ハワイ」が予定されている。チーム対抗渋谷クイズなんて、けっこうそそるよなあ。注目。



●プールでフレンチ

 今回は、午前五時は、朝なのか深夜なのかという根源的問題について考察したい。むろん、午前三時に起きだして販売店で新聞を折りはじめる住み込み青少年や、トランクにクラブを積み込むゴルフ親父ににとって、五時はりっぱな朝にちがいないが、テレビの世界での一日の始まりは、おおむね五時半から六時あたり。労働基準法の定める深夜業は、午後十一時から午前五時までだから、当然、午前五時はじまり番組には女子高生の生出演が可能なのだが、現在、なぜかこの時間帯には、深夜番組とも朝番組ともつかぬヌエ的な番組が生息している。
 そうした謎めいた番組群の中でも最高のミステリアス度を誇るのが、四月にスタートしたばかりの「プールでフレンチ」。タイトルからして意味不明だが、民間人にもわかりやすくいいなおすと、これは「水泳プールでフランス語」の意。フランス語番組でありながら、なぜタイトルにフレンチなる英語が使用されているかについては、まったくもって謎というほかないが、しかし、プールでフランス語を教えるという発想はじつにすばらしい。週4コマもフランス語をとっていた学生時代、もし授業がプールで行なわれていたら、わたしはいまごろフランス語の翻訳家になっていたかもしれない。
 水泳プールだから、当然生徒は水着、先生も水着。ハイレグやビキニ姿の見るからにもの覚えの悪そうなうら若き女性たちが、プールサイドでPardonとか Ce n'est rienとか、おフランス人のミストレスのあとについて復唱する。三十分使って、出てくるのは、だいたいこの長さの文章が三つ。休憩と称してとつぜん女子水泳場面が挿入されたりして、まじめなフランス語学習者は、そこでほっと息をつくわけである。「早見優のアメリカン・キッズ」ではちょっとむずかしすぎて、というあなたにうってつけの語学番組だ。
 一方、この時間帯ベテランのエースといえば、もちろん「ENKA TV」。「姫TV」クイズタイム小学生の余韻さめやらぬまま突入するこの番組、かつてはアンジーや大槻ケンヂ様もご出演された由緒正しい演歌番組で、なんと今年で 年目。さすがは日本人の心のふるさとである。司会は、「タモリ倶楽部」廃盤アワーでおなじみの構成作家・佐々木勝俊、年に2センチのペースでどんどんどんどん額の生え際が後退し、もはや完全無毛状態も時間の問題。うちの女房に白髪がふえるのも無理はないが、作曲家・曽根幸明先生の歌とピアノはそれと無関係にすばらしい。世界のロックがいかに演歌であるかを喝破し、ボンジョビやU2に演歌の詞をつけ、演歌アレンジで歌うあの名コーナーぜひ復活させてほしい今日このごろである。



●萬金譚ドラドラ

 今回は日本一おたっきーなテレビ番組をとりあげる。一億総おたく化が叫ばれるいま、当然テレビ界も深夜番組を中心におたく化への一途をたどってるんだけど、なかんづく一頭抜きんでた存在として高らかに聳えたつのがこれ、「萬金譚ドラドラ」。ほんとは虎に濁点振ったのふたつ重ねてドラドラって読ませるんだが、こんな番組のために、人生をまじめに生きている写植屋さんにわざわざ外字つくってもらったのではお天道様に申し訳が立たない。とはいえ、番組ののコンセプト自体はいたって明快だ。
「昔のテレビアニメからヒットの秘密を探り、第二のさくらももこをめざす」と、これだけね。毎週一番組とりあげ、がんがん映像流しながら徹底的かつおたっきーに解剖する、と。
 で、とりあげてるアニメってのが、「ガッチャマン」でしょ、「宇宙少年ソラン」でしょ、「マッハGO!GO!GO!」でしょ、「アタックbP」でしょ。若い人には悪いけど、おれ主題歌ぜんぶ歌えるもんね。「リスのチャッピーとは、誰のペットだったでしょう。次の中から選んでください」なんてヘナチョコ三択じゃ、ヘソが茶を沸かすぜ。どうせおたく番組めざすなら、冒頭のクイズだけはもうちょい歯応えのあるやつにしてほしいね。
 しかしなあ、これって放映時間は、金曜の夜中二時だぜ。学生とフリーターくらいしか見てないよな、ふつう。ディレクターだか制作デスクだかで、オレと同い年くらいの連中が、いやあ、あのころのアニメってよかったよね、とかいいながらでっちあげた番組だろ、どうせ。三十前後の視聴者なんぞいるかっつうの。カタギの三十代は満員電車でシドニィ・シェルダン読みながら帰ってきて、玄関入ると靴も脱がずに三和土で寝ちゃうんだってば。つまりこれは、まったくの視聴者無視。ただのわがまま。好きだなあ、こういう態度。この欄のポリシーとおんなし。いやそれにしても、マッハ号のハンドル二回転分がアソビだったとは。当年とって三十歳の大森も、さすがにこの秘密には気づかなかった。不覚だ。というように、モスピーダかザブングルあたりのテーマソングを子守歌にしてたようなガキにはわからない、奥のふかーい番組なのだ、ざまあみろ。
 おっと、そういやこれ、たぶん北野誠の東京方面進出第一弾番組じゃないか? 関西方面の北野ファンも要チェックだぞ。東京に行ってアニメ評論家を名乗ってると知っても石ぶつけないようにな。ま、上岡龍太郎につづくのはたぶん無理だろうけど、宅八郎にはつづけるかもね。『スパ!』で新連載、「北野誠のエビぞりおたく天国」とか。ところで、大森のリクエストは「ワンダー3」です、ひとつよろしく。



●噂の!東京マガジン

 のっけから私事にわたって恐縮するような原稿でもないが、6月末で、まる八年勤めた会社を辞める。だから今はたいへんに忙しく、こんな原稿を書いてるヒマがあったら退職願いを早く書けと総務にせっつかれてるんだけど、7月になると、これが一転、毎日が日曜日生活に突入するわけで、やがてくるその日のために、今日は日曜日のTV番組をチェックする。。
 日曜の朝は当然、「特救指令ソルブレイン」で始まる。で、「まじかる☆タルるートくん」「ナイルなトトメス」と、ここまではなんの問題もない。六月までなら、「トトメス」が終わると寝てしまえばすんだのだが、毎日が日曜日ともなると、そういうやくざな生活態度は断固改めねばらなぬ。
 そんなわたしにおすすめしたいのが、朝10時スタートの「噂の!東京マガジン」。頭のコーナーは週刊誌中吊り大賞=B総計24誌の中吊り広告を一枚パネルにずらり並べて、競馬評論家の井崎脩五郎が解説する。こないだなんか、NHK松平アナ問題に関する自分のコメントが事実無根だと、いきなり司会の森本毅一郎が週刊新潮に噛みついたりして大笑い。「自分の過去の女性問題を棚に上げて……」と書いてありますが、棚になんか上げてません、だってさ。電車通勤がなくなると中吊り広告とも縁遠くなりそうだけど、これさえ見てれば安心だ。
 しかし、この番組最大の売りは、街なかで道行く人々を呼び止めては、いろんなことをやらせる、「やってTRY」なるコーナー。爆笑したのは、冷やっこの回。つくるもなにも、んなもんだれだってできんじゃいの、という人は、人間の想像力を甘く見ている。いきなり高野豆腐を盛りつけるOL、てのひらにのせた焼き豆腐を包丁で切ろうとする専門学校生、練りカラシをかける女子高生。いなり寿司の回では、油揚げを醤油だけで二度も煮しめたり、生の油揚げにそのままメシを詰め込んで、カンピョウで口をしばっちゃったり、いやもうたいへん。しかも、本人に自分のつくったやつを無理やり食べさせるんだからタチが悪いぜ。
 日曜の朝っぱらからこんな能天気な番組を見てたんじゃ、高度資本主義の世の中を生き抜けないという向きは、三十分後にチャンネルを回し、「一攫千金! スーパーマーケット」を。昔「男と女の輸入物」でやってたアメリカ番組の完璧なパクり――なんだけど、オリジナルがおもしろいんだから当然こっちもおもしろい。七組の参加者が制限時間内にひたすらスーパーでお買い物、合計金額がいちばん高い組が優勝、という単純なルールにもかかわらず思わず手に汗握ってしまうあたり、人間とは業の深い生きものよのう。ようし、ヒマになったら毎日買物だ!



●101回目のプロポーズ

 いやあ、会社辞めるとテレビががんがん見られて楽しいぞ。高校を中退した諸君も、毎日テレビ三昧の極楽生活を送っていることと思う。わたしの場合、目を覚ますころには「3時にあいましょう」も「タイム3」も終わってしまってるのが難点だが、ま、そのうち生活態度も改まるだろう。それに「超人戦隊ジェットマン」にはちゃんと間に合ってるから、心配してくれなくてもだいじょうぶだ。
 というわけで、生まれ変わった最近のわたしが発見したのがテレビドラマというやつ。役者が出てきてテレビの中でお芝居をしたりするという不思議な番組である。しかも、まるでわたしの退職を祝うように、七月からどんどん新番組がスタートしているではないか。これを見なけりゃ男がすたる。かくして大森望30歳妻帯失業者は、「東ラブ」ビデオ7時間一気見の余勢をかって、TVドラマウィークに突入したのである。
 まず一本目、CXの「101回目のプロポーズ」は、「東ラブ」とおなじ月曜夜9時台、しかも純愛三部作完結編≠ウリにしているにもかかわらず、浅野温子の相手役に武田鉄矢という思い切った人選。大林ノリの8ミリフィルムっぽい回想シーンはマルだけど、骨格はもろレディス・コミックなんだよなあ。しかし、このドラマの核心は、武田鉄矢の弟役で登場の江口洋介に、なんと大学アニメ研の部長という役柄を割り振ったことにある。自分ちのデッキにいまどき「トトロ」をつっこんであるうえ、ツメをはがしてもいないあたり、まだまだシロートさんの域を脱していないが、アニメおたくの道は長く険しい。これからあたたかい目で江口くんの成長を見守ってあげたいと思う。
 一方、「TVブックメイカー」でも、七月スタートTVドラマの本命視されていたおなじくCXの「ヴァンサンカン・結婚」は、あの「もう誰も愛さない」のあと番組。アパレルメーカーのプレス担当っていう、トレンディー・ドラマにおけるコロンブスの卵的職業を安田成美にあてがって、とりあえずは快調なすべりだし。菊地桃子の正気の沙汰ではない悪女ぶりが、多少「もう誰」をひきずってる気もするけど、どっちかっつうとこっちのほうが「東ラブ」路線だ。18歳年上の男と別れて、猫と暮らす25歳独身の美女――あたしもけっきょく朝子とおんなじ。バリバリ仕事しててもふっと淋しくなったりすんのよねえ……てな全国二五〇万ミドル20'Sシングル女性たちのつぶやきが日本列島を埋めつくすとき、「ヴァンサンカン・結婚」は視聴率30パーセントの大台を達成するはず。唯一の難点は略しにくいこと。「ヴァン婚」じゃあんまりだもんなあ。以下次号。



●J・MOVIE・WARS

 映画っていうと、ま、最低でも90分はないと――てのが最近の常識みたいだけど、小説に星新一のショートショートがあったり「大菩薩峠」があったりするのとおんなじように、映画の尺にも無限のバリエーションがありうる。じっさい、正味十秒の映画だって十二時間を越える映画だって世の中にはちゃんと存在するんだけど、映画=長編劇映画の常識ができちゃったおかげでワリを食ったのが短篇映画。映画館で見る短篇映画っつうと、それこそ「いまどきのこども」か「SDガンダム」か。あとはみーんな自主映画で、プロの監督が撮る商業短篇映画ってのは、今の日本にゃ存在しないも同然。
 で、この悲惨な文化状況をなんとかしようと乗り出したのがJSB(たんに長編映画を撮らせる予算がなかっただけって気がするが、とりあえず目のつけどころはマル)。気鋭の映画監督6人に、一話10分未満の短篇を4本ずつ撮らせて、毎月ひとり分ずつオンエアするって趣向。題して「J・MOVIE・WARS」。そのトップを切って現在オンエア中なのが、総合監修もつとめる石井聰互の4本。石井聰互といや、「高校大パニック」で日本映画界に殴りこみ、早すぎたサイバーパンク「狂い咲きサンダーロード」で一部に熱狂的なファンを生み出した男。おおっと、いきなりキテるぞお。
 10分足らずで映画になんかなるのかよ、と思う疑り深い性格の人もいるだろうけど、これは明らかにテレビではなく映画の文法に則った映画=Bこういうおよそテレビ的じゃないものを自由に撮らせる姿勢はえらいよな。
 さて、石井作品全4本のうち、できそこないの街角イメージフィルムみたいな「STREET NOISE」は?だけど、女の子がかわいい「自転車」、とぼけたユーモアの「穴」、J・G・バラードふうの壮大なSF詩を10分に封じこめた「HEART OF STONE」と、残り3本はビデオに撮って何度でもじっくり楽しめる出来。いやあ、映画は短篇にかぎるね。つぎの崔洋一にも大期待だ。



●秋の連続ドラマ

 ド〜はド〜ラマのド、レ〜は連続のレ〜ってことで(渋公のユニコーンを見てきたばかりで脳ミソが破壊されている)、秋の連続ドラマである。
 宝島の原稿のためと称し、10月は連ドラ新番9本を毎回カウチに正座して視聴する馬鈴薯OL化していた大森だが、ゲームといっしょで連ドラにも麻薬的な習慣性があるらしく、9時になるといつのまにかテレビの前に吸い寄せられてしまう自分がこわい。つい見ちゃうんだよなあ。そいでもって知り合いの不良主婦と、
「やっぱりさあ、『いとこ同志』の高嶋弟ってやめてほしいよな」
「あいつ、『Jr.愛の関係』からすっかりおかしくなったんじゃないの」 うんぬんと長電話してるんだから、頭はほとんど昼下がりの給湯室状態。 そんなわたしが自信をもって一押しするのは、意表をついて日テレ「綺麗になりたい」。ついつい無意識に、すむすむすむすすむーすすむす、すむすすぐすむよゆーのすむすと鼻唄を唄って道行く通行人をふりかえらせてしまうほどの中江有里フリークとしては(ちなみに、スムスの新バージョンCFはいまいちだと思う)、中江のためだけに存在するようなこの番組を推さずにいられようか、いやいられない。
 話題のエステをとりあげる企画の安易さ、設定の荒唐無稽さ(なにせ中江は、エステ・チェーン経営者と、その不倶戴天の敵である女流エッセイストのあいだの隠し子なんだぜ)は、まるで8時台ドラマのノリ。いかにもテレビくさいつくりなんだけど、遊びまくったカット割りとカメラ、意図的に芝居を過剰にした演出でクサさの排除に成功。ほとんど綱渡り的なこの芸はおみごと。1回めじゃスムスCFを引用してみせるワザまでくり出してくれて、全国823万の中江フリークは感涙にむせんでることでありましょう。
 さて、今回の新番じゃ、関西系ライターの雄・西岡琢也の脚本作品が2本。CXの「ウーマンドリーム」がなにかと注目されているようですが、ホームコメディに新境地を開拓したTBS「木曜日の食卓」も悪くない。結婚前の長女・夏川結衣の部屋から妊娠検査薬が見つかって大騒動の最中に、長男・西嶋秀俊がよそさまの結婚式場から新婦の富田靖子をかっさらってきてしまう(考えてみりゃこれもCFネタだな)オープニングは大爆笑。展開の読めないローラーコーター・ホームドラマとして高く評価したい。



●裏マンダラ

通天閣 寒いなあ、ひろみ。
道頓堀 寒いなあ、兄ちゃん。
通 ところで、裏マンダラ見たか?
道 「紳介の人間マンダラ」の特番やろ。いつもの放送でカットしたシーンばっかり90分も集めたやつ。
通 えらい説明的なセリフやのう。
道 ちゃんと説明せんと東京の人にわからんやろ。
通 知るか、そんなもん。どうせこの欄、いっつも東京ローカルのしょむない深夜番組ばっかりやっとるやないけ。だいたい、いまどき「人間マンダラ」知らんやつのほうがアホや。
道 まあ紳介は東京でも人気あるみたいやしな。
通 あたりまえや。EXテレビなんか東京やめて大阪だけにしたらええねん。三宅裕司に比べたら、やしきたかじんのほうがよっぽどおもろいで。
道 それで毎日「晴れ時々たかじん」やんのんか。
通 「吉村明宏のクイズランチ」でもええで。
道 裏マンダラはどうなったんや。
通 最初の五分は全部「ピー」やな。道 放送禁止用語いうやつやな。
通 「ピーがピーやからピーピーや」(笑)ピーなんか何千人おってもどうせ見えへんねんから関係ない」(笑)「しかしピーはほんまにこわいで」
道 ようわからんわ。
通 わかるやないか。最初のピーが×××やろ。で、次のが××やな。あとは××××、×××、××××や。
道 なるほど……て、わかるか、そんなもん。
通 で、そのあとがえんえん原田友世の悪口。これがまた五分つづくんや。ここで風邪引いたな。
道 なんやそれは。
通 風呂上がりに見てたんやけど、あんまりおもろいんで服着んの忘れた。道 ほんならずっとフリチンか。ほんまのアホや。
通 ほっといてくれ。あとな、紳介がな、横の松本典子に、つい「渡辺さん」て呼びかけてしもてん。
道 ごっつい間ぁ悪いやんか。渡辺典子いうたら、こないだまでとつきおうてた相手やもんな。
通 せや。しかし大阪の人間はそういうとこめちゃめちゃつっこみよるで。掛布さんまで、「ほう、渡辺典子さん」とかて連呼しよるもんな。巨人なんかめちゃめちゃ喜んでたわ。
道 オール阪神巨人の巨人やな。
通 説明すなて。ほらもう時間がないやないか、おまえが説明ばっかりするからやど。「探偵! ナイトスクープ」の話もしたろ思てたのに。
道 上岡龍太郎とノックの番組やな。通 説明すないうとるやろ!
道 ぼくはまだ生きとるで。
通 それをいうなら絶命や。
道・通 失礼しました!



●ツイン・ピークス

 ではここで問題です。
□毎年二月グレートノーザン・ホテルで開催されるチェス大会、今年の優勝者はだれ?
□ツイン・ピークスの電話帳の際立った特徴とは?
□ツイン・ピークスの85年度一人あたりドーナツ消費量は?
@47個 A121個 B306個 以上3問にたちどころに答えられたあなたはりっぱなTPおたく。「カルトQ」のテーマにTPが選ばれる日が待ち遠しいことでしょう。しかし、人間だれだって、つい忘れてしまうことはある。そんなあなたのための一冊が、「ツイン・ピークス・アクセス・ガイド」(仮題・扶桑社ミステリー文庫近刊)。まったくなんの役にもたたない情報満載のこの本の翻訳(の一部)をおおせつかったおかげで、わたしも今や、TPおたくの端くれになりつつある。お昼を食べにいく店は、ビール瓶に石ころをぶつけて決断するし、夜食はもちろんチェリーパイとコーヒー、夢の中では小人が踊っている。
 と、すっかり時期遅れのTP狂いですが、ビデオの最終巻もまだ発売されてない状況だから、ぜんぶ見た人はそういないはず。
「ふーん、ツイン・ピークスね。まリンチが監督してる回はそれなりだけど、あとはねえ。後半の展開なんか超でたらめだし。レーティングも落ちる一方だったんでしょ」などとフカしてる奴に限って、パイロット版に別の結末くっつけた「序章」しか見てなかったりするんだよな。
 しかし、ぜんぶ出そろうのを待って一気に見ようと考えている短期決戦タイプの人には朗報がある。年末の二日間、一日14時間ずつ、計28時間がかりで、TP全話一挙放映という暴挙をWOWWOWがやらかすのである。むかしは「戦争と人間」全三部10時間一挙放送なんてのをよく地上派でやってたけど、これはその三倍、24時間テレビを超えるおばけ番組。どうやら、12月に 枚組のLDセット総計 万円という代物が発売されるんで、それにぶつけての企画らしい。LD買うより2万8千円払ってJSBに加入するほうがおとなじゃん、という主張。ま、ビデオ/LDは字幕、WOWWOW版は吹替(二ヶ国語放送)で、どっちをとるかは個人的趣味だけど、忙しい年の瀬を、二日間どこへも行かずひたすらTPを見倒してすごすってのは、けっこうそそるじゃありませんか。もちろん録画なんかせずに、見逃したらおしまい、てな気合いで画面と対決。吹替の日本語を聞きながら(これがまたけっこうグッド)うとうと寝ちゃって、夢の中でボブと遊ぶのもナイスだぜ。



●全日本ガイジン選手権

 あけましておめでとうございます。新年の第一回にふさわしく、ここは一発デーハなネタで一席うかがわせていただきたいと思う気持ちも山々なれど、来年のことをいうと鬼が笑うというし、べつに鬼ごときに笑われたところで動じるわたしではないが、忘年会の嵐の合間を縫って、91年映画ベストテンのために昼間は劇場をはしご、夜はビデオと対決する日々とあっては、テレビどころじゃないんである。
 それにしてもこの季節はどの雑誌もベストばっかで、ひと月のあいだに、「本の雑誌」の今年読んだ本ベスト3、JICCの日本ミステリベスト6、「翻訳の世界」の海外小説ベストテン、「ニュービデオパラダイス」の洋画ベストテン、キネ旬の邦画・洋画ベストテン……と、他人様の仕事に順番をつける仕事ばっか。これでテレビのベストをやんないのは片手落ちというもので、そうなりゃ一位は当然「東京ラブストーリー」でしょ、二位は警視庁記者クラブの仮眠室にハイレグ女を潜入させた「CAPA!」、となれば三位はB21スペシャルの「1OR8」で、4位は「クラブ紳助」&「人間マンダラ」のあわせ一本、5位は「探偵!ナイトスクープ」……とここまで来てつづきを考えるのがめんどくさくなったので、正月といえども平常心で、今回は「全日本ガイジン選手権」をとりあげることにしたい。
 スポーツ中継以外はやったことがないという局アナの  アナウンサーを司会に起用、アシスタントは日本語がよくしゃべれなくて英語で出演者名を読み上げるだけというルビちゃん。じつは小生、彼女のことをかねてから憎からず思っている。天眼大介監督の商業映画デビュー作「アジアン・ビート アイ・ラブ・ニッポン」で、フィリピンのテロ組織の女工作員役を演じていたこのおねえちゃん、胸は小さいし演技もうまくはないが、愛さえあればそんなことは問題ではない。
 番組の中身は、ナイジェリア人の留学生が「与作」を熱唱したり、中国人インテリ女性がいきなり風船の上に乗ってみせたり、まったくわけがわからない怒涛の外人ゴングショウ。外人がサベツ語化し、外国人≠ニいう名称に駆逐されつつある現状に真っ向から異議を申し立てて、ガイジン≠ニ呼ぶことであらゆる外国人を日本人化してしまうというとんでもなくアナーキーな番組なのである。
 しかし考えてみると、現実の歌舞伎町・コマ劇場前のほうがよっぽどアナーキーだったりする可能性もあるわけで、ここは一発、せまいスタジオを飛び出してですね、代々木公園とか新大久保とか赤坂とかで、そのへんのガイジンを無差別に登場させる究極の無国籍バトルロイヤルゴングショウを期待したい。ガイジンは爆発だ!



●トレンディドラマ

 恋愛とは一種の病いにほかならないという説を信じるとすれば、現代の日本ほど、恋愛病が蔓延している社会はないかもしれない。性の商品化≠トな言葉でアダルトビデオやポルノコミックを語るのはいいかげんカビの生えた議論だけど、商品化というなら、恋愛のほうがはるかに進んでいる。だいたい、セックスと恋愛では、かかる時間からしてケタ違い。前者は(物理的な性交渉に話を限定すれば)、速い人で五分、いくら精力絶倫でもひと晩が限度。ソープランドの制限時間やラブホテルの休憩時間から類推して、まあ二時間が相場。そこへ行くと恋愛は、極端な話、揺りかごから墓場まで、ずーっとひとりの人間に恋しつづけることだって不可能ではない。
 愛だの恋だのが、人間にとって最も個人的な営みだった時代がかつては存在したにしても、高度資本主義が爆走する現代日本にあって、恋愛は最大にして最強の消費が集中するマーケットなのである。映画、小説、音楽、ファッション、マンガ、芝居、テレビ、およそ恋愛と無縁の文化は存在しないし、バレンタインデーやクリスマスの狂乱状態を思い出すまでもなく、社会全体が恋愛の上に立脚している。
 しかし、恋愛のスパンの長さにふさわしいメディアとなれば、やはりテレビドラマにトドメをさす。しかも、SFやミステリーや特殊職業モノと違って、恋愛はだれにでも手のとどくテーマだから、感情移入させるのもかんたん。かくして、お茶の間のCRTでは昼夜をわかたず老若男女が愛をささやく状況が生まれたわけだけど、そうはいっても、世の中にこれだけ恋愛が氾濫していると、ふつうの恋愛≠ノ飽き足りない人たちが出てくるのも当然。その結果、ボンデージや同性愛が脚光を浴び、一方、テレビ世界では、すでに陳腐化の極みに達したトレンディ・ドラマにかわって、もうちょいオリジナルな恋愛をめざすタイプの作品が登場しはじめた。脱マニュアル恋愛――なんていうと女性誌の見出しだけど、特殊な状況に一般視聴者が感情移入できる普遍性を持ち込む、ってのがポイント。
 となれば、当然、「カーンチ!」の一声で一世を風靡した「東京ラブストーリー」が一番手。どこといって取り柄のないバカな男に突然どうしようもなく惚れてしまった頭のいい女の子はどうすればいいか。この意表をつく設定が意外にもウケた。赤名リカみたいな子がそうそういるわけないのはわかってるのに、世のOLの89パーセントはリカに感情移入して、「男って結局、関口さとみな女が好きなのよね」とぼやき、深夜の《北の家族》では、「ピッポッパ。もしもし、こんどの土曜日だけど……」と女の子を口説くサラリーマンが続出。
「カンチ、気持ちはひとつしかないんだよ。二個はないんだよ。どこに置いてきちゃったの!」てなセリフにぐさっと来た視聴者は、優柔不断な織田裕二を罵倒し、できるものなら代わりたいと切歯扼腕する。
 それにしても、これが十年前なら、視聴者は当然、伝統的日本女性を具象化した有森也美=関口さとみに感情移入したはずなのに、リカ人気が沸騰したのは、鈴木保奈美の魅力のみならず、過激指向が高まっている証拠ではなかろうか。
 さて、この「東ラブ」が打ちたてた最終回視聴率33パーセントの大記録を、わずか半年であっというまに乗り越えてしまったのが「101回目のプロポーズ」。同時スタートの「結婚したい男たち」と並んで、歳の離れた独身兄弟同居モノかつバツイチもの。こんな異様なシチュエーションが揃い踏みするあたりがいかにも90年代か。しかし、しょせん「男女七人」型群像ドラマのネガでしかない「結婚したい……」にくらべると、「101回目」の健闘ぶりはお見事。絶頂期を過ぎた浅野温子に、抱かれたくない男ナンバーワンの武田鉄矢を持ってきて、しかも純愛モノ。常識的に考えれば嫌われて当然の非常識行動を無理やり感動のモトにでっちあげるこの力業を見よ。でも、考えてみると、このドラマの武田鉄矢って、赤名リカの裏返しなんだよね、当然、鉄矢=達郎のほうが頭は悪いけど。で、かしこい赤名リカはしあわせになれず、ひたすら愚直な星野達郎はみごと愛を射止める、と、この結論も圧倒的に正しい。不幸なバカには救いが全然ないもんね。
 しかし、今年特筆すべきキャラクターの第一位は、「ヴァンサンカン結婚」で主役の朝子=安田成美を完全に食ってしまった右子=菊地桃子。彼女の悪女ぶりが持つインパクトは、保奈美=リカ以上。安田―小林稔侍―石黒賢の教科書的三角関係そっちのけで、右子の活躍に固唾を呑んでいた視聴者が多かったはず。結末にしたって、男からの自立という超つまんない結論に達してしまった朝子に対し、アッシー扱いしていた男をいきなり教会に呼び出して結婚式を挙げてしまう右子のいさぎよさは感動的。さんざんひっかきまわしたあげく、最後はきちんと自分のほしいものを手に入れて、その手際の鮮やかさでだれにも文句をつけさせない。あっぱれな右子は、しあわせになれた菊池リカなのである。
 以上3本に、「もう誰も愛さない」から「愛さずにいられない」への疾風怒涛路線を加えてざっとながめたいいかげんな印象でいえば、恋愛ドラマの異常性はどんどん過激さを増している。わたしはこれを恋愛ドラマのツイン・ピークス化と呼んでるんだけど、もっとも保守的なメディアのひとつであるテレビドラマの世界で、この現象がいったいどこまで突き進むのか。恋愛の現役を引退した既婚者は、テレビの前でひたすら刮目して待つのである。



●ゴジラ伝説復活の日

「高天原に神づまります神漏支神漏美命もちて申さく汝水素爆弾のおかげを蒙って太平洋の海底三千尺に二百万年の眠りよりめざめ田中友幸ぬしを始め香山滋村田猛雄本多猪四郎とりわけて円谷英二ぬしの勧請によっり百五十尺の身を七尺にちぢめて当方の撮影所に現われ鬼面人を驚かすにあらねどプラスチックのぬいぐるみに種々の禍事を真似て豊葦原の国の民草を西のかた東のかたに走らせ……(後略)」
 というわけで、いきなり国語のテストかよと思った人もいるかもしれないが、今回のお題はゴジラである。なんといっても6月27日は「ゴジラ伝説復活の日」。うちにはパラボラアンテナもBSチューナーもWOWOWのデコーダーもないぞと怒っても、決まってしまったことはしかたがない。「ゴジラ」から「三大怪獣地球最大の決戦」まで全7本、12時間連続で電波が降りつづけるんだから、いくら怪獣嫌いのあなたでも、とうてい防ぎ切れるものではない。第五福竜丸の浴びた死の灰さながら、モスラ、ラドン、キングギドラ、キングコング、アンギラスまで、ぜんぶまとめて土砂降り状態に突入してしまうのである。
 おっと、忘れないうちに書いておくと、冒頭の引用は、「ゴジラ」ヒットを祈願して起草された祝詞。いまを去る38年前、故・平田昭彦が東宝・砧撮影所で読み上げたという、由緒正しき資料。怪獣に歴史あり、である。
 なにしろ「ゴジラ」が54年生まれ、「ゴジラの逆襲」のアンギラスがが55年生まれ、「空の大怪獣ラドン」が56年生まれだもんなあ。このへんが怪獣団塊の世代で、若輩者のわたしは61年生まれの「モスラ」とおない年。そのせいか、モスラには他人とは思えない愛着を抱いてるんだけど、この原作がまたすごい。中村真一郎、福永武彦、堀田善衛――いまならさしずめ、大江健三郎、中上健二、村上春樹ってクラスか。新作の「ゴジラVSモスラ」も、せめてそのぐらいの人たちに原作を依頼してほしいもんだ――てなことはともかくですね、今回放映の7本中ではいちばん新しい、「三大怪獣地球最大の決戦」(64年)も見逃せない。モスラがラドンとゴジラを説得する名場面は最高だし、シリーズ初登場のキングギドラもインパクトがありました。
 この「ゴジラ伝説復活の日」にあわせて、WOWWOWでは、前田日明の師匠、正道開館の田中正悟や防衛庁の広報担当者を招いて、ゴジラ・ファイトを分析させる特別番組を制作。
「バラン」「ドゴラ」「サンダ対ガイラ」からゴジラ・シリーズの「ヘドラ」「ガイガン」「メガロ」「メカゴジラ」まで、残る14本の東宝怪獣映画も、8月以降順次放映予定。怪獣の夏、日本の夏ってことで、92年の夏休みは宿題も手につかないのである。



●うたう! 大竜宮城

 いつも行ってる西葛西の焼肉屋〈大将〉の横にとつぜん熱帯魚屋が開店したと思ったら、いつのまにかわたしのまわりにも、日夜水槽のグッピーを愛でることを生きがいとする独身四十男たちが増殖。二度にわたってシーモンキーを死滅させて以来、水棲動物は家におかないことにした大森だが、サカナにウラミはない。ブリの照り焼きも森永おっとっとも好物だし、住んでる場所は葛西水族園徒歩三十分。
 そこでさっそく、サカナ・ブームの追い風に乗り、魚類ドラマの最高峰、「うたう! 大竜宮城」をとりあげる。毎回サカナの名前がタイトルだし(たまにナマコとかもある)、冒頭ではちゃんとそのサカナの生態を解説してくれるんだから、魚類ファンは必見だ。
 日曜朝九時のCXといえば、「ちゅうかなぱいぱい」「いぱねま」「ポワトリン」「ナイルなトトメス」とつづく、ぶっとび東映特撮魔法少女ドラマの時間帯。シリーズ最新作の「大竜宮城」は、タイトルが示すとおり、特撮ドラマ史上初のミュージカル。
 竜宮城崩壊後、陸に上がって人間として暮らすサカナたちを、乙姫(中山博子)があたたかく見守っている――ってのが基本設定で、華麗なコスチュームに身を包んだ乙姫は、毎回、
「ラブラブラブ、わたしのえら呼吸〜」のテーマソングを歌いながら登場。
「人生は二度ない。三度ある。崩壊した竜宮城のあるじ、乙姫」がキメゼリフで、乙姫のフルート≠ェ現在の必殺兵器だけど、東京おもちゃショーで同居人が入手してきたバンダイのカタログによると、夏にはニューアイテム乙姫のたてごと≠ェ登場するらしい。「4本の弦を押すと、それぞれの異なったステキなハープの音がします。番組で流れる音が出る番組連動商品です」だってさ(関係ないけど、このカタログの説明はすごいぞ。「大規模な事故が実際に起こる現代にあのサンダーバードが復活します」とか、「大銀河宇宙を舞台に超巨大戦士フォートレスエンペラーGを中心に新キャラクターが縦横無尽に大活躍!」とか、ほとんどVOWクラスである)。
 浦沢脚本のアナーキーぶりは見たことない人にはわかんないだろうが、たとえば6月14日放送の「ウツボ」では、生きがいを失い自殺を考えているウツボの前にとつぜんUFO(蛍雪次朗!)が登場。このUFO、じつは乙姫に一目惚れしてて、なんとか彼女の子供を生みたいと思っている。で、ウツボを手足に使って乙姫に迫るんだけど、最後の瞬間、あやまってウツボと合体、ウツボの赤ん坊を腹に宿してしまう。すったもんだのあげく、UFOは無事にウツボの卵を出産、ウツボにも生きがいができてめでたしめでたし。いやはや毎回、目からウロコが落ちまくりの踊り食いドラマなのである。



●プレイボーイ・レイトナイト

 それほど確信があるわけではないが、昔のテレビはもうちょっとスケベだったような気がする。アダルトビデオの存在しない時代に思春期をすごした不幸な世代にとってテレビが貴重なズリネタ提供源であったという特殊事情はあるにせよ、たとえば山城新伍司会の「独占! 男の時間」なんか、スタジオにはべらせた半裸美女の乳房を出演者がむんずとつかむ過激さで、上田耕一郎共産党中央委員会政策委員長(当時)が名指しで非難したほど。
 ところが、深夜番組自粛の荒波をくぐりぬけ、ほぼ24時間放送が実現した深夜黄金時代のいま、スタジオにハダカを発見することは困難をきわめる。ピンク関係はAVソフト紹介にまかせて安閑とする地上局各局の姿勢は許しがたい。その意味で、故・竹中労の背中に裸女を背負わせて対談させたEXテレビ大阪の勇気はおおいに賞賛すべきだが、「ギルガメ」程度で話題になる現在の低俗状況は情けないかぎり。最後の砦、「クイズ・タイム小学生」も姿を消したいま、90年代の青少年はいったいなにを頼りにすればよいのか。
 ……ってことでおすすめしたいのが、WOWWOW日曜深夜の「プレイボーイ・レイトナイト」。JSBっつうと、ゴダールがどうのゴジラがどうのと映画関係に話題が集中する傾向があるけど、JSBで録画率ナンバーワンはこの番組。CATVのプレイボーイ・チャンネルで毎週流されてる一時間番組を、吹き替えでお茶の間に提供する、日本のテレビ界唯一の直輸入バラエティである。なにしろテキは金持ちだから、女の子の質の高さは目をみはるばかり。ま、モザイク処理のキメが粗いとかカラミがないとか、いくつか問題点がないではないが、単体ヌード・ファンにはじゅうぶん実用に耐える美しい仕上がりだ。若いうちからAVに走って、Wフェラ異物挿入顔面発射なんか見てるとろくな大人にならない。 少年よ、せんずりは「レイトナイト」でこけ!



●EXテレビ大阪

 毎日最低百試合、すぴにんぐばあどきいいっく!「スト2」をこなしているよーがふぁいあっ!あいだに、あっという間に締切だ。本来アクション系のゲームは苦手で、いまさら恥ずかしくてゲーセンじゃやれないもんなあと思ってたとこへのスーファミ版リリースだから、ハマりかたが極端なのである。あ、「スト2」ってのは「ストリートファイター2」のことね、もちろん。最近じゃバルセロナ・オリンピックと聞いてもバルログの「ひょおっ!」を思い出してムカつく始末で、当然となりの14インチじゃたえずテレビをモニターしてるんだが、なにしろ一瞬でもゲーム画面から目を離すと、スクリューパイルドライバーやサイコクラッシャーアタックをくらってしまうので番組チェック不能状態。バイソン倒すのに必死でロークくんの疑惑のKOシーンを見逃してしまったのはわたしだけじゃないと思う。
 そんなわけで、四代め担当社の美人エディター(推定)小島嬢から「次回のテレビ、なんにしますかあ?」電話がはいったときには思わずぎくりとしたのだが、そのとき大森すこしも騒がず、すばやくスタートボタンを押してポーズをかけると、「そうですねえ、『EXテレビ大阪』なんかどうですかねえ」といったのは、たまたまそのとき画面に上岡龍太郎が映っていたからではなく、前々からあたためていたアイデアなのであるといってもだれも信用しないだろうが、しかしよみうりテレビ制作のEXがおもしろいのは本当である。だいたいわたしは、二十二の歳まで西日本で育った人間なので、一日一度は島田紳助か上岡龍太郎の顔を見ないと体の調子が悪いのだが、数ある関西系全国番組の中でも最高の企画力を誇るのが大阪EX。かつて、「超低俗番組実験室」と題して、いまは亡き竹中労を起用、その肩に全裸女性をまたがらせてトーク番組を制作したのもこの番組。癌で余命いくばくもないことを公表している硬派ルポライターに裸女をかつがせる番組が、いったいほかにあるだろうか。「各党の国会議員を集めてクイズやったらおもろいやろなあ」と思うテレビ関係者はたくさんいても、それをほんとうに実行してしまう番組が、いったいほかにあるだろうか。
 男のハートにぐさりと突きささる「抱かれてみたいのはどっち」アンケートとか、「テレビ番組最短寿命当てトトカルチョ」とか、「上岡龍太郎のニュースショー」とら、定番化してる人気企画もありますが、「おかま座談会」「指名手配容疑者大会」みたいな、関西ローカルノリの突発的企画が見逃せない。というわけで、わたしはいま、はやくレベル7でベガに勝って、心置きなくEXテレビ大阪を楽しめる日が来るのを心待ちにしている。



●美少女戦士セーラームーン

 この一ヵ月、妻がパチンコで、「ゼルダの伝説」「弟切草」「シムアース」「ロマンシング・サガ」と次から次へスーファミのソフトをとってくるもんだから、テレビの前にすわりっぱなし。TVコラム持ってるくせにゲームばっかやってんじゃねえよ、と思った人は考えが甘い。イカがタコへと進化していく21インチモニターの横では、シャープの14インチがちゃんと地上派をキャッチ。我が家のテレビ視聴時間は飛躍的に向上しているのである。それにしても、「あなただけ見えない」の真っ暗最終回にはたまげたね。
 てなわけで、終わる番組があれば始まる番組もあるニッポンの春ですが、TVアニメの世界にも新風が吹いている。最近のアニメってえと、おたくの殿堂ガイナックスが総力を結集した「ふしぎの海のナディア」終了後は、「絶対無敵ライジンオー」など少数の例外はあるものの、いまいち盛り上がりに欠ける状況。本数が多いわりに全国ネットが少なく、出崎統の異常なソロリティ物「おにいさまへ……」が、NHK衛星で気を吐いてたくらい。
 しかし、この春からは、その状況が一変する。サンライズ/名古屋テレビの「伝説の勇者 ダ・ガーン」とか、「ライジンオー」の後番組「元気爆発ガンバルガー」とか、こないだの宝島でもとりあげてた「鉄人28号FX」とか、Jリーグ発足をにらんだ期待のサッカーアニメ「フリーキック」とか、強力な新作がずらり。タツノコ伝統の味が爆発する「宇宙の騎士 テッカマンブレード」なんて、主人公の名前がDボゥイで、しかも地球に墜ちてきた男≠セ。きっぱりバカ。
 そんな新作群の中でも、アニメおたくにターゲットを絞って(でもないか)話題騒然なのが、老舗・東映動画の「美少女戦士セーラームーン」。なにしろ、セーラームーンに変身するヒロイン・月野うさぎのキメぜりふが、
「愛と正義のセーラー服戦士、セーラームーン。月にかわっておしおきよ」 ですもん。ほとんどアニメ版「美少女仮面ポワトリン」のノリ。敵の妖魔軍団は美形キャラのオンパレードだし、セーラームーンに味方する謎の男、タキシード仮面の時代錯誤なキャラデザインもすごいぞ。
 しかし、このアニメの最大のウリは、複数ヒロインシステム。今後、秀才タイプのセーラーマーキュリー、おてんば娘のセーラーマーズと、続々美少女セーラー戦士が登場の予定。原作マンガと同時進行という画期的なアニメだから、この先の展開は謎に包まれているんだが、この三人にお姉さん格のセーラーVと黒一点のタキシード仮面を加えた総勢五人で、ぜひとも史上初の美少女戦隊アニメをめざしてもらいたいものである。それにしても、中学生のくせにピアスはないよな。



●春の連続ドラマ(「素顔のままで」ほか)

 さあて、やっとあったかくなってきたことだし、今回は春の新作ドラマ総点検だ――と思ったら、プライムタイムは改編期特番の嵐で、連ドラなんかぜんぜん始まらない。毎日毎日、二時間から四時間のクイズ漬けだもんなあ(といいながら、最近、あるないクイズの問題づくりに日夜励んでいるのだった)。しかし、思わぬ収穫もあって、ゲーム業界の内幕を描く二時間ドラマスペシャル「運命の逆転」なんてのはその典型。まるまる二時間かけてPCエンジンCDーROM2対応ソフト「天外魔境U」を宣伝する大珍品だ。メガドラvsスーファミ戦争に押されて、NEC/ハドソン陣営も生き残りに必死なんですね。ところで、爆笑の名場面がひとつ。ゲームプログラマ役で登場のフッくん、「ちょっとそのキャラ動かしてみてくれ」とか上司の中井貴一にいわれて、キーボードをカチャカチャカチャ。で、すかさずゲームのグラフィック画面にカメラがパンするんだけど、その寸前、パソコンのディスプレイにメッセージが。「コマンドまたはファイル名がちがいます」だって。コンピュータはウソをつかない。
 そんなこんなで、四月第二週までに見られた春ドラ新番組は、斉藤由貴の「女事件記者・    」だけ。またまた懲りずにマンネリの特殊職業シリーズか……となげやりに見はじめたんだが、意外や意外、この種のドラマのお約束を無視して、一話完結にしていないのには驚いた。第一回のメインはコンビニ強盗殺人で、これに由貴の父親役・小林稔侍の汚職事件がからむ構成。どっちの事件も解決にはほど遠い状況のまま、「つづく」。集団ドラマじゃないから、「ヒルストリート・ブルース」や「LAロー」的展開は無理だろうけど、スケバン刑事あがりの斉藤由貴だけに、体当たり演技でがんばってる。「小宮悦子が目標なんですぅ」ノリの後輩にサツまわりの極意を伝授するあたりはなかなかの迫力。「事件記者」といっても、三〇年前のNHK人気ドラマ(知るわきゃないか)とはちがって、こっちはテレビの報道記者、それも画面に出る女性レポーターがそこまでするかよって話はありますが、いまどき新聞記者じゃ地味だからね。今後の展開に注目。
 特殊職業といえば、いまさっき見た(おいおい)、中森明菜連ドラ初主演で話題の「素顔のままで」では、安田成美が図書館司書役で登場。見合い相手の鶴見辰吾がデートの誘いにやってきたり、およそ本なんか読みそうにない東幹久と図書館で偶然の再会をはたしたり、かなり強引な舞台設定だけど、活字おたくのわたしとしては、とりあえず評価しておきたい。図書館ラブロマンスっていいと思うけどな。それにしても、明菜のキャラはつくりすぎ。あのメイクにも一考を促したい。



●料理版組(「ヨーヨーのねこつまみ」「海ごはん山ごはん」)

 バブルがはじけりゃ料理番組が増える。銀座で札ビラ切ってたおじさんも、潜伏先の安アパートで食べる即席麺の毎日に嫌気がさして、ちゃんとした料理をつくろうと一念発起する今日このごろ。テレビ業界がこの追い風を見逃すはずなく、この春あたりから、新趣向のクッキング番組が春から次々に出現、どれをつくるか、今夜の夜食にも迷う始末。
 ……ってことで、今回はお料理番組を特集する。となりゃ当然、トップバッターは、小柳ルミ子夫妻のダンシング・クッキングで話題沸騰「セイシュンの食卓」――といきたいとこなんだけど、前々回のとなりのページでしっかり先にやってんだもんなあ。ずるいよなあ。でも、いいんだい。だってさあ、あの番組に出てくるプータロー料理って、とことんまずそうじゃん。缶詰のサバ味噌とサイの目切りにしたタケノコを炒めたやつをごはんにかけて食いたいか? そんなに食いたきゃ勝手に食え。わたしは十年前に卒業したからな。
 というわけで、自炊歴十三年の大森が自信をもって推薦する夜食番組決定版は、「ヨーヨーのねこつまみ」。モンプチゴールドの舌ビラメは人間が食ってもうまいよねってそういう話じゃなくて、これはですね、わちふぃーるどのネコの絵をキャラクターに使った、日テレのお料理アニメ。バー「海猫亭」マスターのヨーヨーが、カウンターの中で、手軽なおつまみをほいほい作ってくれちゃうって趣向。猫にできるんだから人間様にできないわけがない。しかも、所要時間がすごいぞ。この番組、平日深夜の五分枠なんだけど、正味放映時間はたったの二分。「キューピー三分間クッキング」の記録を打ち破る驚異の早業は、インタントラーメンさえ問題にしない。おまけに、脚本・シリーズ構成は、タツノコ出身、「星矢」や「ドラゴンボールZ」で有名な小山高生。アニメおたくも要チェックだ。
 アニメといえば、週刊モーニング連載の「クッキング・パパ」もテレビ進出。ケツには実写の料理解説もついてべんり。しかしあのアゴが嫌いだからパスね。
 一方、最近のRVブームに便乗、野外料理にマトをしぼって登場したのが「海ごはん山ごはん」。さすがCX、やることがはやい。ま、そのへんのクサをむしって食ってるだけって気もするけど、なんの説明もないところがすばらしい日曜お昼前の五分番組。ほんとうに貧乏なあなたには、この番組がもっと役に立つにちがいない。
 とまあ、料理関係新番組はいろいろあるんだけど、ぼかあやっぱり、「金子信雄の楽しい夕食」のアシスタントのお姉さんがいちばん好きだな。あー腹がへるぜ。



●日米カー・ウォーズ

 ブッシュおじさんの来日以来、アメリカ車の評判がすこぶる悪い。「故障ばっかで燃費最悪のあんな車にだれが乗るか」「自分とこでも売れへんもんを押し売りすな」式の感情的な暴論が横行。だいたい日本人てのは卑屈さが身上だったくせに、産業・経済面でだけは世界をリードしてるって自信がやっとついてきたらしく、この二、三年でいきなり傲慢に変身。成金の悲しさがにじみでるわけですが、しかし五年前、東名の高速バス待合室に時速百キロで突っ込み、愛車の三菱コルディアをおしゃかにして以来、クルマと無縁の日々を送っているわたしには、最近の自動車状況がいまいちよくわからない。そんなとき、タイミングよく放映されたのが、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」千回記念特集、〈日米カー・ウォーズ〉。
 夜11時台っていうと、ふつうは「筑紫哲也ニュース23」か「大相撲ダイジェスト」か「プロ野球ニュース」を見てる時間帯で、このWBSなんて、千回のうち、たぶん二、三回しか見ていない。キャスターの小池ユリ子さんにはほんとに申し訳ないかぎりで、前非を悔いた大森は、五夜連続の「日米カー・ウォーズ」を、テレビの前に正座して、真剣に拝見いたしました。
 ま、一日めのデトロイトのルポなんてのは、どこのニュース番組でもやってることだけど、面白かったのは、三日間にわたる日米自動車徹底比較。都内のタクシー会社の運転手さん六人の協力で、日米それぞれ三車種ずつのクルマに一ヵ月乗ったデータで燃費や使い勝手を比較する。驚いたことに、排気量などを勘案すると、全体にアメリカ車のほうが好成績。GMのグランダムなんか、全国紙に比較広告をぶつだけあって、小型車部門では段トツの成績。アメ車はガソリンまいて走ってるなんて、過去の神話だったんですね。 小型軽量化も進み、デザインだって日本車と見劣りしないし、乗り心地もいい。故障率にしても、アメリカ側にいわせると、納品後一ヵ月の成績はともかく、四万キロ、五万キロ走った時点でくらべると、アメリカ車のほうが耐久性にすぐれているんだとか。ネックは修理に時間がかかるのと部品代が高いこと、下取り価格が低いこと。けっきょく、アメ車が売れないのは日本市場サイドの問題が大きいわけね。
 アメリカの場合、ずっと一番でやってきた国だから、とくに自動車みたいな象徴的分野で極東の島国に負けると、心の傷はぼくたちが思ってる以上に深い。そのへんの痛みをちゃんとわかってあげなきゃ、愛される日本人にはなれないぞ、と。しかしこの番組、どうせなら斯界の権威・所ジョージを解説者に起用すればよかったのにね。このさい「所さんの車がえらい」で、アメ車応援特集を組むよう提案したい。



●悪女(わる)

 今日はデジパチのマーブルXでトリプルが二回も来て、三十分で四万円勝っちゃたんで、いちじるしく勤労意欲が減退している。ハンドルに百円玉はさんでタバコ吸ってるだけでこんなに儲かるのに、原稿なんか書いてらんないよなあ――と思いはじめたら最後、いつも国生さゆりに地道に働けと罵倒される高嶋政宏になってしまうので、よい子のみんなはマネしないようにね、ってことで、春の連ドラ新番組「素敵にダマして!」は意外とイケる。高嶋兄+野村宏伸のヒロヒロコンビ(ってゆうかどうか知らないけど)がいい味だしてるし、美貌の女社長役の鈴木京香もなかなかのハマりぶり。ついだまされたほうに同情しがちなこの国では、詐欺師モノって結構むずかしい素材なんですが、「だましとられたおばあちゃんのおうちをとりかえす」ってタイガーマスク的設定で正義方面の問題をクリア。国生さゆりを抑えに起用し、手がたくまとめた。
 その真裏で真っ向から対決するのが、石田純一&秋吉久美子コンビのCX「さよならをもう一度」。しかしなあ、これって秋吉久美子がテレビのニュースキャスターで、その亭主が炊くマシン、ちがうってそれじゃまるで電気炊飯器でしょ、ポン(とお茶目なワープロの頭を叩く)、宅麻伸。なんだか、TBSの「おとなの選択」のつづき見てるみたいで、新番組って気がしない。インパクトでは松田聖子のほうが勝ってるしなあ。したがって、表裏対決はNTV「すてダマ」の勝ち。
 あとめぼしい新番っていうと、加藤雅也と高嶋弟が長野五区で激突する「ジュニア―愛の関係―」かな。しかし、雪にまみれても安心、「だいじょーぶサ!」の松雪さんに、あんなくらあい役を振る手はないぜ。松本清張原作のふるーい日本の政治映画みたいな演出もいまさらだし、まあ鶴太郎の渡辺満智雄は笑えるにしても、この時期に政界モノぶつける以上、「加地隆介の議」程度のリアリティはほしい。奮起をうながす次第である。
 てなわけで、今回一押しの連ドラは、読売テレビの「悪女―わる―」。原作は深見じゅんのレディコミで、これ、じつは私のひそかな愛読書。読みはじめたときから、「ぜったいテレビになる!」と宣言してたマンガだけに、石田ひかり主演でのドラマ化はめでたいかぎり。峰岸さん役に倍賞美津子を持ってくる、意表をついたキャスティングもマル。平凡なOLの出世物語っていう、マンガだとちょいクサすぎる設定も、電波媒体にはぴったしハマって、原作どおりの展開になんの違和感もない。秘書課に異動するまでに二話分かけてる今のペースじゃ、とても原作を消化しきれまいが、ぜひとも二部、三部が制作されることを祈りたい。がんばれ麻理鈴、島耕作に負けるな!



●スタンダード日本語講座

 こないだ、なぜかミック・ジャガーにインタビューする仕事が舞い込み、あわてて出演作の「フリージャック」を見たんだけど、本筋と無関係に印象に残ったシーンがひとつ。巨大コングロマリットに勤務するヒロイン役のレネ・ルッソが、日本人ビジネスマンの一団を相手に交渉のテーブルについている。やおら立ち上がった彼女、
「みしゅれっと氏ハ、コノ件ニツイテ、コレイジョウ交渉ノ余地ハアリマセン」とたどたどしい日本語で発言したのである。ハリウッドの大型映画で、主役級の俳優が日本語をしゃべるってのは、ほとんどはじめての例じゃなかろうか。自動車セールスにやってきたブッシュさんにしろ、クライスラーのお偉方にしろ、いまのアメリカの会社の上層部には、日本語で日本人と交渉できる能力を持つ人はほとんどいないわけだけど、品物を買ってもらいたいなら、相手の国の言葉をしゃべるのが最低限の礼儀というもの。映画の舞台は2009年って設定だから、米企業のトップが日本語しゃべれて当然。しかしこのルッソさん、ミック氏に聞いた話だと、あれだけの短い日本語を必死になって練習してたそうだけど、残念ながらまだまだスムーズに交渉が進むレベルには達してない。
 これが、在日の無許可就労外国人の方々になると、日本語のうまいへたは死活問題。日本語さえ流暢ならやくざやインチキ同国人にだまされることもないもんね。日本人サイドとしても、歌舞伎町の小松本陣でお好焼きを食べる場合、フィリピン人のお姉ちゃんと言葉が通じればなにかとべんり。
 というわけで、皆様のNHKが外国人の皆様に正しい日本語を学習してもらうべくスタートさせたのが、「スタンダード日本語講座」。吉田商事食品課に勤務する鈴木明さん一家と、アパレル関係にお勤めの田中正夫さん一家を軸に、日本の一般的な生活のヒトコマを切り取った寸劇が教材。ナマの日本語を勉強するって趣旨なんで、意外と教科書的じゃない会話が展開されてて、妙におもしろい。たとえば、「中村さん。わたしたち、見てしまいました」「なにを?」「いま喫茶店で話してた人、だれですか? 親しそうにジュースを飲んでいた人です。恋人ですか?」「そんなんじゃないよ。あの人は旅行代理店に勤めている人で、今度の両親の温泉旅行を手配してくれた人だよ」「それだけの関係ですか?あやしいなあ」てなぐあい。
 田中さんのお母さんが鈴木さんの奥さんに肉じゃがのつくりかたを伝授する場面なんかもあってなかなか勉強になるし、アシスタントのさわやか男女がしゃべる異常に正しい日本語も笑える。ことばはこころ。外国人に通じる日本語を身につけたい。ミックもちゃんと標準語の英語をしゃべるように。




●ナノ・スペース/超ミクロの世界

「大きいことはいいことだ」と山本直純は歌い、「ちっちゃいことちっちゃいこと気にしない」と上々颱風は歌った。しかしいま、時代の風はちっちゃいほうへ吹いている。コンピュータだってファックスだってダウンサイジングが主流だし、でかいアメ車の売込みやってきたおじさんはテニスのやりすぎで倒れてしまう世の中である。
「ラジオもどんどん小型化が進んで、そのうち目に見えないラジオができるかもしれんなあ」
「テレビもどんどん小さくなって、そのうち目に見えないテレビができる」 ――というのは二十年前の中田ダイマル・ラケットの漫才ですが、そんなこんなで現在脚光を浴びてるのがナノテクってやつ。サイバー、バーチャルときて、今年はやっぱりナノだよねってことで、昨年「電子立国ニッポンの肖像」で一山あてたNHKスペシャルが放つ新シリーズは、「ナノ・スペース/超ミクロの世界」。超ロングラン科学番組「四つの目」の伝統があるだけに、NHKはちっちゃいことにかけてはちょっとうるさいのだった。
 さて、ナノとはなんなのかというと、10億分の1なのである。1ナノメートルは10億分の1メートル、つまり百万分の1ミリの世界がナノ・スペース。真っ赤なスーツの伊武雅刀を案内役に、シンプルなCG画面で構成されたナノ・ゲートを下って、ミクロの世界に突入する趣向がほほえましい。
 控え室で中山忍が食べてる幕の内弁当の梅干しだの米粒だのにがんがんカメラがズームしていく、まるで「四つの目」ノリのオープニングからはじまる第一回は、「ついに原子を見た」のタイトルで、電子顕微鏡による驚異の映像がメイン。まあしかし、原子ってのは、原子核のまわりをちっこい電子がびゅんびゅんとびまわってる、なんかぼやっとした芸のない代物で、さらに拡大してくと半ズボンをはいたクォークやグルーオンが森の木陰でどんじゃらほいしてるんじゃないかという期待はあっけなく裏切られる。したがって、いちばん驚いたのは金箔の製造過程。手作業で金の延べ板をローラー使って引き伸ばし、正方形に切ったやつを和紙にはさんでひたすらたたくという、じつに感動的な技術で、金の原子が七百層とかってレベルまでいくんだから、まったく職人はえらい。
 とはいえ、この先も、DNAがらみで生命の神秘に鋭く迫る第二回、顕微鏡レベルで動く半導体モーターとか全長1センチのロボットとかががんがん登場して、ナノテクの神髄を披露する第三回と、まだまだお楽しみはつきない。こんくらいちっこいものを見たあとじゃ、ちんちんが少々ちっちゃいくらい問題ではないという気がしてくるわけで、やっぱりナノ・スペースでも仏の顔はイッツオーライなのである。



●アルベールビル冬季オリンピック

 桜が咲く季節になってなにをいまさらという意見があることは重々承知している。F1シーズンたけなわ、プロ野球もそろそろ開幕となれば、翔べなかったトリプルルッツや大股開きVサインがセピア色の思い出に見えるだろうことは想像にかたくない。しかしである。ここでアルベールビルの話を書かなければ、わたしがNHK衛星中継に投じたのべ百時間の貴重な青春はいったいどこに行ってしまうのか。それに、春来たりなば夏遠からじ。バルセロナはもう目の前。距離だって目と鼻の先だ。夏のオリンピックの正しい視聴態度を決定するうえでも、冬期五輪実況状況をふりかえっておくことは、あながち無意味ではあるまい。
 ――とさんざんいいわけするのも情けないけど、アルベールビルはおもしろかった。真夜中過ぎて、テレビの前にひょいとすわるだろ、セレクターをBSにちょいと切り替える、で、ふと気がつくと午前七時。これが毎日だもんなあ。正午から午後7時の中継ならこんな事態になるはずもなかったのに、自営業者のどまんなかの時間帯を狙って中継するんだもん。ノルディック種目の距離五十キロだとか、スキーでひょいひょいすべってって、ときどき鉄砲で的を撃つバイアスロン(外すと罰ゲームで一周させられるのがまぬけ)とかですね、こんなもんどこがおもしろいんだ!と思いつつも、毎晩見てるだんだん他人とは思えなくなってきて、深夜のテレビに向かって応援する謎のノルディックおやじに変身。
 しかし、いちばんすごいのは公開競技のスピードスキー。時速二百二十キロですべってくんのを映すんだからカメラもたいへん。早すぎて、背景なんてコマ落としになっちゃうんだもんなあ。コスチュームはSF映画だし。いちばん驚いたのはですね、スタート地点の脇から、取材スタッフかだれかのバックパックが転がり落ちはじめたとき。わたしはヤラセではないかと疑っているのだが、ちょうどコース整備の最中だったもんで、カメラは転がる荷物をひたすら追いかける。ほとんど立方体のかたちをした大荷物が、目にも止まらぬ速さで回転して、横からは円形に見えてしまうこのおそろしさ。最大斜度四十度の威力である。
 あと、燃えるといえばカーリング。小学校時代のビー玉を思い出して、思わず真剣に戦略を練ってしまったが、あのでかいタマがぐるぐる回ってカーブするのはずるいと思う。それに、まるでローラーゲームとしか見えないショートトラックの女子三千メートルリレーも大興奮。あれなら東京ボンバーズを出せば勝てる。堤会長にはぜひご検討をお願いしたい。と、まだまだネタはつきないのに行数がつきた。教訓。オリンピックは醍醐味はマイナー競技につきる。夏の主役はカバディだ!



●ドキュメント女のノド自慢

 ファイナル・ファンタジーってむかしから暗いんで有名だったけど、スーパーファミコン版にパワーアップした今度の「FFW」はほんとに暗いぞ。もう最初っから真っ暗。主人公はいきなり罪もない町の人を殺してクリスタルを奪い、知らぬこととはいいながら村ひとつまるまる焼き討ちにしちゃうんだもん。まったくソンミ村か南京大虐殺かって世界だよな。脇役キャラはバンバン死んでくし、クリスタルは敵にとられてばっかだし、ああもうFFのFは不幸のFだったのね。しかし、こういう不幸なゲームほど燃えるという事実には、なにか重大な秘密が隠されているのではなかろうか。
 そこで今回は、テレビ番組における不幸問題を考察することにした。不幸なテレビといえば、もちろんあれ、木曜の「ルックルックこんにちは」でやってる「女の不幸自慢」、じゃなかった「女のノド自慢」にトドメをさす。 審査員がいて観客がいて、素人さんがステージでカラオケ一曲歌って、点数に応じて賞品がもらえる――と、そこだけ見てるとまるっきりふつうののど自慢番組じゃん、と思うわけなんだが、じつはこの番組、歌そのものより、歌の前にナレーションと写真構成ではいる、出演者の生い立ちの物語が問題なのである。
「渡辺八重さんは青森県山間部の農家に、五人兄弟の長女として生まれました。中学を卒業するとすぐ、家計を支えるために集団就職で上京、江戸川区の鋳物工場で働きはじめました。十八歳のとき、近所の食堂で知り合った長距離トラックの運転手と結婚、二人の子どもができました」
 ところが亭主がトラックで人身事故を起こし、会社は首になるわアル中になるわで、八重さんは生活費を稼ぐため昼は裁縫、夜はホステスで必死に働き、今では子どもたちも立派に成人……てな不幸物語がえんえんとつづいたあと、当のご本人が涙ながらにマイクを握る。当然、会場の奥さんたちは貰い泣きの嵐。歌なんかどうでも、不幸ポイントさえ高ければなんとかなるという美しいシステムなのである。
 ぼくは見てなかったけど、こないだなんか、障害者でほとんど声の出せない人がご出演になって、当然、歌どころじゃないわけね。審査員も涙、涙、この方はもちろん最高点の賞をさらっていったそうです。
 いやあ、日本人って、つくづく他人の不幸が好きなのね。「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」シンドロームとでも申しましょうか、あの人にくらべればわたしだってしあわせよ、と心がなごむわけね。その裏返しがいまの損失補填バッシングなんだけど、野村証券や富士銀行の人も、この番組で必死に不幸自慢すれば許してもらえるかも。



●7月の連続ドラマ(「結婚したい男たち」「デパート夏物語」「助教授一色麗子/法医学教室の女」)

 暑いねひろみ。暑いねにいちゃん。てな時節柄、まるで仕事になんないから、もっと暑い思いをしている人たちを見物してきた。ウチから徒歩5分の江戸川区球場で開催中の、夏の高校野球選手権地区予選。ライブで見るのは15年ぶりだけど、けっこう燃えるぜ。しかし予選のくせに六百円も入場料とるか、ふつう。15年前、わが土佐高校の応援で四国大会決勝を見にいった高知市営球場はタダだったのになあ。
 ……と頭はすっかり高校野球な大森ですが、テレビじゃまだ中継がはじまらない。しかたないので前回に引き続き、7月封切りドラマの残り3番組を検討する。その一発目は、片岡鶴太郎・布施博が兄弟で嫁をさがす「結婚したい男たち」。40歳前後のモテない兄貴と歳の離れた弟の二人暮らし――って設定は、「101回目のプロポーズ」の武田鉄矢・江口洋介コンビとまったくおなじ。こちらの相手役は南果歩、バツイチってとこも「プロポーズ」の浅野温子そっくり。なんなんだろうね、まったく。安定して視聴率15%以上キープしてるものの、「プロポーズ」とはまだ5%の開きが。こうなったら濃厚ベッドシーンに期待したい。
 3週目でいきなり20%の大台にのせた「デパート夏物語」は、伊勢丹相模原店全面協力がウリの百貨店内幕モノ――なんだけど、8時台という枠とタイトルとが如実に示すとおり、これって「スチュワーデス物語」百貨店員版だから、リアリティは期待するだけ無駄。毎週テレビにかじりついて見てるだろう伊勢丹相模原店の人々の反応を想像しながら爆笑するのが正解だ。しかし、明朗青年・高嶋政宏のドジぶりは、堀ちえみとくらべるといまいち説得力に欠けるのが難。ま、わたしは西田ひかるがなぜかけっこうお気に入りなんで、べつにかまわないんだけどさ。小林捻侍の演技を「ヴァンサンカン結婚」と比較する楽しみもあるぞ。
 最後はNTVの特殊職業シリーズ最新作、「助教授一色麗子/法医学教室の女」。ベストセラーになった『死体は語る』が原作で、篠ひろ子に検察医役を振るという大胆な試み――なんだけど、3回目の視聴率は突如ひとケタに急落。やっぱ死体解剖はお茶の間には似合わなかったみたい。
 さて最後は、前回今回で検討した5番組の最終回視聴率順位を大胆に予測する。「一色麗子」の最下位はタイガース同様、動きようがないとして、4位はキャストに華がない「結婚したい男たち」。今は登り調子の「デパ夏」は飽きられるのも早いと見て3位。「101回目のプロポーズ」対「ヴァンサンカン結婚」の対決は、口コミでHanakoさんの支持を集めはじめた後者がが有利。夏のテレビドラマ選手権優勝はずばり「ヴァン婚」だ!

■参考資料
 3週目までの関東地区視聴率リスト
     (ビデオ・リサーチ調べ)

結婚したい 19・7 15・0   15・1
ヴァンサン 15・0 14・0   17・6
デパ夏    16・7 12・8   20・6
101回目 20・3 20・9   19・9
一色麗子   14・0 13・2    8・6



●新スパイ大作戦

 おはよう大森くん。周知のとおり、本年三月三日より日本テレビ系で「新スパイ大作戦」の放映が開始された。そこで今日のきみの使命だが、この番組を17字×65行で紹介し、かつ締切を遵守してすみやかにファックス送稿することにある。つーことでよろしく。――との伝言を我が家の留守番電話に残し、担当編集者が門前仲町徒歩七分家賃十六万の豪邸に引っ越していったので、しがない売文業者・大森望30歳はスキー帰りでへろへろになった体に鞭打ち、「新スパイ大作戦」第一回を見たわけなんだが、いやまあ、こいつがおもしろいのなんの。チャッ・チャチャチャ・チャッ・チャチャチャのテーマ音楽と同時に十八年の歳月が一瞬にして消え去り、CRTに映しだされるのは昔ながらの「スパイ大作戦」そのまんま。オープニングだけ覗くかと裏番組の「薔薇の名前」から浮気した東京方面のお父さんたちは、結局犯人がわからずじまいだったにちがいない。
 日本語版制作の東北新社も気合いばりばり、指令とフェルプスくんの声には前作同様、大平透と若山弦蔵を起用。英語だと、指令のセリフの冒頭は「ウェルカム・バック、ジム」なのに、吹替はちゃんと「おはようフェルプスくん」になってる見上げた態度。この番組に限っては日本語で見るのが正解さ。アニメーション・スタッフルーム制作の日本版タイトルもおしゃれ。
 十八年もたつと、おなじみ自動消滅録音テープは二インチ・ビデオディスクに進化してたりするわけだけど、この歳月はフェルプスくんの顔にもしっかりシワを刻んでいる。なんたってピーター・グレイブズは当年とって六十五歳。たいがいの会社じゃ定年になってる歳だもんなあ。ところが手塩にかけて育てた後継者が暗殺され、急遽ご老体の現場復帰となる。ほとんど鹿内信隆の世界である。がんばれ老人。
 この「スパイ大作戦」、オリジナル版の放送開始は一九六六年。C・G・プルードン率いるパラマウントの、「宇宙大作戦」(66年スタート)と並ぶ二枚看板だった。で、一九八八年には、仲良く「新スパイ大作戦」と「スタートレック/ネクスト・ジェネレーション」がはじまったわけですね。やっぱ、ちゃらちゃらした新作より往年の名作リバイバルのほうが、安定したレーティングをとれるんだぞ、と。
 で、思わず昔を懐かしんでしまった人のためには、NHK衛星の「ノスタルジースペシャル/伝説の60年代」が待っている。「ベン・ケーシー」、「ボナンザ」「ミステリーゾーン」から「スーパージェッター」「銭形平次」まで年代物がずらり。うしろ向きの人生を送りたい三十代にはぴったりだ。ま、若い諸君は勝手に「新・刑事犬カール」でも見てくれたまえ。



●電子立国日本の自叙伝

 今日でわたしも三十歳。三十といえば立派なおとなである。もう昨日までの大森ではない。カラオケ番組だとかファミコン番組だとか「ナイルなトトメス」だとか、思えばいままでくだらない番組をとりあげてきたが、今日からは心を入れ換えて、世界のよりよい明日を築くために、微力ながらこの身をさしだそうと決意した。
 てなわけで、天下のNHKスペシャルである。タイトルを聞いて驚くな、「電子立国日本の自叙伝」だぞ、まいったか。
 テーマは半導体。けっ、なあにが半導体だ、んなもんおれの人生にゃカンケーないぜ、と思うのが素人のあさはかさ、半導体がなきゃ車も走んないしCDもウォークマンも鳴らない、うちのマンションのドアだって開かないんだぞ、電子ロックだからな。
 えー、でもあたし見たことなあい、わかんないというあなたのために、簡単な半導体の見つけ方を教えよう。ファミコンのROMカセットのプラスチック・カバーををめりめりとひっぺがすと、基盤の上にモノリスみたいな長方形の黒いものがのっかている。これが半導体のかたまりで、この中の銀色の小さな板の上に三二四万八千二四七個くらいのトランジスタがつまっている。この正体はシリコンの結晶。シリコンはオッパイに注入されるばかりか、目立たないところでひそかに電子立国ニッポンの屋台骨を支えているけなげなやつなのである。
 さて、今回のNスペは全六回。戦後の荒廃の中から、貧乏な日本の技術者たちが血のにじむような努力の果てに半導体産業を築き上げていった苦闘の歴史をたどりつつ、世界の半導体状況を概観する。いかにも文系顔のディレクターが、取材のあいだに勉強した成果をアナウンサー相手にくっちゃべりながら、膨大な予算をつぎこんだ世界各地からのロケ映像を流していく構成だから、理科が赤点の人でもだいじょうぶだ。
 二月放送の第二回は、「トランジスタの誕生」。世界初のトランジスタは、一九四七年、ベル研究所での発見からはじまる。ゲルマニウムの結晶に針を二本突き刺して、片方に小さい電流を流したら、もうかたほうの針からでかい電流が流れ出てきたんだな。なにがおもしろくてそんなことをするのか、国立文系のわたしには見当もつかないが、きっと深い理由があったに違いない。ともかく、これを伝え聞いたわがニッポンの技術者たちは色めきたって、追試にとりかかる。ゲルマニウム結晶の純度を上げるには炉の温度をゆっくり冷ます必要がある。そこで、底にちっこい穴のあいだバケツに水を張り、これに木切れを浮かべて糸をしばりつけ、反対の端っこを炉につないで温度の冷め方をコントロールしたっていうんだから半端じゃない。
 こういう実験装置はもう現存してないから、番組には二本の半導体産業の生みの親であるところの技術者が登場、当時の穴開きバケツを再現する。毎日楽しく「ポピュラス」ができるのもこのバケツのおかげなんだから、足を向けては寝られないぜ。というわけで、みんなもがんがん半導体をつくって、りっぱな大人になってくれ。



●えびぞり巨匠天国

 今回のテーマは「えび天改造計画」である。つーことでよろしく、といい捨てて、女連れで(推定)ゆうばりファンタ方面に去っていった担当編集者は、今ごろスキー・シネマ・セックスの日々(推定)。一方、私は、夜明けの東京でえびぞり巨匠天国をぼんやりながめている。人生いろいろだ。
 さて、えび天である。イカ天のあとを受け、鳴り物入りで登場したこの番組、アマチュア映像コンテストで未来の大監督を発掘しようって発想は悪くない。どこのご家庭にも8ミリビデオの一台や二台転がってるご時勢だ。「カトちゃんケンちゃんごきげんテレビ」にあんだけ素人ビデオが集まるんだから、突拍子もない映画を撮ってる人間が一万や二万はいて当然。おまけに映像だからテレビにぴったり……。
 ところがぎっちょん、蓋をあけてみりゃ、ビデオで映画撮ってるやつなんかいやしない。8ミリは8ミリでも、ほとんど、昔懐かし8ミリフィルムなんだな、これが。それも、かつてバンドストック事務局があったマンションの一室で、自主映画出身のプロデューサーが必死に電話で集めまくった旧作のオンパレード。自主映画少年を経験したことのない私でさえ、見た覚え聞いた覚えのある有名作品がばんばん出てくるんだもんなあ。
 監督にしても、出てくれといわれたから出ました。古いシャシンですいません――てな、シラーッとした感じの人が多くて、どうにも盛り上がらない。そりゃ「農耕士コンバイン」は傑作だけどさ、いまどき「ダンバイン」ネタじゃ、出し遅れの証文だ。
 で、最大の問題が審査員。大林宣彦が一等まともなんて状況が許されていいのか。イカ天にミュージシャンがあんだけ出てたんだから、8ミリ16ミリ出身の若手監督(今関あきよしとか河崎実とか手塚真とか)出せばいいのに。技術論がぜんぜんないんじゃ、視聴者とレベルが変わんないもん。どうせおたくが見るんだから、やっぱ開き直るしかないと思いますね。
 そこで、えび天改造プラン。まず、壊れやすいえび天ボードは思い切って廃止、もしくは大改革する(六つも部門があるのは無意味)。当然、審査員は全とっかえ(吉田健クラスの人材が欲しい)。司会の交替は無理だろうから、せめてアシスタントの女を変える(蓮紡も可)。いきなり助演男優賞だけ出しちゃったりするのもお茶目。あと、スポンサーとタイアップで銀監督に三十秒CFを撮らせて、コンテストを実施(プロモVTRやLDカラオケも可)。賞金を奮発すれば、貧乏なADたちが目の色変えて応募してくるぞ。それから、あのPFFの人は、来週までに一本映画を撮ってくるようにね。



●クリスマス特番

 この日のためにケンタのバイトで金を貯め、シェラトン最上階のスイートで宝島を読んでるみんな、メリークリスマス! きょうは彼女と朝までテレビを見るべく、ばっちり気合い入れてることと思う。たしかにシティホテルのテレビはせいぜい21インチだし、ビデオカメラつなごうと悪戦苦闘してるうちにアンテナが壊れちゃうとか(浅草ビューホテル、おまえのことだ!)、2チャンネルにしてもにっかつホームビデオは映んないしダックハントもできないとか、さまざまな問題がある。しかし、そんなことは重要じゃない。テレビの命、それは番組である。そりゃね、うちの二台のテレビにはアメリカ直輸入ポピュラス・メガドラ版とスーファミのスーマリワールドが映りっぱなだけど、ワープロの上にはちゃんと3インチ液晶テレビが載ってるから心配しなくてもだいじょうぶ。
 さてそこで、年に一度のこのよき日をくだらない番組で台なしにしないために、今回は二十四日放送のクリスマス特番を特集する。
 まず、クリスマスといえばディズニーランド。こういうとすぐ京葉線に乗っちゃう短絡思考の人がいるが、バーチャル・リアリティ時代のいま、肉体に訴えるのはバカ。二十四日午後八時、TVの電源入れてテレ朝系にチャネリングすれば、TDLはおろかLAの本家ディズニーランド、フロリダのディズニーワールドまで生中継でいっぺんに体験できる。番組名は、「ディズニー魔法の国のメリークリスマス」。しかも、ブッシュ大統領、パリのシラク市長(交渉中)に海部首相(交渉中)が特別出演。どうせならフセイン大統領のメッセージが欲しかった思う大森は欲張りなやつだが、ミュージシャンの顔ぶれもすごいよ。渡辺美里、TMN、酒井法子、WINK、GO‐BANGS、とどめは佐野元春だ。フロリダからは松田聖子のリポートで、サンタさんもびっくりだね。
 クリスマス名所二番手は汐溜東京ルーフ。F1に乗ってるつもりになったり、空を飛んでるつもりになったりできるバーチャル巨大遊戯施設だけど、ここに若手お笑い関係の人たちを集めてクリスマス・ソングを歌わせるというのがNTVの決断。この意表のつきかたは見習いたいと思う。出演はSET隊、ホンジャマカ、Z‐BEAM、爆笑問題、モロ師岡、今田・東野、130Retc.。東西対抗クリスマス大喜利もあるぞ。わくわく。
 さてどん尻にひかえしは、ごぞんじスタジオアルタ。お笑いの王者CXがゴールデンタイムにぶつける、「笑っていいとも」クリスマス・スペシャルだ。レギュラー陣総出演で聖しこの夜を笑い倒す。じゃ、あーいむどりーみんおーばわいとくりすますってことで。



●不思議少女ナイルなトトメス

 無重力下でのセックスの可能性に関する議論がゴールデンタイムに衛星中継で全国放映されちゃったり、チャームナップの巨大看板がバイコヌールに出現したり、世界にさまざまな波紋を投げかけたTBS秋山宇宙特派員(笑)キャンペーンも無事終了、新年おめでとうございますとはいうものの、湾岸情勢はいまだ予断を許さず、民放各局もついに深夜番組の短縮に着手した今日この頃、こうなったらあきらめて朝番組に転向するのが建設的だ。
 そこで、一九九一年朝番組の秘密兵器として登場するのが、「不思議少女ナイルなトトメス」。日曜朝九時のCXといえば、もちろん、おたく界のアイドル「美少女仮面ポワトリン」の後番組。愛あるかぎり戦いましょう!のお嬢様セリフで一世を風靡したこの番組、じつはぼく、あんまし好きじゃなかった。ポワトリンの顔については多くを語らないにしても、厚化粧ポワトリン・プティットのキモワルさは破壊的。だいたい、「ちゅうかなぱいぱい」「いぱねま」とつづいたフジ/東映制作日曜午前九時枠の伝統をまったく踏みはずしているのが許せないよな。「透明ドリちゃん」以来十年ぶりの特撮魔法少女モノとしてスタートした「魔法少女ちゅうかなぱいぱい」&「いぱねま」は、小沢なつき/島崎和歌子を主役に起用、「ラーメンに変身させられたフィアンセを探すため中華魔界から人間界にやってきた少女」という斬新なコンセプトと、WAHAHA本舗役者連をはじめとする異様なキャスティング、シュールそのもののギャグと異常な暗さで、平成テレビ界に屹立していたのである。
「ポワトリン」の見え透いたおたく狙いへの反動か、「ナイルなトトメス」は、そのタイトルが示すとおり、「ぱいぱい」「いぱねま」のエスニック路線に復帰。中国からエジプトへという、山川の教科書みたいなこの安直な移行がうれしいじゃありませんか。設定もすごいぞ。主人公はとある高層団地に住む高校生・中島サナエ。団地のそばには「中島家先祖代々のお墓」ってのがあるんだけど、なんとこれがピラミッドなんだな。ある日うっかり、サナエちゃんはこのお墓を壊してしまい、中に封印されていた「ナイルの悪魔」たちが逃げだしてしまう。最後に出てきた妖精トトメスから妖怪ハンター役をおおせつかったサナエちゃんは、不思議少女ナイルなトトメスに変身、古代エジプトの魔物たちと日夜戦うことになるわけです。
 主役は乙女塾五期生の堀川早苗。ウォーク・ライク・ジ・エジプシアンな衣裳に身をかため、魔法の呪文は「イブンバツータ・スカラベルージュ!」これですよ。九〇年代の日曜は早起きがトレンディー(死語)だぜ。



●深夜教養番組(「TV PLUS実験室」ほか)

 深夜の教養番組の帝王は、なんといってもCX月曜深夜の「TV PLUS実験室」。高校の理科の先生が出てきて高校の理科の実験をえんえんやってみせるだけ、しかもしょっちゅう失敗するという、野に咲く一輪の薔薇のようなけなげな番組だったんだけど、午前三時台スタートとあって、湾岸危機であえなくジ・エンド。となると、深夜教養番組の現役横綱は、やっぱり「カノッサの屈辱」か。別件でインタビューされてた横沢彪CXゼネラル・プロデューサーが、「いまいちばん力を入れている番組がこれです」と思わず語ってしまう異常さは、意味を喪失した深夜番組の洪水の中でも異彩を放つ。現場の制作担当は、「マーケティング天国」でモノ情報番組に先鞭をつけた、日本テレワークの田中経一ディレクター。人気商品ベストテンばっかじゃつまんねえよと、ホイチョイの協力を得て編み出した大業が、商品興亡史と世界史講座のカップリング。ネタさがしかける労力と、台本の練り方は他の追随を許さない。いまだって、つい爆笑する駄ジャレが必ず何個かあるもんなあ。
 真裏の時間帯でこれと正面から張り合うのは、局の違いにこだわらず「マーケティング天国」路線を忠実に継承した正統派商品情報番組、月曜深夜枠のEXテレビ。聖心女子大卒(!)、局アナ出身という華麗な経歴を持つ南美希子(56年生まれ)とごぞんじ三宅祐司のかけあいで、毎週テーマごとに商品ランキングを紹介する、いまどきめずらしい正攻法。つくりは地味ながら、南美希子の特異なキャラとセンスのよさで、類似番組とは一線を画す。そういえば、「カノッサ」のCX側プロデューサー桜井郁子さんも局アナ出身で、南さんより2つ年上。その二人が、片や局のプロデューサー、片やフリー司会者となって同一時間帯で激突する。まったく、人生いろいろだ。
 さて、お笑いvs実用のこの勝負、判定のむずかしいところだが、共通一次を日本史世界史で受験した歴史おたくのわたしとしては、おもしろくてためにならない「カノッサの屈辱」に軍配を挙げたい。ちなみにカノッサの屈辱は一〇七七年のできごと。くやしい思いをしたのは神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世だ。



●アフターマン

 サイバーパンク方面で、ポストヒューマニズムって言葉が話題の的だったことがある。「五百万年もやってると、ヒトにも飽きたぜ」ってわけで、人間以後のありうべき姿を考えてみましょうっていう、一種、タブーへの挑戦だったのである(ほら、SFの場合、いくら未来の話でも、手と足が二本ずうの人間が平然と主役を張るケースが多かたでしょ。そういうのって嘘っぽいじゃん)この考えをさらに進めてくと、人間がいなくなっちゃったあと、この地球にはどんな生きものが住んでるんでしょうね、って話になる。
 それが、ドゥーガル・ディクスンの『アフターマン』。人類絶滅のはるかのち、今から五千万年後の世界を描いたノンフィクション(?)ってんだからポイント高いよ。八一年に発表、翌年に出た邦訳版(旺文社刊/現在は太田出版)もベストセラーとなった。五千万年後の世界を跋扈する、ぼくたち人間には絶対見られない動物たちを、博物学書ふうの緻密なイラストでばっちし描きあげたのがこの本のミソ。
 しかし、どうせなら止まってる絵より動いてる絵のほうがいいのは進化の必然で、このたび大阪・朝日放送が開局四十周年記念番組として、二時間特番「アフターマン」を制作した。特撮に金がかかりすぎるとBBCさえ二の足を踏んだ企画なのに、大阪の人は考えることがでかい。二十分に満たないSFXシーンに二億を投じ(と、どの宣材にもしつこく書いてあるのはせこい)、異常なるアフターマン・クリーチャーたちをリアルに再現。ストップモーション・アニメのなめらかな動きは特筆ものだ。やればできるじゃん!(特撮監督は田川利夫さんだ)。
 大学で地質学と古生物学を学んだとはいうものの、著者のディクスンさんはアマチュア科学者。だからこそ自由奔放な想像/創造ができたともいえる。ほら、『丸』少年や軍用機おたくの人の病が高じると、現実に存在しない船や飛行機の改造模型を作っちゃったりするでしょ。恐竜おたくのディクスンは、現実の動物を頭ン中でがんがん改造・進化させて、奇々怪々な生きものの数々をもっともらしい説明つきで編み出してしまったわけ。
 肉食動物となってサバンナを疾駆するライオン型の猿ホレーン、コウモリが海中生物化したサーフバット、シャクトリムシ的柔軟体型を獲得したリスのチリット、キツツキとアリクイが合体したみたいなトゥリー・ドラマー……と、なに考えてんだおめえはよう的動物のオンパレード。しかし、現実の熱帯雨林で撮ってきた映像の生物たちもこれに劣らず変だったりするから世の中は広い。ディクスンさん自身もキャスター役で出演、タメになるお話もちゃんと聞かせてくれるぞ。必見。



●TVゲーム番組(「大竹まことのただいまPCランド」「チューンナップ少年団」)

 みんな、ゲームギアはもう買ったかな? 貧乏でリンクスを買えなかったお友達も、今度は日本製で安いから大丈夫。大森は毎晩モナコGPで激走しながら、スーファミ発売を待ってるぞ てなわけで、いきなり戦国状態に突入の家庭用TVゲーム市場だが、全国ネットのゲーム番組は意外と少ない。アメリカじゃ、スーマリショウとかゼルダアニメとかやってるし、激亀忍者伝みたいなクソゲー(うそ)まで映画化してるのにね(ちがうって)。もっとも、考えてみりゃ2チャンネルを占有する家庭用TVゲームは、テレビ屋さんの商売敵。そうそう敵に塩を送るわけにもいかない道理だ。
 だがしかし、視聴率さえとれりゃなんでもいいと開き直るりっぱな在京キー局も存在する。都合四つのTVゲーム番組を擁する、メガトンネット(旧称)のテレビ東京だ。ばかやろう、ガキ向けゲーム番組なんか見てられっかよというアウトドアおたく系小学生諸氏もいるだろうが、最近は、(老舗「ファミッ子大集合」を別にすると)この手の番組も教科書的ゲーム攻略指南から大きく逸脱しはじめている。
 たとえば、「大竹まことのただいまPCランド」はタイトルどおりの不良番組。なんせ、GTV編集長にして、本誌連載「ファミコン業界裏事情日記」でおなじみの渡辺浩弐先生がレギュラー出演してるんだから半端じゃない。番組開始以来、大竹まことの罵倒にひたすら耐えつづけて二年半、最近は渡辺先生の笑顔にも余裕が見られるようになってきた。こないだなんか、スタジオに建設された巨大壁面を相手にフリークライミングやってたくらいで、おたくといっても人間の器が大きい。もちろんゲームもうまいぞ。他に、シュノーケルカメラを聴診器代わりに大竹まことが新人アイドルを診察するコーナーまである言語道断ぶり、ハドソンの人たちはまったく心が広い。
 しかし、この十月からは、さらにとんでもない番組が登場した。名づけて「チューンナップ少年団」。キャスター(?)に、ラッキィ池田と池田貴族のW池田(笑)を起用する大バカぶりはともかく、「メガドラ・キッズ」の後番組でセガの準一社提供、メガドラ/ゲームギア関係のソフトのCFオンリーだというのに、番組中ゲーム紹介はたった二十秒。あとは小学生向けファッション情報、コンサート情報(FUSEライブとかね)、新製品情報、体験コーナーetc.。つまりこれは、セガ製品ユーザ向け啓蒙情報番組なんだな。アニメージュのコミケ取材ではド派手なステージ衣裳にもかかわらずスタッフに間違えられてしまったという池田貴族が、秘めたおたくぶりを爆発させてあやしく迫る。近ごろのサイバー小学生はまったくアナーキーだぜ。



●カラオケ番組(「極楽シャッフル」「超青春! 太陽族」NHK趣味百科「カラオケ演歌歌唱法」)


 みなさんこんばんは、西葛西駅前のカラオケボックスで毎週ブルハを絶唱している大森です。まあしかし、はやんないラブホテルが次々にカラオケボックスへと業態シフトしはじめてからというもの、レーザーカラオケもすっかり高校生の健全な娯楽になり、ライブハウス同様低年齢化の著しい今日この頃、はるか海の彼方の大英帝国でフランクチキンズのホーキ・カズコがオーケーオーケードゥーザカラオーケーの歌声を轟かせてから幾星霜、ようやくわが国でも正しいカラオケ番組が産声をあげたことは慶賀のいたり。
 その一番手は、十月からスタートの第一興商提供「極楽シャッフル」(個人的には第一興商より東映のLDソフトのほうが好き。泉じゅんとか城源寺くるみとか出てんだもん)。三人ひと組四チーム(うち一チームはタレントまじり)が競い合う、家族対抗歌合戦ノリの番組で、司会の田中義剛が深夜番組とは思えないオールドファッションドな健全さをかもしだす。なにせ冒頭は歌詞のイントロあてクイズだもんなあ。一曲を三人で歌うってのも、カラオケの常道を無視した掟破り。いま一層の努力を望みたい。
 これに対して、高校対抗というおニューなコンセプトで十月末にはじまったのが「超青春! 太陽族」。司会は高田純次+相原勇、しかも審査員がすごい。マイク真木、黛ジュン、植田芳暁(元ワイルドワンズ)ときて、とどめが山本リンダ。太陽族≠フネーミングに恥じない超豪華なキャスティングと申せましょう。宍戸留美以下アイドル六人がアシスタントで出演、意味もなく歌ってしまう落差もまたよきかなだ。現役高校生三人プラス先生の四人一チームからひとりずつ順番に出て対決する正しい構成で、審査員によるワイプ攻撃ありのイカ天方式。月一回、夕方の一時間番組にもかかわらず生放送という大胆さのおかげで初回は放送事故が激発。寺尾友美なんか、中継先でマイクが入らないまま三分の二も歌っちゃったし、時間が押して千堂あきほの歌はカット。審査方法については一考の要なしとしないが、ぜひこの調子でがんばってほしい。
 一方、テレビ界の良心・日本放送協会が、日本の歌謡界を守りつづけてきたメンツにかけて、民放の軟弱カラオケ番組に正面からぶつけてきたのが、NHK趣味百科「カラオケ演歌歌唱法」、教育テレビだぞ、まいったか。講師に市川昭介先生を招き、懇切丁寧に指導する。「ひろがりのあるメロディーは一語一語をていねいに。音の出し方にも充分に気を配って」とか、レッスン記号つきでいちいちためになる。市川×石川さゆり対談をフィーチャーした豪華カラー版テキストもおしゃれだ。今夜はやっぱ、「風の盆恋唄」かな。
 WAHAHA本舗(以下ワハハと略)、といっても知らない人がいるかもしれないが、ナスデゴンスの巨大ナス、本誌・小泉今日子関西仕事特集の巻頭を飾り全国一〇〇〇万 Kyon2ファンを瞠目させた美しくも哀しいあの紫色のナスを提供したのがワハハだと聞けば、本誌読者ならなるほどと思い当たることだろう。大槻ケンヂ様といっしょに深夜改造計画に出演していた久本雅美、名作「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!(続編いぱねま)」の三軒茶屋のおばさん(続編ババァ)を演じた柴田理恵、全身に油をぬりたくりフンドシ一丁で「みちのくひとり旅」を唄う平成モンド兄弟を産んだのも、天才・喰始率いる劇団(笑)ワハハである。本誌イラストでおなじみ、なんきん氏もワハハの所属だ(むかしのなんきんさんはマンガ家でわたしは単行本だって持っているぞ←じまん)。
 下北沢ザ・スズナリとか箱根の温泉旅館とか、いろんな場所でワハハの生演芸を見てきたわたしは、こんなもん売れるわきゃねえだろうよと思ってたんだが、恐ろしいことに、いま彼らは深夜番組を席巻しつつある。さる十一月七日には、ついに、九十分のスペシャル番組「WAHAHAの極楽てんやわんやカーニバル」まで放映された。 浅草花やしきで行なわれた公演(VOW総本部長日誌既報のとおり楽日は台風で中止。泣く子に勝てるワハハも台風には勝てない)を中心に、あとはメンバーの私生活を赤裸々に暴くという構成なんだけど、舞台より人間のほうがおもしろいのもワハハの特徴である。ワハハの台本を書いたことのあるケラが番組中で証言しているとおり、彼らはほとんど練習をしない。ぶっつけで舞台に上がり、そしてウケる。ふつう世の中ではこういう人たちを天才と呼ぶのだが、ワハハにかぎってこの言葉は似合わない。彼らは存在自体が芸なのである。つまり実存主義的芸人なのである。でなくてどうして、六畳一間トイレ台所共同賃三万二千円木造モルタルアパート住まいの梅垣義明(ザリガニを口に入れたまま「さそり座の女」を歌うのが唯一の芸)と、中野区南台2LDK豪華マンションに住む久本雅美とが一緒に舞台に上がれよう。そして、スーパーMMCを二口持つワハハ一の大金持ち久本は、深夜、村松利史宅に突撃取材、押入れからパンストを発掘し、逆上した村松にセーターを脱がされカメラの前に乳首をさらしながらも、マイク片手に実況をつづけるのである。まさに芸人の鑑といえよう。ワハハはえらい。九〇年代を飾る企画として、今度はぜひ、久本・柴田・渡辺信子による「やっぱりバター猫が好き!」の実現を強く望みたい。ところで、ぼくはやっぱり、WAHAHA本舗の「人間ソラリスの海」ネタが好きだな。



●「男と女の輸入物U」

 三つ子の魂百までとはよくいったもので、小学校入学前から11PMを子守歌にしていた私は、深夜番組にはちょっとうるさい。たとえば……と蘊蓄を傾けようと思ったが、行数が足りないので、台風の目はCX月曜深夜にありという結論から唐突に話を始める。
 とはいえ、横沢彪フジTV編成局長が、「いまいちばん力を入れてる番組はこれですね」(笑)と語るホイチョイ・プロ製作の「カノッサの屈辱」は、いまさら天下の宝島でとりあげるまでもない。まだ見たことのない人は石にかじりついても見るように。とくに受験生はためになるぞ。ちなみにカノッサの屈辱は一〇七七年だ。
 このあと、東京在住ガイジン英語ドラマ字幕つき「東京ストーリーズ」や泉麻人先生司会の長寿番組「冗談画報」をはさんで、草木も眠る午前三時半前後、いよいよ本日のメインエベントが開幕する。その名も「男と女の輸入物U」。トランスジェンダーの時代を無視し、舶来信仰の絶滅も意に介せぬこのネーミングを見よ。これじゃまるで洋ピン(死語)ではないか。
 だが、古人はいった。能ある鷹は爪を隠す。これは、世界各国のテレビ番組を、なんの加工もせず、字幕をつけただけで放送するというじつに画期的な番組なのである。去年の秋からスタート、この春の番組改編で「U」に改称しての第一弾が、英国チャンネル4の超まぬけ国辱番組「カズコズ・カラオケ・クラブ」。フランク・チキンズのホーキ・カズコがジャパングリッシュを駆使して英国紳士に迫り、最後はカラオケおやじに変身させてしまう。その横では芸者ガール装束のアツコ嬢が謎の踊りを踊ってしまうこのシュールさ。 オーケーオーケー、ドゥーザカラオーケーでみんな仲良くお友達、まったく世界はハッピーだぜ。
 ほかにも、現役の兵隊さんを恋人やお母さんと対面させる韓国の軍隊慰問番組「友情の舞台」、スタジオに呼んだカップルの夫婦喧嘩を観賞するイタリアン・バラエティ「愛と憎しみの痴話げんか」など、さながら各国テレビ局のバカ世界一コンテスト。
 最近の傑作は、「スーパーマーケット物欲大競争クイズ」。まずは軽く、「一ドル九八セントのシャンプーと二ドル四八セントのチョコレート。本日の安売りはどっち?」てな物欲クイズで始まって、本番は狂気のお買い物合戦。カートを押して巨大スーパーの中を走り回り、ひたすら商品を買い漁って、規定の金額にいちばん近いチームが勝ち。行く手に立ちふさがる恐怖のニンジン男。これに怒涛の実況中継がかぶさり、高度資本主義の操り人形と化したヤンキーおばさんのパワーが炸裂する。秋のウルグアイ・ラウンドじゃ、やっぱり日本は勝てそうもない。



●NHK教育テレビ「外国語会話講座」

 こう見えても、学生時代のわたしは勤勉な語学おたくだった。専攻は米文なのに、第一外国語がフランス語で第二が英語、これに加えてスペイン語イタリア語ドイツ語をとり、ラテン語は当然必修、ギリシャ語だけは挫折したが、あとはぜんぶ単位をとった。だからNYのディスコでプエルトリカン娘をくどいたり、イェールの女子大生をキケロでナンパしたりはお手のもの、ペラペーラのペラだぜ――という栄光の時代もあったが、光陰矢のごとく去るもの日々にうとし。
 しかし、もっとお手軽に、お茶の間で語学おたくになる方法が存在する。そう、NHK教育テレビの外国語会話講座。現在放送中の講座は、英語会話T・U、中国語、ロシア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ハングル、イタリア語の九コース八ヶ国語。英語Uと、今年スタートしたばかりのイタリア語は週一回二十分、あとの七コースはすべて週二回、あわせて五十〜六十分の授業。時間帯は毎朝午前七時から八時まで。ぜんぶ見たってトータル週八時間だからちょろいもんだ。おおし、やってやろうじゃんか、と向学心に燃える若者なら思うであろう。一念発起したわたしは、一週間、毎朝七時ジャストに起床、テレビの前にすわりつづけて世界の国からこんにちはをされてみた。以下、その報告。
 いちばん笑えるのが英語会話T。講師はなんと黒田アーサーで、NHKと思えないノリの軽さ。西森マリーが登場、映画をテキストに英語をお勉強するコーナーがあり、八月の教材はブルーノ・ガンツ主演の英国映画「ストラップレス」。まだ公開前の新作だ。
 しかし、外人女性アシスタントの女王は、文句なく、スペイン語会話のメルケ・サンチェスちゃんにとどめをさす。美女度は七八くらいだけど、ラテンの血は争えず、やたら表情豊かでとにかく役者。ひとりしゃべりのコーナーは圧巻。岩波書店会長の岩波雄二郎氏も彼女を応援しているぞ。
 一方、音楽的にみると、一押しはフランス語会話。MTVでもめったに見られないフランスのバンドのビデオ・クリップをそのまま流すコーナーがあり、八月はレ・ネグレス・ヴェルト。チョゴリおねーちゃんの登場でお茶の間がいきなりカラオケボックス化するハングル講座や「ステンカラージンの墓」をアカペラで歌うロシア語会話も、ワールド・ミュージックばやりの昨今、要チェック。実用性では、旅行会話シリーズを放送中の中国語会話。「ビール2本と紹興酒一本ください」をNHKの先生が何度もくりかえし教えてくれるんだから、これはべんり。
 見逃した人、早起きの不自由な人には夜十時からの再放送が待っている。じゃ、ありべでるちってことで。



●EXテレビ「激突! オタクvs戸塚宏」(宅八郎)
 おたく知識を武器に業界を渡り歩き、いまやどこに出しても恥ずかしくない立派なサクセスおたくに出世した私(SFおたく歴二五年・映画おたく歴一一年)には無縁の話だが、昨年八月十日に勃発した全国規模のおたくバッシングで多大なる精神的物理的苦痛を被った、社会的に認知されない不幸なおたくも多かったと聞く。ところがその反動か、今年になって「世界をおたくが救う」「九〇年代のキーワードはおたく」式おたくブームが勃興。その急先鋒が、「週刊SPA!」に〈いかす! おたく天国〉、通称〈おた天〉を連載中のおたく評論家、宅八郎さん。おやじギャル・ブームにつづけと、フジサンケイグループが総力を結集してプッシュする秘密兵器、おたく界の中尊寺ゆつこともいわれる人物である。
 テレビに登場する彼女が自らおやじギャルを演じてみせるのと同様、宅さんも世間に期待されるおたく像をみごとにコスプレする。今回の舞台は、ヤンパラ時代におたく問題でレーティングを稼いだ三宅裕司と、「Zガンダム」エンディングの「水の星に愛をこめて」でデビューした森口博子が司会する日テレEXテレビ。今夜の宅さんは、前回テレ朝プレステージ出演時の魔女宅Tシャツからちびマル子Tシャツに衣替え、胸にペンをさしたサファリジャケット(死語)にジーパン(死語)、abcストア紙袋のコーディネート。おたく商売で稼ぎまくる大資本バンダイがバックにいるだけあって、そのファッションには一部の隙もない。前回から約三〇ミリのびた頭髪は、「年に一回しか床屋にいかない」おたく神話を守らんとする決意表明だ。
 この夜のメインエベントは、全国紙朝刊ラテ欄にいわく、「激突! オタクvs戸塚宏」。「戸塚先生、エクボがかわいいですね」の先制パンチで開幕した宅さん戸塚さん対談は、宅さんのドーパミン攻撃が炸裂。「先生、ヨットで頭の中に覚醒剤出してラリってるわけですよね。松田ケイジも真っ青ですね」「ドーパミン出すんなら戸塚サーフィン・スクールでもいいんじゃないですか」と、脳内快楽物質フィールドにひきずりこみ、おたくの理論武装ぶりを見せつける。この調子なら朝生出演も近いぞ。がんばれ宅さん。
(ところで、番組中、代々木駅落書きコーナーの映像に一瞬映ったデブ男、スラッシュ&スラッツ・バンドのベースにそっくりじゃなかった?)
 一方、本家CXでは、24時間テレビ「一億人のテレビ夢列島」で大々的に「おたく」をフィーチャー。と思いきや、これがじつは本物の「お宅」特集で、「五千万円で買えるおうち」を取材するワイド版「渡辺篤史の建もの探訪」……かと思いきや、深夜枠になるといきなり「プロ野球おたくクイズ」がはじまったりする怪しい構成で、なかなか懐が深い。一番やりたかったのは「おたくのお宅訪問」だろうけど、さすがに自粛したんだね。



●早見優のアメリカンキッズ

「おはよう!子どもショー」のレッドマン・コーナーで毎朝五分、エレキングやバルタン星人の敗者復活戦(貧乏な円谷プロは怪獣を使い回していた)に声援を送る正しい小学生だった私は、朝番組にはちょっとうるさい。朝といえば就寝前の大事なひととき。うっかりワイドショウなんか見て、大事件が勃発してたりするとそのまま「アフタヌーン・ショウ」まで寝られなくなってしまうから大変だ。
 そこで今回推薦する、正しいTVの国からおはようございますの帽子屋さん番組は、「早見優のアメリカンキッズ」。新聞のラテ欄だと「早見優の英語」、TVブロスじゃなんと「英会話」になってるけど、これが正しいタイトルだからちゃんと覚えておくように。月曜から金曜まで、毎朝五時四五分スタートだから、僻地通学・新幹線通勤の人々も大丈夫(ただし、うっかりこの前から日本テレビをつけていると、眠い目をしたお姉さんの「おはよう天気」がはじまって、そのまま眠っちゃうことになるから気をつけろ)。
 さて、英語参考書のご著書もおありになるハワイ生まれの優ちゃんがみずから司会するこの番組は、ま、「ピーウィーズ・プレイハウス」と「セサミ・ストリート」を足して二で割ったようなもの。優ちゃんの生徒をつとめるのは、ガリソンくんとプーピーちゃんの兄妹。みるちゃんきくちゃんなんだろうくんのパンク・バージョンみたいで、シンプルながらけっこうおしゃれだ。プーピーの赤にピンクの水玉ファッションはカラーでお見せできないのが残念だけど、このふたりと優ちゃんの掛け合いで、視聴者はどんどん英語を覚えていくというからくり。もちろん優ちゃんのお歌のコーナーもあれば、角帽かぶった優ちゃん扮するキンダニー博士(これはつまり金田一じゃなくて二ってことなんだろうな、いま気がついたけど)が出てくるスペリング講座もある。
 しかし、この番組最大のウリは、なんといっても今日の一言。"What's up?"とか "I'm awake."とか"Neat"とか、ごくごくあたりまえの言葉なんだけど、「さあ、学校に行ってすぐ使ってみようね」と優ちゃんがいうとおり、応用範囲が広くて実用的。ふぁっくゆうあすほうるしか知らないヘビメタ関係の人や、いえすあいしんくそうで押し通すおたく関係の人も、あいだに今日の一言をまぜて使えば、きっと新しい世界が開けるぜ。
 一方、朝っぱらから英語なんか聞きたくねえや馬鹿野郎という国粋主義の人には、特別に、CX六時五十五分からのエイケン制作三分アニメ、「ことわざハウス」を推薦しておく。きょうのことわざは「蒔絵の重箱に牛の糞盛る」だぞ。どうだ、まいったか。