【3月16日(月)】

 確定申告の書類をかたづけ、10時頃寝る。
 2時に宇山さん@講談社文三からの電話で起きる。『Jの神話』増刷だそうで、めでたしめでたし。あとはプリプラに増刷がかかれば、とりあえず任務を果たしたことになるのだが。
 つづいて茶木さんからもホラー大賞の件で架電。ごった日記の話はすでに耳が入っているらしい(笑)。創元の本格ミステリベスト10本の話も振られたが、まだ現物を見てないし眠いので二言三言で電話を切る。
 税務署に行くため泣きながら起きたが、さいとうよしこの分に収支内訳書が添付されていないことが判明し、自分の分の申告書類をさいとうに預け、『人狼城の恐怖 ドイツ編』を読みながらふたたび寝る。


【3月17日(火)】

 午後11時に起き、メールと掲示板とpatioをチェック。お台場のジオポリスでゴールデンウィークに開かれる「スターシップ・トゥルーパーズ」のイベントでトークショウに出ろとか謎な話が一件。なんかますます座談業者な感じ。そういえば京極プロジェクト関連でも座談業のお座敷がかかっているのだった。どうも同傾向の仕事は同時期に集中する傾向がありますね。やたら推薦文ばっかりとか、やたら解説ばっかりとか。

『ドイツ編』を読み終え、『探偵編』に突入したところで、午前3時になったのでジョナサンに出勤。最近、西葛西のファミレスは深夜でも混んでてたいへん。MAG TIMEが24時間営業ならいいんだけどなあ。と言いつつまたも鴨南蛮を食う。豚キムチ鍋がなくなったのは返す返すも残念なことである。

 朝まで仕事して、7時からロッテリア。朝のロッテリアは空いてて快適なのだが、20分周期ぐらいでくりかえされるBGMがやや邪魔。まあミスドよりはましだけど。ローソンみたいな感じですかね。

 レイモンを20ページ進めたところで六本木のブエナビスタ。「スターシップ・トゥルーパーズ」の試写を見るべく三村美衣と待ち合わせたのだが、12時40分の待ち合わせに10分遅刻してくれやがりくださったおかげで、久々の満員札止めを食らう。オレのひとり前まで入れたんだよなあ。ちぇ。
 しょうがないので近所のイタ飯屋でランチのパスタを食べ、ブエナビスタにもどって3時半からの「フラバー」を見ようかと思ったけど、東映で「D坂の殺人事件」の試写があるんで銀座に出る。実相寺だし、三輪ひとみ出てるし(って、オレは妹のほうがより好きですが)、薩川脚本だし。
 前半はいきなり緊縛映画なんで驚いたけど、「心理試験」とカップリングしてあって、まあまあよくできてますね。コロンボか古畑に使えそうな構成――って誉めてないか。

 つづいて京橋まで歩き、シネセゾンで「ムトゥ 踊るマハラジャ」。江戸木純激賞のインドミュージカル。バズビー・バークレーが演出した「グリース」のインド版って感じ。くどいとこが持ち味なのか。楽曲は最高で、試写室にもかかわらず爆笑の嵐。
 川本三郎氏が試写に来てて、すごくひさしぶりのごあいさつ。「ちょっと太ったね」といきなり言われてしまったので、ぼちぼち減量作戦に着手しよう。


【3月18日(水)】

 昨日追い返された「スターシップ・トゥルーパーズ」ふたたび。30分前に到着し、ロビーで仕事としてたら菊池里佳嬢がマクドナルドの包みを抱えて登場、ポテトを分けてくれる。なんか髪の毛が金髪を通り越してプラチナブロンド状態になってました。すげえ目立つな。
 映画は異常に性格が悪い。この原作にこの予算でこういうのをぬけぬけとつくっちゃうバーホーベンはえらいね。大政翼賛映画のフレームを外側に用意して、思いきり嫌味な結末をつけてるんだけど、それとはべつのところできっちり観客を満足させる。派手なドンパチは見せるけど、戦争映画的な戦術とかリアリティは一切無視。歩兵科の新兵訓練のステロタイプぶりとか、完全に確信犯でしょう。
 サイズで勝負する「ID4」が善意のバカ映画だとすると、数量で勝負する「ST」は悪意のバカ映画ですね。伏線の張りかたは爆笑。ハインラインが生きてたら激怒したのでわ。いや、晩年ならむしろ喜んじゃったかもしれないけど。
 悩む戦争映画と悩まない戦争映画の両方に対するアンチテーゼになってるあたりもじつに狡猾で、根性曲がってます。今年のベストワン(笑) しかしこんな映画が大ヒットしていいのか。ううむ。

 恵比寿経由で池袋に出て、4時にホテル・メトロポリタン。京極プロジェクトの審査(?)対談。というか、応募の手紙をサカナに京極さんがしゃべるのを聞く係ね。まだ20通くらいしか来てないので、一通ずつ京極さんがコメントしていくかたち。で、選考過程はアニメージュ誌上で発表されると。はやく出してた人はラッキーでした。
 今回のにはインターネット応募分が入ってないんだけど、そっちは次号でコメントされる予定。面白かったのは三つぐらいかなあ。もうちょっとヒネってほしい気が。「クローンが実用化されてる」とか、「ヴァーチャル・リアリティが一般化」とか言われても。

 有楽町線で有楽町に出て、東京會舘の日本ミステリー文学賞授賞パーティへ。創元の本格ミステリベスト10が話題。やはり評論家たちは真っ先に我孫子原稿を読むらしい。で、みんな納得してない(笑)。オレ的には、『死の蔵書』は「本好きのためのミステリー」じゃないので(宮部みゆき『淋しい狩人』の新潮文庫版解説にそんなようなことを書いた)、我孫子さんがそこに反応するのもわかるけど、字数が限られてる書評だと、その手の紋切り型を並べちゃうのもしょうがない気がするな。古書マニアも広義の「本好き」には含まれるでしょう。というか、三日にあげず神保町に通ってるような人は(買ったものをろくに読んでなくても)世間から見れば「本好き」だしね。
 ホラー大賞の選考会は20日に開かれるらしい。宍戸さんのイチ押しはオレのイチ押しと一致してるんだけど、結果がどうなるか。
 
 パーティ後は一階のティールームで、宇山@講談社、新名@角川、新保博久、福井健太の各氏と一服。『三浦和義事件』裁判、佐川×島田問題その他の話題。福井くんも『噂の真相』『創』の佐川原稿ですっかりキャラが立ってしまったせいか、こわいものなし状態に突入していて面白いのだが、まだ将来がある(かもしれない)若者なので、福井語録の引用は控えよう。
「講談社ノベルス=バージェス頁岩」説は宇山さんにはウケてて、
「いやあ、ぼく前からカンブリア紀って好きだったんだよ」とのことでした。この部長にしてこのノベルスあり。笠井潔の「第一次セルダン危機」説も傑作だと思いましたが、ミステリファンにはやや通じにくいか。笠井潔=ハリ・セルダンってのもけっこういい線だと思うな。

 千街晶之氏の講談社ノベルス「色物路線」批判は、大森の書評に対するアンチテーゼだそうなんですが、わたしはふつうの本格にはあんまり興味がないのでしょうがない。SFでは長く守旧派をやってたんだけど、あんまりいいことはなかった気がするな。
 形式を壊すこともずらすことも、一種の「形式へのこだわり」ではあるわけで、形式の中におさめてればいいってもんでもないような。とはいえスタンダードが存在しなくなると衰退しがちなので、批判勢力は当然必要でしょう。まあ講談社ノベルスに関しては、『コズミック』で地獄の釜の蓋が開いちゃったので、いかようにもがけどもせんなかるまいにって感じ。カンブリア紀だと思えば腹も立つまい。


【3月19日(木)】

 8時に目が覚めてしまったので『人狼城の恐怖 探偵編』のつづきを読む。いよいよ本番って感じ。でも、きのう宇山さんから、『完結編』は6月だと聞いちゃったからなあ。読みが甘かった。この禁断症状をどうしてくれよう。やっぱり『完結編』を待って一気読みすべきだったか。
 ところで、昭和46年にはまだ成田空港は開港してないんじゃないかと思うんですけど>二階堂様。

 ごった日記の3月16日分で、『A先生』問題についてのコメントあり。キソテン症候群(笑)に関しては、だいたいそのとおりですね。驚くべき謎にしょぼい解決。幽霊の正体見たり枯れ尾花系ともいいます(ってだれが)。
『A先生』でいうと、家が消えちゃうやつとか。「持ちあげるくらいだから大きなクレーンか何かを使うのかな」と思ったらあの解決……ってそのままこっちにもあてはまるでしょ。「物体X」も完全にそれで、わたしはグローブが出てきた瞬間にわかりました。いや、A先生じゃないから、とてもあそこまで全部はわかんなかったけどさ。
 『ミステリバカ本』みたいなアンソロジーがあったとして、それに入ってる分にはまあ許せるけど、連作だと、読者にはふつうの解決がつくことが最初からわかってるわけで、エイリアンがどうのこうのとか、まじめに読む気にならない。竹本健治の「メニエル氏病」とくらべるのは気の毒にしても、なんかもうちょっと脱力しない解決がほしい。
 その意味で、「夜光怪人」は、謎と解決のバランスがまあまあとれてるほうですか。このぐらいならそう腹は立たない。
 あと、「ニュータウンの殺人」は別格で、「ぜったい成立するはずがないトリック」物という新境地を開拓した作品。これはこれですごいような気もするが、ふつうに考えるといしいひさいちの4コマのネタでしょう。小さいプレハブつくっちゃうとことか、あまりにもばかばかしくて好きなんだけど。
『六とん』をとくに弁護する気はないんだけど、くだらない謎にくだらない解決がつくくだらなさにはそれなりに味わいがあって、とくにけなす気にもなれない。

 つづいて『ループ』ですが、単体では評価しようがないでしょう。『パワー・オフ』とくらべる種類の小説じゃないし、近未来モノとして読むのもちがうと思います。「なんだ(一種の)夢オチか」とがっかりしちゃった人にとっては『ループ』だってキソテン症候群かもしれない可能性はあるが、オレ的には思いきり意外な解決だったので。アイデアのオリジナリティにはそんなにこだわってないっす。

 お昼に歯医者行って、ミストラルで仕事。レイモンのThe Beast Houseは今週中にかたづきそうな気配。


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