【2月4日(水)】

 本の雑誌の締切が近いので、ソノラマの新刊とか、未読をまとめて消化。岡本賢一『タイム・クラッシュ』は、ヤングアダルトの宇宙SFとしては可能な限りディックに近い異色作。ソノラマ以外のレーベルではたぶん書けないのでは。彩院忍『電脳天使III』はあいかわらず好調。
 講談社ノベルスのメフィスト賞三連発の一冊、『歪んだ創世記』を読む。清涼院流水のメフィストの短編(新本格10周年記念のやつ)を長編化したみたいな話で、わたしは全然買えません。前半の仕掛け(時間××ネタ)は悪くないんだけどなあ。もうちょっとリアリティのある舞台で、冒頭からメタフィクションであることを明かさずにやってくれたら、もうちょっと面白くなったかも。これなら『プラトン学園』のほうがまだいいのでわ。
 残る一冊、『記憶の果て』も本格じゃないみたいなので、やっぱり乾くるみは『匣の中』から出すべきだったと思いますね。


【2月5日(木)】

 塩澤編集長@SFマガジンから、インターセクションの上がり予定の確認電話。「今日の鈴木さんのパーティ行きます?」と言われて、『ループ』の打ち上げパーティだったことを思い出す。担当編集者中心らしいから遠慮しようかと思ったけど、塩澤・竹内も行くっていうんで、こないだのお礼かたがた顔を出すことに。
 場所は青山通り沿い、こどもの城の向かい側にあるクラブ、〈ループ〉。受付は新潮社のK村Y花&S井K子嬢。編集者関係は半分以上知り合いかも。
 パーティの費用およびビンゴ賞品の大半は鈴木光司持ち。さすが太っ腹……と思ったけど、『ループ』50万部と聞いてとたんに感謝の気持ちが薄れる(笑) ささやかな税金対策パーティですか。
 しかもビンゴの賞品の中には「鈴木光司とふたりきりで魅惑のワンナイトクルーズご招待」とか、「鈴木光司と一夜のカラオケご招待券」とか混じってて、こりゃもう噂の真相一行情報ネタですね。
「『ループ』でベストセラーの鈴木光司、打ち上げ宴会ビンゴで各社女性編集者にセクハラ大会のウワサ」とかさ(笑)
 しかもビンゴで「その場チーク券」に当たったのがT内@早川だったりするので、デジカメを持っていかなかったのが悔やまれることである。

 一次会終了後、腹が減ったという長谷川@新潮社、塩澤&竹内の早川コンビと4人で渋谷に出てセンター街をさまよい、結局、長谷川の強硬な主張でマクドナルド(笑)。
 そりゃやっぱりいまはタマゴWバーガーセットでしょ、と四人でトレイを持ち、二階席に上がったまではよかったけど、満席。三階の禁煙席も満席。しょうがないので、スーツ姿の男性編集者3人といっしょに、一階のカウンターで立ち食い(笑)
 しかも、塩澤編集長は今日が二十代最後の夜らしい。二十代最後の夕食がマクドのタマゴWバーガーっすか。そりゃめでたいね、とか言いつつ、早川と新潮社の最新の社内事情を取材する。いや、どこもたいへんそうですね。角川は景気いいみたいだけどさ。

 マクドのあと、鈴木宴会の二次会が開催されているカラオケボックスへ流れる。鈴木さんとは、五年ぐらい前からチャゲアス歌う約束だったので(笑)、とりあえず「YA! YA! YA!」とか。意外と忘れてるね。あとは「ガッツだぜ」の合いの手入れたり、イエモンの「楽園」歌ったりとか、主に接待モード。角川、新潮社、講談社、早川あたりを中心に二十人ぐらいいたでしょうかね。
 塩澤くんは二十代最後に歌う歌をなんにするか悩んだあげく、(GLAYの「HOWEVER」につづいて)23:58から尾崎の「十五の夜」(笑)。間奏中にお誕生日を迎えて、めでたいことでした。
 鈴木さんはここ数年ですっかりカラオケにハマったらしく、歌って踊れるパパ状態。女性編集者とSPEEDとか歌いながら踊ってる姿はファンには見せられまい(笑)

 午前1時半ぐらいにお開きになり、マクド組4人と、T森嬢@実業之日本社の5人でセンター街のDucky Duckに流れ、塩澤編集長の深夜おたんじょうかい。
 メニュー指さして、「あるケーキぜんぶ一個ずつ持ってきて」と、テーブルに9個のケーキを並べ、端から食わせたら、ちゃんとぜんぶ半分ずつ食べたのでえらいことである。帰りのタクシーは気持ち悪くなってたみたいだけど、いいおたんじょうびだったんじゃないでしょうか。オレなんかロイホのいちごクレープ一個だったのに(泣)。


【2月6日(金)】

 きのう遊びすぎたのがたたって一日寝てしまう。SFインターセクションとか、本の雑誌とか、雑誌の仕事に手をつけるがあんまりはかどらず。
 メフィスト賞最後の一冊『記憶の果て』は、19歳の著者による人工知能ネタの青春小説ミステリ風味。最近の男子高校生って、もうちょっとパソコンに強いんじゃないの、っていうのが最大の疑問。ここまでブラックボックスじゃ、ファンタジーにしかならない。
 死んだ親父のパソコン上で人工知能プログラム(らしきもの)が走ってたら、ふつう最初にCPUとかOSとかメモリとか気にするんじゃないの? しかも時代設定は現在で、プログラムの起動は18年前っていうから、1980年ぐらいでしょ。カセットテープでプログラムをロードしてた時代だもんなあ。主人公が自分の家族の過去を探るくだりとか、日常描写とかはそれなりによくできてるので惜しい感じ。SFで落としちゃダメな話でしょう。

 髪を切ったら頭が真っ黒になってしまってつまんないので、ふたたびギャツビーのブリーチで二時間。前回とおなじ色のを使ったつもりだったのに、仕上がりを見たら全然色が違う。前回は「一回で思いっきり明るい茶髪に」だったのが、今回は「一回で明るい茶髪に」だったらしい。「思いっきり」だと金髪になるんですね。でも西葛西のドラッグストアいわいには、今回、一種類しか置いてなかったからなあ。


【2月7日(土)】

 三村美衣が三菱のAmityを近所のショップで買った(88,000円だって(笑))そうなので、携帯の倍速CD-ROMドライブと雑誌付録CD-ROMその他を持ってアトリエサードに行き、インストール&セッティングサービス。この値段でMS Word97とExcell97がプリインストールされててお得な感じ。CD-ROMドライブのinfファイルをサードのマシンでkmeのサーバから落としたりとかしてたんでけっこう時間がかかり、オーナーの人は柳下毅一郎の新デッキと横で対戦している(笑)。余ってるMegahertzのモデムカードとCD-ROMドライブを貸し出し、ひととおりセッティングが終わったところでユタに流れる。
 ワセダミステリクラブ40周年宴会を早稲田でやってたとかで、白石朗登場。ワセミス組は馬場で二次会中と聞いて覗きに行くと、巨大な座敷に50人ぐらいがひしめいてる状態。
 いちばん奥にいた西上心太がオレに気づいて、いきなり大声で、「裁判どうなってる?」だって(笑) だからそれはオレじゃないってばよ。


【2月8日(日)】

 オリンピックがはじまってしまったので時間がめちゃめちゃな感じ。
 11時半ぐらいにフジテレビさしまわしのハイヤーがやってきて、15分でお台場。ザ・ヒューマンっていう夕方のニュース情報番組で浅田次郎『鉄道員』をとりあげるとかで、そのコメント撮り。ゆうべ夜中に携帯に電話がかかってきて、今日、日曜日の撮りという泥縄の世界ですが、まあ日曜だから道が空いてて楽だったかも。セッティング済みの応接室に通されて、打ち合わせから収録までぜんぶあわせて30分。往復の時間入れても一時間だから、雑誌のコメント取材よりかんたん。
 しかしせっかく、はじめてフジテレビ新社屋の中に入ったのに、なんにも見ずに帰ってきちゃったのは残念。ま、頭が寝てたのでしょうがないけど。
 ディレクターの人とは玄関で落ち合ったんだけど、最初にオレと目が遭ったときは、ぜったいこいつじゃないって顔してましたね。茶髪の文芸評論家って信頼性低いかも(笑)。

 角川からチェック用のゲラが送られてきた奥泉光の新作『グランド・ミステリー』を読む。真珠湾に向かって出撃した空母と潜水艦。その中で起きた謎の事件をめぐって幕を開けるミステリー風の構成なんですが、『「吾輩は猫である」殺人事件』同様に、本格ミステリには収束しない。いちばん近いのはスティーヴ・エリクスンの書いた『エリアンダー・M』かな。読み慣れてない人だと、なにが起こってるのか全然わかんないかも。文章は凄いし、めちゃめちゃ凝ってます。これは傑作。『死の泉』があんなに評判になるんだったら、『このミス』で一位になってもおかしくない。
 3月発売予定なので、刮目して待て。


【2月9日(月)】

 国内のオリンピックだと、中継が昼間なので全然ダメ。アイスホッケーとか、今の段階で見てもしょうがないんだけどなあ。フランス相手の六人攻撃は燃えたけどさ。やっぱりあそこは守りきらないとダメでしょう。なりふりかまわぬ強化も効果はいまいち――というか、やっぱ元が弱すぎるからなあ。
 中継の合間にだらだら原稿書いて、SFオンラインの「リング」「らせん」評とか、本の雑誌とか、SFインターセクションとかを仕上げて送る。


【2月10日(火)】

 オリンピック見ながら遊ぶために、チュンソフトの「街」を買ってくる。待ち時間中のプレイに最適でしょう。
 今回は8人のキャラの話を順番に読みつつザッピングしていくパターンで、『99人の最終電車』インタラクティヴ版って感じ。プレイ感覚は、クロンダイクやってるような雰囲気ですね。無限アンドゥ可能で操作性もいいんだけど、全員が一日目を消化しないと二日目がはじまらなくて、どこでどうフラグが立つのかわかりにくいところが難。ていうか、しおりはさんだシナリオにもどったとき、他の登場人物の状況がどうなってるパターンなのかがよくわかんない。

 スピードスケート男子500は久々に燃える展開。いきなりリングに大の字で寝ころんじゃう清水くんはかっこよかったす。


【2月11日(水)】

 明け方起きて、「街」をしながらオリンピックを見る。
 原田はやっぱり一発に弱いよね。なんかコーチまでびびってた感じだし。ホームタウンの試合って雰囲気じゃなかった気が。金メダルをどうしてもとらせようって配慮がアダになったのでわ。ま、原田が防波堤になったおかげで船木の銀があったのかも。

 しかし今日はなんといってもモーグルでしょう。BS中継の最初からリアルタイムで見てた甲斐があったというか。予選では、上原愛子の13位通過ばっかりが大きく扱われてて、里谷だってかわいいのに、この年齢差別はひどすぎるとひそかに怒ってたんだけど(だって予選の順位は里谷のほうが上なのに、どの新聞もモーグルの写真はみんな上原のアップなんだぜ)、その怒りがバネになったのか(笑)、プレッシャーがないのがよかったのか、最高のすべりでしたね。これなら入賞確実、ひょっとしたらメダルも……と盛り上がる中、あとの10人の失敗を祈りつつ見るってのは、オレのオリンピックTV観戦史上でもかなり珍しい体験だった気がする。しかしまさかの金。解説の山崎修が傑作で、「すげえ、タエ!」は歴史に残るかも(笑) でも、その前に思わず「マズい!」と言っちゃったのが爆笑でしたね。興奮するとついいつもの言葉遣いが出てくるっていう。
 しかし原田が金メダルとれなかった最大の原因は、やっぱ茶髪にしてなかったことだよな。本番に強い日本人は、体育会系より茶髪系でしょう。って、清水も里谷も『巨人の星』系みたいだけど。
 ところで船木って東野に似てないか?

 徳間から三月に出るマイク・コーディ『イエスの遺伝子』(内田昌之訳)のプルーフを読む。再校ゲラを簡易製本した書評用見本で、アメリカの大手出版社のメジャータイトルでは日常的につくられてるんですが(uncorrected proofってやつ)、日本でもここ数年、けっこう一般化してきました。最近だと『グリーン・マイル』の一巻目とか、ソニーマガジンズの『ネアンデルタール』『スペアーズ』とか。今回の『イエスの遺伝子』も、あからさまにソニーマガジンズ方式(って、単に米国ブロックバスター本宣伝方式のコピーだけど)を採用し、十万部超のベストセラーを狙いたいって感じ。
 内容は、これがまたあからさまにハリウッド大作映画風。プロットのつくりかたとか、ほとんど「ピースメーカー」みたいですね(主人公が動かないとなにも起きないとか)。ネタ的にはSFなんだけど、書き方がSFじゃない小説の典型。『パラサイト・イヴ』+「GENE」を下敷きにクライトンが書いたような波瀾万丈エンターテインメントで、ご都合主義の嵐だけど、まあそれなりに面白い。いまの日本では、ど真ん中のストライクってタイプの小説なので、映画化前でも20万部くらい届くかも。これで内田くんの新婚生活も安泰か。ま、こういうので稼いでおかないと、売れないSFが翻訳できないからなあ。


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