【11月15日(土)】

 1時ののぞみに乗って京都。ずーっと工事してた新しい駅舎と、隣接の伊勢丹を外から見物。あの「大階段」って謎だなあ。でも中はただの伊勢丹。

 伊勢丹前からSFマガジン編集部に電話。伊藤さんはまだ499号のコードウェイナー・スミスが終わらないらしい(笑)。

 3時前にタクシーで熊野神社前のからふね屋。水鏡子、三村美衣とデュエル。水鏡子師匠はあいかわらずダメージの出ないデッキをつくっている。5色デッキ全盛時代にカルマデッキつくっても無駄だと思うんですけど。三村美衣は古いマロアーマーゲドンデッキのまま。
 4時になって高野史緒嬢登場。つづいて我孫子、法月、麻耶の京大ミステリ研勢と、小林泰三氏もやってくる。
 京フェス合宿オープニング前にマジカルビーンズでカラオケ的計画だったんだけど、合宿所に行って部屋割り決めて荷物置いたらもう6時近く。牧野修、田中啓文両氏とかもいっしょに、例年通り大挙してレストラン十両に赴き、食事だけすませて7時から合宿オープニング。
 M:TG人口も増えてるらしく、あちこちにギャザな輪が。けっきょく、合宿企画紹介のあいだじゅう、大広間の片隅で佐脇洋平とデュエル(笑) 急造テンペストデッキはまだ改善の余地が相当あるでしょう。佐脇デッキも似たようなコンセプトだったのは笑いました(マナ出しエルフがOverrunで殴る)。オレのは現状青緑(微風の守り手とか入ってる)だけど、ラノワールと極楽鳥とクィーリオン・レンジャー合計12体にして、5色緑のほうが安定するかも。ハルマゲドンとカウンター系呪文入れて、あとはクラゲとネクラタルとX火力とか。

 8時からは、「京都の部屋」あらため「関西の部屋」。京都在住作家懇談会って構想だったんですが、牧野修、田中啓文の大阪勢が来たので、ほとんど関西漫才の部屋でしたね。
 とくに、ついこないだまで某大手メーカーで総会屋対策やってた田中啓文の総会屋話がウケまくり。法月・我孫子のミステリ勢が質問し、田中啓文の答えに牧野・小林がツッコミ/ボケを入れるパターン。
 総会屋の作戦にも毎年流行があって、各企業の担当者はその年の流行をいちはやくつかむために情報収集が必須とか。想定問答集をひとりで2000問も考えるのはたいへんだとか。
「いやあ、めちゃめちゃ面白いじゃないですか。その話は売れますよ。いますぐそのネタで長編を書けば……」 「せやけど、こんな話、SFマガジンが買うてくれるかどうか……」  って、なぜそこまでSFにこだわる(笑)。やっぱりその手の話で売るんなら、大物総会屋が急死して、一人娘の女子高生があとを継いでがんばる、「セーラー服と機関銃」パターンの「女総会屋・冴子」とか。
 でもSFにするならやっぱり「宇宙の総会屋」でしょう。アルファケンタウリまではるばる世代宇宙船に乗って、総会に参加しにいくわけですな。宇宙の総会屋一族。しかし、なにしろ遠いから、現実に総会に出られるのは千年に一度だけ。一族の中で総会伝説が語り伝えられている。
 一方、受け入れ側の惑星では、千年に一度、総会屋がやってくるという言い伝えがあり、すでに百年前から、全惑星的な事業として想定問答集の作成がはじまり……。
 とかバカ話をしてるうちに2時間たちました。なんだったんでしょうね。
 我孫子・法月が引き上げたあとも、田中・小林・牧野のマンガトリオは、廊下の一角を選挙して、えんえん朝までおたく話をしていました。よかったよかった。

 つづいては「京都SFフェスティバルの歴史を語る部屋」で昔話。最近、京大SF研の一部学生のあいだでは、「京大SF研の歴史」がマイブームらしい(笑)。
 どこからともなく出てきた写真アルバムとか、小浜徹也が9割までつくって結局出さなかった第一回京都フェス・アフターレポートの版下(16年前のオレの挨拶とかそのまま載ってて大笑い)とか、貴重な史料を見られたのは収穫だったけど、思いきりうしろ向きな企画だったな。まあでも、ここ数年の京フェスの内幕はほとんど知らないので、ためになりました。
 それにしても、この16年、毎年京フェスに来てるのか。SF大会は3回も欠場してるのに。あ、でもSFセミナーはこの18年毎年参加してるんだな。ううむ。

 午前1時からはカードゲームの部屋でテンペストのブースタードラフト。去年はたしか8人参加だったけど、今年は12人。最初に6人×2テーブルに別れたところで濃いほうのメンツにうっかり入ってしまったのが最大の敗因。現役の京大生には勝てず、2勝1敗。オポネントマッチパーセンテージで6人中3位止まりでした。とほほ。

 午前5時を過ぎても、大広間や廊下ではあいかわらず元気な人たちの輪が。野尻さんは、企画部屋一個占拠して、「のじりんとあそぼ!」とか看板出して自主企画やってるし(笑) この部屋では歴史に残る「喜多哲士つるし上げ事件」とかあったらしい。詳細は、つるし上げられた本人のぼやき日記とか、野尻抱介さんとこのフリートーク掲示板とかを参照。
 ちなみに京フェスレポートが上がってるページは、ほかに、東洋大SF研京都SF フェスティバル '97レポートとか、冬樹蛉の間歇日記とか、野田令子@お茶大SF研の京都SFフェスティバル97レポートとか、我孫子武丸のごった日記とかがあります。

 明日の企画に備えて6時前にゲスト部屋に引き上げ(みんな起きてるのでがらがらでした)、2時間ほど仮眠。


【11月16日(日)】

 二時間寝て、8時半に起こされる。例によって、朝はからふね屋。すでにマンガトリオ(3パパ大将とも言う)と高野さんがテーブルを囲んでいる。高野さんは朝方寝る前に、「朝起きたあとはどこで朝食なんですか?」と確認してたんだそうで、すでにコンベンション参加の基本に熟達している(笑)。

 ゆうべの合宿企画情報などをひとしきり交換してから、ぞろぞろ歩いて会場の京大会館へ。

 最初の企画は、「今度こそSFがつまらないわけ教えます」あらため、「SFのジャンル意識について」。尾之上俊彦メインで、聞き手に冬樹蛉と三村美衣を起用。順当な人選かと思われたが、ベテラン三村が誤算。得点にからめないカズというか(笑)、尾之上の屈折した発言を受け切れず、通訳にならない。なかなかボールが枠に飛ばなくて、とくに前半は非常にわかりにくいパネルでしたね。
 だいたい三村美衣の読書術自体、わりと変態的なので、ふつうのSFファンには理解しにくいに違いない。まあでも、類型的RPGファンタジーに対する評価の甘さの原因はよくわかった。オレ的にはそのへん全然つまんないからなあ。
 初出場の冬樹蛉は、ロペス並みの働きはしたような。まあ声だけでキャラ立ってるからお得だけど(笑)。司会はむしろ冬樹蛉にまかせたほうがよかったと思いました。
 それでも、後半、具体的な作品批評に入ってからは、パネリストの人格を把握していない聴衆にもそれなりに面白い内容だったのでは。
 しかしみんなで口をきわめて『火星転移』や『ヴァーチャル・ガール』を罵っていいのか(笑)。バクスター批判に関しては、冬樹蛉がフォローしてたけど。
 尾之上俊彦の「(オレにとっての)SFは松本人志みたいなもんである」って発言はけっこう本質的かも。「一人ごっつ」で二時間ドラマやってるのがバクスターだね。
 尾之上的問題意識は、ファンダム歴が長くてなおかつ今もSFを読みつづけてる人間は多かれ少なかれみんな感じてるはずなんだけど、言語化の過程で他人にわかりにくくなってしまうのが難。いや、そのわかりにくさを楽しむべきパネルなんですが。
 最後のほうで今村徹(東北大SF研OB)がすっくと立ち上がり、「SFが提出する魅力的なビジョンは、人生のあらゆる場所で発見できるから、SFファンでいつづけるためにかならずしもSFを読みつづける必要はない」的なことを発言したのは(本人を知っている人間には)すごく面白かったんだけど、ほとんどの参加者にはよくわかんなかっただろうな。
 あとで本人に、「さっきのはひさしぶりに今村の芸風がよく出ていてよかった」と言ったら、今村徹いわく、 「本人がうすうすわかってることをはっきり言語化して、明確に認識させてあげるのがぼくの仕事だから」だって(ちなみに彼の本業はお医者さんで、老人医療が専門。患者の家族に病状をきちんと説明して、現実に直面させることが重要らしい)。
   昼休みは例によって京大会館地下のレストランで食事。タニス・リーとか訳している佐田千織さんとは初対面。あんまり目が覚めてなくてぼうっとしてたかも。

 午後イチの企画は、「芸術とSFの交点」とかたいへんなタイトルのついた高野史緒インタビュー。時間配分をまちがえて途中で終わっちゃいそうになったんでひそかに焦りましたが、高野さんががんがんしゃべってくれたのでらくちん。
 高野史緒招聘を言い出したのは森太郎だったそうで、だったら聞き手は森太郎がつとめるべきだよな。まあいいけど。
 その次の企画とは正反対の企画だよなと最初から思ってたけど、野尻さんはやっぱり客席でむっとしていたらしい(笑)。野尻掲示板に上がってる感想には爆笑でした。
 しかしオレ的には、『ムジカ・マキーナ』や『カント・アンジェリコ』のほうが、『ロケットガール』よりSF度が高く見えちゃったりするので、まあ人それぞれでしょう。「天文学者になりたかった」っていう高野さんと違って、現実の宇宙にはあんまり興味がないからなあ。いや、宇宙論の本とかはたまに読みますが。

 三つ目は「宇宙開発とSF」。野尻抱介、水城徹、松浦晋也による鼎談。セミナーで野田さんがやったやつとか、あきこんのサイエンス・アドベンチャーとかの系列ですね。京フェス的には初めてのラインですが、やや聞き取りにくかったのを別にすれば、わかりやすくて面白かった。ミールのトラブル話から、ツカミはオッケーって感じだったし。太陽系内の惑星の最新事情とかは、サイエンス・アドベンチャーふたたびって感じでしたね。
 ほんとなら隅っこに山岸真か堺三保でも置いておいて、バクスターやスティールが、現実の宇宙開発を背景になにを書いているのか、英米SFでの宇宙開発がなぜうしろ向きになるのかってあたりを突っ込むとよかったかも。でもそれじゃ時間が足りないか。
 ロケット打ち上げに関しては、コストがいかに重要かって話が中心。商売になるラインに到達したとたん、一気に状況が変わるわけですね。

 最後は伊藤典夫御大登場の、「翻訳SFを語る」。結果的には、SFインターセクション第一回のライブ版って感じ。生出演だからまあいいやと思ったけど、アンケート見たら、「同じ話をくりかえすな!」とか書いてる人もいて、ちょっと反省。いや、どうせああなっちゃうとオレには止められませんけど。
 まあしかし、あれから時間がたった分だけ、最近の英米SFに対する分析も進んでて、アルファ・ケンタウリの話とか、けっこう面白かったんじゃないでしょうか。
 SFの未来に対する力強い確信に満ちた伊藤典夫「オレを信じてついてこい」発言が聴けただけでも収穫でしょう。
 しかしこの企画も、聞き手はべつの人間のほうが面白くなった気がするな。

 本会終了後は、百万遍の打ち上げ会場にぞろぞろ移動。思ったより人間が少なくて総勢17人。東京組はともかく、関西の連中はもうちょっと来てもよかったような気がするけど、まあ人が少なかったおかげでゆっくりなごめましたね。最近の京大SF研状況もだいたい把握でしたし。

 8時に打ち上げが終わってから、近くのボックスでSF研カラオケ。先発組はマイクなしのアニカラ。いずこもおなじか(笑)。潜入したカラオケ番長の報告では、熱血系が少なく、林原などCV女性ボーカル系が中心だったらしい。でも全員男なのに(笑)。わたしはちょっと混じって「強気な二人」を歌ったくらい。
 もう一個の部屋では新曲中心。9時半になったところで、三村美衣といっしょにボックスを出て、タクシーで今夜の宿、室町御池の京都ガーデンホテル。
 もちろん、サッカーを見るためである。ハーフタイムにデュエルしてたら、井原の大ポカによる失点シーンを見逃す(なんか井原は肝腎なとこでのミスが目立つような)アクシデントもありましたが、まあ終わりよければすべてよしだな。決定的チャンスを4回はずすと1回は入ると。せめて3回に1回ぐらいにしていただけると、もうちょっと心臓に負担がかからないと思うけど。
 中田も攻めてるときはいいけど、守ってるときは心臓に悪いし。日本のスポーツ紙も、きちんと選手の貢献度採点をやってほしいと思うことである。

 しかし延長があんなに楽な展開(失点の危険がほとんどない)では、土壇場の実力があるんだかないんだかよくわかんないよね。

 まあ試合前はPK決着を予想してたので、ほんとに心臓に悪い展開にならなかったのはめでたい。しかしほんとにワールドカップ出るのか。冗談みたいだなあ。前回、前々回は日本も出てないのに各20試合ぐらい見てたから、来年の夏は恐ろしいかも。フランスは行かないけどさ。

 京フェスを蹴飛ばし、ジョホールバルまで出かけてって観戦していた古沢嘉通と柳下毅一郎はフランスに行くんでしょうか。まあオーストラリア行かずに済んだんだから、フランスぐらい軽いよね。

 小浜徹也とさいとうよしこはハーフタイムにもどってきたけど、小浜くんは延長になったら眠いので部屋に帰って寝てしまいました。さいとうは岡野のゴールだけ目撃。いちばん賢明だったかも(笑)。


【11月17日(月)】

 9時半に起きてホテルをチェックアウト。小浜夫妻と雨の中を烏丸御池まで歩き、地下鉄東西線にはじめて乗る。
 最初、「雨降ってるから河原町までは地下鉄で」と三村美衣に言われて首をひねり、だって方向が違うじゃんと答えた愚かなわたし。そっかー、東西線ってもうできてたのか。京都の東西線は、東京の南北線とおなじタイプの駅。開通も同時期だったんだっけ。
 河原町御池(京都市役所前)から、これまた新規オープンの地下街、Zestに降りる。10時を過ぎたところなのでまだあんまり店が開いていない。女二人は開店を待って買い物。小浜君は睡眠。大森は喫茶店でメールチェック。

 女性陣がもどったところで地上に上がると雨は止んでいる。寺町をぶらぶら四条方面に歩いて、去年も行った秘密基地的カードショップを覗く。お客と店員がしゃべってて、 「昨日は京大のSF大会があったんですよね。佐脇さんがシミ研のボックスに子連れで来てて……」だって(笑)。まあ、そういうせまい世界である。
 そのカードショップに隣接するマンガ/アニメ専門書店の喜久屋は、ヤングアダルト文庫の在庫が充実してて、金蓮花の旧刊とか、「夏と花火と死体」とかを購入。書泉西葛西がこのぐらいの品揃えなら便利なんだけど。

 さらにしばらく新京極・寺町京極界隈を歩いてから、寺町三条の三嶋屋ですきやきの昼食。ちゃんと下足番がいる店なのに、昼のすきやきコースは3500円と格安。2時半ぐらいの空いてる時間なので、縁側つきの個室の和室でゆったり優雅なごはん。割り下の上品なしゃぶしゃぶはいまいち好みじゃないんですが、ここは味つけも自分でできるんで、わりと好き勝手に食べました。爆発的に空腹ってわけでもなかったから、ちょうどよかったよね。
 しかし縁側の向こうは塀を隔ててすぐ寺町のアーケードで、有線の音楽が聞こえてくるのが笑える。

 食事のあとは錦小路をぶらぶらしてから四条に出て、タクシーでJR京都駅。新設ホテル、グランヴィア京都のティーラウンジに落ち着いてから、妻たちは地下街へ出撃、亭主たちは読書と日記書き。妻たちがもどったところで、大階段登攀ツアー。この駅ビルはテクノゴシックなムードにあふれててけっこう笑えますね。さすがに東京では、これだけ遊んでる建築はなかなかないのでは。階段を観光名所にしちゃう発想もマル。ざっとひとまわりしただけだけど、これは一見の価値ありでしょう。

 6時10分ののぞみに小浜夫妻と乗り込み、一路東京へ。爆発的に眠いかと思ったけど、結局名古屋から東京まではギャザってました(笑)。
 東京駅でサーコン夫婦((C)谷田貝和男。http://www13.pair.com/ktsoft/bh2/h-nojiri/brd01.htm参照)と別れて、タクシーで帰宅。
 金曜日から日本に来てるのにまだ顔を合わせてなかったトーレン社長と近所でラーメン食って、あとは爆睡。

【11月18日(火)】

 朝一回起きて、午後一回起きて、あとは午後8時までずーっと寝つづける。起きてたあいだは各所の京フェスレポートチェックして、サッカー関連の番組を見てただけだったり。
 社会復帰は明日からだな。



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