【9月26日(金)】

 5時、虎ノ門の東京倶楽部ビル2階の霞ヶ関三井クラブで第9回日本ファンタジーノベル大賞の授賞式&パーティ。
 久々に大賞が出て盛り上がる……かと思ったら、審査員で授賞式に出席したのは矢川澄子さんだけ。昔はみんな出てたのになあ。
 大賞は井村恭一の『ベイスボイル・ブック』、優秀賞は佐藤茂の『競漕海域』。選評とかあらすじは、今出てる小説新潮に載ってますが、大賞受賞作って、まんま『アイオワ野球連盟』では。野球ネタのマジックリアリズム小説を大賞に選んでおいて、オリジナリティにこだわる選評を書くのはちょっと。って、受賞作は読んでないので、読むと全然印象違うかもしれませんが。
 優秀賞受賞作のほうは、なんかストレートなSFっぽい設定なので、本が出るのが楽しみ。

 新潮社代表では、新社長の佐藤隆信氏が出席してて、Web新潮の話とか、ちょっと取材。歴代受賞者では、鈴木光司、佐藤亜紀、佐藤哲也、北野勇作、藤田雅也、南條竹則、城戸光子……あたりが来てました。
「リング」「らせん」は、来年2月の二本立て公開、中田秀一&飯田譲治の監督で進行中だそうです。

 7時過ぎにファンタジーノベル大賞パーティがお開きになったところでタクシーに飛び乗り、帝国ホテルの乱歩賞パーティへ流れる。馳星周は金髪化がさらに進行中。終わり間際に飛び込んだのでだれとなにをしゃべったかよく覚えてないっす。受賞作はおみやげにもらったので(そう思って買ってなかったせこいオレ)そのうち読むでしょう。
 パーティ終了後は、本館のラウンジでお茶。島田荘司、京極夏彦、竹本健治、綾辻行人ほかの濃いテーブルを避けて、ひさしぶりの近藤史恵嬢と福井健太、千街晶之、溝畑康史、三浦玲香@角川書店のテーブルにつくと、浅羽莢子さんがいて、ご本人もここを読んでらっしゃるので詳述は避けますが(笑)例によってキムタク系の話題が炸裂しかけたので、SF者のテーブルに避難する。堺三保、柳下毅一郎、日韓戦のために上京した古沢嘉通の心和む席(笑)。
 この三つのテーブルを巡回してるうちにラウンジの閉店時間になり、ほんとはファンタジーノベル大賞流れ組と合流するつもりだったけど、連絡がつかなくなっちゃったので、SF組にワセミス組の一部を交えたメンツで居酒屋に流れ、終電ギリギリまで飲んで家に帰って仕事して寝ました。
 なんか面白い話ってあったっけか。あ、日経の某書評がもとで、某翻訳家の人が怒ってるとか。ミステリ系の話なのでよくわからない。
 そうそう、某翻訳家と言えば、今月号のSFマガジン近況欄に出てきた「某翻訳家」ってのはオレらしい。しかしクローズドな場所で腹を立ててる人がいることについて、べつにSFマガジンで揶揄しなくてもいいと思うんですけど。
 怒ってる人に、「怒るのは野暮」っていうのは、たいがいの場合、火に油を注ぐだけですね。ってそれが目的か(笑)。もって他山の石としたいかも。
 あと、「ゲゲゲの鬼太郎」(TVアニメ)の京極脚本はアップしたそうで、あっと驚くファンサービスもあるそうですが、これはたぶん内緒だろうな。いやはや、もうなんでもありな感じ。


【9月27日(土)】

 3時に起きて、ロッテリアで軽く食べてから有楽町そごうの読売ホール。推理作家協会50周年記念文士劇『ぼくらの愛した二十面相』なんですね。
 着いてみると、7階から長蛇の列。朝から整理券が出てたそうですが、問題の解決にはほとんどなっていない(笑)。とりあえず、場内整理員をつとめる編集者たちから情報を仕入れる。ゲネプロはけっこう寒い出来らしい(笑)。
 階段を登ったり降りたりして並んでいる人々を視察。柴田よしき、野間美由紀、柿沼瑛子、西上心太、久美沙織、神月摩由利、若桜木虔……とかけっこう意外な人が。関口苑生夫妻までいたのには驚いたけど、やっぱり奥さんのリクエストだったみたい(笑)。
 当然、KGな人々(NIFTY-Serve推理小説フォーラムの倶楽部デパートの(KG)組)も多数。うちの伝言板でもおなじみのナースちせ嬢とか、こぐまさんとか、まりなさんとか。なんかあちこちで呼び止められて、「日記読んでます」とか言われるんだけど、できれば伝言板で告知していただきたいな、と。自己紹介されれば覚えてる場合もあるんですが、いきなり「読んでます」だと話のつなぎようがなかったり。
 男性おたくの人は、「いきなり本題」なので問題はないんだけど(初対面の第一声が、「『女王天使』誉めちゃだめでしょう」とか、そういうの(笑))、むしろ「ふつうに挨拶」のほうが困るよね。と言いながら、初対面の作家の人とかには、「あ、いつも読ませていただいてます」とかすぐ挨拶しちゃうんだよなあ、そういえば。「SFの翻訳やってます」とか、まず自分の情報を開示するところからはじめるべきなのか。なるほど。
 とか、荷物そのへんにほっぽらかして上がったり降りたりしてるうちにようやく開場。KGの人にもらった整理券で、171人目に入場。けっこういい席あいてるじゃん、と思ったら招待席だった(笑)。でも結局用意した招待席が余ってるらしいので、そのまま座りつづける。前の席は室井滋で、ふたつうしろの席は川島なお美でした。ラッキーな感じ(笑)。
 でも川島なお美を最初に見たときは、「えっ、どうして黒木瞳が」と思ったんだよな。なんか最近似てきたと思いませんか。思わないか。

 さて、肝腎の芝居のほうは、ゲネプロの不評をよそに、上々の出来でした。辻真先の脚本は立派。セリフは楽屋落ちのアドリブ炸裂しまくりでしたが、42人の作家をきっちり使ってこわれない容れ物をつくってるもんなあ。劇中劇にして本人役出演多数ってアイデアはまあ当然の帰結としても、脚本消失の謎を推理するのに名探偵が出てくるあたりの展開はうまい。
 メインの北方謙三、大沢在昌、宮部みゆきは安心して見られる落ち着きぶりだったし。円紫師匠役の北村薫、天下一大五郎役の東野圭吾もおみごと。ワンポイントの河内山宗俊で場をさらった高橋克彦、編集長役が妙に板についてておかしかった志水辰夫、なぜか銭形平次が異常に似合う山口雅也。死体役でウケまくってた京極夏彦は、最後の出番で京極堂が乗り移ったかのごとき長ゼリフを披露、「世の中に不思議なことなどなにもないのだよ」とみごとにキメる。しかしいちばん凄絶だったのはシンポ教授役の新保博久かも。要所要所で場面を止めて解説を加える係りなんだけど、日頃のシンポさんとは思えないテンションで、いや、前々からシンポさんのスピーチには見るべきものがあると思ってましたが、まさか本番でここまで飛ばすとは。つねに目の前に台本がある強みで、役者のトチりやセリフ飛ばしにも冷静に対応、芝居の進行係をつとめたその活躍は、評論家の地位向上に大いに貢献したと言えよう。
 演出的には、舞台の内田康夫が携帯電話で浅見光彦を呼び、退場したところで、客席から入れ違いに榎木孝明が舞台に上がる場面が意外性満点で出色でしたね。あと、北方・大沢コンビの会話がいつの間にか「心理試験」のセリフになっちゃうとことか、乱歩的にディープなネタも満載されてて、こりゃよくできてるわ、ほんと。
 ミステリおたくであればあるほど楽しめるって感じで(宮部さんが円紫師匠を袖から呼んで、「はい、そこでスキップして、ターンして下さい」とか、タイトルネタは数え上げるとキリがない)、これだけできれば満点でしょう。

 客席のウケもすさまじく、笑ってほしいところでは完璧に笑いがとれてたし、アドリブもほとんどすべらなかったもんなあ。いちばんすごかったのは、出番に出遅れた林葉直子の一言、
「すみません、ちょっと失踪してたもんで」
 これがアドリブ大賞ですね(以上・敬称略)。

 満場の拍手のうちに幕が降りて、ロビーは文壇パーティ状態。なんかいろんなお嬢さん方と写真を撮られたりしたけど、ここ読んでる人は送ってくれるとうれしいっす。住所は日外人物プロフィールを見てね。
 メイクを落とした役者陣が出てくると、ロビー手前はサインと写真撮影の嵐。大騒ぎになりかけたところを編集者たちが必死に追い返し、京極・綾辻は護衛付きで読売ホールを脱出(笑)。まあでも、真剣に出待ちする人とかはいなかったみたい。
 KGな人たちの宴会に顔を出そうと思ってたのに、ロビーでうだうだしてるうちに打ち上げの時間になり、そのまま役者陣とともに銀座7丁目のパーティ会場へ。新潮社で同期だった江木くんから、約束のスタッフジャンパー(京極夏彦デザイン)をゲット(すでに乱歩賞のときに手配済み)。非売品かつ限定品なのでポイント高いっす。しかも京極夏彦サイン入り、と自慢してどうする(笑)。
 そのスタジャンを手に入れるため、朝10時からスタッフとして労働した椎塚嬢(仮名)が南極先生にパンチをくらしている写真はこれです。ってここに載せていいのか(笑)。

 打ち上げ会場ではずっとビデオまわしてましたが、これは家庭内の個人的な使用しかできないな。ま、技術力が向上したらなんとかできるかも。
 めずらしく小野不由美主上もいらっしゃってましたが、新潮社の書き下ろしはまだ難航中だそうです。小野不由美ファンはとりあえず、10月10日からはじまる悪霊シリーズのラジオドラマ(堺三保企画。宮村優子「直球で行こう」のワンコーナーで、一回15分とか)と、劇団てぃんかーべるの芝居『東の海神 西の滄海』で飢えをしのぐしか。

 午後11時半でお開きになり、月曜日は鮎川哲也賞だしね、ってことでそのまま解散。野間さんと三人でタクシー帰り。ロイヤルホストで仕事。


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