【7月17日(木)〜18日(金)】

 朝10時ごろ寝て夜の6時とか7時とかに起きる人でなしの生活。アニメージュの書評を書き、SFオンラインのエヴァ映画評を書き、泣きながら『リトル、ビッグ』を読み終えて書評を送る。傑作。だけどゆっくり読みたかったな、まったく。

 今年の夏は、どういうわけか、猫三匹が寝室に寝にやってくるので暑くてたいへん。ベッドの位置を変えたのが悪かったのだろうか。ノミは少なくていいけどさ。


【7月19日(土)】

 起きたら午後7時だったので、高田馬場ユタに直行。今日は「ジェダイ」の先行オールナイトで、白石朗&山岸真は、新宿東口の滝沢で待機しているらしい。幹事を任されたはずの添野知生がSFオンラインで缶詰状態なので(90年代SF特集の記事はなんとか昨日深夜の一括自動更新に間に合わせたものの、映画レビューがぜんぶ落ちてしまったらしい。つまり大森のエヴァ原稿しか載ってないってことか(笑)。まあ、エヴァ完結編以上に重要な映画は存在しないので被害は少ない←無根拠な確信)、集合場所その他のコンセンサスがまったく形成されていなかったのでした。
 高田馬場集合組は三村・小浜夫婦に川崎昭博、雑破業、藤元。けっきょく9時15分の回はあきらめ、てんやでごはん食べてから9時半過ぎに西武新宿線で歌舞伎町到着。
 エヴァのオールナイトがないことを知って愕然とするわたし。しまった、ミラノ座のオールナイトを見るつもりだったのに。と思ったら、最終回の上映は9時15分スタート。ってことは、ええっと、REBIRTHの分が27分だから、今からでも25話Bパートと26話には間に合うじゃん。
 ってことで、ミラノ座前でばったり出くわしたJUNE編集長・佐川さんとの挨拶もそこそこに、ひとりでミラノ座にとびこむ大森。やっぱりミラノ座で見なきゃだめでしょ、EoEは。客席は7分ぐらいの入りで、もうちょっとはやく出てればみんなでエヴァ見られたのにね。
「エヴァシリーズ。完成していたの」の直後から入ったので、アスカの三白眼をおちついて観察する(笑)。「只今の曲」が流れている最中に席を立ってトイレにいくやつ多数。このへんは、これが3回目とか5回目とかだろう。「つづく」にどよめいたふつうのおたくの人も若干いましたが(笑)。
 終了直後はやっぱり異様な雰囲気だけど、それにもめげず拍手した人一名(笑)。

 劇場を出て白石朗と三村美衣とさいとうよしこに電話するがつかまらない。ロッテリアの前をうろうろしてたら三村美衣が迎えにやってきて、「この上だよ」。いきなりディスコ(死語)の中のカラオケルームに入ってるし。まあ二時間飲みほうだい2500円ならそう高くはないか。
 一時間だけ歌って「ジェダイの復讐」特別編。ソロ救出劇をほとんど忘れていることに気づく(笑)。イウォークの森の木陰でどんじゃらほいが、どんじゃらほいでなくなってるのがめでたくもあり、ちょっとさびしくもあり。
 例によって喫茶店で2時間しゃべって、白石朗とタクシー帰宅。


【7月20日(日)】

 こんこんと眠りつづける一日。City of Lightの続きと読書。奥泉光『プラトン学園』は全然だめ。PSの「攻殻機動隊」をちょっとやる。アニメ場面は去年某所でぜんぶまとめて見てるんだけど、いや、北久保版はいいっす。押井版よりこっちに軍配を挙げるね。草薙も色っぽい、やっぱフチコマがいなきゃだめっす。


【7月21日(月)】

 初めて知ったが、今日は海の日なんだそうで。去年からできた祝日だそうだけど、まったく記憶がなかったのですごく驚いた。まあ関係ないんだけどさ。
 気がついたのが夕方だったので海には行きませんでした。太平洋育ちだから海は好きなんだけど。かわりにエグザスに行ってちょっと泳ぎ、山田正紀『螺旋 スパイラル』を読む。後半の展開はまるで京極夏彦《妖怪》シリーズのようでした。メインのネタがちょっと苦しいけど、『妖鳥』に比べるとよく整理されてて、スケールも大きい。『奇想、天を動かす』には勝ってると思いますね。今年の本格系ではベスト5級か。


【7月22日(火)】

 午前四時半に目が覚める。もう体内時計めちゃくちゃ。10時半に家を出て、東銀座の松竹セントラルでEoEを最初から見る。この冒頭って「ビューティフル・ドリーマー」だよね。考えてみると話もいっしょだったりして。エヴァvsもののけ対決は、ビューティフル・ドリーマーvsナウシカ対決の再現だったのか。わたしは当然、ビューティフル・ドリーマー&エヴァ支持です。ナウシカvsもののけはナウシカの勝ちで、BD vs EoEはEoEの勝ちね。ってことは、劇場アニメではEoEがおれのオールタイムベストワンなのか。ほんとにそうなのか。うーん。でもTVアニメのオールタイムベスト、「未来少年コナン」は譲れない(笑)

 3時、京王プラザホテルの会議室でアニメージュのエヴァ対談with森岡浩之氏。ニュータイプmkIIの座談会で使ったのとおなじ部屋だったり(笑)。森岡さんも編集長も驚いたことにEoEをまだ一回しか見てない(あたりまえだって)。禁じ手にしていた「おれのエヴァ」をどんどん語ってしまう。こんなところでカムアウトしてどうする(笑)
 しかし渡辺編集長はもっとカムアウトして後半は独演状態。堰を切ったように、ってやつですか。もっともわたしは、エヴァの内容を庵野秀明の個人史とか内面とかに重ねて語るのには反対なので(「パンツを脱ぐ」が流行語になるのはちょっと。ほんとに脱いだんじゃ芸にならないでしょ。「脱いだように見せる」のが芸でさ)、ひたすら拝聴するだけ。ライバル誌のCFがインサートされる番組を特集するアニメ誌編集長のアンビバレンツな感情を吐露したところは興味深かったですね。
 森岡さんはEoE=ワイドスクリーン・バロック説を披露。わたしはニューウェーヴ説なので(だって「終着の浜辺」で終わるじゃん)すれ違い。物語レベルで解釈しようとするとやっぱり苦労するよなあ。邪推委員会で燃えてた当時の片鱗も窺えましたが。

 3時間ぐらいしゃべってから(後半はほぼ雑談)、mkII座談会のときとおなじ一階のティールームでごはん食べて帰宅。テイヤール・ド・シャルダンの話をするのをすっかり忘れていた。まあいいや。

 メールを見たら、二階堂黎人氏からバイナリが。なにかと思ったら、スタートレックTNGのユニフォームを買った自慢写真(笑)。これが二階堂トレッキーだっ。しかし好きだなあ、二階堂さんも。これ来てSF大会行くしか(笑)


【7月23日(水)】

 コミックボックスからエヴァ特集の原稿依頼。先月、もののけ姫原稿を、「それだけはちょっと」と断わってしまった関係で、つい引き受けてしまう。まあ対談でしゃべったことを原稿にすればいいや(笑)。
 とかゆってたらSPA!のT中くんからも電話。どうせエヴァだろうと思ったらやっぱりエヴァだった。SPA!編集部では「金返せ!」と怒っている人がいるらしい(笑)。エヴァ特集の企画相談のような内容を、携帯で一時間近くしゃべる。T中くんは、95年の暮れに、「96年ミニブーム予測!」とかそういう特集の取材でうちにやってきたとき、エヴァの話をし倒したのをしっかり覚えていたらしい。ちなみにそのときの模様は、95年12月9日の日記に、

 午後二時、元宝島の田中さん@SPA!編集部が取材で来訪。96年のミニブーム予測ってことで、とりあえずマイブームなネタのメインはX-55。さいとうがきのうの真夜中、タクシーでレッカ社から運搬してきた安室奈美恵の等身大POP(当然X-55宣伝用のやつね)を組み立ててテレビの横にセット。ビデオで「エヴァンゲリオン」を流す上に「Fly Me to the Moon」ブレンダ・リー版の歌詞を流し、X-55のマイクを握ったポーズで写真撮影(笑) きっぱりバカだね。広角レンズで視野が広いため、安室の全身もばっちりフレームに入り、なんかデュエットな感じ(笑) 「残酷な天使のテーゼ」がはいってれば完璧だったんだけどなあ。
 つーことで、これでX-55とエヴァと新本格SF(笑)の3点をマイブームで消化、あとはお約束のにっきな話を混ぜて取材終了。岡村靖幸とコーネリアスの話で妙に盛り上がる(笑)
 と記されてますね。X-55ってそういえば1年以上使ってない気がする(^^;) エヴァはミニブームどころじゃなくなっちゃったし、「新本格SF? なにそれ?」って感じだし、予想は当たらないものである。


【7月24日(木)】

 午前10時ごろ起きて、エヴァ対談のテープ起こしをメールで受信。レイアウト用紙がバイク便で届くのを待って昼前からミストラルに行って対談の構成。1行56字詰という異様な文字組で3ページ。まるまる5時間使って、行数ぴったりにまとめる。ほとんど結末がらみの話題で、25話の謎解き関係の話は全面カット。

 週刊アスキーの中村さんから携帯に着信。エヴァですか、と言おうと思ったら、今度は酒鬼薔薇だった(笑)。酒鬼薔薇事件から見たインターネットvs既成メディアとか、そういう話。酒鬼薔薇サイト消滅ドキュメントとか載せると面白いと思うけど。ま、大森の見解はしばらく前の日記に書いたとおりなので。
 週刊アスキーと言えば、最新号の目玉が「酒鬼薔薇とジャンク文化」みたいな特集で、最初に柳下毅一郎が登場。ふつうに考えりゃ当然そうだよな、という意見は柳下が語りつくしているのに、次のページを開くと脳みそがとろけちゃったような見解が次々に開陳されてて謎の構成でしたね。

 ほかの仕事もかたづけようと思ったけど、疲れちゃったので帰宅。SF大会のミステリ作家パネルの件で我孫子・綾辻に電話。小林泰三さんと有栖川有栖さんも来るらしい。二日目の午前中にミステリ系のパネルやりますので、あきこん(今年の日本SF大会@広島)においでの新本格ファンはお見逃しなく。部屋は定員60人のところらしいから、けっこうたいへんかも。
 我孫子さんは満員の映画館で「もののけ姫」を見てきたそうで、ひとしきり宮崎話。EoEは我孫子さんも綾辻さんも見てないとか。小野さんにいたっては「劇場で見る気はない」と明言してるそうで、ううむ。そういうもんですか。

 電話シリーズのあと、倉阪鬼一郎の短編集(じゃなくて、連作の長編か)を読む。半分はホラー大賞で読んでるやつ。3本目の「黒い家」がタイトルかぶっちゃったのは残念でした。怪談愛好者は必読の一冊でしょう。ただし、あのオチはちょっと……。
 爆発的な眠けが去ってしまったので、桐野夏生「OUT」を読む。これは傑作。女性版高村薫――って高村薫も女性ですが(笑)、この小説の主人公はふつうの主婦たち。一線を踏み越える決断に説得力があって、そのあとの展開が思いきり意表をつく。女たちの連帯をこういうかたちで書いた小説はいままでなかったのでは。『このミス』今年のベストワンの有力候補でしょう。推理作家協会賞も当確かな。って、冒険小説系、ハードボイルド系を読んでないからあてにならないけどさ。

 読書中、いきなり茶木則雄氏から架電。いったいなにごとだろうと思ったら、地雷通報(笑)。他人の地雷はとことん好きだね、この人は。
 今月号の小説現代でH部F親氏が『黒い家』の書評を書いてるんだけど、そこにとんでもないネタバレ粗筋紹介が含まれている、という話。S保Y一氏が見つけてあまりのことに仰天し、S保H久氏に通報、S保さんがS口E生氏に伝えたところ、関口氏は『黒い家』を読んでないから問題の書評を読むわけにいかず、茶木さんのところに真偽を確認せよという指令が下ったらしい。
 で、なぜうちにまで通報があったかというと、

 ということで、「あ。大森さんにも教えてあげよっかなぁ(^o^)m」と言う茶木さんに、「教えなさい教えなさい(^o^)m。そういうアホは、全世界に向けて、インターネットで公表してもらって駆逐していかないと、業界の浄化はできません。おおいに教えなさい(^o^)m」とあおったのは私です(笑)
 と某所で告白している某女性のせいらしい(笑)。さっそく書店で立ち読みしてきましたが(直木賞の選評とか、馳星周×二代目一条さゆり対談とか、ほかにもいろいろ載ってる号で、思わずじっくり読んでしまいました)、これはまるっきり浜村淳の映画紹介ですね。
 ただ、あの書評を読んでショックを受けるのは、すでに『黒い家』を読んじゃった人だけで、未読の人が実害を被る確率は低いのでは。じっさいに本を読むときにはもう忘れてると思うけどなあ。浜村淳みたいに特徴的な口調で粗筋が語られるわけじゃないし。
 ……というふうに、ネタバレがありうる本だとここで書くこと自体、ネタバレになっちゃうわけで、まだ読んでない人には申し訳ないことです。

 しかし実際問題として、あの仕掛けが『黒い家』のポイントじゃないという読み方だってあるだろうし、書評に対する評価はむずかしい。
 たとえばオレ的には、『嗤う伊右衛門』の書評で、「よく知られた東海道四谷怪談を下敷きに」とかって書いてあったら、その時点でその書評は0点だと思うんけど(べつに福井健太のことじゃないからね)、あらゆる本についてきっちり調べて書評が書ける環境にない以上、おれだって(だれかにとって)0点の書評はほかでいっぱい書いてるだろうし。
「あの書評はひどい」みたいな話は当人の耳にはなかなか入らないので、こういうことは他山の石とすべきでしょう。


【7月25日(金)】

 日経の富田記者から原稿依頼の電話。あの有名な……と思わず言いそうになるが、小心者なのでSFマガジンの感想はきけないオレ(笑)。当然、書評対象は氷河期分野の作品ではありません。まあこういうときに、本を送ってもらってる義理を果たしておこうと思って引き受ける。800字だしね。
 別冊ぱふ・活字倶楽部が届き、巻頭33ページにおよぶ京極特集を読む。インタビューは爆笑。活字倶楽部は今度から季刊になって、10月25日売りの秋号はSF・ファンタジー特集だそうです。がんばっていただきたいものである。
 それで思い出して京極さんに電話をかけて、あきこんの出欠確認。夏は静養したいので欠席ってことで、残念でした。浅羽さんからも確認電話があったとか(笑)。
 夜はMAG TIMEで、キネ旬から出る大林千茱萸責任編集のリュック・ベッソン本の原稿を書く。


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