【4月12日(土)〜15日(火)】

 タイトルが『殺戮の〈野獣館〉』になってしまったThe Cellarのゲラ直し。
 ゲラを読み返したときでさえ、鬼畜だという確信は揺るがなかったってやつですか。カバーは吉永和哉先生、解説は風間賢二先生。カバーのラフは吉永デザインだけにけっこう上品。まあでもこのタイトルではなあ。『鬼畜館』イチ押しだったのに。

 引用箇所の和訳を調べるためにバイクで南砂町の江東区図書館。ついでに『淋しい狩人』でおなじみのたなべ書店に寄って、未読消化のために古い海外ミステリの文庫を漁る。クイーンとかカーとかコリン・デクスターとか。
 海外本格ミステリは中学時代で止まってて、国名シリーズとか一通り読んではいるものの、内容は大部分忘却の彼方。ポケミスとか推理小説大系とか創元推理文庫とか、みんな図書館で借りて読んでたので、手元に本がないんですね。しかし、たなべ書店だと一律定価の半額なので、重版してるものはすぐ200円とか300円とかになっちゃってけっこう高い。叢書別・著者別アイウエオ順にきれいに整理されてる代償か。古本極道のひとに一冊100円で漁ってもらうほうがいいかも。横溝の文庫をぜんぶ集めるとか、べつにそういうだいそれた希望はないので(笑)


【4月16日(水)】

 ふらふらしつつ銀座に出て、「失楽園」の試写。「(ハル)」の次がこれですからね、森田芳光も大胆というか。まあ興行的には惨敗だった「(ハル)」に対して、今回はヒットが計算できる素材だからな。しかし黒木瞳よりは川島なお美で見たかった(笑)
 映画の出来はまあこんなもんでしょ。しかし、黒木瞳が「口でしてあげるから」っていうところをのぞいては(笑)、全体に勃起度が低い。ストーリーがほとんど存在しないのに驚いて、帰りに近藤書店によって原作を買ってきて、上下巻を一時間で読みましたが、おお、これが日経に連載されてたってのはすごいね。渡辺淳一はえらいかも。この原作があの映画にしかならないっていうのは、まるでクローネンバーグの「クラッシュ」のようだとちょっと思いました。ま、森田版「失楽園」も細部を楽しむべき映画なんだろうけど、やっぱり衰弱してる。渡辺淳一のすけべおやぢぶりに勝てない。


【4月17日(木)〜18日(金】

 風邪が治らないのでずっと寝て暮らす。評判の『マーチ博士と四人の息子』はたしかにフランス新本格。しかし国産新本格の水準からすると中の上くらいでしょう。
 デクスターの『ウッドストック行き最終バス』はやっぱりつまんなかった。これなら『麦酒の家の殺人』のほうが好きかも(笑)

 評判の太田忠司『3DK要塞 山崎家』は、評判通りの痛快コメディ。おたくおやぢのためのヤングアダルト――ってなんだかわかりませんが、いまの30代には必要な小説かもしれない。
 ところで大森は小学生のころ、父親といっしょに戦車に乗って地球を守る夢を見たことがあって、なぜかそれを鮮明に記憶しているので、この小説の内容は他人事とは思えなかったことである(笑)

 おなじ幻冬舎ノベルズで出た女性新人作家の『EM』(関口苑生推薦)は、『生ける屍の死』でおなじみのエンバーマー(死体の化粧直しとか防腐処理とかする人ね)のお話。検屍の女医じゃなくて、女性エンバーマーってところがウリなんだろうけど、なぜエンバーミング担当者が事件捜査に関わるのかという理屈がかなり苦しい。そこに目をつぶればけっこうよくできてて、テイストとしては山田正紀の『女囮捜査官』シリーズに近い。って山田正紀の別名だったりしないだろうな(笑)

 小森健太朗『空中庭園の殺人』はノンポシェット文庫書き下ろし。どうでもいいけど、題名の頭にひとまわり小さい字でつっついている「バビロン」という言葉がタイトルの一部なのか副題なのかはっきりさせてほしいものである。『バビロン 空中庭園の殺人』なのか『バビロン空中庭園の殺人』なのか『空中庭園の殺人』なのか。
 中身は小森健太朗にしてはふつうのミステリ。設定はあいかわらず凝り凝りで、高沢のりこ&溝畑康史に加えて、星の君ならぬ星野君江が探偵役で登場。文章的には気になるところもあるけれど、けっこう楽しく読めました。歴史ミステリのほうのトリック(?)は、詐欺みたいなもんだけど笑える。まあわたしは『ネヌウェンラーの密室』のトリックも好きですから。

 アニメージュの書評を『封印再度』『空中庭園』『山崎家』の三本で書き、論座の映画評を「失楽園」で書く。論座の連載はたしか一年の約束だったのに、またまた担当が変わってつづくらしい。論座の中では圧倒的に浮いてると思うけどなあ。おまけに泥縄かつなげやり(笑) だいたいそれについて原稿を書きたいと思うような映画は年に2、3本もないのである。まあ見てる本数が少ないのが問題だが。


【4月19日(土)】

 朝から天気が悪くてまたしても喘息。2時間睡眠ぐらいで目が覚めて薬を貪り飲み、へろへろの状態で渋谷のDCIトーナメントセンター。「マジック・ザ・ギャザリング」プロツアー・ニューヨーク大会の日本代表選考会国内予選なのである。
 今回のレギュレーションはミラージュ・スターター1とビジョンズ・ブースター×2のシールド戦。要するに、封を切ってないパックをランダムに引いて、そこに含まれているカードから40枚以上のデッキを組んで戦うシステム。必要カードを自分で選ぶブースタードラフトと違って、カードを引くところまでは技術が介在しないので、わたしのようなヘボプレイヤーにとっては勝利の可能性がもっとも高いレギュレーションなんですね。
 くじ引きしたカードは、うーん、これってけっこういいかも。とりあえず赤が決まりで、クリーチャー数から緑も確定。最後の一色を黒か白かで悩んだあげく、フライングクリーチャーとPacifismのために白を選択。X火力も火葬もないが、クリーチャーの質はかなり高いし、除去能力もまあまあ。戦争の三角とドラゴンマスクがあるからよしとしよう。ヘビークリーチャーはいないけど、X火力がない以上、速攻で殴り勝つパターンだ。
 ということでデッキをつくり、五十嵐久和日本代表に診断してもらうと、「これは強いでしょう。問題なく本選には進めますね」と言われてすぐその気になる(笑)
 ちなみにクリーチャーは赤がヴィーアシーノの戦士、砂漠の狩人、密使、ドワーフ放浪者、槍騎兵、焦熱の障壁、豚乗りゴブリン、白が武勇の騎士、ジャムーラン・ライオン、イーカンドゥ・グリフィン、フェメレフの騎士、緑がギルド魔道士、野生の象、リバー・ボア、忍び寄る虎、あと緑白のアズマイラに翼キマイラ、玄武岩ゴーレムの全18体。これに上記の平和な心、三角、マスクと、胸壁、石の雨、岩崩れの6枚とランドが16枚の40枚デッキ。サイドボードにテレムコ・グリフィンがいたりする贅沢ぶりである(笑)

 一マッチ目は悪鬼のごとき回転で(3デュエルとも、最初の手札にランド三種類)問題なく三連勝。よしよし。
 と思ったが世の中はそんなに甘くなかった。2マッチ目にあたったのはハイパーアリーナ常連の鳥羽くんで、デッキ力ではこちらが上回ってたと思うんだけど、プレイに差がありすぎ。頭がぼうっとしてたこともあって、先制攻撃クリーチャー相手に突っ込んだり、召喚酔いのないクリーチャーの即アタックを忘れたりとさんざんな出来。勝てていたはずの最初のデュエルを落としたのがたたって1勝2敗でマッチを落とす。
 しかしまだ希望はあるっ。と思ったら3マッチ目はいきなりランド事故。しかも向こうはNecrosavantとか呼んでくるのに、まったくPacifismを引かない(ここまで9デュエルで一度も引いてないもんなあ)。あっけなく0−3で落として、この時点で予選敗退が決定。とほほほ。
 のこり3マッチは3勝して、トータルはまたしても4勝2敗。どうしてもこの壁が越せないんだよなあ。今日はチャンスだったのに。

 1マッチ目に0−3負けしてすっかり弱気になっていた三村美衣は、またしても連続突撃を引くデッキ運の強さが味方して、2マッチ目から3連勝。あと2勝で決勝進出――まで漕ぎ着けたものの、5マッチ目で田中利久氏とぶつかり暁に散る。終わってみれば3勝3敗で、早々と希望の潰えた柳下毅一郎と同成績。
 五十嵐・寺島夫妻は夫婦で決勝進出、三村美衣を破った田中さんも6戦めインテンショナル・ドローで余裕の予選突破。
 ああ、このデッキでなぜ負けるかなあ>おれ。失意のうちに、三村、柳下と馬場に出て、ユタ流れの人々と合流。
 渋谷エッグマンでT内@早川書房その他業界人バンドのライブがあったのをすっかり忘れてて、白石朗から携帯に電話があったときはすでに山手線の中。気力があったら渋谷にもどって二次会から合流しようと思ったが、やはりどっと疲れてて動けないのだった。
 ちなみにおなじころ、さいとうよしこは新宿で、イタチョコシステムのえらいひととごはんを食べたりしていたのだが、当然そちらに合流する気力もなし。11時過ぎ、おとなしく東西線に乗って帰宅。


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