【4月5日(土)】

 ひさしぶりに新宿のトライソフトまで遠征して、発売されたばかりのM:TG 5th Edtionを1ボックス購入。ブースターパック36個入りで12,770円。1パックあたり350円くらい。最近の円安状況を考えるとまあまあでしょ。1ボックス程度の個人輸入だと、カードの手数料と送料で1万円は越えちゃうだろうし。
 しかしこのボックスが大ハズレ。Elkin BottleとかForce of NatureとかLord of the Pitとか要らないレアがかぶりまくり。あともJade MonolithにHelm of ChatzukにEye for EyeにCrimson ManticoreにVerduran Enchantressだぜ。まあ最後のほうでCity of BrassとBrushlandが出たから、かろうじて許せるけど、しかしひどい引きだ。うーん、Visionsはあたりがよかったのになあ。しょうがない、もうひと箱買うか(笑)

 馬場にまわってユタの例会。わりと盛況。SFクズ話はあまり盛り上がってない(笑)
 いつものようにてんやでごはん食べて、ルノワールで野口誠、星野富美男、三村美衣とデュエル。野口誠はフェイジング・クリーチャーと時の砂を組み合わせたデッキ。星野は緑赤でCity of Solitudeを出し、自分のターンに相手クリーチャー除去してからボールライトニングとサンドストーカーで殴るデッキ。あたると痛いかも。しかしまだ回転がよくない感じ。


【4月6日(日)】

〈本の雑誌〉高校生小説特集の原稿。ほんとは『女教師』で書くつもりだったけど、けっきょく『あいにくの雨で』と『海がきこえる』でお茶を濁す。うーん、全然ちがうのにしたほうがよかったかもしれない。
 あとはSFインターセクションの原稿整理。大原さんの過激発言はけっこう爆笑なんだけど、うーん、やっぱりこのままは使えないだろうなあ。
『続日本殺人事件』を読んだ勢いで『生ける屍の死』を再読。毎晩国産ミステリを読まないと寝つけなくなっているかもしれない(笑)


【4月7日(月)】

 夜、産経新聞の青木さんが西葛西にやってきて、新本格がらみの取材。むかし「迷宮」に参加していたという話を聞いて驚く。だれにもおたくの過去がある――というのは「ハードロック・ハイジャック」のギャグですが、しかし迷宮とは懐かしい。ミステリ同人誌の話とかエヴァの話とか、一時間少々。


【4月8日(火)】

 幻冬舎ノベルズの新刊、山田正紀『妖鳥 ハルピュイア』を読む。病院物。うーん、ネタは面白いんだけどなあ。探偵役に魅力がないし、ディテールが観念的なほうに流れるので、1000枚近い長丁場はちょっとつらい。いっそフォン・トリアーの「キングダム」みたいにするとよかったかも。


【4月9日(水)】

 2時、仕事場で日経パソコンのインタビュー。みごとになにも知らない人でしたね。作家だと思われていたらしい(笑)

 我孫子さんが、最近のSF&ミステリ論、「徒然なるままにSF、そしてミステリについて」に補足を書いている。
 我孫子さんがここ(本論のほう)で言ってることは、大森が1978年当時(スター・ウォーズに誘発されたSFブームが加熱しはじめたころ)に感じていた気分とわりと近いので、気持ちはよくわかる。「夏の時代」に身を置いてたころは、べつに幸せだとは思ってなかったもんなあ。でもサンリオSF文庫であれだけへんなSFが大量に翻訳されたのはブームの恩恵だったわけだし、SF雑誌が四つも五つもあった時代はやっぱり幸福だった。幸福な時代というのは過ぎ去ってはじめて気がつくのである(笑)
 メタフィクションをめぐる我孫子説は、筒井康隆の言う「超虚構小説」にわりと近いかもしれない。新本格も一種の超虚構小説だしね。ただし「メタフィクション音痴」という言葉は誤解を招きやすいかもしれない。パズラーやある種のSFのような自己言及性の強いジャンルの小説を楽しむには、そのジャンルについてのある程度の知識と愛情が要求されるというだけのことでしょう。小説にかぎらず、スプラッタ映画やTVアニメについても同様のことは言えると思う。この場合、「メタ化」っていうのは、「おたく化」とほぼ同義ですね。
 しかし、京極夏彦やエヴァは、新本格おたく、アニメおたく以外のファンを大量に吸引しているわけで、自己言及的なジャンルから「誰にとっても面白い」作品が出てくることがありえないわけじゃない。京極夏彦でミステリの魅力に目覚めた読者が山口雅也や竹本健治を発見することだって当然あるだろうし、ジャンルへの入り口になるような作品はやっぱりあったほうが望ましいわけで。
 コアなSF(真ん中にティプトリーやディックがいるようなジャンルSF)の読者は、たぶん潜在的に三万人ぐらいだろうと思ってるんだけど、現状は、入り口が狭くなった結果、SFにたどりつくはずの読者一万人ぐらいが路頭に迷っているのではないか(笑)という気がするんですね。現実的に言って、SF文庫の読者が二万人を切ると、SF翻訳で飯を食うことはほぼ不可能なので、この状態はなんとかしたい、と。
 ミステリで言えば、周辺が膨張したおかげで、たとえば西澤保彦みたいな作家の作品でも、ある程度時間を書ければ確実に増刷するような状況ができてきてるわけで。「売れればなんでもミステリー」というひとり勝ち状況は、やっぱり喜ぶべきことでしょう。


【4月10日(木)】

 新宿トライソフトでまたしても5thを1ボックス購入。今度こそは……と思ったら、こないだ買ったボックスとかぶりまくり。2ボックスでElkin Bottleとか奈落の王とかが4枚ずつ揃っちゃうのはあんまりじゃないの(;_;) レア36枚中、前回のボックスとかぶったのが20種類だもんなあ。ひどすぎる。City of Brassが合計3枚出たりしてるから、悪いことばかりじゃないけどさ。
 重いカードの山(三村美衣用の1ボックスと、シールド用のミラージュ・スターター1ボックス)を抱えてユタ@高田馬場。三村美衣、柳下毅一郎、星野富美男と、ニューヨーク予選に向けたシールド戦特訓。引きはまあまあかと思ったら、初戦の三村美衣赤黒デッキがめちゃめちゃ強くていきなり敗退。柳下には勝ったものの、接戦の末、星野にも1−2で敗れて3着。先が思いやられることである。


【4月11日(金)】

 5時、帝国ホテルで吉川英治賞の授賞式&パーティ。吉川英治文学新人賞の今年の受賞者は馳星周&服部真澄。いつもの調子でCross Coloursのまっ赤なGジャンに金髪(笑)で出かけてったら会場で浮きまくり。吉川英治賞ってこんなにスーツの人ばっかだったんだっけか。
 新潮四賞のパーティよりは平均年齢若いと思ったけどなあ。でも受賞者の馳星周は髪を青に染めてたので、それよりは不良じゃないぞ(笑)
 ちなみに馳先生の受賞スピーチは、
「大沢在昌先生から、「おまえ、『新宿鮫』はどうですかって新聞記者に聞かれて、「目じゃないです」って答えたそうだな」といじめられましたが、それはウソですから」
 というギャグでつかみはオッケーを狙ったものだったのに、この冒頭ギャグがみごとに滑り(笑)あっという間に終わってしまいました。うーん、客層読み違えてましたね。

 パーティのほうは文化賞関係者と編集者の山で作家率は低い。鈴木光司先生がいたので、さっそくつかまえる。
「毎日新聞読みましたぜ。『僕自身の作品はSFと呼んでほしくない』? 『非常にオタク的な愛好家がいて、そこにしか通用しない用語、しきたりがあるというイメージ』? ふーん、そうですか。いやあこれは今度じっくり話をさせてもらわないと」
 と恫喝する(笑) 『ループ』は秋に刊行だそうなので、SFマガジンでのインタビューを予約しました。
「いやあ、でも、なんか今度もSFみたいになりそうなんだよねえ」と笑ってごまかす鈴木光司。笑ってる場合じゃないぞ(笑)

 笑ってる場合じゃないと言えばこの人、目黒考二(北上次郎)氏である。
「なんかすごい反響みたいだねえ」
「もうたいへんですよ。椎名さんはなんて言ってるんですか?」
「あの特集は椎名関係ないからね。夜中に電話かけてきて、『おい、SFマガジン見たか? 大反響だぞ、すぐ読め』って、なんか喜んでたよ」(笑)
 喜んでる場合じゃないと思うのだが。まあしかし、『青春と読書』の椎名・目黒対談を見てもわかるとおり、目黒さん的には、「かつてSFはすばらしいジャンルだった」(商業的にも、文学的にも)という思い込みがあって、いま元気がないと聞いて単純に不思議がってるわけなんですね。
 うーん、去年のSFセミナーの合宿ゲストに呼んだとき、もっと徹底的に糾弾しておくべきだったのか(笑) SFマガジンに載ってる反論については、「読んでみたけどわけがわからない」という状況のようなので、大森の理解する範囲で解説しておきました。
 しかしまあ、悪意はないにしても、
「いやあ、新聞から取材の電話がすごくてさあ。新聞記者なんて単純だから、あれ読んで『SFはダメなんですか?』とか俺に聞いてくるわけ。そんなの知らないよ、なあ」
 と脳天気に言い放つ北上次郎の罪は大きい(笑)

 我孫子武丸書評家バッシングシリーズ(笑)の標的な人々も何人か来てたけど、残念ながら茶木則雄は姿を見せず。西上心太、馳星周は我孫子ページを愛読(?)しているようです。香山二三郎氏はあいかわらず、関口苑生氏は当然欠席。

 一次会終了後、宇山さん@講談社文三部長、新保博久、篠田真由美、奥田哲也、太田忠司、小森健太朗……というメンバーでラウンジに流れて歓談(という話は、太田さんの不定期日記既報のとおり)。
 議題は主に「講談社ノベルズの未来」(笑) 宇山さんは永久革命の人なので、すでに軌道に乗ってしまった新本格路線に興味を失い、なにか新しいことがやりたくてしょうがないらしい。そりゃもう、すげえハードなSFか、でなきゃ純文学やるしかないでしょうと焚き付ける。
 宇山さんと初めて会ったのは、川又千秋さんち。大森は新潮文庫の書き下ろしの『宇宙船メビウス号の冒険』の原稿取り、宇山さんは講談社ノベルズの『星狩人』のシリーズの原稿取りだった。宇山さんはSFマガジンを創刊号から読んでる人で、かつては講談社のSF担当として知られてたんですけどね。うーん、もう10年以上昔の話だな。
 SFに未練はあるみたいなので、SF作家志望の人は、メフィスト賞に応募するといいかも。しかし高瀬彼方はなにしてるんだろうな、若いんだから月一冊ぐらいのペースで書いてほしいものである。増刷してるんだしさ。

 10時ごろにラウンジを抜けて、馳星周組の二次会場のエルへ。北方謙三、大沢在昌、花村萬月、森詠などのお歴々が揃ってほとんど別世界。北方先生の前に金髪ですわるのは心臓によくないぞ(笑) ママにはウケたけど(笑)
 冒険系の人々は大沢さんの引率で六本木方面に流れ、あとは新宿。うーん、いまから新宿に行くのもなあ……と思ってたら、香山二三郎、吉野仁、菊池仁の各氏に、アスキーの笠原さんとかが残ってたのでそっちに合流。

 12時まわったあたりで、帝国ホテルから宇山・篠田・奥田の三人がエルに流れてきて、評論家組が新宿ルル方面に去ったところで、ふたたび新本格組に合流。篠田さんはテンションが高い。なんか『原罪の庭』がショタな読み方をされることに怒り狂っているらしい。うーん、『原罪』の蒼なんてセリフ全然ないのになあ。奥田さんはマーダーケースブックをコンプリートしてるそうで、鬼畜な殺人話にこだわりがあったり。

 宇山さんの引率で、最後は十年以上ぶりの「まり花」に流れ、午前2時解散。しかし銀座の文壇バーも時間が止まってるなあ。わたしはおねえちゃんいないほうがおちつくので、やっぱり新宿のほうがいいけど。

 国産ミステリ再読シリーズは『バイバイ・エンジェル』。うちにあるのは角川文庫の初版。すでに歴史小説のようである(笑) しかし『アポカリプス』が行方不明だ。


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