狂乱西葛西日記96年12月2日〜7日


【12月2日(月)】

 ふたたび20時間睡眠。夕方起き出して、青山円形劇場の谷山浩子101人コンサートへ。谷山さんのコンサートは5年ぶりくらいかも。
 新潮文庫時代にもっとも気合いを入れてつくった本のひとつが谷山さんの詩文集『猫の森へは帰れない』で、さべあのま、鈴木翁二、吾妻ひでお、影中白葉、内田善美、近藤ようこ、谷内こうた、大島弓子etc.のイラストを満載したこの本、さいわいけっこう評判がよくて何回か増刷したんですが、残念ながら現在は絶版。入社二年目くらいの燃えてる時期だったからつくれた本ではあるものの、いま見ると編集が若いよね。
 って話はともかく、谷山さんとはそのとき以来のご縁。オールナイトニッポンの二部のスタジオに毎週のように通って打ち合わせしてたのも遠い昔の思い出ですが、今回の101人コンサートDパートは綾辻行人プロデュース。
 思えば熱血谷山ファンだった綾辻さんに、谷山さんの短編集の解説を頼み、できあがった本をわたすために京都の喫茶店で会ったのが綾辻さんとの初対面。それがきっかけで綾辻・谷山のつきあいがはじまったわけだから、今回の101人はなかなか感慨深いのである。
 コンサートの選曲は綾辻さんの担当で、完璧に趣味に走った構成。「谷山浩子の悪夢世界」がコンセプトってことですが、ほとんど『眼球綺譚』イメージアルバムみたいな印象でしたね(笑) 『歪んだ王国』パートでは綾辻氏が登場、いきなりソロをとる場面とかあってちょっとどきどき(笑) いや、綾辻さんの歌声も谷山さんの歌声もさんざん聞いてるんだけど、ステージでそのふたつの声がいっしょになってるのを聞くとすごく不思議な感じがするわけです。
 それにしても谷山さんが全然変わってないのは驚きました。とても来年20歳(推定)になる人とは思えない。堪能させていただきました。

 今日来るはずだった竹本さんは寝過ごしたらしく姿を見せず、コンサート終了後、さいとうよしことふたりで楽屋にあいさつに行く。
「最近インターネットのほうに凝っちゃってパソコン通信サボってるんですよ。あ、ホームページのURLはパンフレットに載ってますから、見てやってください。あ、アボさんのページのURLは?」
「あ、この名刺に載ってます。htmlとか自分で書いてるんですか?」
「そうなんです。WZ使って」
「やっぱりテキストエディタですよね。ぼく、ATOKの辞書に、きょうちょうでとか、りんくでとか登録してるんです」
「あ、わたしもわたしも(笑)」
 とかいう、とてもコンサートのあとのアーティストとの会話とは思えないやりとり(笑)のあと、当社伝言板にヒロコさん登場となったわけですね。
 綾辻さんもやっと95な環境に移行してNetscape使いになったそうで、めでたしめでたし。いやそれにしてもコンサートパンフに載ってた綾辻さんの写真はぜひ西原理恵子に見せたいものである。楠桂さんの写真もまるでアイドルのブロマイドみたいですごかったけどさ。

 谷山さんは今日はまっすぐ帰るってことなので、綾辻、さいとう、大森の三人でぶらぶら表参道まで歩き、一時間くらいお茶して帰宅。


【12月3日(火)】

 4時から山の上ホテルで横溝正史賞二次選考会。予選スタッフで最終候補を決定するための会議ですね。今回はどういうわけか茶木さんと意見が一致し、共闘を組むことに。まあ郷原宏氏とか、「小説としての完成度」を重視する勢力と戦うって感じ。ひとつ、けっこう気に入ってたバカ話が落ちちゃったのは残念だけど、あとはまあ思ったとおりの結果。
 けっきょく大森が読んだ箱から2本最終候補に残ったので、一次に5本も通した採点が甘すぎたわけではないことが証明されてめでたしめでたし。思いっきりアタリの箱を引いたわけですね。ひょっとしたらもう一本くらい残りそうだったもんなあ(ちなみに最終候補はぜんぶで4本)、
 お茶の水に行ったついでにイエローサブマリンに行こうと思って番号案内で調べて電話したのにファックスしか出ない。おかしいと思って新宿店に電話して聞いたら、火曜は定休なんだそうでがっくり。

 選考会終了後の部屋でお弁当を食べてから、北上次郎に呼ばれて麻雀にゆく茶木さんと別れて帰宅。SFインターセクションの森岡浩之インタビューの整理。

 香山リカさんから、岩波のゲーム関係の本につづいて、青土社の『テクノスタルジー』を送っていただく。いやあめちゃくちゃかっこいいっす。思わず惚れてしまいそう。一年おねえさんなんだけど、学年で言うといっしょですからね。こういう本書かれちゃうと参りましたって感じ。香山さんの本は、最初の2冊を読んでからしばらく(雑誌の原稿はべつにして)読んでなかったので、この機会にまとめて読むしか。どうも仕事に直接関係のない本を読まなくなってるのが癌だな。
 そういえば川本三郎氏からも映画エッセイの新刊が届く。もう10年以上送っていただいてるのに書評する機会とか全然なくて申し訳ないことである。  しばらく前には新藤兼人先生の本とか大林宣彦監督の本とかも著者謹呈で送られてきてて、 これはけっこう謎だったり。メールは書くけど礼状とか全然出さない人間なので、この場を借りてお礼を言うのである。それにしても謹呈は申し訳ないので、大森に本を送る人は、編集者に一言、「この人は書評用で送ってください」とゆっていただくと、送料も本代も出版社持ちで本が届く仕組みになってます。
 たまに著者謹呈の本に、「乞うご高評」短冊を入れてくる編集者がいるけど、そういう場合は費用版元持ちで送るのがスジでしょう。


【12月4日(水)】

『ビル・ゲイツ 未来を語る』の新版用の訂正作業。文章上の訂正は、翻訳だとほとんど吸収されてしまうので問題ないんだけど、インターネット中心にシフトした結果、「情報ハイウェイ」という言葉駆逐され、事実関係が大幅にアップデートされている。全面改稿以外の章についても、意外となおしに時間がかかるのだった。
 あとは森岡インタビューのつづきとコンプティークのエヴァ原稿。


【12月5日(木)】

 季節はずれの台風みたいな異常な天気のもと、馬場の戸塚警察。しばらく前に携帯をなくして、すでにおなじのを買ってあるのに、いまごろ収得のお知らせが着いたという。しかも届けたのはユタ。翌日電話して聞いたときは、「携帯の落とし物はありません」って言われたのになあ。まあいいけど。
 馬場に行ったついでに、RPGマガジンに広告が載ってたカード屋さんの「ウィニー」に行ってみる。なんだ、ユタのすぐとなりじゃん。しかし「ウェンディーズの三軒手前のビルの三階」という情報がないと気がつかないくらい控えめな看板なのだった。
 シングルの国内の値段はよくわからないけど、まあそれほど法外でもない気がする。1000円以下のシングルのファイルを見せてもらって、とりあえずSoldevi DiggerとStorm Cauldronを買う。ミラージュはほとんど買ってないので、キーカードはシングルでゲットするしか。

 2時前にWOWOW。しかし今日は欠席者が多くて会議不成立。1時間ぐらい雑談して終わり。東宝本社にまわって、「ある貴婦人の肖像」の試写。ヘンリー・ジェイムズの原作なんだけど、映画になるとまるで少女マンガ(笑) ジェーン・カンピオンの映画にニコール・キッドマンが主演ってのも意外な感じですが、この話にかぎってはうまくハマってますね。なんかそのままテレビドラマになりそうである。

 さいとうよしこが630にIrcleを入れて#bakaでircするというので、ftpついでに自宅のほうからmurichatでつなぐ。「パズルゲームはいすくーる」の野間美由紀さんが#bakaにいたんで、ircでははじめましてのmsgを交換したあと、#にっきに拉致(笑) 西葛西ローカルな話題で盛り上がる。
 あと奧野くんが最近ギャザラーになってて、トレードの商談(笑) けっきょく土曜日の馬場でカードを交換することに。凄腕の暗殺者を出して青チューターその他をもらう約束。
よしよし。これで白青パーミッションデッキは完璧だ。

 ところで、ltokyo.comのファイルがnot foundで見られないという声が一部にあるので(喜国さん、貫井くんのほか、asahiネットのテキストベースでもダメみたい。あとお茶大の野田さんにも見えないと言われたな)、ひさしぶりにリムネットの休眠ページを復活させる。まわりで日記が読めないって人がいたら、http://www.st.rim.or.jp/~ohmori/を試してみるようにゆってください。こういう情報ってどこで告知すればいいのかね、しかし。


【12月6日(金)】

 ゲイツ本の直しを三章まで終わらせて一段落。ぼちぼちクルート本の原稿を仕上げないといけない。講談社クロニクルの仕事も半年ひっぱってるしなあ。ううむ。
「ラストマン・スタンディング」の試写状が発掘されたので、夕方から六本木。「用心棒」リメイクってことですが、ほんとに「用心棒」そのまんま。クリストファー・ウォーケンの超ワンパターンな芝居も、仲代達矢なんだからしょうがないよね。ウォルター・ヒルもすでに円熟の境地っていうか。でもどうせなら「椿三十郎」をリメイクしてほしいっす。

 六本木のマイアミ(いきなりドトールのような低価格コーヒーショップに業態変更していて仰天)で「ラストマン」の原稿を泥縄で書き(論座用)、家に帰ってから、明日の対決&トレードに備えて手持ちカードの整理。アイスエイジとFallen Empireを抜き、残りをエキスパンション別に分類して、サンフランシスコの謎のおじいちゃんにもらった巨大なアルバムに色別に分けてぶちこんでゆく。アンコモン以上だけにしたんだけど、これがめちゃくちゃ重い(笑) まあしかしこのアルバムから、必要カードを抜き出してデッキをつくると、なんかスパイ大作戦みたいでちょっといいかも。


【12月7日(土)】

 4時に高田馬場。カードショップのウィニーで奧野・菅原組と合流、ユタでトレード大会。そのうち柳下、三村美衣、野口誠もやってきて、すっかりギャザラーな世界になってしまう。
 非ギャザ者が、テーブルの上のカードの山を見る視線が冷たい(笑)
 シングルで買ったStorm Cauldronを活用すべく、新たに組んだStasisデッキ(97年対応仕様)で柳下パーミッションデッキと対戦。やっぱりCauldron極悪。基本的にはセラ天で殴るパターンなので、ターボステイシスほど凶悪じゃないんですが、ふつうのデッキ相手に使うのはちょっとはばかられるかも。大気の壁で前半をしのぎ、意志の力4枚を含む10枚のカウンターでセラ天を守るパターン。コントロールマジックが通るつもりでいるところが柳下も甘いね(笑) あまり考えずに組んだデッキだけどけっこう強いかも。しかしoutpostデッキの人とかターボステイシスの人とかネクロネビュラの人とかがいないので、ほんとに強いかどうかはよくわからないのだった。やっぱり五十嵐さんとかにもんでもらうしか。
 とか言ってるくらいなら公式戦に出ろって気もしますが、それもめんどくさいのである。ああ、凶悪なデッキでぼこぼこにされたい(笑)

 あ、昔の日記アーカイブの今年の6月から10月の日記のインデックスがこわれていた事実が貫井徳郎氏の指摘により判明しましたので(タイトルのタグが閉じてなかった)、あわてて修理しました。ltokyoが読めなくてこの期間の未読がたまっていて、一応消化しておきたい人は、もうだいじょうぶなのでどうぞ。

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