【10月14日(月)】

 昨日は一日こんこんと眠りつづけてたのに、土曜日の疲れがまだ残り、どうも調子が出ない。ので書庫の本を整理しては本を読む。笠井潔の『群衆の悪魔』。途中で休憩して今年の乱歩賞に浮気したら2時間もかからずに読み終わってしまう。『左手に別れを告げるなかれ』。万引きの話は面白いけど、まあどうでもいい本でした。


【10月15日(火)】

 本を並べているとどんどん時間が過ぎてしまう。自宅のほうのハヤカワ文庫SFと創元SF文庫とサンリオSF文庫をきちんとそろえ直し、表に並べる。しかし小浜担当以降の創元のSFって、本棚2段でおさまっちゃうのね。もうちょっと仕事しろよ。やはり最低でも月に一点は新刊を出していただかないと、書店の棚がなくなってしまうのも当然なのである。
 東京新聞に『インターネット中毒者の告白』営業用のコラム原稿を送り、「ナデシコ」を見る。ゲキガンガーがますます熱い。さすがスタジオ雄の渾身の力作(笑)だけありますね。ゲキガンガーVからは長浜色が強くなるそうなので楽しみっす(なんかめちゃくちゃ細かい裏設定があるらしい。おもちゃの商品展開をめぐってスポンサーからクレームがついてデザインが変更になるとか(笑))。
 そういえば今日はサンフランシスコでトーレンと斉藤友子がサンプルを吹き込んだ英会話(笑)が登場する回でした。ちなみにこの英作文担当は堺三保らしい。トーレンは、「日本人が書いたんならがんばってるけど、ネイティヴだったらひどいガチャ文だね」と評していたことである。

 夕方、ダカーポ編集部の吉田さんとマイルストンで会って、今年の文庫本ベスト用の資料を受けとる。大森の担当はSF/ファンタジー。ベスト12を選んで、そのうち4本をコメントつきで紹介する仕事。『星界の紋章』は版元おすすめのほうに入っちゃってるので、あとは『図南の翼』『電脳天使』に翻訳物2冊かな。けっこう悩ましいかも。

 ウェイン町山氏から映画秘宝原稿の催促。あわててまだ見てなかった「It Came from Outer Space」を見る。SFマガジンの良平さんの原稿を読んで、やっとブラッドベリ原作の謎が解ける。ビブリオグラフィをえんえんさがしたのがバカみたい。まあいいけど。
 キネ旬襲撃事件その後は、けっこうまずい展開になりつつあるらしく、
「ぼくもこの仕事が最後になるかもしれませんけど、この一冊だけはかならず出しますから原稿よろしく」
 と悲愴なウェイン町山。キネ旬は会社ぐるみでマジで怒っているらしい。べつに怒らなくてもいいのになあ。


【10月16日(水)】

 公開のときバカにして見てなかった「スターゲイト」をビデオで借りてきて見る。やっぱりつまんない。無駄金使ってるよなあ。これにくらべれば「ID4」は1024倍すばらしい。それにしても、コムストックが配給した「スペース・ノア」を見たときは、まさかエメリッヒがここまで化けるとは思わなかったよね。と、昔EYE-COMに書いた原稿を発掘してみると、

 だから、「ドイツ製SF映画」という形容は半分あたりで半分はずれなんだけれど、低予算にもかかわらず、特殊効果はおみごと。全体に画面が暗いのが利点になっているとはいえ、ほとんどちゃちさを感じさせない。SFX映画初挑戦でこれだけの映像をつくってしまうのがドイツの底力なのだろうか。この技術でびしばしSF映画がつくれるようになると、ドイツは九〇年代SF映画の台風の目になるかもしれない。
 とか書いてあるので感心してしまった。いやまあドイツががんばったんじゃなくて、エメリッヒがハリウッドで化けただけなんですけど。

 アスキーから出る鎌田秀実の『無慈悲な夜の女王に捧げる挽歌』の解説。
「ゲラ読んでください、それで、面白かったらでいいですから推薦文をひとつ」とか言われて、読むだけならいいっすよ、と引き受けて読んで、こりゃけっこういいじゃんと思ってたら、「んじゃ解説をよろしく」とかすっかりだまされちゃった仕事。今月はとても解説書いてるヒマなんかなかったんだけどなあ。最近ダマされることが多いのである。

 町山氏からふたたび催促。なんかキネ旬には謝りにいくことになったらしい。この情けなさがウェインらしくてナイス(笑) しかし三十男が真顔で「どうも、パイをぶつけてすみませんでした」と謝罪するのは難事であろうと推察される。いやまあ、日本的解決法としては、一席設けて「このたびはどうも失礼を」「いやまあ、こちらも本気で怒ってるわけじゃないんでね。まあ一杯どうぞ」とかで済んじゃうような気がしなくもない。

 二月にクヌルプに行ったとき、「京都SFフェスティバルでは笠井潔・我孫子武丸対談を」という話を決めていたのをすっかり忘れてて、新本格パティオの我孫子さんの書き込みでやっと思い出し、あわてて笠井さんに電話する。が、歯科療法上の問題で、人前で長時間しゃべるのはつらいってことで京フェスはパスされる。『群衆の悪魔』と『鬼女の都』の話など少々。


【10月17日(木)】

 昨日は夜眠くなってそのまま寝ちゃったので、6時に起きて映画秘宝の原稿を書き、七時にメール送稿。つづいて論座の映画欄とアスキー解説のつづき。WOWOWに東京国際映画祭レポートを先にファックスしてから、物理的にWOWOWへ出かける。三週間ぶりのネットワーク会議。映画祭の話とロマンポルノの話。
 会議のあと喫茶店で野村さんからキネ旬事件を取材。なかなか複雑なことになっているらしい。

 東野圭吾『名探偵の呪縛』を読む。『名探偵の掟』とワンセットでコード型本格離別宣言ですか。しかし東野さんの本格観は新本格以降の動きが視野に入ってない気がする。「昨今よく見かける若い作家によるクラシカルな本格ミステリ」ってなにを指してるんだろうな。『ネヌウェンラーの密室』?(笑) 『星降り山荘』? まさか西澤保彦や森博嗣じゃないだろうしなあ。この現状認識は、『本格ミステリー宣言II』と大同小異でわ。
『どちらかが彼女を殺した』とか『悪意』に見られる東野圭吾の実験精神はすぐれて新本格的なものだと思ってるんだけど。

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