【9月20日(金)】

 2時半、ひさしぶりの東京創元社@飯田橋。むかし新潮文庫で出てたシュミッツの『惑星カレスの魔女』が創元SF文庫で再刊するっていうんで、宮崎駿のカバーイラストの原画を届けるのが本日の使命。当時の大森は新潮文庫の編集者で、一回電話で断わられたのを無理やり二馬力に押しかけて手紙をわたしてなんとかオッケーしてもらったことが昨日のことのように思い出されるっていうのは嘘ですが、宮崎カバーの霊験はあらかたで、発売たちまち3万部増刷とか、新潮文庫の海外SFでは記録的なセールスを達成したのはよく覚えてるな。んで本が出てから原画を返しにいったら、「じゃあこれはあなたにあげましょう」とその場でサインしてわたしてくれて、我が家では宝物として収蔵されていたわけですね。一応千円くらいの額縁に入れて飾ってあったり。
 額縁からとりだしてみると絵柄にサインがかぶっちゃってて小浜くんは頭抱えてましたが、まあデジタル処理でなんとかするんだろうな。
 そういえば宮崎さんとこに原稿返しにいったら、あの絵と違うアングルにちゃんと色まで入れた別バージョンがあって、「そ、それは……」と言ったら、「いやあこれはダメですね」とその場でゴミ箱につっこんだりしてて、二馬力のゴミを漁ればたちまち一財産ではないかと思ったんだけど、日本のアニメ業界には原画を売り買いする習慣があんまりないから、カラーの原画でも使い捨て感覚なのかも。ワールドコンとかコミックエキスポのオークションにかけたらさぞや高値がつくことであろう。ほんとは日本SF大会で「なんでも鑑定団」の収録があったときに持っていこうかと思ったんだけど、会社の看板背負っててもらった絵だからなあ。

 創元といえば、山田章博氏にカバーを依頼することにも成功したらしいんだけど、小浜くんが山田さんの奥さんと電話でしゃべってて大森の話になり(山田さんとは同郷で、友だちのお姉さんが同級生っていう縁があって学生のとき高知で一回会ってて、編集者時代には小野不由美『魔性の子』のカバーを描いていただき、さらにスタジオ・プロテウスの英訳仕事――ラスト・コンティネントのアメコミ版が出ている――でトーレン・スミスの通訳をしたこともある)、奥様いわく、
「そういえば山田が描いた大森さんの似顔絵があるんですよ。あんまり似すぎててとても見せられないんですが」
 ってそれはほんとうなんでしょうか。見たい。見たすぎ。しかしなぜなんだ。謎すぎ。

 久々の創元編集部でしばらくうだうだしてから、創元部隊といっしょにてくてく歩いて、鮎川賞(創元三賞)授賞パーティが開かれるホテル・エドモントへ。まだ一時間以上あるけどどうしようかなあと思って一階のティールームを覗いたら、なんだ、もうみんないるじゃん。
 ってことで毎度おなじみのミステリな人たちとしばらくしゃべり(当然話題の的は清涼院流水先生の『コズミック』。いや、本人は来てないんですけどね)、5時に会場へ。
 授賞式が終わったのはそれから1時間10分後。なんといっても土屋先生の鮎川賞選考経過説明だけで25分ですからね。まあしかし実物を見るのははじめてだし、戦前の不遇時代の思い出話とか、なかなか勉強になりました。

 パーティのほうは、白薔薇の君とか夏来健次氏とか、渦中の人物(でもないか)の姿も見え、なかなか面白かったす。近藤史恵さんがいきなりロングヘアになってたのはびっくり。高橋良平氏も来てたので、ワールドコンのプログラムブックその他をわたす。

 途中でちょっと抜けて乱歩賞@帝国ホテル。しかしこっちは一時間遅くはじまったくせに終わる時間がいっしょなんだもんなあ。坂東齢人あらため馳星周がいたので『不夜城』を誉める。しかし発売たちまち八万部とはねえ。北上次郎効果ですか。小説のレベルとしてはだいたい『ブルース』とおなじくらいじゃないかと思ってるので、まあ花村満月のデビュー作が『ブルース』だったとしたら――ってことを考えると8万部もうなずけなくはない。小説のタイプとしてはわたしの不得意分野なのでとくに絶賛はしないけど、主人公のキャラは好きです。坂東齢人が絶賛するにちがいない小説(笑) しかしそれを自分で書けちゃうのは偉いよなあ。
 乱歩賞がとっととお開きになってしまったので、またしても菅浩江その他とティールームでお茶。9時をまわったところで鮎川賞二次会のタゴールに移動。話題はもっぱら白薔薇の人の胸と清涼院流水。東京コズミック・ナイト(笑)
 C塚嬢のまとめによれば、

 否定派が、倉知さん・篠田真由美さん(だったよね? 条件付き肯定派
だったかな?(^^;))・有栖川さん・芦辺さん、条件付き肯定派が、山口さん・
貫井さん・北村さん・笠井さん・二階堂さん、「清涼院さんに学べ」派が、
京極さん、「愛憎相半ば」派が、我孫子さん・綾辻さん・麻耶さん、「オレは
断じて関係ないぞ」派が法月さん、あとは……うーむ、覚えてないぞ(^^;)。
完全肯定派は大森さんと竹本さんって感じ? 京極さんも完全肯定派に近いか。
 京極さんの「清涼院カモノハシ説」←(清涼院さんは進化のドンヅマリだから、
あれ以上に進化するものは現れないとする説)に対する有栖川さんの「コズミック
猿の惑星説」がおかしかった(笑)←(進化しないはずのカモノハシが
二本足で立ち武器を持ち、進化を続け、地球を滅ぼしてしまう。そしてある日、
一匹のカモノハシが、廃墟と化した地球上で巨大な斜め屋敷の残骸を発見し、
「なんということだ!ここは本格の国だったのか!」と叫ぶという説(笑))。
 その他、山口さんの「清涼院ドラッグ説」とかいろいろ出たけど説明は割愛
します(笑)。
 ってことです。無断引用でごめんなさい。まずい場合はすぐメールしてね(^-^)

 3次会は例によってカーニバル。歌う部屋歌わない部屋と分けたら歌わない部屋のほうが盛り上がっていた。歌う部屋にずっといたのは『コズミック』を読んでない二人だけ(笑) もちろんさいとうよしこはこの集合に含まれている。


【9月21日(土)】

 起きたら3時半。あわてて飯田橋に行って恒例のミステリ作家/編集者麻雀大会。最初にうっかり山下さん@角川の卓に入ってひどい目に遭ったので、あわてて卓を移って最初の負けを挽回する(笑)
 8時前にいったん麻雀を抜けて高田馬場に移動。堺三保逆噴射問題に揺れる(笑)ユタの会へ。よくわからないが三村美衣と堺の喧嘩が根本的な原因らしい(三村美衣は否定)。てんやでかき揚げ丼食べて、ルノワールで野口の弱小デッキと軽くデュエルしてふたたび飯田橋。麻雀組はすでにカーニバル2に移動している(笑)
 綾辻、喜国、C塚、さいとう、平野……だっけ。午前3時ぐらいまで歌って帰宅。


【9月22日(日)】

 爆睡の一日。あとはだらだらスニーカー大賞の二次選考の原稿読み。


【9月23日(月)】

 小説すばるとアニメージュの書評。両方とも「コズミック」(笑)。


【9月24日(火)】

 今日届いた文春のPR誌「本の話」がミステリー特集。北村薫×山口雅也の対談を読んでたら、山口さんがまたしても「すべてがSFになる」話をしている。「鳩よ!」に載ってた談話と同様、「ミステリはスペキュレイティヴ・フィクションである」論の枕に使われてるんですが、一発ネタのギャグ(しかもこれは(C)水玉螢之丞)がこうやって全然違うニュアンスで一人歩きするのはこわいことである。
「すべてがSFになる」の真意はですね、テクノロジーが進歩するにつれてユーザーの目から見えなくなるように、SFも(読者の目に入るレッテルとしては)見えなくなりつつあるんだけど、だからといって存在しなくなったわけではなくて、あらゆるところに遍在している、ってことなんですね(ほんとか>自分)。
 それにしても、SFファンでもほとんど忘れているSpeculative Fictionなんて言葉を、埃を払ってひっぱりだしてくるあたり、目のつけどころがシャープでしょ。


【9月25日(水)】

 久々に喘息でダウン。クスリ飲むと心搏数が上がって体力が消耗されるんですね。午後になってから、案の定、雨が降り出して、やはり喘息発作と天気のあいだにはかなり相関があるような気がする。
 仕事場の和室で一日寝る。途中まで読みかけていた浅田次郎『蒼穹の昴』読了。やっぱり前半のペーパーチェイスな受験勉強話がいちばん面白かったな。歴史小説ふうに見えて、登場人物がとつぜん浅田キャラ的な口をききはじめるところは好きかも。後半、群像劇になって焦点がぼけちゃうとこが弱点か。


【9月26日(木)】

 1時半WOWOW。5時、霞ヶ関三井倶楽部で日本ファンタジーノベル大賞受賞パーティ。もう8回目かあ。時のたつのは早いものである。昨年につづいて今年も大賞はナシ。優秀賞が2本。まあ前々回に大賞が二本(『鉄塔 武蔵野線』と『バガージマヌ・パヌス』)出ちゃってるからなあ。おまけにこの年は『ムジカ・マキーナ』が優秀賞にもならず落選してるわけで。落選作といえば、今年の『宇宙防衛軍』はちょっと読んでみたいかも。
『鉄塔』は映画が完成して、公開の交渉中らしい。『東京の休日』の人が監督したらしいので楽しみなことである。原作者はわりと気に入ってました。
 二次会はいつもどおりオークラのオーキッド・バー。佐藤亜紀、哲也夫妻、鈴木光司、藤田雅也、北野勇作、銀林みのる、受賞者二人とその関係者、あと新潮社の編集者多数というメンバー。
 三次会はこれまた毎度おなじみの富永。ゾラとソルジェニーツィンと「デッドリー・スポーン」とSFマガジンの話題が入り乱れる(笑) 新潮社情報もアップデート。なんだかネットワーク編集室とかいう部署ができたらしい。新潮社ホームページをつくるとかつくらないとか。二時過ぎにタクシー帰り。
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