古建築専門用語辞典
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2001/8/27 更新                                                           
読み 文字 用語の説明 参考資料
いがき 忌垣 瑞垣(みずがき)の別称。「井垣」「斉垣」「圍垣」とも書く。
神社の本殿を囲む垣のうち、一番内側のものをいう。
「忌」はけがれを清め慎むの意味。
いかんもん 偉鑒門 平安京大内裏(だいだいり)十二門のうちの一つで、
「達智門」(だっちもん)、安嘉門(あんかもん)とともに北に
面する門。
いきぶし 生き節
活き節
伐採(ばっさい)製材後も樹幹の組織と緊密に結合している節
「赤節」ともいう。これに対して抜け落ちる節を「死に節」という。
いくほうもん 郁芳門 平安京大内裏(だいだいり)十二門のうちの一つで、
「待賢門」(たいけんもん)、陽明門(ようめいもん)とともに
東に面する門。
いしたまがき 石玉垣 神社の敷地外周に設ける角柱に加工した石製の「玉垣」。
いしのま 石の間 「八幡造り」「権現造り」の社殿で、「本殿」と「拝殿」の間に
ある部屋。古くは床を張らず石張りだった。「相の間」ともいう。
いしのまづくり 石の間造り →「権現造り」
いしぶたい 石舞台 四天王寺、住吉大社、厳島神社にある「基壇」風の
舞楽用舞台。四周に「高欄」(こうらん)をめぐらす。
奈良明日香村にある古墳石室の俗称で「石舞台古墳」という。
いしまるけ 石丸家 江戸時代、幕府の「大棟梁」(だいとうりょう)に任ぜられた
家名のひとつ。
いすかつぎ 易鳥継ぎ 角材の継ぎ手仕口の一種で天井竿縁や桁などにもちいる。
右図参照
いたあぜくら 板校倉 「校倉造り」の壁を厚板で組んだもの。
正倉院正倉の中央部分は「板校倉」となっている。
いたかえるまた 板蟇股 厚板の輪郭だけを「繰形」(くりがた)加工した「蟇股」。
棟木などを受ける斗(ます)の下に設ける束の役目を持った構造材。
いたがき 板垣 平安・鎌倉時代の住宅で特定の部屋の前に作られた目隠しの板塀。
柱の間に「下見板」(横張板)を張り、立て押し縁で押さえ、上部に
襷(たすき)などの装飾をほどこし板葺き屋根が乗り、「源氏塀」ともいう
伊勢「神宮」内宮、外宮の「板垣」は上記と異なり、単に横板を巡らせ
たもので、これが古来の形式と思われるが、時代の流れにより形態が
変化してきたものと思われる。
いたからど 板唐戸 「和様」。一枚または数枚の厚板をたてに矧ぎ(はぎ)あわせ、
上下に板の反り(そり)を防止するための「端食み」(はしばみ)を
もうけた扉で、「軸吊り」開き戸の形式で、社寺、住宅などにもちいられた。「板扉」「板戸」ともいう。
桟を見せた形式は唐様の「桟唐戸」という。
いたご 板子 板厚5〜30cmくらいの「杣取り」(そまどり)斧で切出した材のこと。
これをさらに薄く挽いてもちいる。幅50cm以上、厚さ18cm以上程度を
厚板子。幅42cm厚さ12cm以下程度を小板子などというが一定したも
のではない。
ちなみに「板」とは、厚さ8cm未満で、幅が厚さの3倍以上のものをいう。
現代の感覚では、上記小板子でも立派に大型角材として通用してしま
うが、古代では、これを「板」と称するなど、祖先の壮大さが忍ばれる
言葉である。
いただたみ 板畳 床の間にもちいる。板に畳表を張ったものをいう。
いたたまがき 板玉垣 間隔を開けて並べた厚板の裏に貫を打った玉垣。神社などに使われる
いたぶき 板葺き 板で葺いた屋根の総称。
立葺きでは「大板葺き」「大和(やまと)葺き」など。
横葺きでは板厚の順に「柿(こけら)葺き」「木賊(とくさ)葺き」
「栩(とち)葺き」などがある。
いため 板目 樹木を樹幹と平行方向に挽いたときに現れる渦状木目をいう。
樹幹方向に挽いた場合は平行な木目となり、「柾目」(まさめ)という。
いちもんじ
がわら
一文字瓦 軒先に用いる瓦。垂れの下部は水平で巴瓦は付かない。
無紋の「一文字軒瓦」と、紋入りの「一文字唐草瓦」がある。
数寄屋建築や門、塀などに用いる例が多い。
いちもんじ
ぶき
一文字葺き 同じ大きさの厚さ0.3〜0.35mmの銅板などの金属板を、棟に平行な
一直線となるように、相互の端を二重に曲げ、噛み合わせて葺く工法。
噛み合わせの部分を「はぜ」といい、屋根「野地板」に釘打ちされた
「とんぼ」という同材の折り曲げられた小片に、引っかけて取り付ける。
「はぜ」は常に「水上」(みずかみ)側を上、「水下」(みずしも)側を下、
となるように施工する。
こうしないと「雨仕舞い」が悪くなり、雨漏りの原因となる。
いちょうば 銀杏葉 檜皮葺(ひわだぶき)の切妻軒付けの拝み部分に付ける飾り板。
その形が銀杏(いちょう)の葉ににていることからこの名が付いた。
軒付けの転びによる交点での折れ目を隠すために工夫された工法
銅板葺きの場合もこれにならって同様の「銀杏葉」を付ける。
いっけん 一間 社寺建築の場合、寸法の尺度としてではなく、柱間を一間と呼ぶ。
従って「一間四面堂」とは柱間が正面側面とも一間の堂という意味。
また「一間社」は柱間が一間の小型の社殿をいう。
寸法の尺度では、一間は6尺で約1.82m。一尺は約30.3cm。
ただし、一尺の寸法は時代によって異なり高麗尺(こましゃく)、
奈良尺などがある。
いっけん
いっこ
一間一戸 柱間が一間で、入り口が一カ所の意味。
従って三間一戸といえば柱間が三つで入り口が一つのこと。
いっすんべり 一寸縁 畳の縁幅(へりはば)が一寸(30mm)のこと
江戸間では八分(24mm)、細縁(ほそべり)では七分(21mm)
高麗縁(こうらいべり)では一寸五分で(45mm)となる。
一寸(いっすん)は十分(じゅうぶ)で一分(いちぶ)は3mm。
いなかま 田舎間 江戸間のこと。一間を六尺(1.82m)基準の柱芯々寸法とした。
このため畳寸法はさらに小さく、六畳間の場合柱寸法を三寸五分として
実際の畳寸法は(12×303−105)÷2=1.77mとなる。
ちなみに京間は一間を六尺五寸(1.97m)の畳実寸法とする。
また六尺三寸(1.91m)の畳実寸法を「並京間」又は「関西間」という
従って民家の場合、関西と関東では同じ坪数でも実面積は全く異なり
関東の片田舎に開府を行った江戸幕府の苦労がうかがわれ、
この違いは現代まで引き継がれている。
いなご 稲子 天井板の継ぎ目に隙間が出来ないように裏側に取り付ける竹釘
いなずま
かなもの
稲妻金物 J形に二つ折れした金物の総称。
神社建築の蔀戸(しとみ)を跳ね上げて先端を引っかける金物
軒裏の化粧垂木などからつり下げてもちいる。
いなずまくぎ 稲妻釘 床の間正面上部の廻縁などに下面に、下向き取り付けられるJ形の釘。
「軸」「花活け」などをつり下げる。「雷紋釘」「自在釘」「稲妻折れ釘」
ともいう。
1寸5分程度の角材に溝穴を掘り、「稲妻釘」を横移動出来るように
取り付けたものを「無双四分一」(むそうしぶいち)と呼ぶ。
単に「折れ釘」と言う場合はL形の釘をさす。
用途は同様だが「雲板」(くもいた)などの垂直面に横打ちして使用する。
いなり 稲荷 五穀(ごこく)(稲、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)、豆)司る~
「宇迦之御魂~」(うかのみたまのかみ)を祀る神社。
この神は「延喜式」では伊勢神宮外宮の祭神豊受大~(とようけのおおかみ)
また五穀を生んだ~として古事記上巻に見える「大宣津比賣~」(おほげつひ
めのかみ)、日本書紀巻第一に見える「保食~」(うけもちのかみ)の二柱の~
とも同一視されている。
ちなみに後の二柱の~は「繭」(まゆ)とか牛馬も生んでいるが
古事記では「速須佐之男命」(はやすさのおのみこと)に、
日本書紀では「月夜見尊」(つきよみのみこと)に殺されている。
狐の異称。
いなりとりい 稲荷鳥居 明神鳥居(みょうじんとりい)の柱上に台輪(だいわ)を挟んだ形の鳥居
いぬくぐり 犬潜り 床の間で用いるときは「狆潜り」(ちんくぐり)が正しい言い方。
「犬潜り」の本来の意味は垣根の下の犬の潜る穴をいう。
床の間と床脇を隔てる壁の下側に開けられた開口部のこと。
ちなみに、隔て壁中央部の穴は「洞口」(ほらぐち)という。
いぬばしり 犬走り 建物外周部の「雨落ち溝」までの間で石張りなどで舗装された部分
いぬやらい 犬矢来 円弧状の反りのついた割竹や細い桟木を並べた柵のこと。
建物外壁の損傷を防ぐために設けたもので犬を防ぐというよりも、
人が建物に近づくのを防ぐことを目的とし、京都祇園の町屋などで
使われるものが有名。
本来は「唾止め」の名称が正しい。「犬矢来」は「犬防ぎ」とも呼ばれ
縦型の柵を並べた「駒寄せ」「駒繋ぎ」「牛繋ぎ」の小型形式のものを
言ったようであるが、最近は「犬矢来」と混同されて呼ばれることが多い。
ちなみに本来の「矢来」とは細い竹や丸太を菱形に組んだものを言う。
いのこさす 猪子扠首 屋根「切り妻」面で「棟木」を受ける「斗」(ます)を乗せた「猪子束」
(いのこずか)を両側から三角形(扠首形)に「扠首竿」(さすざお)
で支える構造形式の組み物。
「扠首」(さす)とは斜めに組むということで「合掌」と類似しているが
小屋組みの「合掌梁」(がっしょうばり)と、垂木の下に平行に組む
「扠首竿」(さすざお)とは構造的意味が異なる。
古来の形式で元は「神明造り」(しんめいづくり)から出た構造形式
いのめ 猪の目 ハート形をした「繰り形」(くりがた)の呼称。
猪の目懸魚(いのめげぎょ)などの装飾の一部にもちいられる。
いばら 「繰り形」の曲線が交わる部分に出来た尖った部分の呼称。
主に「唐破風屋根」(からはふやね)の湾曲した垂木をさして、
「茨垂木」(いばらだるき)などという。
いばらびれ 茨鰭 「唐破風屋根」に使われる「破風板」の「茨」部分をさしていう呼称。
いぶしがわら 燻し瓦 素焼き瓦を松葉、松薪などで燻すことにより炭化水素粒子を表面に
固着させ、燻し銀のように変化させた瓦。
昔は「だるま窯」と呼ばれる窯で一日がかりで制作された。
現代では重油、ガスなどの還元窯で大量生産が可能となっている。
「黒瓦」「銀色瓦」ともいう。
いみばしら 忌み柱 「大黒柱」(だいこくばしら)「大極柱」(だいごくばしら)とも呼ばれる。
中央の大きな加重を受ける柱。
元は「大社造り」および「神明造り」社殿の中央にある柱のこと。
「心の御柱」「真の御柱」「斉柱」(いんばしら)とも呼ばれ神聖なもの
として扱われる。「忌」はけがれを清め慎むの意味。神を畏れ遠慮す
ることから転じて喪に服する意味にも使われるようになった。
「斉」も同様の意味であるが主に飲食を慎み心身を清めることをいう。
いもつぎ 芋継ぎ 天井の竿縁(さおぶち)などを継ぐときにつかわれる継ぎ手の一種。
一方に「ほぞ」を作りだし、他方に「ほぞ穴」を掘って一見「突きつけ」の
ように見える。
いもめじ 芋目地 立て目地が一直線の目地のこと。
立て目地が交互にずれる目地は「破れ目地」「馬踏み目地」などという
いらか 本来は瓦葺き屋根の棟、または棟を構成する瓦の意味。
のちに瓦屋根そのものをさす言葉にもつかうようになった。
いらかむね 甍棟 瓦葺きの棟の下部に「甍唐草瓦」と「甍巴瓦」を積んだ棟を
いう。
いりかわ
又はいりがわ
入り側 民家などで濡れ縁と座敷の間の縁側をいう。
また、入り側と座敷の間の柱を「入り側柱」という。
いりすみ 入り隅 へこんで見える隅のこと。
でっぱって見える隅は「出隅」(ですみ)という。
いりはっそう 入り八双 先端が魚の尾のように開いた建具金物。
「鯖(さば)の尾」という俗称もある。
いりもやづくり 入母屋造り 「寄せ棟」の「棟木」を水平に延ばし、上部が「切妻」に見え、
流れに境目の無い屋根形式
これに類似した形で「錣葺き」(しころぶき)があるが、これは上部切妻と下部寄せ棟の流れに境目が有るのが特徴。
いんばしら 斉柱 →忌み柱(いみばしら)
いんぶもん 殷富門 平安京大内裏(だいだいり)十二門のうちの一つで、
「藻壁門」(そうへきもん)、談天門(だんてんもん)とともに
西に面する門。
いんろうつぎ 印籠継ぎ 継ぎ手の一種。二材の端部をそれぞれ凸凹形に作り嵌め合わせる。