FANDANGOS IN SPACE
(宇宙の血と砂)

CARMEN

1973年 イギリス

1. BULERIAS
  a.CANTE
  b.BAILLE
  c.REPRISE
2. BULLFIGHT
3. STEPPING STONE
4. SAILOR SONG
5. LONELY HOUSE
6. POR TARANTOS
7. LOOKING OUTSIDE(MY WINDOW)
  a.THEME
  b.ZORONGO
  c.FINALE
8. TALES OF SPAIN
9. RETIRANDO
10. FANDANGOS IN SPACE
11. REPRISE

―邦題―
1. ブレーリアス
  a.華麗なる序幕
  b.狂乱の舞い
  c.妖気の調べ
2. 鮮血は闘牛士の胸に
3. ステッピング・ストーン
4. 船乗りの末期
5. 孤独な館
6. タラントスにて
7. 魂の叫び
  a.テーマ
  b.ゾロンゴ
  c.フィナーレ
8. スペインの伝説
9. 鮮血の薔薇
10. 宇宙の血と砂
11. 終幕

 

 ロックという音楽も色々な派生をし、様々なジャンルのロックを生み出して来ました。特に60年代後半から70年代中盤にかけては「そのバンドだけ」みたいなジャンルのロックが飛び出しもう百花繚乱状態。玉石混交なのですが、とても面白い時期だったと思います。まぁ、そんな時期に生まれていないから逆に、いい年齢で色んな音楽が聴けたんで…。同時代の熱狂は解りませんけどね。

 今回御紹介のカルメンと言うバンドはバンド名が示すように「フラメンコ・ロック」。広義の範疇としてはプログレッシブ・ロックの中に入る様なのですが、聴いてみるとそんな中では収まらない、まさに「フラメンコ・ロック」。活字にしてしまうとちょっと色物気味に見えますけど、その名に恥じない哀愁・躍動がサウンドの中にフラメンコの血となり溢れ出しています。
 
 基調は緩急をつけたリズムとサバテアード(フラメンコ独特のフットステップ)、フラメンコギター。そこに何故か絡まる官能的なシンセとメロトロンの音色。この異様かつ魅惑な音空間はカルメン以外ではあり得ないオリジナリティとなって僕らの耳に押し寄せて来ます、アクの溢れ具合がもうたまりません。
 アルバム全体が魅力的なアクに溢れていて、一曲目に彼らの目指す部分が如実に現われされています。アクも全部取ってしまうと美味しくないモンですしね。 歌詞も邦題を見れば一目瞭然、スペイン=フラメンコから連想するジプシーという超わかりやすい三段論法や闘牛などのイメージバリバリ(笑)。それがまたアクの溢れ具合を過剰にさせています。
 しかしながら、彼らは元々アメリカ出身のバンドなのです。リーダー格の二人の両親がフラメンコのギタリストとダンサーだった事で、幼い頃から親しんできた音楽ロックにを取り入れる事は彼らにとって自然な事だったのでしょう、同じ自然さという点では最近流行りのユーロロック、スペイン系のプログレバンドと比較出来ますが、やはりあちらは「土着の血」と輸入したロックの融合(スペイン語で歌われているせいかちょっと取っ付きにくい印象もあります)ですか、カルメンの場合は「ロック」と要素としてのフラメンコ(要素としてにしても年期が違いますけどね)との融合ですからアクの度合いが違ってきます。その分ロック的なダイナミズムが違うのかな。
 でもこちらはよりショーアップというか聴かせ方の上手さも合わせ、何故か本家(本国スペイン)のバンドよりもそれらしく聴こえちゃうからまぁ不思議。
 僕は「土着の血」と輸入したロックの融合の「いびつ」感や自分のモノにしようと奮闘する姿も大好きなので優劣はつけませんけどね。

 まぁ、そんな事を考えると、重要なのがプロデューサーのトニー・ヴィスコンティ。T-REXやデヴィッド・ボウイ等のプロデューサーとして知られ、ともすると「色物」に落ち入ってしまうようなバンドやサウンドをしっかりとした物に出来る手腕の持ち主です。そんな音楽性の広い彼がいたからこそ、カルメンの作品が「フラメンコ・ロック」として整理・洗練されて、今でもその衝撃を僕らに与えてくれるのではないでしょうか。
 その後、この作品を含め3枚の作品を発表しますが、衝撃度はこの1stが一番、前述の彼らのテーマ曲の様な1曲目から流れる様にアルバムが進み、アルバムタイトル曲から最終曲への流れの躍動感たるやもう最高、「フラメンコ・ロック」って名前に引かずにぜひお聴き下さい。