「パッサメッツォ」とは,ルネサンスからバロック期にしばしば用いられた一種の
ハーモニックパターンで,ロマネスカやフォリアなどのハーモニックパターンと近い
関係にある。パッサメッツォにはアンティコとモデルノの2つの変形があり,モデルノが
どちらかといえば長調的な響きをもつのに対して,アンティコは短調的な響きをもっている。

 パッサメッツォ・アンティコの例として恐らく最もよく知られているのは
「グリーンスリーブス」であろう。またこのほかにもルネサンス期の舞曲にはパッサメッツォ・
アンティコがベースになっているものが沢山ある。



 最初の変奏("Prima Parte")の終止形に出てくる装飾音には,一瞬我が耳を
疑ってしまうであろう。

この悪魔的ともいうべき驚異的な終止形は,殆ど現代音楽を思い起こさせるものがある。
これはこの後の変奏でも更に3回登場する。筆者が想像するところ,ピッキは,彼自身の曲や,
ひょっとすると他の作曲家の鍵盤曲を弾いているときにも,しばしば即興的にこの終止形の
装飾音を使ったのではないだろうか。
 この後の5つの変奏では,即興的な速い装飾音形をともなったヴィルトゥオーゾ的な部分と,
どちらかというとリラックスした,ゆっくりとした部分とが交代で現われ,聞き手を常に
引き付ける。最もエキサイティングな部分は,例えば第3変奏("Terza Parte")に現われる,
非常に長い16分音符が連続したパッセージが登場する部分であろう。

 一つのハーモニックパターンを繰り返すという,ある意味で簡単な構造の曲でありながら,
この曲は最後まで聞き手を飽きさせることがない。そして最後は,やはり非常に印象的な
コーダでこの曲が締めくくられる。

 初期バロックこの曲!紹介ページに戻る
 初期バロックこの曲!紹介ページに戻る