MacのPPP接続

MacのPPP接続

[ Back | Home | ASAHIネット会員Home Page一覧 | ASAHIネットHome Page ]

　MacのPPP接続で気付いた点を紹介します。

リモートアクセスで115200bps以上に設定
V.34やV.90対応のモデムでは，DTE速度を115200bpsや230400bpsにすると，テキストなどのモデムで圧縮可能なデータは結構高速に転送できます。

FreePPPでは相当古いMacでも115200bps以上のDTE速度に簡単に設定できますが，リモートアクセス（OT/PPP）でも比較的最近のMacなら115200bps以上で動作させられる機種があります。PowerBookの場合は，PB2400/3400辺り以降の機種がリモートアクセスで115200bps以上が可能な様です。

リモートアクセスでは，モデムやTAに関する設定はCCLファイルで行いますが，モデムやTAに115200bps以上にするCCLが付属していない場合，テキストファイル以外も開けるエディタ（Jedit等）でCCLを開き，「serreset 57600, 0, 8, 1」の所を「serreset 115200, 0, 8, 1」や「serreset 230400, 0, 8, 1」とするとDTE速度を変更できます。

なお，FreePPPの場合に，KT7.1やKT7.1.1で115200bps以上にするとエラーメッセージが出る場合があります。この場合，KT7.1用のSystem Update 3.0（NIFTYのFMACPROのライブラリなどに有ると思います）でシリアルドライバをアップデートすると大丈夫の様です。
FreePPPとリモートアクセスの違い
FreePPP（祖先のMacPPP系のPPPソフトも）はMacが送信するTCPパケットを覗き見して，TCPのフロー制御に関連するTCPウインドウサイズを書き換える（2920バイトに制限する）処理が入っています。TCPウインドウサイズは，データ受信側が送信するデータ受領確認通知に先行して，データ送信側が送信可能なデータのバイト数です。

FreePPPがTCPウインドウサイズを2920バイトに制限することにより，リモートアクセスと比較すると下記の違いが出ることがあります。
- １つのデータだけを転送する条件（複数の画像などが埋め込まれているWebページは該当しません）で，FreePPPよりリモートアクセスの方が転送時間が短いことがある。ただし，DTE速度が57600bps以下の場合や，モデムで余り圧縮が効かないデータを転送する場合はほとんど差はでません。
- 複数のデータを並行して転送するとき（複数の画像などが埋め込まれているWebページをアクセスしたり，FTPで複数のデータを同時に転送するとき），リモートアクセスの方が少し時間がかかる場合があります。プロバイダやアクセス先のサーバなどによっては目立った差が出ることもある様です。
  
  この原因を正確に掴むことは出来ませんが，以下の様なことが考えられるのではないかと思います。
  - モデムやISDNの場合，Mac=アクセスポイント間の転送速度は他の部分（アクセスポイント=アクセス先サーバ間）より遅いのが一般的。
  - リモートアクセスでは，NetscapeのTCPウインドウサイズが17KB近辺で比較的大きい。（FreePPPではウインドウサイズが2920バイトに抑えられている）
  - 上記の結果，相手サーバ->Mac方向である程度大きいデータを転送している場合，アクセスポイントのアクセスサーバの所には「ウインドウサイズ×並行転送数」に大体比例した量のデータが溜まった状態になる。
  - 上記の状態では，Mac=相手サーバ間のパケット往復時間（RTT : Round trip time）は，アクセスサーバの所に溜まっているデータ量に応じて増大する。パケット往復時間の増大は，Mac側，相手サーバ側，何れから見ても同様である。
  - パケット往復時間がある程度大きくなると，相手サーバは自分が送信したデータに対するMacからの受領確認（Ack）が来ないということでデータを無駄に再送してしまうことがある。また，Mac側もサーバへ送ったデータ（Webページを構成するデータを要求する指示など）に対する受領確認（Ack）が来ないということでデータを無駄に再送してしまうことがある。
  - アクセスサーバやその他ネットワーク上の機器のバッファ量などの関係で，「ウインドウサイズ×並行転送数」が大きい条件ではパケットが欠落してしまうケースもあるかも知れない。
ウインドウサイズの変更
前記のFreePPPとリモートアクセスの違いに書いたTCPウインドウサイズをコントロールする方法を幾つか示します。ただし，TCPウインドウサイズは，前記の様に大きい方がメリットがある場合と小さい方がメリットがある場合とがあり，単純にどうすれば一番良いと言えるものでなく，変更した結果効果があったのかどうかを確認するのも難しいです。

従って，ここに書いてあることが面倒だと思われる方は，細かいことは気にせずFreePPPとリモートアクセス（またはその他のPPPソフト）の好きな方をオリジナルのまま使って下さい。私自身も何時もこんな細かい事を気にしている訳ではありません。

なお，ソフトによっては，個別にTCPウインドウサイズを設定しているものあるかも知れません。（その様なソフトでも，オリジナルのFreePPPではTCPウインドウサイズが2920バイトに制限されるので，2920バイト以上のTCPウインドウサイズでは動作できません）
- リモートアクセスの場合の変更方法
  リモートアクセスの場合はリモートアクセス側ではTCPウインドウサイズを操作しないので，TCPウインドウサイズはOpen TransportのTCP/IPドライバ側で決まります。Netscapeの場合はシステムのデフォルトを使う様で17KB近辺になる様です（Windows系OSのTCPウインドウサイズのデフォルトはもっと小さかったと思います）。
  
  TCP/IPドライバ側のTCPウインドウサイズのデフォルトは，OT Advanced Tunerというソフト（シェアウェア）で変更できます。OT Advanced Tunerと同じサイトにあるIP NetMonitorというソフトを使うと，TCPウインドウサイズやその他のOpen Transportの情報を見ることが出来ます。
  
  OT Advanced Tunerの場合，PPP接続状態のまま何時でもTCPウインドウサイズのデフォルトやその他のパラメタを変更できます。ただし，変更したパラメタが有効になるのは，パラメタによっては変更後に新たに接続した相手との通信からです（TCPウインドウサイズもそうです）。
  
  OT Advanced Tunerでは，Macが送信したデータに対する相手の受領確認の通知を待つ時間（この時間が経過しても受領確認の通知を受信しなければデータを再送する）を変更するこも出来，この初期値と下限値を大きくすると，TCPウインドウサイズが大きいときのMacからの再送率が大幅に小さくなるケースもあります。
- FreePPPの場合の変更方法
  - FreePPPはTCPウインドウサイズを2920バイトに制限する（Macが送信するパケットを覗き見して書き換える）ので，TCPウインドウサイズをこれより大きくしたい場合はOT Advanced Tunerで変更しても効果はなく，FreePPPを改造するしかありません。
    
    FreePPPに下記のパッチを当てるとTCPウインドウサイズを制限する処理が無効になり，リモートアクセスと同じ特性になります。この結果，前記のOT Advanced Tunerを使用する方法でTCPウインドウサイズを好みの値に変えられる様になります。
    
    TCPウインドウサイズを2920バイトより小さくするのなら，下記パッチなしでOT Advanced Tunerだけで可能です。
    - FreePPP 2.6.2 - TCPウインドウサイズ制限解除パッチ (BinHex : 38KB)
      対象は最新（1998/11時点で私が知っている範囲）のFreePPP 2.6.2の機能拡張ファイルです。初期の2.6.2は中身が若干違うため当たらない様です。日本語化されたFreePPPでは確認していません。
  - 第二の方法は，FreePPPには前記のパッチを当てず，FreePPPの設定ファイル内の「トgbl」リソースに存在する0x0B68という値（十進数で2920で，これがTCPウインドウサイズの上限値）をResEditなどで変更するものです。うちの設定ファイルには0x0B68が２つあります。
    
    この方法ではPPP接続中にTCPウインドウサイズを変更することは出来ませんが，OT Advanced Tunerの様な有料のソフトを購入する必要がありません。なお，FreePPP SetupとFreePPP機能拡張の「トgbl」リソースのどちらかが設定ファイルを最初に作るときの素と思われます。
私がTCPウインドウサイズの違いで経験したこととしては下記などがあります。
- 私のPB2400cでWebによる転送速度テストの所のモデム圧縮が良く効くデータでオリジナルFreePPPの転送速度を測定すると，外付けモデム（V.34でDTE速度115200bpsまで）では6KB/secちょっと，カードモデムでは7KB前後。
  
  これに対し，リモートアクセスは外付けモデムでは115200bpsのほぼ限界，カードモデムでは25KB近い速度が出ます（カードモデムは実効ポート速度が230400bpsを越える）。FreePPPでも，前記の「TCPウインドウサイズ制限解除パッチ」を当てたり，初期設定ファイルのTCPウインドウサイズ制限値を拡大するとリモートアクセスと同じ速度が出ます。
  
  「TCPウインドウサイズ制限解除パッチ」を当てたFreePPPでカードモデムを使ったときの転送状態を示したスクリーンショット（28KB）を示します。
- リモートアクセスや「TCPウインドウサイズ制限解除パッチ」を当てたFreePPPで単一の転送を行った場合でも，ウインドウサイズが小さいときより遅くなる現象が出る場合もありました。最も目立った速度が低下があったのは，1999年の3～4月に@niftyのTELNET（hrt2.nifty.ne.jp）アクセスの速度をPB2400c+Jterm3＋Active Telnet Toolで測定した時です。
  
  この時の転送状況が表示されたスクリーンショット（61KB）を示します。このケースでは，30秒程の周期で転送が止まって遅くなっており，シリアルポート上の転送データを調べたところ@niftyから受信する方向で再送が多発していることが分かりました。
  
  再送の原因は，@nifty側の機器でパケットが欠落したか，上に書いたパケット往復時間が大きくなったことで@nifty側が本来必要でない再送を行ったことが考えられそうです。このケースでは，TCPウインドウサイズを12KB弱まで小さくすると再送なしでスムーズに転送され，うちの環境ではROAD7とほぼ同等の速度になりました。
FreePPPのその他改造
FreePPPのFreePPP Setupは，CPU利用率が非常に高い作りになってます。非力なQuadra800でDTE速度一杯（115200bps）の速度で転送中にFreePPP Setupを前面に持って来ると，Netscapeの動きが途切れ途切れになります。

最近の機種では気にならないと思いますが，遅い機種ではFreePPP Setupに下記パッチを当てると多少効果があるかも知れません。このパッチにはCPU負荷の削減以外の変更も含まれます。
- FreePPP 2.6.2 - FreePPP Setup 改造パッチ (BinHex : 38KB)
  最新（1998/11時点で私が知っている範囲）のFreePPP 2.6.2を対象としています。日本語化されたFreePPPでは確認していません。変更点は下記の通りです。解析はかなりいい加減です。
  - CPU利用率低減のため，FreePPP Setupのイベントループの待ち時間を0から1/6秒へ変更。
  - FreePPP Setupの転送速度の計測間隔を0.5秒から2秒へ変更。これは，計測間隔が短いと瞬間的な速度（状況によってはDTE速度そのもの）が見えてしまうので，やや長い時間で平均化した表示にするため。
  - FreePPP Setupの転送速度の単位を，オリジナルのbit/sec（Macとモデム間のstart-bit,stop-bitは含まない）からByte/secへ変更（つまり速度の数値が1/8になる）。併せて，最高速度のまるめ単位を100から10へ変更。
  - FreePPP Setupの詳細情報表示画面のMagicとACCMの表示が使用フォントなどによって一部欠けることがあるため表示エリアを拡大。
  - FreePPP Setupの転送速度表示のウインドウを小さくする。このスクリーンショット（61KB）の様になる（右下のことえりのパレットの上）。

MacPPP系PPPドライバの先祖
３年くらい前，NIFTYのFMACBGにMacPPP系PPPドライバのReadMeなどの情報を元にしたMacPPP系ドライバの系図を書いたことがあります。

当時，オリジナルMacPPPの先祖であるKA9Qというものが何なのか調べませんでしたが，先日別のことでWeb情報を検索していたとき，たまたま「KA9Q」という文字が目に入り，MacPPPのことを思い出したので検索したところ，このWebページを見つけました。

Phil Karn という人は，TCP/IPの解説書などでTCPの再送アルゴリズムの改善を行った人として良く出て来る人です。Karn氏は，アマチュア無線のパケット通信にTCP/IPのパケットを乗せるためのソフトをIBM PCのDOS上で作った様で，これが当時の彼のコールサインである「KA9Q」と名付けられたということらしいです。

＜@nifty FMACBG Mes17 #15728 に書いた話　'96/12/28＞

主なMacPPP系のPPPソフトのReadMeなどを読むとそれぞれの関係は大体下記
の様です（MacPPP Add-onsはアイコンデータのみ）。下記以外にNewPPPとか、
AppleのMacPPP2.1.4や2.5などもある様です。

また、日本語版には、単に文字の部分を日本語化したもの（MacPPP2.2.0Jは
そうかな？）と、MacPPP2.0.1JX.X（後のAccessPPP）やMacPPP2.0.1k2の様
にMacPPP2.0.1のソースコードをベースにソースコードレベルで日本語化や
独自の機能追加を行っているものとがあります。

ほとんどのものはMacPPP2.0.1のソースコードを元にしている様ですが、
原作者を尊重したのか、名前を変えなかったりバージョン番号を引き継いだ
りしたのでややこしくなってしまった様ですね。（初めての方が茄子と茄子
Ｒとで新旧を勘違いすることもありますね）そう言うこともあってFreePPP
やAccessPPPは名称を変えた様です。


   KA9Q（MacPPP2.0.1のmacppp.txtに書いてある。何用かな？）
    ↓
MacPPP1.0b
    ：
MacPPP2.0.1
    ｜
    ＋－－－－＋－－－－－－＋－－－－－－－＋－－－－－－＋
    ｜        ↓            ↓              ↓            ↓
    ｜   MacPPP2.0.1cm  MacPPP2.0.1k2  MacPPP Add-ons  MacPPP2.0.1J2
    ｜        ｜            ｜              ｜            ：
    ｜        ＋－－＋－－－＋－－－－－－－＋            ：
    ↓              ↓                                 MacPPP2.0.1J6.5
MacPPP2.1SD →  MacPPP2.2.0 → MacPPP2.2.0J               ：
    ：              ：                                 AccessPPP
MacPPP2.1.2SD    開発停止？
    ↓
FreePPP1.0.1
    ：
FreePPP2.6a4

[ Back | Home | ASAHIネット会員Home Page一覧 | ASAHIネットHome Page ]