安定化電源
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- 2001.3.20
- 安定化電源の改修 (4)
負荷を掛けた時の電圧低下が大きく,30Vの電圧計でもこれがはっきり見えてしまうのが以前から気になっていました。(無負荷で電圧を設定した後に3〜4Aの負荷を掛けると100〜200mV下がる)
特に,PB2400c用に作った外部バッテリ(リチウムイオンセルの6P4S構成で10800mAh)を充電する場合,電圧が上限(16.8V前後)に達するだいぶ前から,電圧低下により充電電流が大幅に減ってしまいます。(電源からセルまでのケーブルやコネクタの抵抗も原因の半分くらいを占めていると思われますが)
デジタルマルチメータで負荷を掛けた時の各部分の電圧の損失をみると,下記の部分などで電圧が下がっていました。
- 使用しているPS-0141というキットの安定化電源回路そのものの特性。基板のパターンの抵抗(結構電流が流れる所が細かったりする)や,LM723で0Vまで下げられる構成(素人なので,回路図を見てもこの部分の仕組みは理解できませんが)にしている点なども関係しているのかも知れません。
- 使用している線材と長さによる抵抗。安いスピーカー・ケーブルの様な線材を使用していますが,3.5Aでは10cm当たり10mV程度の損失がある様です。
- +側出力端子側に付けているスイッチの接触抵抗。125V AC 6Aの小さいスイッチ(新品)を使用していますが,スイッチをONする度に損失が多少変化し,最良では3.5Aで1.5〜2mV程度の損失がある様です。
- 出力端子(ジョンソン端子)と線材の接続部分の損失。
- 大きな負荷で使用すると,パワートランジスタ,トランス,電流検出用セメント抵抗の熱でケース内の温度がかなり上昇するためか,経時的な電圧変動が大きい。
取り敢えず手持ちの部品を使って下記の改善を行いました。
- LM723を使い,LM723のスペックシートに書いてある基本的な回路構成を組んで試したところ,LM723の負荷に対する安定度はかなり高く,17V 3A負荷で3〜4mV程度の電圧低下でした。
このため,安定化回路は下記の回路構成に変更しました。回路の+側(回路図の太線の部分)と−側(回路図の細い線の部分)の部分は,0.2mm厚×6mm幅の銅板を使っています。
- 線材の抵抗の影響が少なくなる様,出力電圧検出部と基板の−側は,上記の回路図の様に極力出力端子に近い所へ接続し,大きな電流が流れる部分(上記の回路図の太い線の所)の線材の損失が出力電圧に影響しない様にしました。また,+側スイッチから出力端子までの線材(6cmくらい)は2重にした結果3.5Aで2.5〜3mVの損失です。
- 出力側スイッチの損失は,もう少し大電流用のものに変えたり,2系統以上のスイッチを並列にすると良いのかも知れませんが,今回はそのままです。
- ジョンソン端子と線材の接続は,線材を0.2mm厚の銅板に半田付けしたものをネジ止めしていましたが,−側の損失が少し大きかったので作り直しました。作り直した後は,+側,−側とも接続部分の損失は3.5Aで1.2mVくらいです。
- 放熱のため,ケースの底にφ60mm 12V 0.14Aのファンを付け,このファンの上に基板を垂直に立てました。回路とトランスの放熱に加え,ヒートシンク側に穴が空いているのでヒートシンクの放熱効果もあります。この結果,経時的な電圧変動は20V 3.5A負荷では30分で4〜5mV程上昇したところで安定している様です。ファンの電源は,別のLM338を使ったキットの部品を小さな基板に配置したものを組み込み,AC側スイッチONで通電する様にしています。
- 主電源の平滑回路のコンデンサは,6800uF + 2700uF + 2200uF = 11700uFだったのを,スペースの関係で 6800uF + 4700uF = 11500uFに変更しました。
- トランスの出力選択のロータリスイッチは少し前に接触不良(弱電用のスイッチで無理があった様)になっていたので,別に購入してあったもう少し丈夫そうなものに変更しました。今度のものは2系統×6段切り換えですが,ノンショートタイプでないので1段飛びで12V, 18V, 24Vの3段切り換えにしました。
- 電流制限の可変抵抗周りは上記の回路図の様にすることで,出力電流をほぼゼロまで設定可能とし,かつ電流検出用のセメント抵抗も抵抗値の小さいもの1個で済ませました。
改善後は,無負荷で20Vに設定した状態で3.5Aの負荷を掛けた場合の電圧低下が13mVくらいまで削減できました(出力側スイッチの損失が最も少ない場合)。電圧計も極力出力端子に近い所に接続しましたが,電圧計では負荷の有無による電圧の変化が分からないレベルです。
LM723の周辺回路を変えたことで,電圧設定範囲は以前の0(実際は60mVくらい)〜21.5Vから,2.6〜25Vになりました。6Ω弱の負荷では23V 4A辺りまでリップルなし(デジタルマルチメータの測定限界の10uV未満)ですが,それより電圧を上げると全波整流の100Hzのリップルが出ます。
- 2001.1.21
- 安定化電源の改修 (3)
その後電流制限の可変抵抗を前面パネルに付けて,何時でも変えられる様にしました。調整可能な範囲は2A〜5A強辺りの様です。
この状態でステップアップ・コンバータ のページに紹介したリチウムイオン・バッテリ(24セルの6P4S接続)を16.8V,電流制限4.5A位で充電してみましたが,パワートランジスタの温度には余裕があります。
- 2001.1.21
- 安定化電源の改修 (2)
その後下記の変更を行いました。
- ヒートシンクを従来の135×70×24mm(表面積530cm^2)から 148×100×54mm(表面積1300cm^2 弱,秋葉の若松でTO-3×2個取り付け用の穴明け済のを購入)へ変更。ヒートシンクの高さがケースの高さより少し大きいので,ケースのゴム足を壊れたビデオの足に付け替え。(ケース,ヒートシンク,足の大きさのバランスがちょっと変)。
パワートランジスタ2個の合計損失電力が40W位までファンなしで何とか使えそうな感じがします。
- 電圧調整の可変抵抗(10kΩ)を,10回転タイプに変更(秋葉ラジオセンター2Fの山長通商で購入)。この結果,従来は目標電圧に対して+−数十mVの精度でしか設定出来なかったのが,+−2〜4mV位の精度で設定出来る様になりました。
回転トルクはかなり小さく,ほんの少しまわすのが楽です。ほんの少し回したときの電圧の変化をデジタルマルチメータで見ると,抵抗が段階的に変化している様です。
- LM723の電流検出のためのセメント抵抗を0.15Ωと0.2Ωの並列から,0.33Ωを2並列×2直列にし,合成抵抗を大きくして電流制限の調節範囲が1.5A〜4.5A辺りとなる様にするとともに,合計4個にすることでセメント抵抗(変更前後とも5Wのものを使用)1個辺りの発熱量を低減。(変更後は4.5A出力時にセメント抵抗1個当たり1.67Wになりますが,これでも相当熱くなります)
下記などもそのうちやろうかと思っています。
- 電流制限の調整を正面パネルで操作可能とする。
- 電流計にレンジ切り換えスイッチを装着し,フルスケールを5A,2.5A,1A,0.5Aなどに切り換え可能とする。
- 2000.12.23
- 安定化電源の改修
電子工作の手始めに,昔知人に頂いた安定化電源の改修を行いました。
改修前のオリジナルは,1〜20V(3A)可変電源と,5V(1A)固定電源が併設されたもので,下記の様な作りでした(下記は1〜20V(3A)可変電源部のみ)。
- トランスは 22V(AC) 5A。
- 安定化は UA723(LM723と同じ?)でパワートランジスタをコントロールし,可変抵抗で1〜20V辺りが使用可能。
- パワートランジスタは 2SD114(2N5886) でこれによると,80V 25A,許容損失 200W@Tc25℃ 辺りの様でした。
- パワートランジスタの放熱は表面積 530cm^2(裏面含む)位のヒートシンク。
- トランス出力が1つだけなので,出力電圧が小さい状態で大きな電流を流すとトランジスタの損失電力が大きくなってかなり発熱する。
- メータは,電圧計がフルスケール30V,電流計はフルスケール1mAのものに抵抗を直列に入れ,これをUA723の電流検出端子に接続されたセメント抵抗(0.22Ω)の両端へ接続する形。
改修では下記の変更を行いました。
- トランスはタップが 0, 6, 12, 18, 20, 22, 24V 5A のものに新調(秋葉のラジオセンターの東栄変成器で購入)。
- トランス出力は2系統12接点のロータリスイッチ(ノン・ショート タイプ)を使い 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 20, 22 V の 2V ステップ9段切り換えで取り出せる様に変更。
- トランスが大きくなって 5V電源が入らないので 5V電源(トランスなども1〜20V電源と独立)を取り外し。
- 安定化回路は秋葉の千石で買った PS-0141(LM723でパワートランジスタをコントロールする方式で 0〜20V 3A ということになっている)をベースとして以下を変更。
- 整流ダイオードブリッジを 15A 200V に換装し(PS-0141付属品は 8A 200V の様ですが,4Aではかなり熱くなったので),ダイオードブリッジをケース後面(内側)に装着してその外側に小さいヒートシンクを装着。
- 平滑コンデンサー追加。(PS-0141 は 2200uF + 2700uF で,これに6800uF を追加し合計 11700uF)
- パワートランジスタ(2N3055=2SD878)を追加して2個に変更。2N3055の仕様は 60〜70V 15A,115W@Tc25℃辺りの様なので,極端に温度が高くなければ2個で 5A 位なら余裕がありそうです。(2個のトランジスタの特性の差が大きい場合は要注意かも知れませんが)
- LM723の電流検出端子に繋がっているセメント抵抗(0.15Ω)に 0.20Ω を並列接続。電流計は改修前と同様ここに接続し,フルスケール 5A になる様調整(デジタルマルチメータを買ったので実際の電流値を見ながら校正できる様になりました)。
改修後はトランス出力を 2V ステップで切り替えられる様になったので,低い電圧で大電流を流したときのトランジスタの損失電力をかなり減らせます。ヒートシンクがやや小さいので 4A 位流すとかなり温度が上がりますが,4A なら長時間使用できそうです。φ60mm の 12V 0.14A ファンでヒートシンクに風を当てると,2つのトランジスタの損失が 35W 位の状況でもトランジスタのケース温度は40℃ちょっと位まで下がります。
出力電圧は,4A 一定負荷のときにデジタルマルチメータで測定すると 1mV の桁が少しふらついていました。
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