アンプ回路の実験
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- 2007.11.04 発振器による歪率測定
その後、正弦波発振器(1kHz)を製作し、「発振器→アンプ→パソコンのサウンドインタフェース」の接続でアンプのTHD,THD+Nを測定してみました。この場合、サウンドインタフェース(Sound Blaster Digital Music SX)は1方向のみ使用なので、48kHz/24bitの設定が可能です
結果は下記の通りです。THDは、発振器の歪率がパソコンのサウンドインタフェースの出力信号より大きいため、前回より悪い値です。THD+Nは、発振器の方がノイズが少ないため前回よりよい結果です。結果的には、アンプを通した場合と通さない場合の差は前回同様に電源の50Hzの高調波が目立つ点だけで、この程度の測定手段では、このようなオープンループゲインが大きい(120dB位)アンプの歪率測定はできないということのようです。
なお、アンプの歪率測定時の方がパソコンのサウンドインタフェースへの入力レベルが高く、そのためかアンプの歪率測定時の方がTHD,THD+Nとも若干よい値となっています。測定時のアンプの出力は、前回も今回も17〜18ACVくらいです。
アンプの歪率測定結果(発振器→アンプ→パソコン)
発振器の歪率測定結果(発振器→パソコン)
測定対象のアンプ回路の基板は下記のようなものです(同じ回路構成で2つ作った内の1つで、最終段のパワートランジスタの部分は含みません)。大きいコンデンサは、スピーカを繋げて動作確認などをする際に誤ってDC入力してもスピーカ破壊することがないよう付けているもです。
前回の回路図には書いていませんが、カレントミラーの部分には、オフセット調整回路(「はじめてのトランジスタ回路設計」の10石大出力電流増幅器と同じ回路)と並列に、オフセット調整回路の固定抵抗にダイオードを直列に繋いだ回路(パッシブ・ドリフトキャンセラーとでも言うようなもの)を付加しています。効果を測定しながら調整するのは難しいですが、ある程度効果はあるような気がします。この回路を付けるため、カレントミラーの固定抵抗を大き目(820Ω)にしています。
- 2007.10.21 初段FET差動アンプ
トラッキング電源を製作後、下記の書籍などを参考にして初歩のアンプ回路の実験をしています。特定の用途を決めて作っている訳ではないため、設計は適当です。
・はじめてのトランジスタ回路設計(黒田徹著、CQ出版社)
・解析OPアンプ&トランジスタ活用(黒田徹著、CQ出版社)
・定本 トランジスタ回路の設計(鈴木雅臣著、CQ出版社)
・定本 続トランジスタ回路の設計(鈴木雅臣著、CQ出版社)
最初は、「はじめてのトランジスタ回路設計」に掲載されている5石アンプなどから試し、その後更に石の数が多いものをいくつか作ってみました。
最後に作ったものは、下記のような回路です。
- 初段はN-ch FETの差動で、カスコード,ブートストラップ,カレントミラー構成です。
- 初段FET(2SK373 Yランク)はアンプに使うようなものではないようですが、安価であること、2SK30や2SK246に比べてgmが大きく、Ciss, Crssはそれほど大きくないということで使いました。
- 初段のFETは、50個ほど購入したものを選別してペアにしています。最初はIdssが近いものでペアを組んでみましたが、電源ONしてから回路が暖まって安定するまでのアンプ出力のドリフトが大きい(数十mV)結果でした。このため、次にIQポイントが近いもので選別しIdがIQポイント(使った石では0.8mA位)になるようにしてみたところ、電源ONから安定するまでの出力電圧のドリフトが4mV位になりました。
- 位相補償容量は22pとしていますが、15p辺りまでは発振しないようです。22pの場合、スルーレートは75V/us,カットオフ周波数はシミュレータによると700〜800kHz辺りのようです。
- 初段のブートストラップは、回路図では簡略化していますが、ツェナーダイオードです。
- 初段の定電流のQ13のベース電圧は、2SK373で作った定電流で駆動したLEDで発生させています。
- 初段のカレントミラーには、回路図では省略していますがオフセット調整の回路を付加してあります。
- 終段のベース抵抗が大きいのは、無負荷のときに少し発振傾向になったので(回路配置が不味いとか、バラック状態で実験しているので最終段のトランジスタの配線が長いことなどが原因でしょうか)、それを抑えるためです。
- ゲインは21倍に設定しています。帰還抵抗のR17は、位相遅れが少なくなるように6.8kを5本パラにして低目の値にしています。
上記の回路をLinear TechnologyのLTspiceでシミュレートした結果は下記の通りです。使用しているデバイスモデルは、石のデータシートを見ながら適当に作ったものなので、シミュレーションでは大まかな傾向が分かる程度です。取り敢えず位相余裕は十分(80°位)ありそうです。
このアンプ回路の歪率をパソコンのサウンドインタフェース(Sound Blaster Digital Music SX)を使用して、WaveGenとWaveSpectraというソフトウェアによって測定したところ、このサウンドインタフェースの測定限界(THD 0.001%, THD+N 0.007%辺り)以下でした。オープンループゲインが大きいアンプなので、もっと測定精度の高い測定方法でないと歪率は測定出来そうにありません。
1kHzの場合のスペクトルは下記の通りでした。(サウンドインタフェースは、出力、入力とも48kHz/16bitの設定です)
その下に、サウンドインタフェースの出力と入力を直結した場合のスペクトルも示します。アンプの測定結果では、電源の50Hzの奇数次の高調波と思われるものが目立つ以外は、直結と大差ありません。
アンプの測定結果
サウンドインタフェース自体の測定結果
このアンプ回路に20kHzの方形波を与えたときの波形をUSBオシロで観測した結果を下記に示します。CH1がアンプ出力で、5V/div, 5us/div です。位相補償容量が十分大きいため、目立ったリンギングなどはないようです。
入力(CH2, 500mV/div)は、インバータICを使った簡単な回路で作ったもので、さほど綺麗な波形ではありません。また、波形の立ち上がりが甘いので、アンプのスルーレートを測るには不十分です。
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