SHOH's LIVE REPORTS

Winter Metal Meeting (January 28,2000, Z7, Pratteln)



場はバーゼルに近いプラッテルンという街にあるZ7という所で、ここは5年ほど前に出来たばかりらしいのですがまわりになんの気兼ねもいらないという立地条件を生かしてHR/HM系のライヴを多く行っています。車だとどこからでも簡単に来られるのでドイツ、フランス、イタリアなどから見にくる人も多いようでした。

元は工場だったというだけあって殺風景な内装ですが、音は非常によかったです。この手のスタンディングの会場で、6バンドも出て、どのバンドも全部よく聞こえたというのはたいしたものだと思ってしまいました。会場で話した地元の(といってもずっと離れた町から来ていた)ファンも「ここは音がいいので好きなんだ」と言っていました。

開場が5時で開演6時、終演が2時というハードな内容でしたが、出演バンド順に書いていきます。

MANIC MOVEMENT
ベルギーのバンドだそうです。この夜出たバンドの中ではいちばんテンポがゆっくりで、いかにもゴシック・メタルという雰囲気。ヴォーカルはピーヴィー(RAGE)を若くほっそりさせたようなタイプで、その細い体のどこからと思うほど深くてとても気持ちのいいデス声をしていました。ギターは2人で、メインのほうはかなり叙情的で聴かせるタイプ。他にドラム、ベース、キーボードの6人編成。なかなかよかったのですが、似た感じの曲が多いのでちょとダレる部分もありました。前座でちょうどいい感じ。ジャック・ブレルの "Amsterdam" をカヴァーしていたのには驚きました。ジャック・ブレルはベルギー人で、シャンソンの世界では超有名ですが(故人です)、メタルとはまったく関係ありませんので。でも、これはなかなかよかったです。

WITCHERY
ARCH ENEMYの前座で日本に来たときに見て、とてもいい印象だったので楽しみにしていました。ヴォーカルは例によって白塗りで登場。何も知らずにいたスイスのファンはかなり引いていました(^_^)。初めのうちはヴォーカルの声が前のバンドに比べると線が細いせいか、いまひとつ盛り上がらなかったのですが、2、3曲めくらいからだんだんと彼らの個性が出てきて、聴衆も引き込まれていく様子が見えました。日本のときのようにハンマーで杭を打ち込むようなパフォーマンスはなく、かなり淡々としたステージ演出でしたが、かえってそれでよかったと思います。あそこでやってしまったら笑いのほうが多くなってまともには聴いてもらえなかったことでしょう。アンコールは日本でと同じ ACCEPT の曲で、これはおおいに盛り上がりました。

KREATOR
彼らになってようやくバックドロップが用意されました。照明も凝ってきました。ヴォーカルは袖なしのちょっと光る素材のシャツを体にぴったり着て、やたらと客を煽っていましたが、ちょっとダサい雰囲気でした(^^;)。曲はどれもみんな聴いたことがあるような曲ばかりで、初めて聴いてもすぐにのれてしまい、楽しめました。この日出たバンドの中ではいちばんHMっぽい、ちょっと古い感じの音だなという印象でした。

MOONSPELL
ポルトガルのバンドだそうですね。まったくの初見・初聴だったのですが、この日の中でいちばんよかったです。ヘヴィーにした MARILYN MANSON みたい、というのが第一印象。なんともいえないリズム感がセンスよくて、ついつい体が動いてしまいます。ヴォーカルはいかつい感じで、それほど華があるフロントマンではないのですが、歌に迫力があるのでついつい引き込まれてしまいます。演奏もタイトで気持ちよく、もっと長く聴いていたいと思いました。

ANNIHILATOR
始まるまでが長かった! 1時間以上かかったんじゃないでしょうか。それまでのセットチェンジがほぼ15〜30分でスイスイと進んでいただけに、ここではみんなかなりイライラしていたみたいです。一緒に話していた人も「僕はこんなふうに機材のセッティングに時間を無駄にかけるバンドは大嫌いなんだ」などと言っていました。

で、ようやく始まってメンバーが登場。びっくり! これ、ほんとに ANNIHILATOR? 私は日本で1度しか見たことがないので、よく覚えてはいないんですが、こんなふうではなかったような気が・・・。思わずバックドロップを見直してしまいましたが、やっぱり ANNIHILATOR のものです。

ヴォーカルは最初中年女性かと思ったのですが(一緒に見てた女性もそう言ってた)、ヴィンス・ニールみたいな金髪で客の煽りがすごい。「お〜い! 10年ぶりに戻ってきたぜ〜! ガンガン行くぜ〜! 盛り上がろうぜ! いいか?!」って感じ。短髪のベーシストとギタリストは対照的に非常に地味で、下を向いたまま黙々と演奏している。が、ギターソロの部分になると、ギタリストはいきなり前に出てきて、なにもかも無視して弾きまくる。あ、やっぱりジェフ・ウォータースだ(^_^)。

というわけでようやく安心して曲に集中することができました。新譜の曲(だと思うけれど私は買っていないのでよくわかりません)と古い曲を適当に織り交ぜて、客も一緒に歌うところは歌い、拳を振り上げ、といった感じで実になごめるライヴでした。オーディエンスは前のほうでは多少ダイヴしたりしていたみたいですが、それほど激しい動きではなく、わりあい大人しい雰囲気でした。

OVERKILL
この段階になると疲れと眠気で朦朧としてきて、まともには立っていられない状態。始まるまではうしろのほうのちょっと高い段になったところに座っていたのですが、段の下にヒーターがあるので、そのまま見ていたら寝てしまいそうだったので、右側の前のほうに行ってみました。そのあたりだと2、3列目くらいでも押されたりすることなく見ていられる状態でした。おかげでメンバーがよく見えたのですが、ヴォーカルの人、びっくりするほど変わってないですね! 髪型も顔も体型も昔と同じ。

彼の声も健在で、あのつんざくようなヴォーカルを間近で聴いて最初は鼓膜が破れるかもと思ったのですが、だんだん平気になっていくから不思議。それにやっぱり巧いです。ギターもベースも攻撃的な音で、頭の後ろからガツガツ殴られてるみたいなんだけど、それがキモチいい。

知っている曲も知らない曲もあったので、やはり途中で立ったまま寝かけたりもしましたが、全体としてはとても楽しめました。盛り上がりもすごかったです。なにしろ長時間のショウだったので、若い子は途中で帰ったりもして、いちばん人数が多かったのが MOONSPELL のときで、あとは少しずつ減っていってしまいましたが、最後までがんばって残っていた人たちだけに反応が大きくて、とてもまとまりがよかったです。アンコールがあったのは彼らだけでした。

この日のチケット代は日本円にして約3000円。つくづく日本は高い、と思いました。


2000 I INDEX I Vの目次へ I TOP PAGE