SHOH's LIVE REPORTS

Mary Black (Oct 6,1995 at Lafore Musium Harajuku, Tokyo)


だんと違うラフォーレ原宿なんていうお洒落な会場、しかも整理番号も座席指定もなしという、いつもと勝手の違うコンサートで、一体どんなふうになるのか想像もつかないまま、ビューリーズ・カフェでギネスをひっかけた勢いで、9時からの最終回に臨みました。

それにしても、1日2回公演、しかも6時半からと9時からというのは、かなりのハードスケジュールです。バンド単位ならともかく、ソロヴォーカリストとしてはものすごく大変なんじゃないかしら、と心配してしまいました。

で、開場時間の8時半に行ってみると、すでにそこには長蛇の列が。6階の会場から列をたどって階段を降りて行ったら、なんと2階まで戻ってしまったという……。それでも、並んでいるのは大人(多数の外国人を含む)がほとんど。それほど凄い騒ぎにはならないだろうと、ひとまず安心しました。

入ってみると、珍しいことに前列4列くらいは床の上にクッションが並べてあって、ぺったり座る方式。先に入った人たちは後ろのほうの椅子席に座っているので、けっこう前のほうは空いています。おかげで最前列をとることができました。

なにしろ遅い時間なので、ほとんど遅れることなくメンバー登場。メアリーはポスターなどでお馴染みの白いロングスカートの上に紫色のガウンを重ねたようなワンピースで登場。意外に小柄でふっくらしているのにびっくり。バックの顔ぶれは、ギター、ベース、キーボード、ドラムス(パーカッション)、サックス、バイオリンといった、いかにもアイリッシュミュージック向きの構成。特にバイオリン(メアリーはフィドルと言ってましたね)は、音色が聞こえてくるだけで、「ああ、アイリッシュだぁ!」と感激してしまう音でした。サックスの入り方 も絶妙。

でも、もちろん主役はメアリーの声でした。なんと形容したらいいんでしょ。震えるような、それでいて力強いバイブレーションの効いた声は、心の奥のほうまで滲み込んできます。スローな曲もアップテンポの曲も、それぞれに歌いこなして、聴衆の心をとりこんでいく様は見事としか言いようがありません。

曲のバラエティも豊富で、実は私、彼女のアルバム1枚も持っていなかったのだけれど、緩急織り混ぜた構成で、まったく退屈させることなく引っ張って言ってくれました。BILLY HOLIDAYのカヴァーなど、もう絶品。最後のほうで、ちょっとレゲエっぽいリズムの曲で、「NO WOMAN NO CRY」 をちょこっとだけ入れたあたりも、お茶目っぽくて最高でした。

あと、感心したのがドラムスの使い方。ほとんどの曲でスティックを使わず、メアリーの声を殺さないよう、すべて手で叩いてパーカッションとしての機能を主眼においたドラミングは素晴らしかったです。偉大な歌手には、それを全身全霊かけてバックアップしようとするスタッフがつくものなんですね。

お客さんにアイリッシュの人たちが多かったせいで、コーラスが必要な部分も美しく決まり、なんとも心地のよいアイリッシュの夕べとなりました。


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