SHOH's LIVE REPORTS

Marilyn Manson (January 8th,1999 at Bay NK Hall,Tokyo)


の前見たのがクアトロだったなんて、今ではもう信じられないことだなあ。

あのときだって全世界的にはかなりビッグになっていたんだけれど、日本での知名度はまだちょっとという感じだったから、試しにクアトロでやってみたのよね。で、よそでやってるセットはとてもじゃないけど小さなクラブには入らないので、ステージセットはあまり凝らず、素のままの彼らを見られたわけなんだけど、そこがちょっと残念だった、あのときは。やっぱりシアトリカルなバンドなんだから、ちゃんとしたセットとライティングで見たかったなあと思った。

というわけで、今回はそういう希望にぴったりのホール公演。しかしNKホールとはねえ。ちょっと遠すぎるよねえ。寒い中会場行きのバスを並んで待っているうちに体が冷え切ってしまった。

客層は前回に比べると人数が増えてせいか、それともバンドが大衆化したためか、ごく普通の人が多かった。もちろんビジュアル系の長いドレス着た人もいるんだけど、この前みたいに会場じゅうが仮装パーティみたい、というふうではまったくなかったし。

そのせいか、会場入り口に貼ってあった「缶、びん、ペットボトル、花火、ブレスレット、チェーンの持ち込み禁止」の貼り紙もなんだか間が抜けて見えた。ましてや、屈強な外人セキュリティがひとりずつボディチェックするなんて、まったくの時間の無駄、という感じ。

怖がって2階席をとったら、なんといちばん後ろ。ステージの正面だったけど、だからよけいに遠くて、確かにステージ全体はよく見えたけど、衣装や髪型、ましてや顔の表情なんかは全然見えない。マリリンが赤っぽい髪をしてるらしいなあ、とか、どうも脚を例によってお見せになっているらしい、とうのはわかるのだけれど。なんというか隔靴掻痒。もっとも彼の場合、あまり間近で見たいとも思わないのだけれどね(^^;)。スクリーンか何かがあったらよかったのになあ。

音はまあまあよかったと思う。ああいう場所だから、どうしても拡散した感じにボアーンとしちゃうのは仕方がないので、それをさっぴけばそれなりの水準はいってたと思う。やっぱり前作の畳み掛けるようなドラムが入る曲になると、自然に体が動いてしまう。 MCは今回もほとんどなし。ただし神とマリリンの対話(?)みたいな長い語りがあって、ここのところは英語の出来ないオーディエンスにはちょっとつらいものがあった。なにしろ変なとこで「いえ〜!」とか言っちゃうから、マリリンもかなり調子が狂ったんじゃないかなあ。もしあれを日本語に変えたり、あるいは字幕にしたりしたとしても、キリスト教に対する知識がほとんどない日本では、あまり共感(というか興奮)は得られないだろうなあ。

とはいうものの、軍服のような服を着てヒットラーのような演壇に立ち、「I hate LOVE」「I love HATE」と叫ぶマリリンにこたえて、一緒に拳を振り上げ唱和するごくごく普通の子供たち・・・という光景は、私にとってはかなり怖いものがあった。だて、それまではかなり静かにじっと立ったまま見ていたのが、いきなりそうなるんだもの。

結局、マリリンのお召し替えは3回だったかな? 最初は黒のレザージャケットで下は網タイツで出来たつなぎみたいなもので、次が真っ赤なラメ入りの水着みたいな服、最後が軍服みたいなもの。アンコールではブルーグレイのなんの変哲もないTシャツをさっきの軍服のズボンの上に着てきて、「ど、ど、どーしたんだ?」と思ったけど、すぐに上半身裸になってしまい、ひと安心。この人ってふつうの服装がおよそ似合わない体形なのよね(^^;)。

"SWEET DREAMS"の大合唱が今回は聴けなかったのはちょっとがっかり。会場が広くなったせいか、やはりそこまで入れ込んでいない客が増えたんだろうな。まあ私も予習するの忘れてて、歌詞が出てこなかったんだけどね。

この前はアンコールで見せてくれた人工雪が降りしきる蜷川演出は今回もあり。確かにこれは、大きな会場で見たほうが効果的だ。それと書き忘れていたけれど、ライティングがとにかくきれい。わりと暗めで、おかげでメンバーの姿はよく見えないんだけど、でも、その暗さをより強調するようなライティングはいかにも彼ら向きで、いい雰囲気を出していた。

結局、今回の来日公演は新譜に伴うツアーではあるのだけれど、日本できちんと行われていなかった前回のツアーの再演でもあったのだなあ、と見終わってから強く感じた。そういう点で少し中途半端な印象があったことは否めない。


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