みるししとう Looking


〜観た映画〜


「ショーガール」
「インデペンデンス・デイ」
「スワロウテイル」


*「ショーガール」1995年 監督/ポール・バーホーベン
 
実は観るつもりはなかったんです。テレビ(WOWOW)つけっぱなしにしてて、「さあて、もう寝ようかなあ」なんて思ってたら、「ショーガール」が始まったんですよ。で、あまりのつっこみどころの多さに、目が離せなくなってしまって、「わはは。こりゃあ、珍品だあ」と、最後まで観てしまいました。
 この映画は、主人公の女優を筆頭に、出てくる俳優・女優、みんな顔が下品で根性悪そうで、よくここまで根性悪そうな顔集めたなあ、と思ったら、役柄もみんな下品で根性悪い。女はみんな自己顕示欲の固まりで、他人をけ落とすことと利用価値のある金持ち男をゲットすることしか考えてないし、男はみんな、セックスと女を道具にした金儲けしか考えてないしで、共感できる人物がまず見あたりません。少しはいいかな、と思ったのはヒロインの友人でちょっとけなげな衣装係の女の子と、姉御肌のスター・ストリッパーのクリスタルくらい。あとは、もう「おいおい、あんたねえ」みたいな困ったちゃんばかりでした。
 お話のほうはというと、ラスベガスにやってきたケバい不良娘が、立派なストリッパーになるために大奮闘し、大きなショーの看板スターになるけど、ある事件があって、その地位を捨てて、ベガスを出ていってしまうというもの。なんか、昔のバレエ・演劇根性マンガみたいですが、実際、その通りです。ライバル撲滅のために、ステージに細工するなんてことホントにやっちゃいます。ヒロインからして、ライバルを階段からつき落としてしまう。私はアメリカの芸能界の実状や評価を知らないので、つい、こんなこと思うのですが、ラスベガスのショーでスターになるって、そんなにすごいことなのでしょうか? ベガスのショーというと、どうも、熱海かどこかの観光地の温泉芸者くらいに思ってしまうのですが。
 とまあ、「んな、馬鹿な!」というお話と、女の裸とケバくて悪趣味な映像がこれでもかと続くので、大笑いするしかなくなります。
 もっとも、監督・ポール・バーホーベン、脚本・ジョー・エスタハス、製作マリオ・カサールとあの「氷の微笑」のゴールデン・トリオですから、推してしるべしだったのですが。これと「カットスロート・アイランド」(監督/レニ・ハーリン、出演/ジーナ・デイビス、マシュー・モディーン)を最後に、マリオ・カサールの製作会社カロルコは倒産しました。この作品は下品超大作のふきだまり、カロルコの集大成&残りカスだったということでしょうか。
 お友達とピザでも食べながら、つっこみ入れつつ大笑いして観るには、ぴったりの映画です。

 <余談>
 
この映画は1995年のゴールデン・ラズベリー賞を受賞しました。ゴールデン・ラズベリー賞はファン投票で選ばれたサイテー映画に与えられる賞で、授賞式はアカデミー賞と同じ日に行われます。過去の受賞作には「天国の門」「ボディ・ガード」「ロッキー」シリーズ、「ラスト・アクション・ヒーロー」などがあります。
 ゴールデン・ラズベリー賞の取材をしてみたいです。誰か、私に取材費&通訳付きで取材依頼してくれませんか?

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*「インデペンデンス・デイ」1996年 監督/ローランド・エメリッヒ
 これも珍品です。お前はそんな映画ばっか、観てるのかと言われそうですが、偶然、そんな映画が重なっただけで、故意ではありません。以前、もらったチラシに製作費8000万ドルとあったのですが、あまり有名な俳優・女優は出ていないし、どうも、製作費のほとんどは、SFXに使われたようです。そのせいでしょうか、宇宙人の攻撃よりも、製作している人たちの知能指数のほうが心配になる「ちょー大作」(「超」じゃなくて「ちょー」ね)でした。アメリカでは大ヒットで、ビデオも売れてるそうです。
 お話はラージサイズのピザみたいなUFOが地球に襲来、世界の保安官を自認するアメリカが音頭をとって撃退するという、強いアメリカ万歳という、まるで戦時下の国策映画でした。
 話の前半はそこそこなのですが、後半に行くに従って、どんどんお間抜けになっていきます。大統領は側近に騙されているようなおマヌーさんだし、地球の危機を察知し救うのはMIT卒とはいえ、ただの一地方のケーブルTVの職員。昔、UFOにさらわれたと言って、既知外(COPYRIGHT:筒井康隆先生)扱いされてたおっさんはほとんどアル中で、農薬散布用飛行機の操縦すら間違えるのに、戦闘機に乗ったとたん、いくら昔とった杵柄とはいえ、ばりばりの名パイロットになり、最後に特攻までしてしまいます。宇宙人は素手で殴り倒されたりするし、すごく頭悪そうです。
 UFOによる攻撃シーンは確かに迫力です。でも、普通、映画やドラマで世界中が同時攻撃されているという設定の時は、アメリカの攻撃シーンはワシントン、ニューヨークくらいで、あとはパリやロンドン、香港など、他国の都市が攻撃されるシーンがありますよね。ところが、この映画、攻撃されてるのはアメリカの都市ばかりです。映画の2/3くらいまで、アメリカとアメリカ人しか出てこないし、「世界が危機!」という緊迫感がありません。で、最後のほうで、世界各国が手を取り合って宇宙人に反撃するけど、その各国の様子(日本のシーンもある)が、いかにもセットと近場のロケでとってつけました、というようなものばかり。そんな場面の続く中で、お間抜けなタカ派大統領に「アメリカの独立記念日は、世界の独立記念日になる!」なんて、言われた日にゃあ、呆れてものも言えなくなります。
 話の要所要所で間抜けなところが目立つのですが、SFXは迫力あって、物はいっぱい壊れるし、何も考えずにすっこ〜んとすっきりしたい時は、いいかもしれません。

 <余談>
 ローランド・エメリッヒは「ユニバーサル・ソルジャー」「スターゲイト」としょーもない作品ばかり撮ってきた人です。ところが、「インディペンデンス・デイ」のヒットでアメリカ版「ゴジラ」の監督をまかされたとか。天国の本多猪四郎さんはどう思っていらっしゃるでしょう。

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*「スワロウテイル」1996年 監督/岩井俊二
 2時間40分の自主映画の超大作。ミュージシャンたちがアジアごっこ、映画ごっこしてるプロモーションビデオが延々と続きます。
 「ラブレター」もそうでしたが、岩井監督はたしかに、そつなくキャッチーでショッキングな絵を撮っていますし、映画を愛してもいると思います。しかし、別に何らオリジナリティーがあるようには思えません。画面もストーリーも、どこかここかのいただき(画面に関して言うと、テリー・ギリアム、大林宣彦、ウォン・カーウァイ)です。他作品の場面をあちこちにちりばめる映画は多いのですが、それが猿まねになるか、オマージュとなるかは、それを自分のオリジナリティーにまで消化できるかどうかだと思います。岩井監督の場合は、オリジナリティーにまで消化しているか、疑問です。彼は、どうすれば人の心に画面を印象づけることができるかをよく心得ている、あざといコラージュの手法の持ち主のようにしか思えないのです。もちろん、それも評価すべき才能の一つで、プロモーションビデオのように短い時間で人の心を引きつけるには、これでいいのでしょう。しかし、映画はプロモビデオではありません。
 岩井監督の作品が新鮮に見えるというのは、日本映画の製作者たちが、いかに勉強不足だったか、ビジョンがなさすぎるあまりにケチになり、冒険を惜しみ人材の育成を怠ってきたか、そして、そのような日本映画が観客に見放されていかに久しかったか、ということの証明でしかないと思います。
 それを思うと、私は、岩井監督の作品に感動するという人の気持ちも分からないわけではありません。ただ、気持ち悪いのは、岩井ブランドを持ち上げてたかるマスコミ、岩井監督の映画を好きだということがインテリや映画通、芸術愛好の証のように思われてしまいかねない、最近の状況です。
 


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