日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2002年12月10日(火) 第58号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 金日成のパレード

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 最近、よくニュースでもワイドショーでも「北朝鮮秘蔵映像」が流れていま すね。時々、見出しには「独占公開」「独占入手」などとありますが、だいた い、同じ映像が各局で同時期に放映されているので、どこをもって「独占」と うたっているのかよくわかりません。インタビューされている人も、コメント を求められている人もほとんど同じだしね。一つの局で朝と昼のワイドショー、 夕方のニュース番組と使い回していることもあり、その際もコメントやインタ ビューで答えている人もいっしょだったりするので、いくら同じ局とはいえ、 それぞれの番組でオリジナルを作ろうとする気はないのか、とあきれてしまい ます。もっとも、朝昼晩と各局のニュースばかり見ている私も、我ながら暇な やっちゃと思いますが。

 そのたくさんある「秘蔵映像」のなかでも、最近のヒットは「北朝鮮の軍隊 を金正日が訪問したときの映像」でした。これは、日本テレビの「ブラックワ イドショー」(12月7日、深夜0時50分〜)とテレビ朝日の「スーパーモー ニング」(12月10日午前8時〜)で見た映像です。北朝鮮の兵士が男女共にい かに強くて勇敢かということを、表したものなのですが、その表し方がすごい。 テコンドーで鍛え上げて、レンガやガラス瓶を割るなんて、男女とも当たり前。 兵士たちの肉体は、大きな丸太や針の山でたたかれてもびくともしません。兵 士が30人乗ったトラックを一人でひっぱったり、飛んでくるナイフを瞬時に 避けたり、頭で釘を打ち付けたり、火の輪をくぐったり、ガラスの破片の上を 歩いたり……。軍隊の訓練というよりサーカス団の曲芸ですね。いったい、何 のためにこんなことやってるのか、検討もつきません。

 しかも、すごいのは人間ばかりではありません。軍用犬も大活躍。火の燃え 盛る有刺鉄線を飛び越え、屋根の上を軽々と走り、最後は爆弾を体にまかれて 戦車のキャタピラの下にスライディング、爆死します。動物愛護協会はこれを 見たら、何というでしょう。ブリジット・バルドーも犬料理に文句つけてるど ころじゃないです。

 もっとも、人間のシーンも犬のシーンも全般的に見て、どうも一昔前の特撮 くさい映像でした。いずれにしても私だけでなく、これをまじめに見る日本人 はいないようで、「ブラックワイドショー」ではもろに笑いのネタにしていた し、「スーパーモーニング」では一応、「プロパガンダがどうのこうの」とま じめそうなことをいっていましたが、キャスターもコメンテーターもほとんど、 苦笑い。「プロパガンダとはいえ、こんな映像つくっちゃう北朝鮮って変」と、 顔に書いてありました。

 さて、北朝鮮と映像といえば、私には忘れがたい作品があります。それが、 今回のタイトルに上がっているドキュメンタリー映画「金日成のパレード」で す。サブタイトルは「東欧の見た“赤い王朝”」。これからも分かるように、 このドキュメンタリーは北朝鮮製ではありません。1988年9月、まるで、ソウ ルオリンピックに対抗するかのように北朝鮮の平壌では建国40周年記念式典 とパレードが行われていました。その様子を正式招待されたポーランドの国営 ポルテル社の人たちが撮影したものです。かれこれ10年前に見たものですが、 最近、DVD(税抜き3800円)になったと知り、さっそくamazonで買って見 直しました。

 ポーランドの撮影班は、北朝鮮側に導かれる通りに、風光明美な妙香山(ス ローガンが彫り込んであって景観台なし)や金日成生誕の地である白頭山(岩 や木の一つまですべてが金日成伝説つき)、映画撮影所(金正日のお気に入り)、 板門店(アメリカへの偏見がナイス)、凱旋門やチュチェ思想塔、金日成像 (巨大建築つくりすぎ)などを巡ります。どこでもかならずガイドがついてき て、「偉大なる首領様金日成同志」のエピソード付きの解説があります。「偉 大なる首領様金日成同志は、幼少のころ、この馬の形をした岩にまたがって、 日本帝国主義から祖国を取り戻す決意をなさいました」「このチュチェ思想塔 は偉大なる首領様金日成同志の生誕70年をお祝して、御誕生から70歳までの 日数2万5550日と同じ数の花崗岩がはられています」といった具合。どこにい っても何についても、まず枕詞は「偉大なる首領様金日成同志」。金日成と金 正日親子は偉大なる革命家で思想家で政治家で建築家で芸術家、みんなが慕い、 敬い、讃えるのが当然といわんばかりに、ガイドは説明していきます。

 このように書いていくと、このドキュメンタリーは北朝鮮のプロパガンダの ようですが、そうならなかったのが、撮影班の偉いところ。ひょっとすると、 北朝鮮側のあまりの「偉大なる首領様金日成同志」万歳の姿勢に、びっくりし て引いてただけかも知れませんが、徹頭徹尾、淡々と客観的に撮っているので す。映画の中には、ほんの時々ですが、舞台裏が写ります。空港で来賓の飛行 機が到着するまで、疲れたように座り込む歓迎団の人々、パレードが始まるま で、体育座りで辛抱強く待っている大群衆、「万歳」の声がこだまする大行進 の道ばたにぽとりと落ちているくたびれた靴の片方。ときおり挟み込まれるこ のような映像が、華やかなパレードや統制のとれたマスゲーム、数々の輝かし い記念碑、人々の歓声などは、壮大なファンタジーだと暴いているかのようで す。ベルリンの壁崩壊はこのパレードの翌年、1989年11月9日でした。それ と前後して、かつて、金日成が訪問して社会主義の成果をほめたという東欧の 社会主義国は次々に体制が変わっていきました。

 この映画をはじめてみたときのショックは今でも忘れません。こんな国が隣 にあったのかと、のけぞりました。しかも、困ったことに、画面に写っている のは日本人とほとんど同じ顔をした人々なんですよね。なんか、ひと事とは思 えなかったんです。ひょっとして戦前の挙国一致体制ってこういう雰囲気だっ たのかしら、とか、今後、日本だって何かあれば政治体制に係らず、こんなこ とになっちゃうんだろうなあ、そりゃ嫌だよなとか。

 現在、ニュースやワイドショーなどで続々公開されている使い回しの「北朝 鮮秘蔵映像」なんかぶっとぶくらいの迫力のある作品です。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 実は、私、「パレード」を見て以来、北朝鮮に旅行してみたいと思うように なりました。北朝鮮の旅行を扱っている会社もあるのですが、やはり、ネック は値段です。30万円くらいかかるそうです。下手すりゃヨーロッパにいける 値段ですよね。旅行会社の人も「よほど、好きとか行ってみたいという人にし か勧めません」と言ってました。もう一つのネックは、家族の反対だなあ。最 近は、拉致問題が連日のように報道されているので、北朝鮮旅行のことは言わ ないようにしています。

 次回は12月22日(日)を予定しています。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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