日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2002年1月22日(火) 第37号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

隣の女

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 先日、新聞のテレビ欄の見出しを見ていて気付いたのですが、お昼や夕方の ニュース番組、ワイドショーなどでご近所とのトラブルの特集って、よくある んですね。視聴者から、ご近所づきあいで大変な目に会ったという体験談を募 集して、再現ドラマ仕立てで紹介しているものがほとんどで、ケースごとに法 律のアドバイスをしている番組もありました。非常識な隣人や大家に悩まされ ていたり、子どものいる方はPTAや公園でのおつきあいがうまくいかないな ど、みなさん、本当に大変そうです。

 番組の時間や性質上、体験談を応募してくるのは大多数が主婦で、そのほと んどが新興住宅地や団地など、いわゆる郊外の住人です。そういえば、私も郊 外の住宅地に住んでいます。連れ合いと連れ合いの母は20年ほど前にこの土 地に引っ越してきました。連れ合いと私は結婚後、数年、連れあいの母と別居 し、3年ほど前に同居が始まったので、私はこの土地では新参者になります。 ただ、我が家は全員が働いていて留守がちなことや、子どもがいないせいもあ って、ご近所づきあいが希薄です。一度、隣の庭に我が家の藤のつるが伸びて しまって、注意されたことはありますが、お隣さんは我が家が留守がちなので、 気付かないこともあるのだろうと優しい物言いでした。すぐに植木屋を呼んで 藤の手入れをし、それ以後、つるの伸び具合に注意するようにしているからか、 お隣さんと険悪になることもありませんでした。いまのところ、ご近所づきあ ではトラブルはないので、番組に出てくる体験談を見ていて、うちは周りの人 がいい人たちで良かったなどと思っていました。そんなことを思っていた矢先、 同じように郊外の新興住宅地に住んでいる知人から、テレビ番組のご近所トラ ブルに似たような話を聞く機会がありました。

 その知人、仮にMさんとしておきますが、Mさんは小学生の子どもを持つ主 婦で、お姑さんと同居しています。そこは新興住宅地といっても、彼女のお姑 さんの代か、それ以前から農家などを営んで住んでいる人もいて、最近、たく さんあった農地が住宅地になって、新しい人が入ってきて、新旧の住人が入り 交じっている所です。Mさんの家もお姑さんの代からなので、古くからの住人 になります。

 そのMさんの隣に、昨年の夏、新しく家が建ち、若いご夫婦が入居してきま した。夫はサラリーマン、妻は主婦で、子どもはいません。奥さんはおとなし そうな人で、よく庭に出てガーデニングに勤しんでいます。庭は瀟洒で美しく、 12月に入ったころからクリスマス用のイルミネーションもするようになり、 Mさんは子どもと一緒に「きれいね」と関心していました。

 そして、年末、隣の奥さんがMさん宅に回覧板を持ってきました。そのとき、 奥さんは「私、話すのが下手なので、みなさんにお手紙を書きました。どうぞ、 読んでください」と、いつものおとなしい、ともすれば聞き逃しそうな声で言 い、回覧板と手紙を渡しました。時節柄、Mさんは「オシャレな奥さんだから、 クリスマスカードをくれたのね」と思い、「わざわざありがとうございます」 と喜んで受け取りました。

 ところが、その手紙をあけてみて、Mさんはびっくりしました。手紙にはび っしりとおわびが書いてあったのです。

 「木の葉を落としてすみませんでした。石を道路に出してすみませんでした。 肥料の臭いでご迷惑をおかけしました」などなど、お詫びは何行も続きます。 そして、「今後はこのような、ご迷惑をおかけしないように気をつけますので、 どうぞ、お許しください」と結んでありました。こんな手紙を書くにいたった、 お隣さんの心境を思うと、Mさんは涙が出てきたそうです。

 「そういえば、姑もそうなんだけど、うちの近所のジジババってうるさい奴 が多いの。子どもでもいれば、学校の付き合いで、近所にお友達もできるんだ ろうけど、まだ、ご夫婦だけでしょう? 知り合いがいないところへもって、 近所から文句言われたので、まいっちゃったのかなあ。葉っぱだ、石だなんて、 庭掃除してりゃでてくるものなんだから、なんか言われたら『すみません』の 一言でいいのよ。きりがないもん。こんなに、気にするなんて、これからここ で生きていけるのかしらって心配になっちゃった」

 さらに、クリスマスを前にしてお隣のイルミネーションがなくなり、Mさん はなおさら、心配になったそうです。誰か、「まぶしい」などと文句をつけて きたのかもしれません。手紙をもらって以来、Mさんはお隣の奥さんには、な るべく、にこやかに挨拶をするようにしているそうです。

 Mさんのところのように、新興住宅地は一戸建てにしろ、マンションにしろ 住人の入れ代わりがけっこうあります。私が今住んでいるところも、連れ合い の母によると、20年の間に、かなり住人が入れ代わったそうで、さらに最近、 新築の家やマンションが増えています。私の近所はまだ、どうなっているのか 分かりませんが、新興住宅地では新旧の住人の間に軋轢が生じることはよくあ るそうです。その原因は、地価や分譲価格の上下、土地の境界線の取り決め、 世代間のギャップ、幼稚園や学校など子どもを媒介にしたトラブルなど様々で す。地縁血縁が薄く、住人の歴史も浅く、お互いの事情をよく知らないだけに、 どうつきあっていいか分からないし、仲裁してくれるような人もいない。それ で、一度トラブルが生じると、よけい深刻になるのかもしれません。

 かといって、昔の田舎のように、みんなが知り合いで、誰がどういう経緯で 誰と結婚して、誰と誰がデキていて、何家の嫁姑はすごい不仲で、某家と某家 は田んぼの水の所有権をめぐって先代からいがみ合ってるなどと、近所の誰も が各家庭の事情に通じているという濃密な近所づきあいも、めんどくさいとい えばめんどくさいものです。そんな地縁血縁による相互監視状態の中で、古く は津山三十人殺し、最近では大分の野津町の少年によるご近所の一家殺傷事件 などがあったわけだから、まったく問題がないわけじゃないですし。

 つくづく、近所づきあいって難しいものだなあと思います。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 よく、犯罪の報道で被害者や被疑者の人柄などをご近所の人にインタビュー しているのがありますよね。すると、「被害者(被疑者)は挨拶をよくする感 じのいい人だった」「会っても挨拶もしないような人だった」とたいてい、挨 拶の話がでてきて、特に被疑者や被害者が都心部や新興住宅地などに住んでい た場合は、それしかコメントがなかったりします。それもそのはずで、お互い の接点が挨拶くらいなので、判断材料がそれしかないんですよね。

 そういうわけで、私は、近所の道で会う人で、あきらかにセールスや勧誘と 分かる人以外には、たとえ顔を知らなくても挨拶だけはするようにしています。 だって、いつ、事件の被疑者や被害者になるか分かりませんから。

 次回は2月10日(日)を予定しています。

 最近、遅れることが多くてすみません。

 これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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