日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2000年12月04日(月) 第7号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

フェイク!

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 前回のあわわ後記で藤村新一氏の上高森遺跡ねつ造事件のことをとりあげ、 贋作・ねつ造事件が大好きで、次はどんな事件がおこるのか期待していると書 いたら、読者の方から、あのような許されざる事件を大好き、などと興味本位 に軽い気持ちでとらえるべきではない、とご意見をいただきました。

 私も贋作・ねつ造事件について、自分の考えを語るにはあわわ後記では言葉 が足りなかったなあ、と反省していたところでしたので、今回、あらためて記 してみようと思います。

 まず、はじめに断っておきますが、私は決して贋昨やねつ造を奨励している のではありません。ついでに言うと、史実をわい曲するリビジョニスト(歴史 修正主義)にくみする者でもありません。

 贋作・ねつ造事件はあってはならないものだと思っています。特に歴史のね つ造は他国を侵略するための精神的支柱に使われることを、忘れてはなりませ ん。では、なぜ、そのあってはならないものをおもしろいと思い、追わずにい られないのか? それは、贋作・ねつ造事件の背景に興味があるからです。

 上高森遺跡での藤村氏のねつ造は決して許されるものではありません。自説 を裏付けるために多くの人を騙したあげく、地道な努力をしている在野の学者 の地位をおとしめ、考古学や歴史に夢をいだく人たちの心を踏みにじりました。 そのうえ、お隣の韓国のマスコミでは「日本人は自分達の優位性を示すために、 ねつ造までする」という報道もあったそうで、国際的な信用も落としてしまっ たようです(「なんで、韓国の人はそこまで言うの」と不思議がる人もいたの ですが、韓国をはじめ、アジアの国々にたいしては、前科がたくさんあるので、 そういういわれ方もでてくるでしょう)。それにしても、なぜ、藤村氏は、ね つ造を行ったのか? ねつ造は自分が愛してやまなかった考古学を裏切る行為 だったはずです。藤村氏は「何か発見をしなければとあせっていた」と言った そうです。しかし、このねつ造事件の問題点は藤村氏個人だけに帰結できるも のではないと思うのです。

 たとえば、上高森遺跡の件ですが、この「大発見」が発表された当時、学者 やマスコミなどで誰か疑うものはいなかったのだろうかと、思いませんでした か? ねつ造の方法も偽札や絵画の贋作のように精巧な技術によるものではな く、穴を掘って、手持ちの石器を埋めただけという、大変にシンプルなものな のに。実は、上高森遺跡よりも以前の1986年、座散乱木遺跡など宮城県内の 遺跡発掘のさいの藤村氏の「発見」に異議を唱えている学者もいました。とこ ろが、その学者の批判は、わずかな専門誌などに載っただけで、一般の人が目 にする新聞や雑誌などで大きく取り上げられることは、ほとんどありませんで した。上高森遺跡の「発見」に関しても、石器は縄文時代のものだと見破った 学者が専門誌に執筆しようしたら、掲載を拒否された、ということもありまし た。ねつ造が明らかになったいまになって、やっと報道でまともに取り扱われ るようになったのです。

 また、上高森遺跡の調査報告書は発掘が始まった1993年以来、一度も出て いず、学会での論議もきちんとされてきませんでした。つまり、ちゃんとした 検証がなされていなかったということです。それが、数社の教科書に載り、博 物館に展示までされていたのです。従軍慰安婦やアジアへの侵略戦争は、被害 者が何名も名乗り出て、証言や資料も多々あるのに、教科書検定のときには 「証拠が十分でない」と言われています。この差はなんでしょうか?

 藤村氏に事件の責任があるのは当然ですが、その背後には「発見」のセンセ ーショナルな部分だけを無批判に報道してしまうマスコミ、閉鎖的で十分な検 証ができなかった学会、それに、日本の歴史の負の部分には目隠しをしたがる くせに、日本の優越性を示す「発見」には十分な証拠がなくても良しとしたが る人々がいるのです。

 ねつ造事件はときとして、社会の状況や問題点を写し出してくれて、反省材 料や考えるべきことをたくさん提示してくれます。そんなことがあるから、私 はねつ造事件に興味を持たずにはいられないのです。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 私は大学で、ある先生から「学者は論文では自説に都合のいい資料しか提示 しません。まず、その論文で提示されている資料を検証しましょう。重箱の隅 を突くことから学問は始まります」と言われました。また、別の先生からは 「イデオロギーを盲信するとロクなことにならん」とも言われました。敗戦直 後の捕虜収容所で、帝国陸軍士官学校出身のエリート将校たちが命が助かった ことにすら希望を見出せず、腑抜けのようになっているのを見たからだそうで す。形は違えども「つねに疑問を持て」ということなんですね。大学の勉強で 得たものは多いですが、現実の生活で役にたっているのはこの「つねに疑問を 持て」という教えです。

 今回、発行が予告より遅れて申し訳ありませんでした。

 次回は12月17日(日)を予定しています。

 予定通りに出したいと思っていますので、次回もよろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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