日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2000年11月05日(日) 第5号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

恐怖の報酬

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 ライターのみなさ〜ん、原稿料いくらもらっていますか?  ライターを始めて4年だが、いつも、自分の原稿料が高いのか安いのか分か らないままきていた。執筆に関して事前に契約書を交わすこともなかったし、 初めて仕事をするところには、編集者がきりだしてくれるまでは、なかなか 「どういう基準で、いくらになっていますか?」と聞きにくいので、いくらな のか分からないまま仕事に入ってしまう。

 編集者が原稿料の話をしてくれるときにはたいてい「ウチは安いんですが…」 と前置きして話すのだが、それで、金額を提示されても正直に安いのかどうか 分からないのだ。たいていの原稿料は掲載誌が出てから1ヶ月後なので、月刊 誌の仕事だったら、取材から支払いまで3〜4ヶ月の間があく。ほとんどその 仕事のことを忘れたころだ。だから、仕事が比較的楽にいったとか、すげー大 変だったとかも、なんとなく忘れかかっているので、その金額が心身ともに見 合っているのかもよく分からない。

 心身ともに見合っているのか、というのは、原稿は〜字数でいくらもらった ので、だから高いとか安いとか単純に比較できないところもあるからだ。たと えば、何かのお店の特集で紹介記事を書くという場合、お店一軒につき、文字 数は電話番号などのデータもふくめて200字もないこともある。1ページで5 軒紹介して、前文などいくつか文章を添えたとしても2000字にもならない。 原稿用紙5枚だ。だが、その2000字のために、編集との打合せ、資料の下調 べ、取材のアポイントとり、ロケハン、取材、執筆、データ確認などいろいろ な手間がかかっている。

 原稿料は編集部によって200字(ペラ1枚)でいくらとか、1ページでいく らなどの基準が一応あるが、そのうえに、企画を出したかとか、取材の拘束時 間がどのくらいだったか、編集作業を手伝ったかなどの要素がからむと、微妙 に上下する。また、女性誌、情報誌という媒体のカラーやその仕事がスポンサ ーのつく広告記事かどうかということでも、原稿料に違いは出てくる。

 そんな私でも、この間、初めて「これは安いのでは?」という原稿料に出会 った。ある老舗の某娯楽専門誌のことだ。急な依頼でスケジュールもキツキツ というものだったが、編集部が用意してくれたデータもあり、最初から取材を しなくてもよいということ、もともと好きな分野に関することで、あるていど 知識の蓄積もあったので、大丈夫だろうと引き受けた。それでもできるかぎり 自分でも資料収集して調べ、あいまいな部分は確認をとるために電話取材も少 しした。書くこと事態はそれほど苦痛ではなかったのだが、数ヶ月後、振り込 まれた原稿料を見て驚いた。単純計算でペラ1枚1000円。これって、いまま でもらった原稿料のなかで、金額も、心身ともに見合っていないという点でも 一番安い。そこは前から安いというのが定評だったんだけど、まさかそこまで とは思わなかった。でも、この専門誌業界の事情を多少知っている人に聞いた り、偶然見つけた昔の雑誌記事などで、これがこの某娯楽業界の基本なのだと 分かった。ある情報誌でその某娯楽のコーナーを担当している編集などは「あ の雑誌が破格に安い原稿料でやってくれてるから、ウチの安い原稿料でも文句 言われないんですよ。少しはマシだって言ってもらえるから」とまで言ってい た。

 別に大金を払えばよいというのではないが、この某娯楽業界にジャーナリズ ムが育たなかった一因は原稿料の安さにあったのかも、と思った。大げさかも しれないけど。

 その老舗雑誌などは読者投稿から始まって書き手になるというパターンが多 かったということからもわかるように、もともと好きがこうじて書き手になっ た人が多い業界なのだ。だから、その業界はいつも、書き手のほうが余ってい る。原稿料が安いという人はやめればいい、他に替わりはいくらでもいる、と いう所だ。一読者で投稿してた身にしてみれば、自分が好きで書いた文章が活 字媒体に載った上に、ホントに薄謝であっても、なんらかのお金がもらえると いうのはそりゃ、御の字ということもあるだろう。

 だが、好きがこうじてといっても、それをネタに原稿を書けるようになるま でには過去の知識の蓄積はもちろん、現在進行形でもいろいろ勉強しなければ ならない。それは決してタダではできない。原稿だって、何も考えずに書ける ものじゃなく、まずはなんらかの取材があって執筆にかかるわけだから、どの 過程でも頭も使えば体力・気力・時間もいる。そのうえ、自分の原稿に責任を もつなら、批判や論争がくれば受けなければならない。数をこなさなければ生 活もおぼつかないような原稿料で、どこまで責任を背負う気になれるだろうか?

 どうせ安い原稿料なら、取材先からもらったヨイショだらけの資料だけを元 にして、提灯記事を書いていたほうがず〜っと楽だ。

 いやいや、好きで始めた仕事だからこそ、志さえあれば多少の無理も我慢で きるだろう、という人もいるだろう。でも、それを書き手自身が思ったり言っ たりするのならともかく、仕事を与える側が思ったり言ったりすることではな いと思う。好きなんだから安くてもできるでしょう、というのは、人の志を見 下しているし、希望も奪っている。好きなことからはじめた仕事だからこそ、 それにみあうだけの報酬があり、それでも生きていけるのなら、励みになって それぞれ研さんするし、質の高い仕事もできるようになると思うんだけどなあ。

 そんなこと言うくらいなら、そこの仕事は次から引き受けなければいいじゃ ないと、思うでしょう。でも、私は、またそこからお仕事が来たら、よほど変 な依頼でないかぎり、スケジュールがあいていれば引き受けると思いますよ。 そして、自分の可能なかぎり誠実に仕事をするでしょう。  いま、仕事を選べる立場ではないし、「好きで始めた仕事だからこそ」なん ですね。こうやって、「書くことしか出来ない。書くのが好きだ」という私の 最後のプライドは、いつでも食い物にされていくのでした。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜

 「今回はちょっと暴露の入った愚痴です。すみませんね。  時々、こういう、仕事関係のことも書いていきたいと思っています。

 ところで、全然、関係ない話ですが、日清のカップヌードルのCMで永瀬正 敏さんが、20世紀の劇的なシーンにCG合成で登場するというシリーズがあ りますよね。この間、スペースシャトル(かな?とにかく宇宙飛行)に乗って いるというバージョンを見ました。そこで、カップヌードルの中身がカップか ら飛び出てくるのですが、それが、形状や色などから、どうしても「ゲロ」に 見えてしょうがないんですよ。みなさんは、どう思いましたか?

 では、次回は11月19日(日)の予定です。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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