『数学者』の休日2

('98/05/04)
今年もまた、4/30、5/1 の平日の休日を利用して、国会図書館に行って来た。
今回の収穫は以下のとおり。


[1] Randy L. EKL, 
     Equal Sums of Four Seventh Powers
     Vol.63, Num.216, Oct. 1996, 1755-1756

     ⇒ 不定方程式 a17+a27+a37+a47=b17+b27+b37+b47 の非自明解
1497+1237+147+107=1467+1297+907+157 1947+1507+1057+237=1927+1527+1327+387
を見つけた、というレポート。 探査範囲は、a1……≦1000 で、まず最初に7乗和を計算しておく、というところまでは普通だが、 計算結果を AVL tree に格納するという発想は盲点だった。 これならかなり数字が大きくて、かつ要素数が多くなったとしても、log n のオーダで探査できる。 ちなみにこれは、不定方程式 Σi=1m ais=Σj=1m bjs が非自明な解を持つか否か、及び個別解か一般解か、 という問題の未解決の部分のうちの一つであり、今回あわせて、[s, m]=[5, 2]、[6, 2] について [5, 2] は、和が 2.4×1022以下、[6, 2] は、和が 7.25×1026以下まで調べたが、 解はなかった、ということである。 この論文から派生して入手したのが、下の論文。 [2] L. J. Lander, T. R. Parkin and J. L. Selfridge, A Survey of Equal Sums of Like Powers Vol.21, 1967, 446-459 ⇒ これには、不定方程式 Σi=1m xik=Σj=1n yjk 、1≦m≦n のいろいろな (k, m, n) の組についての調査結果が載っている。 かなり膨大なものなので、ここには引用しきれない。 [2] の中にあったので、あわせてコピーをとったのが、 [3] Donald E. Knuth and Thomas J. Buckholtz, Computation of Tangent, Euler, and Bernoulli Numbers Vol.21, 1967, 663-688 ⇒ これは自力で得た解があるので、とりあえず記念のつもり。 Ubasic の添付プログラムの Bernoulli数を求めるプログラムはこれが元ネタである。 (ところで、リンクをはるために過去のページを見たところ、 Σの上下とか、分数の表現が、N.S. 4 だとずれて表示される。 だからといって、N.S. 4 用にあわせると、N.S. 3 ではずれて見える。 はやく、HTML の文法に TeX のような数式を表現できる文法を取り込んでくれないものだろうか。) 現代に戻って、 [4] Harvey Dubner and Harry Nelson, Seven Consecutive Primes in Arithmetic Progression Vol.66, Num. 220, Oct. 1997, 1743-1749 これの Authers Index で見つけて、思わずコピーを取ったのが、 [5] Kenji Koyama, Yukio Tsuruoka, and Hiroshi Sekigawa, On Searching for Solutions of the Diophantine Equation x3+y3+z3=n Vol.66, Num. 218, April 1997, 841-851 ⇒ 今回得られた結果は、
43811593+4352030833+(-435203231)3=75 (-2058260)3+(-5434196)3+55308913=435 34607953+148202893+(-14882930)3=444 (-19895059)3+(-26109316)3+295003763=501 87623183+8704061663+(-870406462)3=600 53685803+154352753+(-15648793)3=618 (-14232281)3+(-55648340)3+559569373=912 13196063+173951483+(-17397679)3=969
[6] G. L. Cohen, Numbers Whose Positive Divisors Have Small Integral Harmonic Mean Vol.66, Num. 218, April 1997, 883-891 ⇒ 自然数nの約数の個数をτ(n)、約数の和をσ(n)とし、σ(n)がτ(n)を割り切るとき、 nをHarmonic である、と呼ぶ。 2×109以下の Harmonic なnについての一覧。 ちなみに、完全数は Harmonic である。 [7] Michael A. Bennett and Benjamin M. M. de Weger, On the Diophantine Equation |axn−byn|=1 Vol.67, Num. 221, Jan. 1998, 413-438 ⇒ 今回特に見たかった論文の一つ。 先日ふと高次 Pell 方程式というのを思い付き、少し計算してみたが、自明な解しか見つからなかった。 p=(1+yn)/xn と変形すれば容易に想像がつくが、 そもそも通常の Pell 方程式の場合でも、xで2回割り切る、というのはなかなかしんどい。 それを、n回割り切ろう、というのだから、そうそう解は見つからないはずである。 上記論文によると、やはり、自明解しか存在しないようであり、無謀な計算に突入しなくてよかった、つくづく思った。 他には、 [8] Graeme L. Cohen and Herman J. J. Te Riele, On Φ-Amicable Pairs Vol.67, Num. 221, Jan. 1998, 399-411 [9] J. H. E. Cohn, A Conjecture of Erdos On 3-Powerful Numbers Vol.67, Num. 221, Jan. 1998, 439-440 [10] Anders Bjorn and Hans Riesel, Factors of Generalized Fermat Numbers Vol.67, Num. 221, Jan. 1998, 441-446

ちなみに今回のコピー代は 2,607円。
金額的に大したことはないが、小銭がどんどん出て行くので、なんとも云えない割高感がある。


  『枕草子*砂の本』  

E-mail : kc2h-msm@asahi-net.or.jp 三島 久典