『数学者』の休日

('97/05/03)
4/30 〜 5/2 はうちの会社では休日に相当する。この平日の休日を利用して、国会図書館に行って来た。
目的は『Mathematics of Computation』のバックナンバーの入手である。

基本的な戦略としては、

  1. まず午前中に入りる。
  2. 10月号を借りれるだけ借りる(10:30より前なら3冊、それ以降は2冊)。

    10月号だけ借りる理由は、

    • Math. Comp. は quarterly であり、
      October の巻末にその年の掲載論文の目次『AUTHOR INDEX』が載っている
    • 10月と、7月が合本になって製本されているので、
      10月号を借りれば少なくともその年の半分に直接目を通すことができる

    という2点のため。

  3. 本が出てきたら、すかさず、『AUTHOR INDEX』とめぼしいところにしおりを挟んで、
    コピーサービスに出す。
  4. コピーができたら、本を返却する。
  5. goto 2.
で、このループがだいたい1日に3回である。
ただ、これを実行するにはかなりの体力と、待ち疲れしない精神力が必要であり、
今回は3日とも、ループ2回が限度であった。
それで今回の成果は、……


まず、『AUTHOR INDEX』。
これは、1996と1995。それから、1983から1991まで。 (1992から1994は、すでに持っていた)。
80年代というのが1つの転機で、

等により、整数論上のいろいろな未解決問題に対して、具体的な計算を行った論文が数多く出てくることになる。
従来は、D.H.Lehmer、Harvey Dubner 等のように、個別の計算用にカスタマイズされた自作処理系組か、
円周率計算、メルセンヌ素数探査のように、スーパーコンピューターを自由にぶん回すことのできる、
一部特権階級の独壇場であったが、上記のような時代の流れにより、誰でも研究というか、
探求レースに参加できるようになった。


今回特にコピーを取った個別の論文は、

[1] Aurel J. Zajta,
     Solutions of the Diophantine Equation A4+B4=C4+D4
     Vol.41, Num.164, Oct. 1983, 635-659
     ⇒ 『数学者の密室』の目次にはないが、いずれこの問題も扱ってみようと思っている。

[2] Wilfrid Keller,
     Factors of Fermat Numbers and Large Primes of the Form k・2n+1
     Vol.41, Num.164, Oct. 1983, 661-673

[3] Thorkil Naur, 
     New Integer Factorizations
     Vol.41, Num.164, Oct. 1983, 687-695

     ⇒ 残念ながらこれに載っている Fibonacci数、Lucas数の素因数分解結果は、すでに私が
        自力で得ていたものであった。年代的にはこちらの方が古い。

[4] Paul A. Pritchard,
     Long Arithmetic Progressions of Primes : Some Old, Some New
     Vol.45, Num.171, July 1985, 263-267

[5] H.J.J.te Riele,
     Computaion of All the Amicable Pairs Below 1010
     Vol.47, Num.175, July 1986, 361-368

     ⇒ 「9章  友愛数」を掲載する前に(実は、もう全て書きあがっているが一太郎なので、
        今回 HTML化&一部書き直しのために「目次」の部分の掲載予定日まで整形しているのであ
        る)、しかも、私が掲載しようとしている108より2桁も大きいとあっては、
        今これを見るのは目の毒だったか?

[6] Noam D. Elkies,
     On A4+B4+C4=D4
     Vol.51, Num.184, Oct. 1988, 825-835

     ⇒ これは、Euler以来の未解決問題が解決した最近の事件の一つである。
        解は、
26824404+153656394+187967604=206156734
を初めとして無数にある。 題記方程式を楕円曲線に変形したことと、その補助方程式の初期解
(X,Y)=(−31/467, 30731278/(4672))
を見つけだした計算速度は、冒頭に書いたとおりだが、まさに解かれるべくして解かれた、 時代の産物かも知れない。それにしても、初めて解いた人はやはり偉大である。 尚、最小解は、
958004+2175194+4145604=4224814
である。 [7] Wilfrid Keller, New Cullen Primes Vol.64, Num.212, Oct.1995, 1733-1741 ⇒ これも目の毒。「Appendix 1. 素因数分解結果」で載せようと思っていた、Cullen数、 Riesel数の素因数分解が、未解決部分も含めて解かれてしまった。 [8] Graeme L. Cohen, Stephen F. Gretton, and Peter Hagis, JR., Multiamicable Numbers Vol.64, Num.212, Oct.1995, 1743-1753

以上である。この中から、『数学者の密室』第2弾のネタが生まれるかも知れない。

あと、コピーはとらなかったが、結果だけ。

[9] B.K.Parady, Joel F.Smith, Sergio E.Zaranonello,
     Largest Known Twin Primes
     Vol.55, Num.191, July 1990, 381-382

     ⇒ これで発表されている双子素数は、

          663777・27650±1
          571305・27701±1
          1706595・211235±1

        の3組。

ちなみに今回のコピー代はしめて3,783円。
これが一番の目の毒か?


  『枕草子*砂の本』  

E-mail : kc2h-msm@asahi-net.or.jp 三島 久典