6.実施済提案からトップダウン改善に変化か


 最近の改善・提案は、問題点を見つけたら上司に相談し、改善を実施した
上で提案用紙に書いて出す、いわゆる「実施済提案」あるいは「改善報告」
というものが主流となっています。
 なかには、「未実施提案は最初から受け付けない」という会社すらあります。

 この実施済提案(改善報告)が主流となった背景には、他部署への提案の場合、例えば経理部の人が「駐車場の車が雑然と置かれているので、一台一台の駐車スペースが分かるように白線を引いてはどうか」という提案を総務部にしたとします。

 この場合、「駐車場の車が雑然と置かれている」と問題点を指摘し、「白線を引く」という改善案を出したとしても、経理部の人が自から改善を実施するわけではありませんから、普通は言いっぱなしになります。

 問題点を指摘された総務部も指摘を受けるまでもなく、その問題点は自分達も十分知っており、白線を引かなければならないと思っていたのですが、予算の都合や人手の問題から今すぐ実施できず、時期待ちの状態でした。

 一般に提案者は、他部署の実情は分かっていない場合が多いものです。提案を受けた部署は「実情を知らないのにエエカッコするな」と回答を後回しにしたり、なかには忙しいのに提案内容の検討に時間を取られたりして、ありがた迷惑と思う人もいます。

 また、提案者の中には、せっかく提案したのに何の回答もこなかったりすると、「もう二度と提案なんかするものか」とやる気をなくす人もいます。

 こうしたことで、提案方式は、どうも提案者にも提案を受けた側にも「むなしさ」だけが残る結果になることが多かったのです。

 そのため打開策として、「他人への提案よりも、自分の業務を中心に改善を促す方が良いのではないか」という考えが起きてきました。

  さらに、「自分の業務の改善であれば、実施した上で出させてもよいのではないか」という考えが台頭してきました。

 その結果改善・提案活動は、「自分の業務を中心に、自分で改善を実施した上で提出する」ということが主流になりました。

 また、「自分の業務を中心に、自分で改善を実施した上で提出する」という制約が掛かっため、必然的に「小さな改善」が多くなりました。

 最近のような不況下では、「小さな改善よりも、大きな改善が大事だ」と言われ出しました。
 大きな改善は、個人の力ではなかなかできるものではありません。管理者や監督者が中心になって、職制でやらなければできません。

 そのため改善は、「トップダウンで行うべきだ」という人が増えてきました。それにともなって、個人の改善・提案活動を軽視したり、やめたりする企業も出ております。

 本当にこれで良いのでしょうか?疑問に思います。私達は、「個人の改善」も「トップダウンの改善」も両輪で進めるべきだと思います。

(2002.4.22)