4. ハンダかすのリサイクルに胡麻を振りかける             


 ハンダかすのリサイクルに胡麻を振りかける。なんやそれは…
 一見無関係なものが大いに関係があるとき、よく使われる諺に「風が吹けば
桶屋が儲かる」というのがありますが、この話しはそれによく似た話です。

 2001年12月11日の新聞各社の紙面に「松下電器産業鰍ェ世界でも初めてハンダのリサイクル装置を開発/再生率90%/松下から技術供与を受けた東京のハンダメーカが1台95万円で年内にも販売」といった内容のことが報じられていました。

 松下電器産業鰍フ提案事務局をなさっている和田康志さんのお話しでは、「これは改善提案として、川島泰司さんから出されたものが商品化されたのだ」とおっしゃっていました。

 プリント基板のハンダ付けには、ハンダを溶かした槽を使いますが、この時ハンダ槽表面に酸化物とフラックスとハンダが結合した酸化複合物が多量に発生します。

 そのため改善前は、このハンダの結合した酸化複合物を産業廃棄物として専門業者に引き渡し、処分をお願いしておりました。

 今回、世界初のハンダ・リサイクル装置を開発した川島さんは、かってマレーシア工場の指導に行ったことがありました。この指導中でのできごとです。

 作業者がハンダ槽のそばに置いていたオリーブオイル(現地では、パンにオリーブオイルを塗って食べる習慣があります)の入ったペットボトルを、誤って250度以上に熱せられたハンダ槽に落としてしまったのです。

 川島さんは「しまった。すぐにハンダ槽からオリーブオイルを取り除かなくては」とハンダ槽表面に浮いている酸化複合物と一緒にオリーブオイルを掬ったそうです。

 その時、不思議な現象を目にしたのです。オリーブオイルが酸化複合物とハンダを分離させているのです。川島さんは、この不思議な現象を見逃しませんでした。

 彼は、日頃から優秀な改善提案を出しておりました。入社した時から事業場提案事務局が募集する、月間10件以上の提案目標を常にクリアするために、考える習慣と問題意識を養ってきました。ですから、彼はいつもと違うこの不思議な現象を見た瞬間、問題点として感じたのです。

 彼は、帰国後マレーシアでの不思議な現象の原因を真剣に考えはじめました。「なぜ、オリーブオイルが酸化複合物とハンダを分離するのか?」マレーシアで起こったのと同じことを日本で再現してみました。

 しかし、ハンダ槽にオリーブオイルを垂らすと、臭くて、臭くてやりきれないほどの異臭を放つのです。
 そこで、同じ植物性のもので何か代用できるものはないか?粘り強く、においのでないオイルを探したそうです。その結果、いろいろな難問にぶつかりながらも、今回の「皮むき・炒り胡麻」に行きついたそうです。

 この話しを聞いて、凄いなあ〜と思いました。一人の現場作業者の発見が、世界の地球環境保全に役立ち、しかも経営にも大いに貢献しているのです。
 松下に「業務改善・提案活動」がなかったら、このリサイクル法は生まれなかったのではないでしょうか。 この話しを聞いて、そんな気がしました。

(2001.12.17)