浜の宮夕景(セグロカモメ)

 経ってみれば一年はあっという間で、昨年四月から始まった私の表紙シリーズも今回で連載終了となります。「紀の国」三万八千人の読者の皆様、この「表紙のことば」コーナーの数少ない読者の皆様、ありがとうございました。毎月十日の締切に間に合わせる様、夜な夜なワープロに向かったことも、今思えば一生に一度あるかないかの貴重な経験だったなとしみじみ思います。

 表紙の写真は、私が普段通っている身近なフィールドや旅先で出会った鳥・獣のうち、できる限り新しい作品で、しかも発行月と同じ月に撮影した写真だけを選んできました。今月号も三月の作品をと思っていたのですが、せっかくの最終回、和歌山の写真でラストを飾りたいと思い、昨年四月に浜の宮で撮影した夕暮れの風景を選びました。
 
 浜の宮は大変お世話になった琴の浦寮から車で五分、休日の夕方によく一人たそがれた場所です。リゾート博に向け、道路や橋の整備が急ピッチで進む海岸、カモメたちが満ち潮に取り残された砂浜であくびをしたり、羽繕いしたり…。何とのどかな風景がこんな近所にあったものだと感心した記憶があります。
 
 私儀、神戸に移り住んで約五カ月、最近、六甲山通いを始めました。ここにも鳥や獣達が沢山住んでいます。また、いつか何かの機会に彼等の日常を紹介できたらいいなと思っています。
 
                                  (紀の国 1994.3)
戻る HOME