ツバメ


 少し前の朝日新聞で、毎日楽しみに観察していたツバメの巣が壊されてしまったという投書を読んだ。駐車場のすぐそばに作られていた巣だったので、車を汚された持ち主が、怒って壊してしまったのではないかという。巣の中で育っていた雛の行方を思うと、何ともやりきれない話だ。
 小学生の頃、下校途中にツバメの雛を拾ったことがある。巣から落ちてしまったらしい。喜んで拾って家に持ち帰ったが、親は困った顔をするし、育て方は分からないし、結局手に余って、巣に返しに行った。巣は、何の店かは忘れたが、商店の軒先にあった。おそるおそる店のご主人にツバメが落ちていたこと、拾って持って帰ったが、どうしようもないので、巣に返したいことを告げた。ご主人は「よく落ちるんだ」といって、お店の中から脚立を取り出してくると、巣に雛をそっと戻してくれた。
 日本のいろんな町で、いろんな場所で、人とツバメのふれあう瞬間があるだろう。やさしい気持ちで迎えられるツバメとそうでないツバメ。僕が子供の頃は、「ツバメが巣を作る家は金持ちになる」などと言われ、ツバメは大切にされていた。それが、人とツバメが仲良く暮らすためのキーワードだった。
 人はいろんなことを忘れていく。電線に仲良く並んで止まっているツバメの巣立ち雛たち。その姿をどれだけの人が見ているか。その町がどんな町かは、案外そんなことで分かるものなのかもしれない。
(1999/6/19)